上質で洗練されたデザインが目を引く海外のエシカルなアイテムを数多く取り扱う出展企業の「ダイショートレーディング」。今回は代表取締役の氏家さんにダイショートレーディングの会社のことやエシカルな商品を取り扱っているその思いや考えをお聞きしました。

設立38年を迎える「ダイショートレーディング」

──今日はよろしくお願いいたします。最初にダイショートレーディングの会社のことを教えてください。

氏家さん:ダイショートレーディングは古くから海外で愛され続けるナチュラルな製品や原料までこだわったオーガニック製品、サスティナブルで地球にやさしい製品など環境に配慮しながらもライフスタイルを豊かにしてくれる製品を扱っています。ターゲットにしているのは主に30~50代のファミリー層ですが、ブランド・アイテムによっては20代の方にも男女問わず手に取っていただいています。

──ありがとうございます。展開している商品はどちらもスタイリッシュで環境にも配慮しているブランドというイメージですが、もともと海外ブランドを輸入する事業でスタートした会社なのですか?

氏家さん:いえ、もともとは私の父が40年ほど前に始めた会社で、創業当時はプラスチックの原料やその原料を成型する機械を中国や東南アジアに輸出する事業をしていました。当時は日本のプラスチックは非常に質が良いと言われていて、リサイクルしたものでさえ品質が評価されるほど外国では需要があったんです。その後2003年頃まで輸出の事業を続けていましたが、為替の問題や時代の変化に対応していこうと新たな事業を始めたのですが、それが海外で買い付けたイギリスなどアンティークを販売する事業で、喫茶を併設したお店を開店しました。

──プラスチックの輸出から、今度は海外から仕入れた商品の販売に変わったんですね。意外です。

氏家さん:実は、私の祖父は喫茶店を営んでいたので、喫茶店を併設したアンティークショップというのは父としては選択肢としてあったんだと思います。ちなみに、いまのダイショートレーディングの事務所は、1年ほど前にリニューアルしまして、自社で取り扱う海外ブランドの商品の小売とコーヒースタンドを兼ねた事務所になっています。

フランス伝統のマルセイユ石けんの取扱いが輸入事業のきっかけに

──プラスチック関連の輸出から始まり、アンティークショップと事業を増やしていかれたということですが、現在のダイショートレーディングになったのはいつ頃ですか?

氏家さん:父が喫茶店兼アンティークショップを始めてまもなく、2001年頃に知人からフランスの「マルセイユ石けん」の輸入をすすめられたんです。当時は会社のスタッフを含めマルセイユ石けんのことは知らなかったのですが、伝統的な製法で作られるこだわりや厳しい基準、歴史や生産背景を知るほどに感銘を受け、取り扱いを始めたんです。

これまでは、海外に買い付けに行ってアンティーク商品を販売するという小規模な商売だったので、事業の拡大も見据えて、マルセイユ石けんの輸入卸をスタートしました。これがインポートアイテムを展開する現在のダイショートレーディングの原点です。

──今のダイショートレーディングさんの原点は、定番人気のマルセイユ石けんなんですね。

氏家さん:原点となるマルセイユ石けんは、フランスのサボネリー・デュ・ミディ社が作るオリーブ石鹸です。マルセイユ石けんは固形石けんの発祥とも言われており、化学成分が普及する前から人々の生活に根付き、世界中でいまも愛用され続けています。私も長年愛用しています。

氏家さん:マルセイユ石けんの取り扱いを始めたころ、日本の小売業大手の雑貨売り場では海外のめずらしい商品が求められていて、時代の流れにも沿ったスタートでありました。

──原点はフランスのマルセイユ石けんですが、その次はどのアイテムを扱ったんですか?

氏家さん:その後、より価格を抑えた品質のよい石けんを求めてたどり着いたのが、140年以上の歴史あるギリシャの老舗化粧品メーカーが手掛ける「PAPOUTSANIS(パポタニス)」の石けんでした。

氏家さん:1個350円(税抜)という手ごろな価格なのですが、パポタニスのピュアオリーブオイルソープは天然成分100%の無添加オリーブソープで、ギリシャ産のこだわりのオリーブオイルのみを85%以上も贅沢に配合しています。フランスのマルセイユ石けんとギリシャの石けんがエシカル、サスティナブルな商品の取り扱いの原点でもあり、いまもなお人気の超定番商品として売れ続けています。

成分のみならず見た目も魅力的なダイショートレーディングの商品

──現在は石けん以外にも豊富なアイテム、カテゴリーを展開されています。どれもエシカルやサスティナブルですが、具体的な基準を設けて商品やブランドを選定されているのでしょうか?

氏家さん:商品・ブランドの選定の時、「昔からある、多くの人々に長く愛されてきたもの」に惹かれます。何百年も長く続いている商品は必然的に化学的な原料が含まれていないので、結果的に環境への負荷が少ないものに絞られているんです。それにヨーロッパの人々は古いものを掘り起こし、もともとあるものをよりよく、かっこよくするリブランディングがうまいなと感心させられます。

──なるほど。「おしゃれでエシカルな物」というのが先行的に基準にあるのかと思っていたのですが、伝統的であることが一つの判断基準になっているんですね。

氏家さん:伝統を大切にした製法や世代を超えて愛され続ける商品を選んだ結果として、エシカル・サスティナブルな要素が備わっており、長年生活になじんでいたブランドのデザイン性もまた真似できない見た目の魅力があると言います。人々に長く愛用されていること自体が商品の魅力として説得力になっていると思うんです。

──「歴史=実績」というのは確かに印ですね。ダイショートレーディングさんで歴史が魅力となっている商品の典型と言えるのは、やはりマルセイユ石けんでしょうか?

