ファッション業界では縫製工場の崩落事故の発生や強制労働、大量廃棄といった問題などに対して、よりよい環境や社会を目指す人も増えています。

売る側はより良いものづくりを目指し、買う側は自分自身のエシカルな考えを意識しながら買い物をするといった傾向が続いており、これらは「エシカルファッション」に関わることです。「エシカルファッション」とは何かを再確認して、お客様に気持ちよくご提案できるファッションアイテムの仕入れ選びの参考にしていただけたら幸いです。

エシカルファッションとは?

エシカルファッションの「エシカル」とは、「倫理的・道徳的な」という意味です。言い換えると「良いほうを選ぶ」ことで、「エシカルファッション」は、「環境や社会などに対して良い方を選ぶファッション」という意味になります。

この「エシカルファッション」という考え方が広がった背景のひとつに悲しい事故があります。ご存じの方も多いかと思いますが、2013年4月24日に発生したバングラデュの商業ビル「ラナ・プラザ」で起きた崩落事故は、死者1,000名、負傷者2,500名を超えるファッション史上最悪の事故と言われています。

犠牲になった多くの女性たちは安い商品を大量に作るために縫製工場で低賃金で働かされ、耐震性を無視して違法に増築を繰り返した安全ではない場所で不安を抱えていました。崩落事故が起きる前にはビルの亀裂や建物の危険を伝えてもオーナーや管理側はそれを無視し、崩落事故が発生に至っています。(参考記事「ダッカ近郊ビル崩落事故」

崩落事故の後、問題はずさんな管理をしたビルの所有者や縫製工場の管理者、発注をしていたファッションブランドだけでなく、「商品を買う消費者にも考えるべきことがある」という視点が広がりました。

いま買おうとしている商品は、誰かの犠牲になっていないか?地球環境への負荷はどうか?など、倫理的に問題があるかどうか判断する「エシカルファッション」という考え方が定着し始めています。

エシカルファッションのアイテムにはどんな種類がある?

エシカルファッションはたくさんの種類があり、日本国内ではSDGs(エスディージーズ:持続的な開発目標)の取り組みもあり多くのファッションメーカーが環境や社会により良いものづくりをしています。デザインや機能性に加えて環境や社会に優しいポイントがあるというのは、店頭での商品アピールにしやすくなるのではないでしょうか。

環境や作り手にやさしい「オーガニックコットン」

オーガニックコットンは、化学肥料や農薬を一定期間(多くは3年間)使用していない農地で栽培された綿花のことです。農薬や化学肥料は生態系への影響だけはなく、文字を読めないために適切に農薬の取り扱い説明を読むことができない人々が誤った方法で使うことで、健康に悪影響を及ぼしています。また、コットン農場では特に女の子が働き手として使われており、児童労働も発生しています。それらを解決するのがオーガニックコットンです。

オーガニックコットンに関係する第三者機関による認証マークには、「OCS認証」や「GOTS認証」があります。

「OCS認証」は「Organic Content Standard」の略で、農場から最終製品に至るまでの経緯を追跡してオーガニック繊維製品であることを証明します。Organic Content Standard認証については、原料の5%以上95%未満がオーガニックである製品につく「OCS Blended」の認証ラベルと、原料の95%以上オーガニックである製品につく「OCS 100」認証ラベルというの2パターンあります。(参照:https://textileexchange.org/organic-content-standard / In-Conversion Claims for OCS and GOTS )

「GOTS認証」は、「Global Organic Textile Standard」の略で、GOTS認証ラベルにいは、95%以上認定されたオーガニック繊維が含まれている場合には「Organic」と記載されたラベルが付き、70%以上認定されたオーガニック繊維が含まれている場合には「made with [×]% Organic materials」と記載されたラベルが付きます。最低でも70%の認定されたオーガニック繊維が含まれていることが条件となっています。(参照:gots_version_6_0_en1.pdf

[掲載商品]ねこ×ボタニカルフラワー柄 オーガニックコットン ストール(メーカー希望小売価格(税抜)2,500円)(取り扱い企業名:ソレイユ

ねこ×ボタニカルフラワー柄 オーガニックコットン ストール」は定番人気のねこモチーフと繊細なボタニカルフラワー柄のストールです。GOTS認証を得たオーガニックコットンを使用しています。

[掲載商品]フェアトレードオーガニックコットン ニット フレンチスリーブトップ(メーカー希望小売価格(税抜)9,500円)(取り扱い企業名:sisam(シサム工房)/FAIR TRADE + design

フェアトレードオーガニックコットン ニット フレンチスリーブトップ」は、春先から初夏まで長く着られるニットで、OCS認証のオーガニックコットンを使用しています。少し高めの襟できちんと感もあり、腕周りがキレイに見えるフレンチスリーブと、両脇のスリットで抜け感の出るニットトップスです。

