うなずき+アイコンタクトで上手なニーズの探り方

経験上、新規のお客さまが再来店するか否かは初回の接客で決まる。自分も買物や食事をしたとき、また行くかどうかは初回の印象で決めていることが多い。さらに、次回行ったときにお店のスタッフが自分のことをどれだけ覚えていてくれるかどうか、を判断基準としている。「この前買ったもの」「サイズ」「色の好み」……。それだけ、販売員にとって情報収集は不可欠なのだ。初回の接客でいかに多くの顧客情報を聞き出すか、実践的なヒントをご紹介する。

接客時間を意図的に長くする

新規客への接客で一番重要なことは、まるでVIP客に接するかのようにじっくり丁寧に接客することだ。何回も買いに来てくれているお客さまへの接客は短く、初めてのお客さまへの接客はできるだけ長く。一見逆のようだが、これが顧客リピート率の高い販売員の接客である。
もちろん、だらだらやるわけではない。初回の接客では好みのスタイル、色、形、これだけは着ない!といった情報を接客の中で自然に聞き出していく。時間をかけてゆっくりと聞き出す必要がある。

長く接客したからといって売れる保証はない!3時間も接客して盛り上がってきたところで「ありがとうございます。今日は何時までやってますか?」と言われてしまうこともある。この言葉が出たら、早めに切り上げよう。残念だけど戻って来ない、こういう人は……。これじゃあ、損するだけじゃないか!と思わないでください。この長時間接客にうま~くハマって、幾つか商品を買ってくれたら、必ずリピートします。

2回目の接客では、初回で得た情報を基に適切な商品を勧める。これによって「あ、ちゃんと、この人私のことを覚えているんだな」と思わせることができる(3時間も接客してると嫌でも覚えてしまうのだ)。その後3回、4回と会うたびに、そのお客さまの好みが完全に分かってくるのでだんだんと接客時間が短くなっていく。ここまでくれば楽です。試着もしないで買うようになってくる。

多くを語らず……情報を得る!

では、いったいどうやってお客さまの好みのスタイルや色などを聞き出すのか?答えは、見せて、広げて、着させて……反応を見る!のが一番早いし分かりやすい。

どんなに心を許しても、初めて会った販売員に何もかも打ち明けることはしない。逆の立場で考えても、言葉であれこれ言われても分からない!しまいには面倒くさいと思ってしまう。ペース配分を考えて相手の反応を見ながら、いろいろなものを見せてみることが大事。

接客の中で自然に聞き出していくには、実際に商品を見せながらリアルな反応を見る。言葉で「ちょっと派手めのものでも大丈夫ですか?」や「細身のものはお好きですか?」と聞くより、実際に派手なものを持ってきて目の前で見せて、広げて、着させた方がお客さまの正直な反応が出る。

例えば、派手なプリント柄のシャツを持ってきただけで、拒否反応を起こす人、触ってみる人、着てみる人と、さまざまな反応が出る。さらに、いきなり持ってきて見せた方がより正直な反応が観察できる。自分は話さなくても、お客さまの方が「あー、そういうのは着ないよ!」「違う違う!」「もっと抑えめの柄!」など、たくさんの情報を教えてくれる。本当の情報を得るには多くを語らず。

逆のアイテムで新たな情報を引き出す

お客さまの好みに合った服を選んで、それを売るのは当たり前である。もう一歩進んだ販売員になるには、新たな情報を引き出すのだ。新たな情報を得るには、やはり自分から仕掛けていくしかない。まだ、何かを隠しているはずだと……。

そう、このお客さまはきっと春にはピンクのコットンセーターを着るんだ。ピンクのセーターを着て、白シャツ、白パンツ。「なんてさわやかなんだ。よし、この入ってきたばかりのピンクのセーターを……」と勝手に想像をして勧めてみると、意外な反応があって面白い。お客さまの新たな情報を手に入れることができる。一見「これは、着ないだろう!?」というようなものでも、案外いけちゃったりする。「実はピンク、前から気になっていたんです」とか。

