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服装、持ち物、目線、歩くスピード、入店の様子10のポイント
不況といわれている中でも、売れている店は売れています。売れている店はどうして売れているのかを考えてみてください。販売員はお客さまのどこを見ているのか? お客さまの何を見ているのか? ここでちょっとのぞいてみましょう。お客さまの動きを知ることで、お客さまに対する接し方が大きく変わってきます。お客さまを観察するための10のポイントがここにあります。
[1]どちらの方角から来たのか
お客さまがどちらの方角から来たかを見ると、今のお客さまの気持ちを探ることができます。百貨店であれば、ヤングのエリア、キャリアのエリアと分かれています。どのエリアをご覧になって来たかによって、お客さまのニーズが推測できたりするものです。
また、どこか近隣店舗のショッピングバッグを持っている場合は、「今日はすでにお買物をされていて、おなかがいっぱいかもしれない……。であれば、重たいアイテムではなくインナーなど軽いものやアクセサリー、小物を勧める方がいいかも♪」と、これから接客に入る際の情報収集ができるのです。
特に、近隣の店舗で接客を受けているお客さまが目に入れば、何を見て、何を触ったか……、買ったものがあれば何を買ったのかを、さりげなく見ておくと売れ筋商品を把握することができます。そして、そのお客さまが自店に入ってきた場合には、接客トークの大きなヒントとなります。
[2]お客さまの歩くスピードに注目
お客さまの歩くスピードにも注目しましょう。あなたが買物をしているときを思い出してみてください。例えば「明日パーティがあるから今日中にちょっとドレスっぽく見えるワンピースを買いたいの!」など、探しているものがはっきりしているとき、今日中! というタイムリミットがあるので、急いで何店舗も見たりはしませんか? しかも、目当てのワンピースが置いてありそうな店舗を選んで、その店舗の中でも目当てのテイストのワンピースがありそうな一角をめがけて入店する、なんて動きをすること、ありませんか?
また反対に「今日は何となく見ているだけ?、歩いているだけ?」という場合は、どうでしょう。普段なら興味がないような店にも入ってみたり、入ったら一応、万遍なく店舗の中を歩いたり、「ふーん」などと独り言を言いながら散歩をするようにゆっくりと歩いていたりします。
こんなふうに、お客さまの動きのスピードからも情報収集ができます。そのスピードに合わせた接客がお客さまに喜ばれるということは、ここに書くまでもありませんね。
[3]持ち物、着こなしから連想する
お客さまの持ち物からも情報を取ることができます。あなたが接客をしているとき、例えば11時台にメークも薄めでカジュアルな服装でご来店のお客さまは、お仕事や学校が休みの可能性が高くありませんか?
また、14時くらいにスーツ姿でご来店となればお仕事中でいらっしゃることが、17時ごろにお子さんとご一緒であれば、お子さんのお迎えから帰る途中にお寄りくださっていることが予測できます。お客さまが持っているバッグや服のブランドが分かれば、その価格からどのくらいファッションにお金を使われるのかが、また色やテイストからも好みを探ることができます。
というように、時間帯と服装、持ち物から、お客さまの生活全般や趣味・嗜好を推測することができるのです。さらに売れるスタッフは、お客さまのバッグや服装からクロゼットに入っていそうなものを連想し、自店の商品ならどれを勧めたらいいかまでを3秒ほどで考え終えています。
[4]何を見ながら自店に近づいているか
自店のどこを見て入ってこられているかも、その後の接客を進める上で重要なポイントとなります。VP(ビジュアルプレゼンテーション:ウインドーや一番目立つボディなど)である場合もありますし、PP(ポイント・オブ・プレゼンテーション:壁面の上部やテーブル什器の上面など)のバッグや靴のコーディネートなどを見て入店される場合もあります。
これから自店に近づいてこられるお客さまを、気が付かれないようにそっと観察してみましょう。目線の先に何があるか、アイテム、色、テイストなど、潜在的に興味のあるものであることは間違ないはずです。全体を眺めて、注目したいVP、PPに目を向け、その中で興味を持った個所に近づいてきますから、大まかに店舗の右半分か左半分か、上の方か下の方かなど、どの辺りに注目し、さらにどの商品に目を付けられたかなどを、見ないようでよく見ておく必要があります。
[5]入口で何を見ているかチェック
お客さまが入り口に差し掛かったとき、どこを見ているかも大切です。もし、店舗全体を眺めながら、立ち止まるか今にも立ち止まりそうなほどゆっくりと入店される場合には、特に急いで探しているものがあるわけではなく、散歩をするように店内を眺める可能性があります。
それとは逆に、棚かハンギングか特定の什器を見ながら入店している場合、その什器に置いてある商品に何らか興味がある場合があります。さらには、店舗内のある一角を目指して真っすぐに入店する場合、以前に一度来店されていて目を付けている商品があるか、つい先ほど見て記憶した商品を目がけて入店している場合があります。