出展企業「sisam(シサム工房)/FAIR TRADE + design」が主催している取引先向けのフェアトレードを学ぶ朝活に参加レポートの以下記事では、シサムオーガニックというシリーズの中で使用されているOCS認証のオーガニックコットンについて触れています。作り手が見えてくる勉強会でしたので、ぜひ一度読んでみてください。

資源を大切にする「リサイクル」「アップサイクル」

環境問題を考えたときに思いつくのが「リサイクル」という言葉ではないでしょうか?生活をしている上でごみは必ず出てしまうものです。リサイクルはごみを資源として認識して、区別することから始まります。リサイクルはとても身近な存在なので、リサイクルした結果、素敵な商品に生まれ変わるというのは分かりやすいエシカルな取り組みだと思います。

ところで、最近聞く「アップサイクル」は、「リサイクル」とどう違うのでしょうか?簡単に言うと、リサイクルは「資源にもどして再利用」すること、アップサイクルは「資源にはもどさずに再利用」します。ファッションでは、作り手の斬新な発想によってさまざまなリサイクルやアップサイクルの商品が増えています。

[掲載商品]エコルーペットミックスカラーレインUVハット(メーカー希望小売価格(税抜)3,000円)(取り扱い企業名:ニフティカラーズ

環境や有限な資源の利用を大切にしようと、廃棄予定だったペットボトルをリサイクルした生地を使用した素材で作られている「エコルーペットミックスカラーレインUVハット」。男女問わず使えるシンプルなデザインなので、ユニセックスアイテムとしてもOK。またこの商品の購入で森を守る活動につながる取り組みも行われています。

売り上げの2%を森を守る活動をしている※「PresentTree」に寄付しています。

※「PresentTree」とは 「贈り物に木を植えよう!」を合い言葉に国内外の森作りが必要とされている土地に木を植えることで、森林再生と地域振興につなげるプロジェクトです。

寄付金は認定NPO法人環境リレーションズ研究所が企画運営する寄付を通じて植林を必要とする国内外の森林の整備や維持管理を、地域と共同し、連携しながら実施しています。

商品ページより引用

[掲載商品]SN.ミディアム.リサイクルコットン-B(メーカー希望小売価格(税抜)2,600円)(取り扱い企業名:ROOTOTE(ルートート)

原料のわたには縫製工場で不要になった裁断くずや生地を使用している「SN.ミディアム.リサイクルコットン-B」。染色による排水も環境汚染に影響があると言われていますが、もとの色をそのままいかした環境にやさしいアップサイクル糸で水を使用せず、染料も使用していません。

[掲載商品]カンバディア トライアングルバッグ(メーカー希望小売価格(税抜)3,819円)(取り扱い企業名:マライカ

カンバディア トライアングルバッグ」は、インドの西側にあるグジャラート州のカンバディアという街のリサイクル文化が商品の背景になっています。一点ものの生地をパッチワークしたアイテムは、どれも華やかです。大事な衣服をアップサイクルすることで価値をより高いものにしているアイテムです。

グジャラート州西部のカンバディア(Khambadia/Kanbalia)という街で伝統的に着用されている女性用衣装には、刺繍やスパンコールで装飾された華やかなドレスがあり、着用しなくなった古いドレスの刺繍部分を集めてパッチワーク生地にリサイクルする文化があります。地域や民族によって様々にあるグジャラート州の刺繍の中でも、カンバディアの刺繍には特に女性らしい華やかな印象があります。このパッチワークシリーズ商品はオールドドレスの魅力的な部分を何着分も集めた刺繍コレクションのようなものです。

商品ページより引用

以下記事では、アップサイクルについて詳しく紹介しています。

作り手を思いやる「フェアトレード」

毎年5月の第2土曜日は、WFTO(世界フェアトレード連盟、World Fair Trade Organization)がフェアトレードをアピールする日として定めた「世界フェアトレード・デー」。5月は「フェアトレード月間」として、企業や団体によるイベントや企画が展開されます。

フェアトレード(Fair Trade)とは、英語訳で「公平・公正な貿易」のことを言います。立場の弱い発展途上国の生産者や生活改善の自立を目指す貿易の仕組みで、継続的に正当な値段で作られたものを売り買いすることです。フェアトレードは貧困の解決や環境を保全、伝統文化の継承につながります。

[掲載商品]変わり織りコットンタックスカート(メーカー希望小売価格(税抜)16,000円)(取り扱い企業名:ピープルツリー

フェアトレード専門ブランドである「ピープルツリー」から紹介するアイテムは、インドの職人による手作業のハンドスクリーンプリントの技法が使われた色鮮やかなブルーの「変わり織りコットンタックスカート」です。1枚ごとに柄の入り方が違うの点は、手作業で作られたアイテムの魅力の一つです。やわらかな手織りのコットン生地に刷毛目のようなモザイク柄をプリントしており、シンプルなコーディネートに1点の華やかさを添えてくれます。あざやかなブルーと落ち着いたグレイの2色をご用意しています。

