環境に負担の少ないエコな商品を使いたい、ゴミを最小限にするゼロウェイストな生活をしたい、自然環境や動物守りたいといった人のために作られた沖縄発の日用雑貨ブランド「mana.(マナ)」。そのデザイン性はシンプルであり洗練されたおしゃれなものばかり。シンプルであるからこそ得られた使い勝手の良さも商品の魅力です。

エシカルインタビュー7社目の今回は、脱プラスチックやゼロウェイストを掲げるブランド「mana.」を立ち上げた経緯や商品の魅力について、株式会社オーガニックリビング代表の浜村英莉さんにお話をお伺いしました。

株式会社オーガニックリビング代表の浜村英莉さん

故郷、沖縄の海を守りたい。きっかけは自身の「ゼロウェイスト」の実践から

──日用雑貨ブランド「mana.」(マナ)を始めたのはきっかけは何ですか?

浜村さん:地元沖縄を出て関西の大学に進学し、就職後は2年ほど渋谷で働いていました。故郷とはまったく違う賑やかな街で生活するようになってから、帰省した時に自然を感じる地元沖縄が改めてとても大切で特別な場所に感じており、その頃から「沖縄の美しい海を守りたい」と思うようになりました。

大学時代はヨーロッパへ留学したり、社会人になってからもヨーロッパへ旅行で行ったりしていたのですが、その時から当時の日本ではほとんど見かけなかったエコな商品を旅のもう一つの目的として探し回るようになっていました。そのうちに「日本にも使い捨てでなく、環境に配慮した日用品がもっとあったらいいのに」と起業を考えるようになり、地元沖縄でブランドを立ち上げました。

──具体的にはどういったことから「mana.」(マナ)をスタートさせたのですか?

浜村さん:私自身のエシカルなアクションは、ごみを最小限にする「ゼロウェイスト」の実践が起点でした。フランス人のベア・ジョンソン氏が実践する「ゼロウェイスト」を知り、いかにゴミを出さずに使い捨ての代わりになるものを活用してサスティナブルに豊かに暮らすことを考えるようになりました。

──ゼロウェイストを実践し始めて困ったことはありましたか?

浜村さん:最初の困りごとは歯ブラシでした。当時の日本ではプラスチック製の歯ブラシがほとんどだったので、ヨーロッパに行って竹歯ブラシを見つけたときは「これだ!」と思いましたね。実は沖縄の海に落ちている海洋プラスチックゴミには漁で使うブイや道具、ペットボトルなども多いですが、プラスチック製の歯ブラシも多くあります。歯ブラシは、世界中で毎年35億本も消費されていますが、ゴミとして捨てられることが大半であるため、マテリアルリサイクル(物から物へ再利用すること)が難しく、莫大な量のプラスチックゴミになっています。

日本には少なかった脱プラ・ゼロウェイスト商品を自分で企画

──mana.の商品を拝見した時、とってもおしゃれだな~と思いました。環境問題に特別な意識が無くても、デザイン性で惹かれる人も多いのではと思います。デザインに関してはどういったことを大切にされていますか?

浜村さん:「mana.」は脱プラスチック、そしてゼロウェイストのブランドなので繰り返し使い続けることが大切です。なので、マイボトルであれば食洗機に入れて洗えることやパッキンの部分もシンプルなつくりになっていてお手入れも簡単な設計です。そのシンプルさを追求した結果として洗練されたデザインになっているのだと思います。

──浜村さんご自身は、デザインの勉強をされていたんですか?

浜村さん:学生の時にデザイン事務所でアルバイトをしていたことがあるのですが、イラストレーターを使ってみたりデザインすることは好きでしたね。商品の使い勝手を大切にしているので、先ほどもお話しましたがいかに無駄なくシンプルにするかを大切にしています。商品に付けている札やパッケージも同様で、シンプルでナチュラルにすることで商品を陳列した時の統一感につながっていると思います。

──シンプルだからこそ、お手入れもカンタン、そして見た目の洗練さにもつながっているんですね。ブランド名の「mana.」はどういった意味があるのでしょうか?