氏家さん:はい。そうですね。マルセイユ石けんはフランスのサボネリー・デュ・ミディ社の「LA CORVETTE(ラ・コルベット)」というブランドです。

2010年に家族経営から大手企業に売却され、経営体制が変わったことを機に「LA CORVETTE(ラ・コルベット)」を見事にリブランディングし復活させました。「古きよきものを掘り起こして、現代でかっこよくさせる」というまさにリブランディングの良き事例です。その後ブランド側がアイテムが続々と増やしていったので、ダイショートレーディングでもアイテムを増やして展開することになりました。

「LA CORVETTE(ラ・コルベット)」のマルセイユ石けんは、地中海産のオリーブオイルを72%以上たっぷり含んでおり、合成成分を一切不使用。赤ちゃんや敏感肌の方も洗顔にも使え、排水の生分解性もあり環境にもやさしいアイテムです。パッケージのデザイン性も高く、イチオシの商品です。

──ほかにも人気の商品を教えてください。

氏家さん:歴史は長くないですが、地元の海を守るというメッセージ性が魅力になっているブランド「NOOSA BASICS(ヌーサ・ベーシックス)」が人気です。

──ヌーサ・ベーシックスは、どういったきっかけで取り扱いを始めたんですか?

氏家さん:2020年頃、コロナ禍で展示会が中止になり海外渡航も難しく新たなブランドとの出会いの場が減る厳しい時期に、「なんとしてでも良いブランドを見つけたい」と探しだそうとして見つけたのがヌーサ・ベーシックスでした。「NOOSA BASICS(ヌーサ・ベーシックス)」はオーストラリア東部の小さな町「ヌーサ」にある薬局店がつくった海を大切にするブランドで、植物性由来の成分でヴィーガンの商品です。なるべくプラスチックを使用せず、生分解性のあるパッケージを採用したりと海洋浄化活動を積極的にサポートしています。

「海を大事にすることは、海に生きる動物たちを守り、ゆくゆくは私たち人間も守ることになる」という考えは、海に囲まれた島国に済む日本人にとっても親しみもあり、分かりやすいブランドメッセージであり、それが人気につながっていると感じます。

──ダイショートレーディングさんの取り扱いカテゴリーが少しずつ広がっていると感じています。近年だと、「The Tartan Blanket Co.(ザ・タータン・ブランケット・コー)」は化粧品や日用品ではないアイテムで展示会で目を引きました。

氏家さん:大阪市内の百貨店に直営店を出していた際に、お客様のニーズに合わせて商品の展開を広げたいと考え取り扱いを始めたのがこの「The Tartan Blanket Co.(ザ・タータン・ブランケット・コー)」です。

氏家さん:スコットランド生まれのブランケットブランドで、伝統的なタータンチェックをいかしたデザイン性のあるブランドです。サステナブルなブランドで、衣服で使用されたウールをリサイクルし、再生繊維とブレンドすることで柔らかく耐久性のあるブランケットになっています。年間収益の2%を豊かな自然を維持する慈善団体と最も困窮している人々を支援する慈善団体に寄付しているブランドです。

カテゴリーにこだわらず、ライフスタイルを豊かにする製品を提案し続けたい

──マルセイユ石けんから始まり、20年に渡ってエシカル・サスティナブルな商品を扱っていますが、お客様や世の中の反応にどんな変化がありましたか?

氏家さん:約20年前のマルセイユ石けんのキャッチコピーは「私にも地球にもやさしい」でした。そのころは「地球にやさしい」という言葉に必要性を感じてもらえないなと感じていました。でも今は環境に良いものが当たり前。取引先の間ではダイショートレーディングが扱っているようなエシカルサスティナブルな商品が当然のように求められている時代になりました。逆に環境に良いだけでは他の商品に埋もれてしまいます。だからこそ、見た目も洗練されたものであり、エシカルなメッセージ性もある商品を見つけだすことを大切にしていますね。

消費者の間でも環境問題を身近に感じ、何とかしたいと思う人も増えているように感じます。うちの商品は生活に密着したアイテムなので、環境に配慮した行動を気軽に起こせるアイテムばかりです。そういった方々のライフスタイルに寄り添っていけると思います。

──どの商品もエシカルであり、とっても洗練されたデザイン性も魅力のある商品であるのがダイショートレーディングさんの強みですね。

氏家さん:実はお取引先様に、ダイショートレーディングさんのカテゴリーに縛られない自由なアイテム展開は見ていて楽しいと言ってもらったことがあります。アンティークショップをしていたころ父の海外仕入れに同行したり、こどもの頃に海外旅行に行った時に「かっこいいな」と思ったものは、いまの自分の商品選びの土台になっていると思います。自分の感性を生かしてセレクトしているので、それを良いと言ってもらえたのはうれしいです。

──最後に今後の展開について教えてください。

氏家さん:さきほど商品のカテゴリーが広がっていると話がありましたが、バッグやアクセサリー、コーヒーやドレッシングなども扱っています。柱になっているのはマルセイユ石けんをはじめとする化粧品ですが、ライフスタイルを豊かにする商品であれば、お取引先様や市場の状況を見ながらカテゴリーを絞らずに自由に必要なアイテムを展開に挑戦していきたいと思っています。

──今後の展開も楽しみにしています!このたびは取材にご協力いただきありがとうございました

ダイショートレーディング

自社の事務所兼店舗では、オーストラリアのオーガニックコーヒー「Margaret River Roasting Co.」を提供しており、カテゴリーに縛られないお店を自らで体現されています。ぜひ、商品仕入れやライフスタイル提案の売り場づくりの参考に事務所兼店舗に行ってみてはいかがでしょうか。