[掲載商品]フェアトレード アローlaceハット(取り扱い企業名:sisam(シサム工房)/FAIR TRADE + design

フェアトレード アローlaceハット」は、ネパールの「Sana Hastakala(サナハスタカラ)」というフェアトレードNGO団体の熟練の女性ニッターが絶妙な加減で編みこんでいます。商品名にもある「アロー」は、ネパールで自生しているイラクサ科の植物で、このアローを使用した自然な風合いを楽しめるハットです。リボンの部分はひらひらと波打つライン状にコットン糸で編まれています。ナチュラルだけど、シックな色合いでさりげないリラックス感がでる大人な雰囲気のコーディネートにマッチします。

以下記事では、5月の世界フェアトレード・デーについてやフェアトレードの先にある良いことについて紹介しています。

動物や環境も大切にする「ヴィーガン」

ヴィーガンとは動物を搾取しないという考え方やライフスタイルのことで、食事については肉や魚、乳製品、はちみつなどの動物由来のものは食べません。ベジタリアンは食事の面で動物由来を避けますが、ヴィーガンは化粧品や身に着ける衣服についても動物由来の成分を含まないもの、動物実験を行わないものを選びます。

ヴィーガンが注目される一つの背景に、工業的な家畜動物による森林破壊や地球温暖化への影響があります。動物を飼育するために場所を二酸化炭素を吸収する森林を伐採してしまったり、家畜から出るメタンガスなどが地球温暖化に影響していると言われています。

動物を大切にしたいという思いや健康を考えてヴィーガンを取り入れる人もいます。取り入れ方もさまざまで、ミートフリーマンデーといった取り組みも世界的にあります。自分たちが食べるものや身に着けるものが、何かの犠牲になったり、環境破壊を招いていないかを知るには、どこでどのように作られているかを知ることが大切です。

[掲載商品]麦わらコンフォートサンダル フラット インソール(参考上代(税抜)7,900円)(取り扱い企業名:ベル

地球にも自分の足にもやさしい靴を手掛ける「ベル」では、夏に向けて「麦わらコンフォートサンダル フラット インソール」が注目の商品です。使用しているヴィーガンレザーは本革と似た繊維構造なので、軽くて伸縮性がありお手入れも楽なのがメリットです。何時間歩いても疲れにくい高反発コンフォートインソールを使用したサンダルです。

[掲載商品]サボテン ヴィーガンレザー L字財布【日本製】(カタログ価格(税抜)16,000円)(取り扱い企業:志成販売

動物由来のレザーを使わない「サボテン ヴィーガンレザー L字財布【日本製】」は、メキシコで有機栽培されたサボテンと植物由来のポリウレタンをベースに作られたヴィーガンレザーを使用しています。本革と違って、柔らかくしなやかな触り心地。自然なテクスチャーも施されており、柔軟性・耐久性・堅牢性・撥水性に優れています。

コンパクトなバッグにも収まるミニマルなサイズ感で、大切な誰かにプレゼントしたいギフトにも向いたアイテムです。

ヴィーガンについては以下の記事でも紹介しています。あわせてご覧ください。

物を大切にすることでエシカルファッションはもっと楽しくなる

どんなエシカルファッションを取り入れたとしても、大切になるべく長く使用することは大切です。ほかにもエシカルなファッションの楽しみ方があります。

お直し、リペア、リメイク、リユース、シェアもエシカルファッション

お店では、お直しやリメイクの相談を受けることもあるかと思いますが、それもエシカルファッションの一つです。

今も昔も大切な服やアクセサリーは世代をまたいで大切に引き継がれていきます。日本では高価な着物は大切に管理され、母から娘、そして孫娘へと引き継がれてします。日常着においては、擦り切れた部分に当て布をして繕ったり、おさがりを繕って、1つのものをなるべく長く使うのが当たり前の時代がありました。

現在では、着なくなった着物をリメイクしてバッグにしたり、捨てずに古着として売ったり、ファッションの出会いを楽しむ一つの方法としてシェアやレンタルサービスを活用したりと、エシカルなファッションの楽しみ方も広がっています。

ファッションを通してより良い未来を目指す、エシカルファッションを店頭で提案しよう

同じ買い物なら少しでも環境や社会に配慮したものを選ぼう、という考え方をお店で提案してみませんか?少しでも安いものをではなく、少しでも未来に良いものを選びたいと思う消費者に共感してもらえるお店作りをしてみましょう。店主オーナーが良いと思ったエシカルなことから実行してみてください。

「エシカルファッション」特集

卸・仕入れサイト「スーパーデリバリー」では、オーガニック、リサイクル、フェアトレード、ヴィーガンなどエシカルな洋服やバッグ、靴などのエシカルファッションのアイテムを「エシカルファッション」特集でご紹介しています。

エシカルファッション