調剤薬局の主な業務は、患者が持ってくる処方箋を受け付けて薬を処方するというもの。しかし最近では国が推進するセルフメディケーションや、かかりつけ薬局の推進によって、調剤薬局でも一般用医薬品(OTC医薬品)の販売が進んできました。

さらに、いまの調剤薬局では一般用医薬品(OTC医薬品)だけでなく、健康グッズや食品、雑貨、洋服など、雑貨類の販売を始める薬局も増えています。今回は調剤薬局が物販を始める背景や、物販のメリット、そして薬局で物販を始めるコツについてお伝えします。

 

調剤薬局で物販が増える背景とは

これまで調剤薬局では、処方箋をもとに薬剤師が薬を調合し、患者さんに薬とその使用に関する情報を提供してきました。しかし、ここ最近は薬の調合だけでなく、健康面や生活に関わる物販を行う薬局やドラッグストアが増えています。

その背景にはいくつか理由がありますが、2019年の薬価改定がその一つです。厚生労働省は2019年10月に、消費税率が10%に引き上げられることに伴って薬価基準を全面改定しました。これにより、6割以上の品目の薬価が引き下げられました。薬価改定の影響で収入が減ることになる調剤薬局は多く、一方で薬の仕入れには消費税が発生するため、薬の調合だけではこれまでと同じような売上の確保が難しいという環境に置かれています。

また、厚生労働省は保険調剤薬局に「かかりつけ薬剤師」「かかりつけ薬局」の機能の充実を期待する動きがあります。患者の健康や介護に関する相談に応じたり、アドバイスを行うことができる薬剤師、薬局のことです。その一環として、セルフメディケーションの知識を提供し、一般用医薬品(OTC医薬品)はもちろん、健康食品や雑貨などの提案もできる環境が求められています。

加えて今、コロナウイルスの影響によって病院の受診を控える患者も増えており、それによって処方箋を受け取る回数も減るため、調合薬局の売上も下がるという状況になっています。

このような背景から、これまでメインの収益であった処方箋調剤だけに頼っていては経営が成り立たないため、別の収益を得る手段として物販を始める調剤薬局が増えています。

調剤薬局での物販のメリットとは

調剤薬局で物販を行うことは、処方箋調剤以外の収益源を確保することに繋がりますが、それ以外のメリットがあります。

その一つは差別化です。調剤薬局の経営において最も重要なものは調剤数です。取り扱い処方箋の枚数を増やすことが何より重要です。そのためには、より多くの患者を集める必要があり、他の調剤薬局やドラッグストアとの差別化が必要不可欠となってきます。

特に近年はドラッグストアや大手調剤薬局のチェーン店に加え、商社やスーパーなどの異業種も調剤事業を強化しているため、調剤薬局業界は競争が激化しています。

そこで、食品や雑貨などの物販を行うことで、他の薬局との違いを出すことができ、自店ならではの強みを作ることができます。地域密着や個人の調剤薬局などは来店される患者とのコミュニケーションを密に取ることで、個々のニーズに合わせた商品を提案することができます。その結果、来店のきっかけづくりに繋げることができます。

 

調剤薬局での物販に向いている商品とは

調剤薬局での物販にはどんな商品が向いているのでしょうか?卸・仕入れサイトのスーパーデリバリーが、物販をしている調剤薬局を取材したところ、その多くが患者のニーズに合わせたものや、自店のコンセプトに沿ったものを販売していました。例えば、患者の健康相談に応じている薬局では、食事の改善などを提案しており、サプリメントのほかにオーガニック製品の食材やお菓子、お茶といったものを販売しています。比較的女性の患者の来店が多い薬局では、ハンドクリームや入浴剤などの雑貨類を扱う店舗もあり、ギフトとして購入されるケースもあるようです。

例えば、こちらの薬局では薬局のコンセプトに合わせた食品やオリジナルの化粧品などの販売をされています。

[取材記事]食事や漢方薬で体の中から健康改善を提案。リピート客をつかむイヌイ薬局を取材しました。

また、地域によっては近隣に買い物をする場所がなく、調剤が終わるまでの間に店内で買い物をする、といったケースもあり、特に高齢者から支持されています。薬局が地域のコミュニティに根付いている場合には、処方箋がなくても気軽に来店してもらい、健康相談に応じながら商品の販売を手掛ける事例などもあり、これまでの調剤薬局の枠を超えたサービスを提供して他店との差別化を図っています。

