柑橘系の香りといえば思い浮かぶ「ゆず」。その爽やかな香りは日本料理を通じて海外でも認知度が上がっています。日本各地のご当地の材料に注目し、自然由来のナチュラルな処方でハンドクリームやバスパウダーなどのスキンケアアイテムやアロマのアイテムを展開しているのが今回インタビューした「デイリーアロマジャパン」です。

日本国産の原料を取り入れ日本国内で製造し、自然由来の成分でも安定した品質で安心して使えるよう品質にこだわったアイテムがそろいます。今回は、営業企画部の木部さんと商品企画を担当する小倉さんに商品誕生の背景などをお聞きしました。

営業企画部の木部さん

アロマから始まり40年ほどつづく香りの企業「デイリーアロマジャパン」

──さっそくですが、「デイリーアロマジャパン」の会社のスタートについて教えてください。

木部さん:当社の始まりは、1982年に設立した「美健」というアロマの会社です。2018年に現在の「デイリーアロマジャパン」に事業継承しました。香りのアイテムを作って40年ほどの会社です。

──創業当時はどういったアイテムを展開されていたんですか?

木部さん:最初はポプリやキャンドルなどを作っていたと聞いています。その後時代の変化とともにアイテムを増やし、日本ではじめてホームフレグランス部門で世界的なオーガニック認証「ECOCERT(エコサート)」を取得しました。エッセンシャルオイルの「ラ・フルール」というブランドです。

当社は創業時から品質の良さを大切にしてきました。エステサロンでエスティシャンの方が使うキャリアオイルなど、プロ向けのアイテムも展開しています。

──プロ向けのアイテムも展開されているんですね。

オーガニック認証ECOCERTを取得した「ラ・フルール」

10年つづくロングセラー「高知県産ゆず」シリーズは年間の定番人気

──スーパーデリバリーでも人気の「高知県産ゆず」シリーズですが、ハンドクリームを始め、入浴剤なやボディースクラブなども人気ですよね。もともとはアロマの会社とのことですが、ハンドクリームは最近始まったアイテムですか?

木部さん:実は、高知県産ゆずのシリーズは10年ほど続くロングセラー商品でなんです。日本では冬至の時期にゆず湯には入る風習があるので、その時期に合わせて11月~12月頃に期間限定の香りアイテムとしてゆず商品が店頭に並びますが、当社では年間通して販売しています。

[画像商品]高知県産ゆず ハンドクリーム 75g メーカー希望小売価格(税抜)¥1,300

──それだけ人気のシリーズなんですね!

木部さん:中国のバイヤー様からも引き合いがあり、おかげさまで日本国内だけ海外でも人気です。日本へのインバウンド需要が高まりを受けて、日本料理や日本文化の広がるとともに海外のお客様にも興味をもっていただいています。ゆずは日本独特の植物のようで海外には無いようなんです。爽やかな香りは海外の方にも評判で、インバウンド対応のお土産アイテムとしても好評です。

「高知県産ゆず」シリーズを始める前から「国産柑橘ハンドクリーム」のシリーズがあり、こちらも好評です。自然由来の成分97%で動物実験を行わず、動物由来の原材料や成分が入っていないヴィーガン処方のハンドクリームです。品質にこだわったものづくりをしてきていますが、ここ最近はとくに海外の取引先様から「動物実験していないか?」といった問い合わせもあり、改めて成分や製造過程をチェックして、エシカルな要素の訴求も什器等で分かりやすくしています。

[画像商品]国産柑橘ハンドクリーム

──実際に「高知県産ゆず」シリーズのハンドクリームを塗ってみたのですが、新鮮なユズの香りがふわっと広がりますね。思わず何度も香りをかぎたくなります。

木部さん:ありがとうございます。こちらのゆずの香りは四万十川市を中心に、高知県内で収穫されたゆずを使用しています。

──この香りは廃棄されたユズの皮から抽出されたものなんですよね?

木部さん:はい。ゆず農家さんたちは収穫したゆずから果肉や果汁を絞り出してゆずジュースやゆずジャムなどに加工しています。そこで余った果皮は廃棄されるのですが、それを使ってアップサイクルしているのが「高知県産ゆず」シリーズです。シリーズを開始した10年前の当初から、廃棄されるユズの果皮を譲っていただき、ユズの皮から香りを抽出しています。

絞った後のゆずはそのまま産業廃棄物として焼却されるか堆肥として使用します。ただ、堆肥の量が多すぎると、土壌のバランスが悪くなってしまうことが問題視されていました。そこで少しでも自然の恵みを活用したいと、廃棄されたゆずの果皮を使いたいと考えました。

香りの元となる精油の抽出方法は圧搾ではなく、水蒸気蒸留法をとっています。圧搾で抽出すると日光によって色素沈着や炎症といった皮膚への悪影響を及ぼす光毒性を含んでしまいます。手間と時間はかかりますが、水蒸気蒸留法で抽出することで香りの良さはそのまま、光毒性を含まないエッセンシャルオイルを抽出することができるので、ハンドクリームやフェイスマスクといった商品展開に適した素材になります。

