健康面や食の安心・安全、エシカルな視点での環境への配慮など、オーガニックへの関心がますます高まってきています。とくに、直接口にするオーガニック食品は自然食品店といった専門店だけでなく、国内大手のスーパーマーケットでも専門店や販売コーナーを設けるお店が増加しており、より多くの人々に浸透し、需要が高まっていることを実感します。

この記事では、「オーガニックの食品に関わるお店を開きたい」と開業を考えている方へ必要な開業準備や流れをわかりやすく解説します。

自然食品店とは?

自然食品店とはその名の通り自然食品を扱うお店のことです。そして自然食品とは、海や川、田畑などの自然環境で農薬や化学肥料を使わずに作った農産物や食品添加物を含まない加工食品のことを言います。自然食品店といっても商品の種類が広くあるため、まずはどういった種類の自然食品店があるかを例を挙げながら紹介します。

ギルトフリーのスイーツやグラノーラなど加工食品をあつかうお店

ギルトフリーとは「罪悪感を感じない」という意味です。おいしいものを食べたいけれど、食品添加物や糖質やカロリーが気になるなど、後ろめたい気持ちから解放される食品のことです。

牛乳の代わりに豆乳を使用したスイーツ、砂糖不使用のアイスクリームなどの菓子店・スイーツショップや、グルテンフリーの米粉を使ったパン屋などが挙げられます。また、手軽さと栄養バランスの良さで人気のグラノーラは、有機栽培の原材料にこだわるなどした専門店も増加しています。

有機栽培や国産など安心の生鮮野菜を扱うお店

有機野菜や無農薬米、加工品などを多くそろえる自然食品スーパーや、お味噌やしょう油、だしなどの調味料を専門的に扱う自然食品店もあります。また、海外から輸入されたオーガニック商品を中心に扱うオーガニック食品店もあります。

地方には道の駅などで地元の農家が育てた有機栽培の新鮮な野菜などを販売しています。こういった直売所も自然食品店の一例です。

オーガニック食品を扱う自然食品店の開業に必要な資格や許可

オーガニック食品を取り扱う自然食品店の開業にあたっては、販売するだけであれば許認可は必要ではありません。一方、食品を製造したり、お酒を販売したり、輸入品を取り扱う場合は各種届出や許認可が必要となります。

食品製造販売は保健所

例えば有機小麦を使ったパンを製造し店頭で販売する場合は、パンを製造販売するための「菓子製造業」の許可が必要です。

食品製造業といっても、菓子製造業、あん類製造業、アイスクリーム類製造業など、取り扱う食品の種類によって申請する許可業種が異なります。まずはどの業種に該当し、どういった申請が必要となるか確認しましょう。

営業許可申請にあたって東京都においては、営業所を所管する保健所の食品衛生担当に事前相談を推奨しています。申請の際、個人の場合は以下の書類が必要です。

・営業許可申請書
・営業設備の大要・配置図
・許可申請手数料(業種によって異なるが、2万円前後が多い)
・水質検査成績書(貯水槽使用水、井戸水使用の場合)
・食品衛生責任者の資格を証明するもの(食品衛生責任者手帳等)

[参考]東京都福祉保健局

酒を販売は税務署へ免許申請が必要

オーガニックワインなどお酒を販売するためには、「一般酒類小売販売業免許申請」を税務署へ申請し、免許を取得する必要があります。

申請してから免許を取得するまでにかかる時間は約2か月です。その前に事前に所轄税務署の酒類指導官へ相談する場合は約3か月程度かかることを想定しておきましょう。そのため、開業時からお酒を販売したい場合は、早めに進めておきましょう。

【一般酒類小売販売業免許申請の流れ】
事前確認(所轄税務署へ酒類指導官へ相談)

申請書の提出

審査

免許付与等の通知

酒類の販売開始

[参考]一般酒類小売業免許申請の手引

輸入品は検疫所への届け出が必要

海外から食品等を営業・販売目的で輸入する場合は、「食品等輸入届出書」の届出が必要です。オンラインショップで販売する場合も対象となります。必要な書類の種類は、生産国、生鮮食品なのか加工食品なのかなど製品の種類、加工方法によっても異なります。

