皆さんは、担当しているブランドやショップの特徴を踏まえた自分の目標を設定していますか?

例えば、どんな販売をしたいのか、どんな販売スタッフになりたいのかを明確にすることでなりたい姿が見えてきたら、今度は自分を客観的に見つめて分析することが必要になります。現在の自分の姿となりたい目標の姿とのギャップを埋めていくことが自己演出であり、その作業が実践力になって自身の魅力やブランドとなり得るのです。まず、私自身が店舗に立つ際に、自分の目標にしてきた10カ条を例としてご紹介します。

1.エモ―ショナル(情緒的)であること
2.五感で感じ、表現など言動に移すことができること
3.人を引き付ける魅力があること
4.お客さまのチャームポイントをすぐに見つけられること
5.お客さまに感動とキラキラした時間をプレゼントできること
6.コミュニケーション能力とカウンセリング能力に長けていること
7.包容力があること
8.品位があること
9.物事を全体的にとらえ、多方面から見て、考えられること
10.ファッション以外のことにも向学心があること(情報力と提案力)

今回は、第一印象や身のこなしがテーマなので、この10カ条の中から「人を引き付ける魅力があること」「お客さまのチャームポイントをすぐに見つけられること」「包容力があること」「品位があること」に関する分析に入ります。

「人を引き付ける魅力があること」

人を引き付けるという以前に、人に悪い印象を与えないための3大原則として「清潔感」「明るさ」「健康的であること」という、接客の仕事をする上での必須条件をクリアしているかどうかが基本になります。

「明るさ」は笑顔で印象づけられることが大きく、「口角」が上がっている人は、「人から敵と見なされにくい」ということが心理学で裏付けられています。よくお伝えする例として、2人のまったく知らない人同士を一直線上に置き、徐々に近づけさせる実験をすると、1mくらい近づいた所からどちらからともなく笑顔が自然に出ます。これは「あなたを襲ったりしませんよ」という無言のメッセージを相手に対して発していることにほかなりません。また、はっきりと明るい声で話をすることも明るい印象を与えるファクターです。暗い印象のスタッフがいる店では、それだけで不思議と店内が暗くなりますのでご注意を!

「健康的であること」は姿勢が良いことで、りんとしたすがすがしい印象を与えやすく、「清潔感」は清潔な身なりとともにきれいな肌を保つように心掛けたり、透明感のあるメークに変えてみるなどの工夫や、口元に締まりがあるか(いつもポカンと口が開いていないとか)、動きにメリハリがあるかというのもポイントです。

そして、基本の上にプラスして必要なのは「華があること」です。その人がその場にいるだけで、パッと明るくキラキラした空気に変えることができる人になることが大切です。人は華やかなものに引かれ、自然とそばに近づいてみたくなるものです。

これら3大原則の要素を自分は身に付けているかどうかを確認するとともに、人を引き付ける華があるかどうかをチェックしてみてください。その結果として華が足りない場合のテクニックですが、髪の毛で覆われている部分を極力減らしてなるべく顔全体を出し、歯を見せて笑うことです。これは、店内のライトが多く当たることでパッと華やいだ印象を与えることができます。そして健康的な色の口紅やチークを使い、きちんとメークアップをすることも忘れずに。

また、自分が華があると感じる有名人(お友達でも結構です)を挙げ、その人はなぜ華があると感じるのかを分析してみてください。分析して、取り入れることができそうであればすぐに取り入れ、自分のものとして磨いてみてください。

自分を客観的に見つめること

自分の顔を研究したことがありますか?自分の顔の表情がすてきに見えるのはどの角度なのか、持ち味は何なのか、笑った顔のバリエーションをどのくらい持っているのか、チャームポイントは?自分の顔をさまざまな角度から見つめ、よく知ることで、何が自分に似合い、何によって自分を引き立てることができるのかが見えてきます。

一番簡単に自分の顔を研究できる方法は、写真を撮ってもらうことです。できればプロに撮ってもらうのが一番なのですが、写真では顔の良いところと悪いところがまるでデフォルメされたように浮かび上がるので、客観的に自分の顔と表情をチェックしやすいと言えます。

