「五方よし」の考えに基づき、みんなが笑顔になるフェアトレード商品を手掛ける京都の企業「シサム工房」では、取引先向けにフェアトレードについて学べる「シサムの朝活 to B」を開催しています。今回はその第4回で、「Sisam Organic(シサムオーガニック)」がテーマでした。

オーガニックコットンは、ファストファッションでも取り入れるブランドや企業が出てきており、聞きなれた言葉になっています。そのオーガニックコットンの生産状況や背景や、”ただのオーガニックコットンではない”シサム工房の「Sisam Organic(シサムオーガニック)」の理由について朝活で知ることができましたので、このレポート記事にまとめてご紹介していきます。

「Sisam Organic(シサムオーガニック)」がただのオーガニックコットンではない理由

「シサム工房」が提案するオーガニックコットンは「フェアトレード」で「オーガニック」なコットン。オーガニックコットンは世の中にたくさんあふれていますが、ただのオーガニックコットンではない思い入れをお伺いしてみました。

「フェアトレード」で「オーガニック」な特別なコットン

日本ではオーガニック食品に対しては有機食品の検査認証制度で認証される「有機JASマーク」があり、認証を受けた食品だけが「有機」や「オーガニック」といった表示を付けられます。しかしコットンには、表示を規制する国内法はなく、売り手の判断でオーガニックや有機と表示しており、判断は消費者に任されている状態です。

Sisam Organic(シサムオーガニック)の製品に使われているコットンは、国際フェアトレード認証を得たコットンであり、オーガニック繊維製品であることを証明するOrganic Content Standard認証コットンでもあります。Organic Content Standard認証については、「OCS Blended」という原料の5%以上95%未満がオーガニックである製品につく認証ラベルと、「OCS 100」という原料の95%以上オーガニックである製品につく認証ラベルの2パターンあり、Sisam Organic(シサムオーガニック)では「OCS 100」の認証を得ています。

縫い付けや紙タグにもきちんと書いてお客様にも伝わるツールも

Sisam Organic(シサムオーガニック)では、2022年SS~2023年SSのコレクションにて、この2つの認証を受けた製品を展開しています。その認証マークは縫い付けや紙タグでも紹介されており、お客様が商品を手に取ったときにもわかり、販売時の接客もしやすい状態になっています。

第三者が認証したマークがあることで、フェアトレードやオーガニックについて詳しくない人でも、マークを見てフェアトレードやオーガニックであることがわかる製品になっています。商品に付けられたタグなどを通して、より多くの人がフェアトレードやオーガニックを知り、フェアトレードやオーガニックを選択することで広がるより良い未来に関心を持っていただけるようにと、シサム工房では考えています。

まずはコットンについて詳しく知ろう

身の回りにはコットン製品がたくさんあります。衣服はもちろん、タオルやシーツなど、本当に多くの製品にコットンが使用されています。とても身近なコットンですが、その生育や作られ方については知らない人が多いのではないでしょうか?朝活では、コットンの生産状況についても知ることができました。

オーガニックコットンは全世界でたったの1.4%

大手アパレルブランドのオーガニックコットン商品の広がりから考えると、オーガニックコットンの比率が増えているように思えますが、実際はどうでしょうか?

2020年/2021年データでは、全世界で生産されるコットンのうちオーガニックコットンはたったの1.4%です。

オーガニックコットンの国別生産量の割合では、1位がインド(38%)、2位がトルコ(24%)、3位が中国(10%)となっており、インドはオーガニックコットンの生産が進んでいます。(参考データ:Textile Exchenge「Organic Cotton Market Report」より)

ちなみに、オーガニックコットンに限らず、「綿花」の生産量は、2021年では1位が中国、2位がインド、3位がアメリカとなっています。(参考データ:グローバルノート「世界の綿花(実綿)生産量 国別ランキング・推移」より)

オーガニックコットンの生産量は1.4%と非常にわずかであり、ほとんどの「通常のコットン」は農薬や枯葉剤を使用し生産、収穫されているというのが実状です。それから、もう一つ知っておきたいのは、コットンは非常に農薬や殺虫剤を使う作物であることです。コットンの耕作面積は世界の農作物の全耕作面積の2.5%ですが、農薬や殺虫剤は世界の使用量の20%にもなるのは、ショックな数値ではないでしょうか。

種まきから綿花になるまで、オーガニックコットンの一生

オーガニックコットンの栽培は、種の段階から異なります。オーガニックコットンは遺伝子組み換えされていない種を使用します。

種まき後、芽が出て、葉が出て、花が咲きます。ここまで60~70日ほどかかります。花がコットンボールになるまでに50~70日。コットンボールが割れて開果するのに45日程度かかります。その後、乾燥させてから一つずつ手で摘み取ります。

種まきの前から土壌を整え、種まきの後は水をまき、病害虫から守り、除草も行います。コットンは非常に手間のかかる作物なのです。

それゆえに、オーガニックコットンではないコットンの生産には、病害虫に強い遺伝子組み換えの種、発芽効率を上げるための発芽促進剤、除草剤などを使います。枯葉剤を使うのは葉の葉緑素で綿を汚さないようにするためです。効率的に収穫できるように多くの農薬が使われますが、空中から散布されると広範囲に農薬が飛び散ることもあり、土壌や環境に悪影響があることは言うまでもありません。

