店には日々達成しなければならない予算があります。売上高は店舗を運営していくために必要なものですが、少し視点を変えてみると、売上高=お客さま満足度であるとも言えます。お客さま満足度は、アンケートを取るなどしないとなかなか数値化できませんが、「すてきな商品を買えた」「楽しいお買物ができた」「おしゃれなコーディネート提案をしてもらえた」などのお客さま満足=日々の売上高と考えると、お客さま満足度の高い接客の工夫や改善をしていくことができます。そこで、お客さま満足度の高いコーディネート販売のコツを、セット率の高い店舗事例から探ってみましょう。

販売のコツ1 商品入荷時にコーディネートをチェック

コーディネート販売をスムーズに行うには、商品のことをよく知っていなければなりません。どの商品とどの商品を合わせるとすてきか、どのようなテイストのコーディネート提案ができるのかという事前準備が大切です。では、いつ準備をするか?セット率の高い店舗の多くは、商品入荷時に品出しをしながら商品のセールスポイントを確認しています。

コーディネートは3~5パターンは用意しましょう。同じ商品でも、お客さまのタイプによってお勧めが異なります。幾つもバリエーションを持っているとお勧めしやすくなります。

販売のコツ2 入店層に合わせたコーディネート陳列

コーディネート提案をするとき、あちこち商品を探し回っていてはお客さまをお待たせすることになります。スムーズなお勧めは会話の中で自然に商品提示ができること。そのためには、合わせやすい商品を同じカテゴリーの中で陳列しておくなど、売場づくりも工夫します。

売場づくり、VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)は販売スタイルと連動してつくり上げます。お客さまがご覧になりやすく、商品との出合いを印象付けるとともに、スタッフの動きやすさも考慮した「商品陳列」をしましょう。視覚から入る情報のインパクトは大きいといわれています。訴求効果の高いVP(ビジュアルプレゼンテーション)、PP(ポイントオブプレゼンテーション)では「ベストコーディネート提案」を。

販売のコツ3 傾聴と観察がコミュニケーションの基本

私たちがどんなに「すてき!」と思っても、お客さまがそう感じてくださらないと、「押し付け」や「無理な販売」になってしまいます。そうならないように、お客さまをよく観察しましょう。

お客さまのタイプ、お客さまが手に取っているもの、見ているものなどから、お客さまの好きなテイストを推測します。しかし、推測はあくまでも推測。確かめましょう。そのためには適切な質問をしたり、お客さまが話されていることをよく聴きましょう。お客さまの好きなテイスト、ニーズなど、観察から推測したことと一致していましたか?きちんと聴く、確認をする、コミュニケーションの基本です。

販売のコツ4 最初に「YES」をもらえる会話術

スムーズな会話を始めるためには、お互いに共通点をつくることが大切です。最初に「YES」をもらえる会話のスタートを意識しましょう。そのためにはどのようなお声掛けがよいでしょうか。

「何かお探しですか?」「○○は今年の人気商品なんですよ」などのお声掛けの場合、状況によってはお客さまが答えにくいことがあります。お客さまが答えやすいこと、反応しやすいことから会話をスタートさせましょう。

例えば防寒アウターのキーポイントは「軽さ」だったりすると、「とても軽くて暖かいんですよ、羽織ってみませんか」と、お客さまの次のアクションにつながるようなお声掛けからコーディネート販売をスタートさせます。

販売のコツ5 提案はミラーを通して具体的に合わせる

「こんな△△と合わせるとすてきです」「これはお持ちの○○にも合いますね」というトークだけでは、イメージが弱くなってしまいます。購買決定率の高いお客さまは「想像力が豊か」であるといわれています。つまり、具体的にそのメリットが想像できると購買決定率が高まるわけです。

情報は言葉で提示されるよりも、視覚からの方がより説得力が強くなります。コーディネート提案は具体的に「視覚化」して提示しましょう。また、ミラーを通しての接客では、お客さま側に立って、試着したときと同じ高さに商品を合わせてご覧いただきます。