これがきっかけで、今まで着なかったものを着るようになったりする。でも、こうやって少しずつ選択の範囲が広がっていく。
自分じゃ選ばないものや、前から気になってはいたけど自分からはちょっと言いにくいし……という、心の奥底に潜んでいた情報を販売員によって引き出される瞬間である。こういった新しい情報を引き出してあげると、リピート率もさらに上がる。

焦点を絞り情報をまとめてあげる

時として、こちらが意図としなくても接客が長~くなってしまうことがある。それは、1点しか買わないのにえらく長い時間悩むヤツ!いえ、お客さま。いますよね~。私は、こういうタイプは大の苦手です。好きな方も少ないと思いますが、こういったタイプのお客さまの中にも、実は将来VIP客になる可能性を秘めている人がいます(何万分の1の確率ですが)。

でも、よーく考えてみると、長時間悩むということは、販売員が適切なアドバイスをしていないから悩むのだ。焦点を絞りきれていない。あれもこれも見せ過ぎて、自分もお客さまもハマってしまう。悩みの渦にハマらないためには、聞き出した情報を整理する必要がある。

「あなたは、黒い靴しか履かないとおっしゃっていたので、この黒の靴下を買うべきなんです!」といった、黒い靴下を買う理由を教えてあげればよい。お客さまの中で「あ、そういえばそうだな!靴下ごときに3時間も悩んでバカだったな。この店員さんはいいこと言ってくれたな。また靴下を買うときはここに来よう!」……となるのです。

世間話やプライベート話に流されない!

顧客情報を集めるからといって、何でもかんでも聞く必要はない。あくまで、店で商品を売るための情報が必要なだけだ。話好きの人に当たってしまうと、延々とプライベートの話を聞かされて「じゃ、また来ます!」と笑顔で帰られてしまうことがある。お客さまからプライベートな話を持ちかけられても無視……はしないけど、商品の話へと軌道修正をする。プライベートや世間話で2時間も3時間も接客して情報を集めるのではない。こういった話の中で、売上げにつながる情報はほとんど出てこない。

お客さまも商品の話が出てこないので、リラックスはするけど購買意欲は下がる。逆に「今度、ゴルフに行くから、そのときに着る服が欲しい」「今度旅行に行くからカジュアルの……」など商品につながる話はどんどん吸収する。その話の先に商品が見えているかを、しっかり聞き分けることが大切だ。ここが微妙なとこだけど、間違えると長時間、世間話をして終わり……ということになりかねないのでご注意を!

桜が散ってしまう前にやるべきこと

最後に、聞き出した情報を顧客カードにまとめて書いておくと同時に、お礼の手紙やメールを送ることを忘れずに。たくさんの情報を聞き出して、これから顧客になってもらえるはずだ!という実感だけで満足していると落とし穴がある。それは、「忘れられる……」ということだ。

こっちは、必死で情報を得ようとしているので忘れない。しかし、お客さまは必死で販売員の情報を得ようとはしていない。本当によくある話だけど、接客で盛り上がって顧客カードを書いても、次に手紙やDMが来るのが半年後のセールのとき……しかも、担当者の名前も書いていないことがある。「先日はお買い上げありがとうございました。

お買い得商品を取りそろえてお待ちしております。○○ショップスタッフ一同」なんて書いてあっても、とっくに販売員のことなど忘れてしまっている。たくさんの情報を得たのであれば、今度は自分の情報をお客さまへ、お礼状を添えて提供するべきだ(情報といっても名前を覚えてもらえればそれでいい)。

●お礼の言葉
●担当者の名前

簡単な文章で構わない。重要なのは送るスピードだ。桜が散ってしまう前に……。

 

 

[記事提供元]ファッション専門店の20~30歳代ショップスタッフに支持されている月刊総合専門誌「ファッション販売」

 

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