この言葉の本音は?

言葉と表情の2つの矛盾したメッセージを同時に発することをダブルバインド(二重拘束)と言い、人はそれを受けると混乱しがちです。言葉の裏に隠された真意を知ることで対応しましょう。

「そうかもしれない」→そうは思わない可能性もかなりある

販売員の一方的な商品説明や強力なお勧めプッシュが続くと、お客さまは断ったり自分のニーズを伝える機会を逸することがよくあります。あまりぴんとこないコーディネートを勧められ、その上販売員から自信を持って「合いますよね」と同意を求められると、自分はそう思っていないという意思をさりげなくにおわせる「そうかもしれない」という発言が出ることも。これは反対意見が言いにくい状態のサインでもあります。先走らず、お客さまの好みやニーズを確認しましょう。

「なるほどねえ……」→一見相づち?でも繰り返しは興味なし

「ふうん」「なるほど」「そうなんだ」……。商品説明やお勧めに対してお客さまの相づちが返ってくると、そのまま一方的に話し続けてしまいがちです。でも、待ってください。相づちを繰り返している場合は、聞いているようで実は聞いていない場合も多く、適当に相づちを打っているだけの可能性もあるのです。会話はキャッチボールです。途中で必ず質問をしたり、確認をしたりしながら、お客さまに会話の主導権を譲って進めていきましょう。

「すっごーい!かわいいー!」→自由な子供の心は優柔不断

臨床心理学の分野でエゴグラムというものがあります。私たちの心の使われ方を「批判的な親」「養育的な親」「成人」「自由な子供」「順応した子供」を横軸に、そのエネルギー量を縦軸に示すグラフです。「すごい」「かわいい」を連発するタイプは、「自由な子供」のエネルギー量が多く、新しいもの、心がわくわくするようなものやことをどんどん取り入れていく柔軟さがありますが、その分、優柔不断な面も。振り回されずに会話を上手にリードしていく必要があります。

「最近太っちゃって」→否定してほしい気持ち100%

体重や体形にかかわらず、大半の女性にはやせたい願望があります。ある調査では理想体重は現在の体重から10kgを軽減したものと思っているという結果が出ました。二の腕やウエスト、ヒップ、バストなどデザインによってはサイズが合わなかったり、気になる点がより目立つことも少なくありません。「小さめサイズのメーカーの9号なので、1つ上のサイズが本来の9号サイズです。そちらをお試しになりませんか」と、体形のせいではなく服のせいにするべきです。

「これって○○でしょ」→おだてられたい自己顕示欲の強い人

「これって○○でしょ」「これって○○素材よね」「これって今年のトレンドカラーよね」「これって今年かなり出ているデザインよね」……、教えてほしいのではありません。発言の裏にあるのは、あなたより私の方が知っているのよという自信と知識。自己顕示欲が強いタイプかもしれません。そして「あなたの言う通りにはならないわよ、私は私の判断で決めるからね」というニュアンスも。「そうなんですよ」「よくご存じですね」、そんな言葉でフォローしましょう。

…………(無反応)→無反応の人でも心の中では反応している

販売員の一番苦手なタイプのトップは「無反応のお客さま」です。無反応のお客さまは何を感じているのか、ロールプレイングを行うと少しその気持ちが分かります。販売員が視界に入っていないので知らないうちに無視してしまう場合、反応しようにもできないアプローチだった場合、ほかのことに夢中になっていた場合などが挙げられます。実は無反応は否定ほどの深い意味があるわけではないのです。「……」という非言語メッセージでも安心してお声掛けをしてください。

どうしようかなあ…→独り言は迷いや不安、心配の表れ

何分もしゃべるのではなく、一言、二言の独り言は自然な反応です。一般的に独り言が出やすいのは不安や心配、迷いがあるときです。「どうしようかなあ」「同じようなもの持っているかも」と口に出してしまうことで、迷いを和らげようとする意識が働いています。会話の中で購買決定につながるお客さまが話したキーワードがつかめていたら、その言葉を使っての説得的コミュニケーションを意識するとよいでしょう。人は自分の言った言葉で納得したいものなのです。

若い人はいいわね→好きなスタイルができる時代の嫉妬

年齢に関係なく好きなテイストで服を買う時代です。価格もお手ごろなヤングカジュアルショップはミセスたちも注目しています。しかしヤングとミセスでは服のサイズ感が異なります。また同じアイテムでも着こなし方は異なります。自分たち基準の着こなしをお勧めすると「若い人はいいわね」と笑顔で応対してくれても、内心では「こんな着こなししないでしょ!」と思っています。1つのアイテムでさまざまな客層に合わせた提案ができるのがプロ。そうすれば、客数も伸びます。

 

[記事提供元]ファッション専門店の20~30歳代ショップスタッフに支持されている月刊総合専門誌「ファッション販売」

 

※掲載している記事、画像につきまして、使用上問題のある場合はご連絡いただければ削除など対応いたします。