例えば、加工食品の場合、情報の例としては以下を届け出ます。
・原材料表
・製造工程表
・放射線殺菌されていない旨が書かれた製造者からの書類
・検査機関が発行した試験成績書

届け出先となる検疫所は通関する税関の管轄によって異なります。茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、東京都(東京空港検疫所支所の担当区域を除く)、山梨県、長野県の場合は東京検疫所食品監視課の担当区域です。なお、届け出の方法は、窓口、郵送、電子届出のFAINSのいずれかを利用します。

[参考]東京検疫所食品監視課

健康食品は複数の法律に絡むので要注意

サプリメントなどの健康食品は、医薬品ではなく食品として扱われます。そのため海外のサプリメントや健康食品を輸入する場合は、食品として輸入する届け出が必要です。海外ではサプリメントや健康食品として取り扱われている物でも、日本では医薬品の成分として使われているものもあります。そのため、輸入する健康食品の原材料を事前に確認しておき、食品として届け出ができるようにしましょう。

健康食品は販売時にも注意が必要です。薬機法に抵触するため、「疲労回復」や「便秘に効く」といった医薬品的な効能効果をうたうことはできません。外国語での記載も同様に処罰の対象となります。

薬機法以外にも、一般消費者の利益を保護する景品表示法や国民保健の向上を図る健康増進法にも注意が必要です。健康増進法では虚偽誇大表示を禁止しており、効果がないにもかかわらず一般消費者がその表示を信じ、効果を期待して摂取し続けたことで適切な診療機会を逸してしまうことを防止する目的があります。事実に相違する表示や人を誤認させる表示をしないように注意しましょう。

[参考]東京都福祉保健局・医薬品的な効能効果について/健康⾷品に関する景品表⽰法及び健康増進法上の留意事項について(要約版)

開業届

個人事業主として開業するためには、「個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)」と「所得税の青色申告承認申請書(青色申告の場合)」を届け出し、開業手続きをする必要があります。

開業届の書類は国税庁のホームページでダウンロードするか、最寄りの税務署でも入手できます。事業の開始1か月以内を目安に税務署に提出します。開業届を出すことで確定申告の際に青色申告をすることができます。青色申告をすると、最大65万円の青色申告特別控除が受けられたり、家族や親族を社員として雇用する場合、給与を全額経費に算入できるといったメリットがあります。青色申告は必須ではありませんがメリットも大きいので、確定申告時に青色申告をする場合は開業届と一緒に提出しておきましょう。

自然食品店の開業に必要な資金は?

初期費用とランニングコスト

小規模な自然食品スーパーの想定の場合、初期費用は約800万円かかります。
初期費用でもっとも費用が掛かるのが物件取得費と設備設置費です。自宅など所有する物件で開業する場合は内装・外装工事費用は発生しますが、物件の取得はかからないのでコストを圧縮することができます。設備設置費については、冷蔵・冷凍が必要な食品を扱うかどうかによって費用の発生有無が変わってきます。

ラン二ングコストはおもに家賃・人件費・仕入れ費・水道光熱費があります。立地や店舗の規模によって大きく変わりますが、家族経営で人を雇わない場合でも月90万円ほどの運営資金が必要です。ランニングコストとして3か月分の300万円前後は準備しておきたい金額です。

資金の調達方法

自然食品店の開業にあたって自己資金が不足する場合は、銀行からの融資を受けるほか、日本政策金融公庫から融資を受ける手段もあります。日本政策金融公庫は「日本公庫」とも呼ばれ、政府が100%を出資する公的な金融機関です。日本政策金融公庫は中小企業や個人事業主の事業支援や開業支援に力を入れており、最大3,000万円まで無担保無保証人で借り入れができます。

そのほかにも、日本商工会議所が公募している小規模事業者持続化補助金に申請する方法もあります。商工会や商工会議所が事業計画の作成を支援し、施策をサポートしてくれる補助金です。幅広い事業の⼩規模事業者が対象となり、使い勝手のよい補助金であるのが特徴です。