その結果、処方箋の取り扱いも増え、それ以外の収益も増えるといった景色が増えています。

[取材記事]処方箋以外の来店客が増える!地域の買い物スポットとして物販を広げる調剤薬局のホウライグループを取材しました。

どの薬局でも共通しているのは、ドラッグストアのような品ぞろえで勝負するのではなく、患者とのコミュニケーションを強みとした商品選定を意識しており、それがリピーター獲得のポイントにもなっています。

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調剤薬局での物販・販売のコツとは?

少量から仕入れて物販コーナーを作る

調剤薬局が物販を始める際に、どれくらいの量から扱えばいいのか悩む方もいるのではないでしょうか。最初からバラエティ豊かに商品を扱うと在庫リスクも大きくなるため、少量から仕入れることをオススメします。まずは患者さんとの会話の中で求められている商品や、ニーズに合いそうな商品から仕入れ、少しずつ幅を広げるのが望ましいでしょう。

また、最初から大きな物販スペースを設けるよりも、レジ周りにちょっとしたお菓子やリップクリーム、ハンドクリームなどを置くことで、ついで買いを狙うといった方法もあります。

価格帯もお手頃なものを少量から販売しはじめ、患者との会話の中でニーズがあるものを増やしていくのも効率的です。実際に、今はコロナ禍でマスクを取り扱う薬局は多いですが、一般的な不織布のマスク以外にも洗って使えるマスクやファッション性のあるマスクも扱い始めたところ、ほかの雑貨類も求める声があり、商品数を増やしたという事例もあります。

 

POPを活用して興味を持ってもらう

調剤薬局の中には、どのように声掛けをすればいいのか?どう商品を提案すればいいのか?と悩む方もいるかもしれません。そこで、実際に物販をされている店舗にコツなども聞いてみたところ、POPを活用している店舗が多く見られました。

販売する商品がどんな悩みを持つ方に向いているのか?ターゲットを絞って訴求することで手に取ってもらいやすい、という効果があるようです。また、調剤薬局では薬の処方を待っている時間が一番商品を提案できる機会でもあるため、待合室の椅子近くに陳列したり、壁にポップを貼っている店舗もあります。

POPには実際に使ってみた感想などを書くことで興味を持ってもらいやすいという事例もあり、そのためには販売する前に一度自分で試食や使ってみてから提案する、というケースもあります。

下記の取材先薬局でも来店される方の目に留まるよう、ディスプレイに工夫をされています。

[取材記事]調剤薬局の枠を超えた新しい形の薬局をオープン!「薬に頼らない体づくり」を提案する金子薬局駅前通り店を取材しました。

 

さいごに

今後も薬価改定や競争の激化などが予測される調剤薬局業界において、物販は薬局の経営において重要な役割を果たしていくと思われます。自店のコンセプトや差別化ポイントを改めて設定し、患者に合わせた物販を始めてみてはどうでしょうか?ドラッグストアや他店との差別化のためにも、患者とのコミュニケーションを強化し、できることから取り入れてみるのも良いかもしれません。

 

これまでスーパーデリバリーが取材した調剤薬局での物販の様子は、下記にも掲載しています。ぜひご覧ください。

薬をわたす待ち時間を楽しい時間に!全国で薬局を展開する株式会社ミックを取材しました

雑貨販売など薬の処方以外の価値を提供!地域コミュニティを生む「春日丘薬局」を取材しました

薬を販売するだけじゃない!薬局でアロマテラピーセミナーやワークショップも。地域の人の憩いの場になる薬局「中村五郎薬局」を取材しました

 

薬局の物販商品の仕入れはスーパーデリバリー

スーパーデリバリーは、薬局や医療施設で使われる備品や物販商品を幅広く取り扱っています。備品、資材、消耗品、販促品を業務用価格で調達できます!

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