販売職の楽しさ、皆さんは何だと思いますか?売上げをつくること?顧客ができること?たくさんの理由の中で、私は見知らぬ人とオリジナルの関係をつくっていけることだと思います。年齢、職業、国籍など多種多様な人との出会いがあり、それをきっかけにしてまるで糸を紡いで美しい織物に仕立てていくように、忘れられないような、あるいは特別な人間関係をつくり上げていくこと。これですよ、これ!
でも、多くの苦しいことや嫌なこともあるのが現実。仕事の醍醐味を味わえないままの人もいるでしょう。そこで、こうした逆境を乗り越えて接客を楽しむための秘策を伝授します。
目次
1.「接客を楽しむ」とあなたが決める
「お客さまはあなた以上に接客を楽しんでいることはない」といっても過言ではありません。あなたが接客ってさほど楽しくもないし、面白くもないと感じていたら、お客さまもそう感じます。この気持ちは不思議ときっちり伝わります。
あなたが楽しもうという姿勢で取り組むだけで、あーら不思議!これまた伝わるのです。例えば「お客さまと良い時間を過ごそう」「お客さまに笑顔で帰っていただこう」「お客さまの役に立とう」など、言葉にするとそんな思いを必ず毎朝心に誓い、さらにアプローチをする前にも口に出してから接客に臨むのです。
そう、自分で「ポジティブポジション」へのスイッチを入れるのです。毎日、それを実行してみてください。いつの間にかそれが習慣になり、今よりはるかに接客を楽しめるようになります。
2.女優として演じきる
あなたは毎日、女優として売場にいますか?女優として演じることは、お客さま個々に対してカスタマイズした接客をすることです。例えば話すスピード、口調、表現の仕方、姿勢などを変化させる–これを完ぺきに実行するのです。
私はセミナーで受講生に、隣同士でいつもの自分の呼吸や口調を変えて会話をするという、一見簡単そうな作業をしていただくことがあります。その結果は、自分の話し方や表情などの変化を妙に意識してしまい、相手の話の内容はあまり聞けていない人が多いのです。これは演じ切れていないからです。話すスピード一つでも調節できるようになると、自分の意識をコントロールできるようになったと感じ、ちょっと大げさですが自由と自信が手に入ったように感じるのです。
あなたがお手本にしたい人がいるのなら、一挙手一投足までも、その人以上に演じ切ってみるのです。あなたが目指すのはどなたでしょうか?
3.小さくてもいいからゴールを持つ
「○○をしたい!」という思いは大きくモチベーションに関係してきます。販売はややもすれば慣れやすい仕事です。仕事に慣れないためには、毎日小さい(もちろん大きくてもOK)ゴールを設定し、今自分が行っていることはそのゴール達成にふさわしいかどうかを考える癖をつけるのです。
商品知識や店舗運営の計数を毎日一つずつ覚えるのもいいし、英単語でもいいでしょう。いいですか、今のまま何も変化しなくても果たして仕事が面白くなるか、よく考えてみましょう。
4.「感じる心」を養う
私たちが持っている五感、特に「見る」「聞く」「感じる」を十分に養いましょう。まずは、今まで以上にお客さまをよく見ることからです。あなたは苦手なタイプのお客さまが来店されたとき、顧客の方と同じように見ていますか?そう、あのくらい丁寧にです。案外、すぐに見るのをやめていませんか?私たちは情報の約80%を視覚から得ているといわれています。
それなのにすぐに目をそらしてしまっていて、そのお客さまをきちんと把握できるのでしょうか?まずは正しく見ましょう。さらに今まで以上に感じる心を持つために、視覚を刺激する映画を見たり、聴覚を心地よく刺激するクラシック音楽などを聴いたりして感じたことを言葉にします。これを繰り返しましょう。
5.嫌なことはその日に忘れる
まずは「その日に忘れる」という決意が大切です。落ち込んでいる時間より、明日の楽しいことを考えましょう。嫌な思いをした程度によって、自分にご褒美をあげるのもよいでしょう。私は「嫌なことを考える時間がもったいない」と考えます。1日に使えるエネルギーと時間には限りがあります。同じエネルギーを使うのなら、前向きなことに使った方がいいでしょう。