販売のコツ6 カラーコーディネートの知識の活用

セット率の高い販売を行うスタッフの共通点は「カラーコーディネートの知識」がしっかりしていることです。カラーコーディネートの基本は、1.共通性(統一感)の調和、2.明瞭性(対比)の調和です。共通性の調和は全体に統一感が出ます。色みやトーンに共通性を持たせたカラーコーディネートです。特に色みに共通性がある配色はファッションコーディネートとして合わせやすく、誰にでも受け入れられやすい配色です。明瞭性の調和は対比している色を用いて調和を取ります。

色みが対比していたり、トーンが対比していたり変化のある配色です。色みの対比はアクセントカラー使いに。同じ色みでもトーンが対比しているカラーコーディネートは合わせやすく、センス良く見える配色です。購買決定率を上げるには、最初の「ベストカラーコーディネート」を提示して、次にバリエーションをお見せするとよいでしょう。無意識の比較検討になりますから、ベストカラーコーディネートへの確信が強くなります。

販売のコツ7 「似合う」提案は共通項を見つけて

お客さまにコーディネート提案への確信を持っていただくためには、「冒険的な」提案よりも「お客さまに似合う」提案の方がよりしっくりきます。では、お客さまに似合う提案とはどのようなものでしょう。それはお客さまの印象やイメージと共通項のある提案をしていくことです。

例えば色であれば、お客さまの印象と色のイメージを合わせる、顔立ちの個性と同じ特性を持つ色を合わせるなどです。似合うというのは同じ要素が多いことになります。何かを合わせるということを切り口にしてみると、自信を持って「お客さまにお似合いになるもの」をお勧めすることができるようになります。

販売のコツ8 「もてなし感」を演出するチームの連携プレー

お客さまとの会話からプラス1点をお勧めしていくとき、また他の商品をお勧めしていくときに、商品を取りにいって会話を中断することなく、スムーズにつなげられたらどんなによいでしょう。そんなときの強い味方がチームの連携プレーです。お客さまにとっても「もてなし感」を実感できる販売スタイルです。

お客さまとAスタッフの会話から、Bという商品提示が効果的と察した。そこでCスタッフが、さりげなくAスタッフのコーディネート販売の商品をそろえるという連携した動きです。販売が1対1では完結しない、そのような連携販売スタイルを意識しているチームのコーディネート提案は、購買決定率が高いという結果を導き出しています。

販売のコツ9 試着字のチャンスを生かした提案を

フィッティングルームで単品のご試着をされるとき、それに合わせる商品をそろえて提案するという気配りが、コーディネート販売につながっていきます。また、「NO」の返事を頂かないお勧めの仕方も工夫しましょう。「合わせるものをお持ちしましょうか?」という問いには、YESかNOの答えしかありません。例えばトップスのご試着であれば、「いつもお召しになるのはスカートですか?パンツですか?」と確認した上でお持ちすれば、どちらかの選択になります。

販売のコツ10 「この商品を選ぶ確信」を持ってもらう

お客さまにとっても「迷う」という行為は気持ちの良いものではありません。「これだ」と確信していただける情報提供をしましょう。ただ、これがあまり早い時期に行われると、「押し付け」や「無理な販売」になってしまいます。

お客さまのニーズをしっかり聞いた上でのアドバイスは「確信」になります。「選ぶに値する確信」となる情報のキーワードは、実はお客さまが何度も話されていることです。そのキーワードを押さえた上で、「選ぶに値する確信」を持てるアドバイスをしましょう。お客さまは、自己決定をするための「言葉」を待っていらっしゃるのです。

 

[記事提供元]ファッション専門店の20~30歳代ショップスタッフに支持されている月刊総合専門誌「ファッション販売」

 

※掲載している記事、画像につきまして、使用上問題のある場合はご連絡いただければ削除など対応いたします。