オーガニック食品を扱うお店を開業する時のポイント

オーガニック食品は多くの女性にとって関心が高くなっています。年代はSDGsやエシカルに関心の高い20代からを始め、子育て世代のママ、健康が気になる高齢者など幅広くなっています。開業にあたっては、独自のコンセプト作りが大切です。比較的高価とされるオーガニック商品を販売するにあたっては、来客が見込める立地で開業することは大切なポイントです。また、食品以外でもオーガニックの化粧品や雑貨などを親和性の高い異なるジャンルも展開することで、客単価を上げたり来店頻度を高めるなど工夫も必要です。

立地条件・客層

生鮮食品を扱うスーパーのような自然食品店の場合、来店客のほとんどは近隣住民です。オーガニック食品はオーガニック食品ではない商品と比べると値段が高いため、所得の高い世帯が多いエリアが開業先となることが多いでしょう。子供が多いエリアであればオーガニックのお菓子を置いたり、高齢者が多いエリアであれば国産といった高齢者が魅力に感じるラインナップにするのも手です。そのため、開業するエリアの住民の年代や世帯状況、平均収入などを具体的に調べることが大切です。

一方でスイーツや加工食品を販売するお店の場合は、遠方からの来客を見込むことができます。ターゲットとなる客層に合った価格帯をもとにメニューをそろえたり、SNSなど効果のある宣伝広告を探すことも大切です。オンラインショップでの販売や季節限定のメニューなど話題性も大切にして、客層やエリアに合った開業計画を作りましょう。

商品構成

自然食品店ではハンドクリームや日焼け止めなどの化粧品や、食器用洗剤や住宅用洗剤などの日用品なども一緒に販売しているお店も多くあります。これは来店客の多くが家事を行う女性であり、食品だけでなく健康や美容に良いものや環境負荷の少ないものに広く関心を持っていることも多いため、食品以外の商品も受け入れられやすい傾向にあるからです。

このように衣食住の「食」だけでなく、「衣」と「住」についても価格帯やお店の規模に応じて展開し、お客様のライフスタイルを提案できるような総合型のお店の展開も考えやすいのがオーガニックショップのメリットでもあります。

商品説明のPOPやレシピの提供 

食品のお店では、商品の原材料や生産過程など聞かれることも多い傾向です。自然食品となれば、より一層慎重に商品を選ぶお客様も増えます。しかし、店頭での商品説明は接客に掛けられる人数や時間に制約があるため、商品の隣には説明POPを付けましょう。積極的な商品説明を好まないお客様も一定数いるので、商品POPはこの点でも有効です。POPと一緒に試食を置くのもお店の滞在時間を長くし、商品への興味やお店の印象を深めるきっかけになります。

商品説明のPOPには店員自身が食べたときの感想や、食べ方の提案も記載して、工夫してお店の雰囲気と合わせたテイストで作成しておきましょう。商品説明だけでなくレシピをPOPに書いて提案したり、リーフレットに印刷して購入した商品に添えて差し上げる方法も検討しましょう。

また、環境への配慮も他店との差別化やお客様の再来店につながる来店動機になります。例えば、バルクショップ(容器を持ち込み、量り売りで販売するスタイル)や、食品包材をリサイクル可能なものにして次回の来店時に回収する仕組みを作るなどです。プラスチックフリーやリサイクルなどエシカルなお店作りは、他店との差別化ができ「ここで買い物をしたい」とファンにさせる部分です。

オーガニック食品など自然食品店の商品の仕入れはスーパーデリバリー

自然食品店の開業に必要な資格や許認可、ポイントをご紹介しました。オーガニック食品は、おいしいだけでなく、環境負荷への配慮や食べる人の健康を思いやるエシカルなアイテムです。食べるだけでなく、エシカル消費を通してよりよい地球環境や社会をつくっていくことにつながり、地方では地産地消というエシカルな要素も加えることができます。まさに持続可能な社会を実現するためには欠かせないお店です。開業を検討されている方にとって役立つ情報になっていれば幸いです。

卸・仕入れサイト「スーパーデリバリー」では、有機栽培の原材料を使ったオーガニック食品、オーガニックコスメ、オーガニック洗剤などのエシカル・サスティナブルな商品の仕入れができます。

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