いずれのケースも、特に入り口が広い場合には、幾つかのVP、PPを見てから入店することがあります。その中で入店に至った、その入り口に陳列されているものが「入って見てみよう」という直接の要因になっている可能性が高いので、その商品が何なのかをチェックしておく必要があります
[6]店舗のどこを通ったか観察する
お買い上げのあったお客さまには「ありがとうございます」と言うのは当然です。しかし、お買い上げのなかったお客さまも多くの「情報」を落としていってくれますから、同じく「ありがとうございます」とお礼をしたいものです。ではお客さまが残していった「情報」とは一体何かというと「店内のどこが“生きていて”どこが“眠っているか”」を見極めるための情報なのです。
あなたの店に、お客さまがよく見る場所はありますか? その場所を活用し切れていますか?また、全くお客さまが通らない、見ない場所はありませんか? その場所を活用しようと工夫していますか?お勧めしたいのは、店舗の図面を書いてカウンターに置いておき、お客さまが通ったルートをぐるぐるとなぞっておくことです。すると、お客さまが歩いている場所と歩いていない場所がよく分かります。お客さまの動きを観察する癖を付けることにもなり、場所の活用にも役立ちます。
[7]何を触ったかをよく見ておく
店内には、各所にアウターがあったり、ワンピースがあったり、シャツがあったり。またベーシックな色もあれば、ポイントとなるような強い色も混在しています。そこで、お客さまの手の動きをよく見てみましょう。店内を歩きながら、何かしら触る動作をします。何カ所か触ったら、その触ったものを覚えておきましょう。
例えば入り口にあるカットソーを触って、また店内の陳列でもカットソーを触ったという場合、お客さまは潜在的にカットソーが気になっているといえるでしょう。ニットでも、ボトムスでも同じです。また、棚の商品の中でピンクを触られて別の場所のハンギングでもピンクを触っていたら、色の中でも特にピンクが気になっていると察して、接客に入ってからは色についてトークをします。
お客さまが触ったものをよく見て、潜在的な興味がどこにあるかを探っておくと、ぐっとくる接客トークができます。
[8]何を持ち上げたか注意する
お客さまは店内を見ながら幾つかの商品を触っていますが、触っただけではなく持ち上げたときには注意が必要です。「見る→触る→持ち上げる」というように3つのステップを踏んでいるということは、その商品について大いに興味があるということです。
ハンギングであれば、見えにくくなっている身頃がどうなっているか見てみたい=(イコール)興味がある、ということですし、畳み商品を持ち上げれば袖や裾がどうなっているのか、丈はどの程度なのか見てみたい=興味がある、といえます。お客さまが商品を持ち上げた上で、どこを見ているのか、何に対して注目しているのかをよく見ておきましょう。そのとき、すかさず接客に入るのではなく、お客さまが何に注目して、確認して、どう思っているのかまで観察してから、声を掛けても遅くはありません。
[9]鏡を探しているサインを見逃すな
商品を持ち上げたり触った状態で、お客さまが長い間じっとしている場合は、販売員が声を掛けてきても驚かないタイミングです。お客さまも接客をされたくない場合には、商品を触ったり持ち上げたりはしないものです。ましてや、触り続けながらじっと考えているときは「気が付いてほしいな」というサインと受け取ってもよいでしょう。
さらに、商品を手にしながら辺りを見回していたら「鏡はどこかな」「(販売員に)気が付いてほしいな」というサインです。ここでわれわれ販売員が気が付かないと、接客が行き届かない店として記憶され、売り逃すだけではなく、お客さまの気持ちが遠のいていってしまいます。
次回の来店につなげるためにも、プロの販売員は一人のお客さまに集中しながらも、360度感じ取りながらのアクションをしています。遠くても「あなたに気が付いていますよ」という視線を送りながら背伸びをしてみせるなど、アイコンタクトを送りましょう。
[10]販売員を探している動きを見逃さない
お客さまが商品を手にしながら、明らかに店内を見渡す動きをしたら、私たち販売員を探していると思って間違いありません。この状態が長く続くほど「気が利かない販売員」という認識が強くなります。一秒でも早く「ハイ(ニコ)」と近づき、「いかがしましょうか」と実際に音声で言ってもいいですし、「いかがいたしましょうか」と目で言うのも有効です。
この状態のお客さまは何らかのニーズをすでに持っています。例えば「サイズ展開はあるのか」「色違いはあるのか」「ちょっと着てみたいかも……」などを準備しているので、こちらから「試着ができます」「サイズは……」「色は……」と言う必要はなく、お客さまの方から発せられる言葉を2秒ほど待つとベストです。
お客さまがサイズについて聞きたいのに、いきなり試着を勧めても圧迫感がありますし、試着したいのに色展開について言われても、別にどちらでもよいことだったりします。こういう場合は、何でもこちらから発しないこともポイントになります。
[記事提供元]ファッション専門店の20~30歳代ショップスタッフに支持されている月刊総合専門誌「ファッション販売」
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