「いろいろあったけれど、じゃあ、明日はどうしようかな?」と何度でも自分に問い掛けてみましょう。嫌なことを考える時間をつくらないように、友達とはしゃいだり、趣味に没頭したり、体を動かすのもいいでしょう。
6.販売の仕事の中で得意分野を持つ
「これだけは私に任せて!」という何か、大きなことでなくてもいいのです。あなたが「これをやっているときが好きだな、楽しいな」と感じられることです。例えば、お客さまの笑顔が見たければ笑いのネタを用意しておくとか、自分の笑顔を研究してみるなどです。言うまでもなく、得意なことを手に入れるのは大切ですが、その維持とブラッシュアップはさらに大切です。何事も繰り返し訓練したらいつの間にか名人級になれます。
7.売れたときを思い出して接客に取り組む
あなたのテンションが高く、セールストークも滑らかなときは特に問題ありません。問題は売上げが落ち気味のときです。そんなときは、あなたが「接客していてよかったな」と思えたストーリー、その中でも特にグッときた瞬間やそのお客さまの表情などを目を閉じて再生し、何度かイメージしてみましょう。
そうです。あの誇らしかった、うれしかった、まさにあの瞬間です。時間にしても1、2分のはずです。なるべく細部までリアルに思い出してください。再生を何度か繰り返すうちに、だんだん「やるぞー」「いくぞー」といったモードになっていくはずです。
8.ナンバーワンより息の長いオンリーワンを
もしくはナンバーワンとオンリーワンの二役を目指します。ナンバーワンはもちろん大切です。あなたが楽しみながらナンバーワンを維持できる精神力の持ち主ならぜひ続けてほしいのです。
しかしそれにこだわってしまうと、ナンバーツーになったときにすごく自分を責めたり、落ち込むわけです。だとしたら、あなたの個性が光る何かを手に入れた方が確実に楽しめますよね。それには接客のスタイルを考えてみてください。あなたはどんなスタイルをお持ちですか? お客さまの気分の乗せ方、商品の勧め方はどんな感じでしょう? こうした点について、まずあなたがどのようなオリジナル性を持っているか、周りの人に聞いてみてください。
さらに「私の接客って、一言で言うとどんな感じですか?」とも聞きましょう。それらを合わせたものが、あなたをオンリーワンに導くエッセンスです。そのエッセンスをいつも携えて仕事をすると、きっとまた一つ新しい発見があります。
9.売れない日はサポート日、勉強の日と切り替える
誰にでも売れない日があると思います。こんな日にさらに頑張って売ろうとすると、ほかのスタッフにまで迷惑が掛かる恐れがあります。そんな日はストック整理やお直し上がり、お取り置きチェックなどに重点を置き、その合間にいつもより倍の丁寧さで接客をするといったことを実践してみましょう。試着をしたり、素材を確認したり、ディテールを見たりと、一つ一つの商品を布の状態にまで戻していくように研究してみるのもよいかもしれません。
10.うまくいかなくてもあきらめず、明日再トライ
私たちはうまくいかないと思うと2、3度のトライでやめてしまうことが多いものです。しかし成功するにはやり続けることです。あきらめなければいつかうまくいく–最近、私自身もそれを実感しています。
あきらめない限り、私たちはどこかで工夫を凝らそうとしたり、やり方を変えようとするのです。これは好奇心にもつながると思います。うまくいかないからといってやめるのは、自分で自分の接客を見限ってしまうこと。あなたにはもっともっと才能があるはずです。それは本当にもったいない、もったいないことなのです。
[記事提供元]ファッション専門店の20~30歳代ショップスタッフに支持されている月刊総合専門誌「ファッション販売」
※掲載している記事、画像につきまして、使用上問題のある場合はご連絡いただければ削除など対応いたします。