ちなみに「高知県産ゆず」シリーズは、水蒸気蒸留法でエッセンシャルオイルを取り出すときに高知県の四万十川の水を使用しています。国内原料・国内製造で品質管理も徹底したものづくりしている代表格のアイテムがこのシリーズになります。

日本産ワイン「富士山ワイナリー」で出た搾りかすをアップサイクルした新作「富士山ぶどう」シリーズ

──「高知県産ゆず」シリーズ以外にも、アップサイクルな商品があるとお聞きしました。

木部さん:2024年8月から販売を開始した「富士山ぶどう」シリーズです。

[画像商品]富士山ぶどうシリーズ

──「富士山ぶどう」シリーズはどういったきかっけで企画されたんですか?

小倉さん:社内でぶどうを使ったアイテムを作ってみたいと声が上がっていた時に、食品系の展示会で「富士山ワイナリー」と出会い、商品化に至りました。

木部さん:「富士山ワイナリー」さんは朝霧高原にあるんですが、当社の社員で訪問した際に見た富士山を目の前にするその景色は圧巻でした。富士山ワイナリーさんでは世界基準で甲州種のワインを作っており、自社のブドウ畑でサステナブルな農法での栽培をされています。

──こちらの「富士山ぶどう」シリーズですが、どの部分をアップサイクルして作られているんでしょうか?

小倉さん:ワインを作るためにぶどうの果汁を絞りますが、その時50%ほどの果汁しか絞っていません。皮の苦みが届かないようにあえて軽く絞っているんです。こうして残ったものを「ワインパミス」と呼び、年間10,000トン近くが廃棄されています。堆肥に再利用することもできますが、ワインパミスにはまだまだ栄養分が残っています。この果汁を絞ったあとの残りの果汁、果肉、茎、葉っぱなどを一旦冷凍して譲り受け、そこからエキスを抽出しているんです。

抽出したエキスから、デイリーアロマジャパン独自の美容成分「甲州ブドウエキスB」を保湿成分として商品に配合しています。香りはみずみずしいマスカットの香りで甘すぎずさっぱりとしています。

──こちらの富士山ぶどうのハンドクリームもみずみずしいぶどうをイメージするとてもいい香りですね。お話のメモをとるためにペンを握っていますが、べたつきもあまり気にならないですね。

小倉さん:ありがとうございます。香りはもちろんですが、テクスチャーや使用感の良さも非常にこだわりを持っています。ゆずやぶどうなどは自然由来の成分なので毎回状態が異なります。ですので、生産ロットごとに試験を行い、香りの出方や水分量などを細かく調整しています。

木部さん:当社は国内製造で商品を作っています。海外で製造したほうがコストを抑えることができますが、それ以上にお客様に信頼される品質を保つために国内製造で目の行き届く商品づくりを大切にしています。その部分が店頭でお客様に商品を説明する際の魅力として伝わればうれしいですね。

ご当地の香りのアイテムで日本各地の地域の魅力を伝えたい

──高知県のゆずに、富士山のぶどう。次の新作はどういったものですか?

木部さん:最新作は栃木県芳賀郡茂木町にある観光いちご農園「美土里農園」さんのいちごから美容成分「栃木イチゴ果実エキスB」を独自抽出し、保湿成分として活用した「ichigo(イチゴ)」シリーズを販売します。

──こちらも例にもれず、エシカルな側面があるんでしょうか?

木部さん:はい。「ichigo(イチゴ)」シリーズでは、完熟し過ぎたいちごや大きすぎたり小さすぎる規格外のいちごを活用しています。実は年間3トンものイチゴが廃棄されているんです。少しでも自然の恵みを使い切りたいという思いです。

今後もこういった廃棄やロスなどの問題解決の一助になる取り組みを実践しながら、日本各地の農作物の魅力を国内外のお客様に知ってもらいたいと思っています。

ご当地に関連したアイテムを展開していると、その近隣の地域のお店が商品を仕入れてくださることが増えました。新しい販路を広げられていることは企業としてうれしいですし、地元の活性化につながっているんだと思うのはもっとうれしいです。

自然の恵みを生かした国内原料を使っているメーカーとして、農家さんの困りごとや気候変動による農作物への影響などには気になるところです。今後も農家さんのもとに直接伺って現場を見たりお話をきいたりすることで、環境や社会の問題を知り、解決につながるような商品開発や販売ができればと思っています。

──今後もご当地の魅力を発信するとともに、地域や農家さんが抱える問題も同時に解決する。香りとの出会いと楽しみながら、社会の問題を知り、解決につながるみんなにとってもうれしい商品ですね。今後の新作も楽しみです。本日はお話をお聞かせいただきありがとうございました。

デイリーアロマジャパン