私はよく「コンプレックスを強みに変える」と表現しますが、今までの経験上、コンプレックスを抱いている人ほど、そのコンプレックスを長所に変え、心に響いてくる魅力にしてしまうことが容易にできているようです。

「お客さまのチャームポイントをすぐに見つけることができる」

自分を分析できるようになれば、他者の分析は簡単になってきます。そこで大切なのは、短所よりも先に長所を見つけダイレクトにお伝えすることです。その後、コーディネートのお手伝いをする際に、お客さまの短所をカバーできるものをご提案ください(くれぐれも短所をはっきりと伝えないことを忘れずに)。

「包容力があること」「品位があること」

自分の周りに包容力を感じる人はいますか?もしいるのならば、なぜその人は「包容力」を感じさせるのかを分析してみてください。包容力とは、生まれ持った性格もありますが、心の余裕が包容力につながることが多いのと、お客さまに対して愛情を注ぐといった精神論にぶれてしまいやすいので、ここではいかに包容力のある印象を与えるかという演出についてお話しします。

余裕がある人は、自分の話をする前に人の話を聞く姿勢があります。また、ただ単に話を「耳」で聞くのではなく、文字通り「耳」と「目」と「心」で深く聴いてください。相手の話の速度に合わせながら、相手が早口の場合はこちらがゆっくりめに話すと、相手の話の速度も自然とこちらのペースに合ってきます。また、できるだけ声のトーンを通常音域の「ソ」の音(人間の耳にとって一番心地よい音という実験結果が出ています)で話し、相手の目を見て柔らかくほほ笑むということでも、包容力と余裕を感じさせることができます。

美しく魅せるしぐさ、身のこなし

品位に関しては、清潔感に基づくことが多いのですが、「コツ」を一つ。手を体や顔の前でクロスさせるしぐさは、女らしさや品を表現することができます。右手で右の髪の毛を触るのと、左手で右の髪の毛を触るのとでは大違いです!このクロスの動き、斜めの手の角度が女っぷりを上げてくれるのです。

実は、品のある女らしいしぐさは角度で決まるといっても過言ではありません。例えば座るときに正面を向き、肩を斜め45度に向けてひねる、ひざも足も……と各部のひねる角度が美しい座り方やポーズにつながります。真っすぐ角度をつけずに座るのと比べてみるとよく分かるので、お確かめください。

この手法は、皆さんがよく手に取る雑誌のモデルや女優がカメラの前で取るポージングの一つです。彼女たちがなぜ美しく見えるのか、魅力的に見えるのかは、体全体に表情があるからです。実際にカメラの前に立ち、カメラマンや監督の指示をもらっているうちに体得し、覚えていくわけです。特にモデルから女優に転向された藤原紀香さんは、ポージングをとても意識している(すでに無意識の域かも)ので分かりやすい例です。雑誌などでチェックしてみてください。

また、立ち姿でもう一つ女らしさを強調するコツは「体の周りに三角形をつくること」を意識すること。頭をかしげると肩と顔(ほお)の間に三角形ができます。両手を体の前に重ね少し持ち上げるとウエストの横に三角形、ひざを少し内側に寄せ前に出すとひざ横に三角形が出来上がるのです。

この注意点は三角形の角度が鋭角だと「しな」をつくり過ぎて、クニャクニャといやらしい印象を与えるため、角度に気を付けることが必要です。歩くときにもひじを後ろに曲げて深く引き、三角形をつくるようにすると女らしさが強調され、エレガントな印象を与えます。この動きはウエストのくびれとバストをきれいに見せることもできるので取り入れてほしいコツですね。ただしカジュアルやアウトドアのアイテムを扱っている店舗ではそぐわないため(笑)、自店の特徴を踏まえた上で上手に取り入れていただければと思います。

 

[記事提供元]ファッション専門店の20~30歳代ショップスタッフに支持されている月刊総合専門誌「ファッション販売」

 

※掲載している記事、画像につきまして、使用上問題のある場合はご連絡いただければ削除など対応いたします。