農家さんの健康を大切に「飢えのない農業」を目指す、農民組合「チェトナ・オーガニック(Chetna Organic)」

オーガニックコットンの「種」も守り、モデル農場で技術や知識の習得していけるよう作られた農家の組合「チェトナ・オーガニック」。農薬を使わず、すべて手摘みで、農家たちが健康的に暮らしていけるような農業を目指しています。

朝活では、チェトナ・オーガニックが設立された背景になる暗い過去や、フェアトレードでオーガニックコットンが作られている良さを聞くことができました。

借金による自殺者を出さないためのサイクルに

農民組合「チェトナ・オーガニック(Chetna Organic)」は、2004年に誕生しました。その前の年2003年は遺伝子組み換えの種から作られたコットンが大凶作となり、多くの農家が飢餓に苦しみ、借金による自殺者が多く出た年でした。

インドではもともと在来種によって綿花が育てられていましたが、ある大きな会社が農家たちが持っていた在来種を買収しました。代わりに農家たちは遺伝子組み換えの種を購入し綿花を育て始めましたが、実った作物からとれた種を使っても、芽が出ると自分自身を攻撃するよう遺伝子組み換えがされており、毎年種を買い直さなければならなくなりました。加えて殺虫剤や化学肥料も購入しなければならず借金が増えてしまいます。そして大凶作となった際に、手元には借金と農薬が残り、農薬を飲んで命を絶つ人が出てしまったのです。

この悲しい出来事を繰り返さないようにと、2004年に234軒の農家が「チェトナ・オーガニック(Chetna Organic)」を作りました。いまでは約36,000軒にまで増えています。

種、殺虫剤、化学肥料を毎年買い続けるサイクルは、農家の健康被害、借金、服毒自殺を生んでいました。それがチェトナ・オーガニックのフェアトレードによって、種を自家採取でき、有機農法で農薬にかかる支出を無くし、フェアトレード・プレミアム(商品代金以外に上乗せされる資金で、技術習得や作業場の建築、地域の貯水槽の設置など資金の使い方を民主的に決める)が得られるようになりました。

また、飢餓が発足の背景にあるため、チェトナ・オーガニックでは「飢えのない農業」を目指しています。単一栽培をやめ、多品種を育て、間作をし、儲けではなく食べていける農業を大切にしています。

フェアトレードコットンで児童労働をなくす

一般のコットンの栽培・収穫には多くの子供が働き手になっています。受粉は一日勝負で綿摘みも手作業であるため、人手が必要なのです。インドでは、コットンの労働力の60%がこどもで、約50万人のこどもがコットンの栽培に関わっています。そのうちの70%は女の子で、畑で働く子供の85%は学校に行っていません。受粉作業は7月~8月に、収穫は10月~12月に行われますが、学校に行けない時間が続くことで中退率が高くなってしまっているのです。

インドでは珍しく女性が活躍

農業組合のチェトナ・オーガニックでは、女性が活躍しています。「種祭り」では、農家が各自の特徴を披露しあい、種を交換しています。この種祭りでは、男性優先のインド社会では珍しく女性が積極的に参加しており、栽培などの知識も女性が村の中に広げています。

また、インドのコットンの90%が遺伝子組み換えと言われていますが、オーガニックコットンは非遺伝子組み換えの混在が許されないため、高等教育を受けたスタッフが専門知識をもってその管理監督をする役割を担い、活躍しています。

チェトナ・オーガニックでは、モデル農場をいくつも設けており、実践も踏まえながらオーガニックコットンの栽培ができるようになっています。また、飢餓を回避するための工夫として、食べられる作物とコットンを同時に植える栽培法を教えてもらったり、インドでは良く生えている「ニーム」という薬効のある木を肥料や虫よけに植える支援があったりと、実践を踏まえながら技術や知識を持つスタッフにいつでも相談できる環境があります。

育ったコットンをインドの縫製工場「ラジュ・ラクシュミ」が買い支え「Sisam Organic」の洋服に

チェトナ・オーガニックで作られたオーガニックコットンは、その後国際フェアトレード認証とオーガニック認証を受ける縫製工場「ラジュ・ラクシュミ」が買い支え、洋服にまで仕立てられています。

こうして、国際フェアトレード認証とオーガニック繊維製品であることを証明するOrganic Content Standard認証が付いたSisam Organic(シサムオーガニック)の商品が作られています。どこでどうやって作られたか、作り手が見える洋服はフェアトレードだから出会える特別な物だなと感じました。

フェアトレードを「シサムの朝活」で一緒に学びませんか?

シサム工房では、月1回のペースで卸先様に対して「シサムの朝活toB」をZoomを使いオンラインで実施しています。フェアトレードの商品を仕入れるときやお客様に説明したり、店頭で陳列する際に役立つ、フェアトレードの知識を広げませんか?

前回 2023年3月に開催された「みんなが笑顔になる2 smiles novelty (トゥースマイルズ ノベルティ)編」の参加レポートは以下記事よりご紹介しています。

ご参加にあたっては、シサム工房に直接お問い合わせいただくか、スーパーデリバリーにご入会いただきシサム工房と取引可能な状態となると開催のお知らせが届きますので、参加のお申し込みをお願いいたします。

シサム工房