浜村さん:「mana.(マナ)」はハワイやタヒチの言葉で「自然の力」という意味です。あとは、日本人の名前で「まなさん」って方もいますよね。なじみのある可愛らしい音の響きも気に入って、「mana.」になりました。

脱プラスチックな生活と沖縄のサンゴ礁を守る活動を応援できる「mana.」の商品

──mana.と言えばこれ、と言う商品を教えてください。

浜村さん:一つ目は「竹歯ブラシ」です。初めて作った商品です。竹は3年で収穫できる成長の早さと、他の植物に比べて二酸化炭素を多く吸収することからサスティナブルな素材として注目されています。mana.の竹歯ブラシは「FSC認証」を取得していて、商品にそのマークを印字してあります。

──「FSC認証」マークは、ノートや名刺などの紙製品についているマークですよね。

浜村さん:そうです。FSC認証マークは紙製品や家具、木工品についていることが多いのですが、日用品に付くことは実は珍しいです。というのも、原材料として使っている竹自体は、FSC認証を取得していたのですが、歯ブラシ自体に認証マークをつけるとなると、作る側(工場)もサプライヤーである当社もFSC認証を取得する必要がありました。なので費用も掛かりますし、時間もかかります。

まずは生産工場の人たちを説得するところから始めました。労力もかかりましたが、ついにFSC認証マークがついた竹歯ブラシを生産できるようになった時は、みんなで喜びあったという想い出も詰まっています。

──認証マークを意図的に取らない商品もありますが、どうして労力や費用をかけて認証を取得したのですか?

浜村さん:FSC認証*は商品に印字することが条件とされています。商品自体にマークが付いていることで環境面でも社会的にもきちんと管理された材料を使っていることを手に取ったお客様がパッとみて伝わるからです。環境や社会から搾取することなく作られた商品であることを第三者機関に認めてもらったという印があることが、ブランドの価値につながると考えています。

*FSC認証について

FSC認証は環境、社会、経済の便益に適い、きちんと管理された森林から生産された林産物や、その他のリスクの低い林産物を使用した製品を目に見える形で消費者に届ける仕組みです。

FSCジャパン「FSC認証について」より引用

浜村さん:竹歯ブラシの特徴としては、本体に厚みがあるので持った時にはフワっと軽く、しっかり握れるデザインです。コンパクトのタイプは日本人の口にあうようにヘッドを小さめにしてあります。使い勝手にもこだわっています。

──つづいてはどちらの商品でしょうか?

浜村さん:「自然素材のキッチンスポンジ」です。

一般的なキッチンスポンジの大半は、ポリエステルやナイロンなどのプラスチック製で、使っているうちに細かなプラスチック繊維が流れ出ます。川をたどり海に行きついたプラスチックは、紫外線や塩分によって非常に細かいマイクロプラスチックゴミとなり海を漂い続けることになります。それを海洋生物が飲み込み、ゆくゆくは人間もその魚を食べることでマイクロプラスチックを体内に蓄積することになります。海洋ゴミは年間800万トンと言われており、海に残り続けずに自然に還るスポンジをつくりたいと思い、商品を開発しました。

──片側がヘチマ、片側がセルロースなんですね。紐が付いているので、使い終わった後は水気を絞ってつるしておくことができるのも使い勝手がいいですね。

浜村さん:ありがとうございます。ヘチマとセルロースで作られた100%植物由来のスポンジです。セルロースの原材料は木材パルプや、補強繊維として加える綿などの天然繊維からできます。100%天然素材から作られているので、焼却しても有毒ガスが出ず、土に埋めると分解されて自然に還ります。今でこそリピート率NO.1のアイテムですが、初期のスポンジはヘチマが硬すぎたり大きすぎて、使いやすさがイマイチでした。改良を加えて、今に至ります。

──もう一つの商品はどちらでしょうか?

浜村さん:「メッシュベジバッグ(3サイズセット)」です。こちらは、世界基準のオーガニック認証であるGOTS認証を取得したオーガニックコットン100%の小分けバッグです。

プラスチック製の袋は世界中で毎年約0.5~1兆枚使用され、1枚当たりの平均使用時間はたったの12分と言われています。

日本では2020年7月1日よりレジ袋有料化がスタートし、買い物の際にマイバッグを持参することが定着してきました。レジ袋の有料化でマイバッグの持参は増えましたが、スーパーにある無料の小分け袋はまだまだたくさん消費されています。ここに着目して開発したのがメッシュベジバッグです。

──特徴はどういったところですか?

浜村さん:大きさの異なる3つのバッグなので、野菜、果物、パンなどの小分けや保存に使えます。メッシュなので通気性も良く、中身も見えるのもメリットです。ベジバッグ=野菜袋という名前ですが、旅行用の小分け袋として使っている方や大きいサイズを洗濯ネットとして使用する方もいらっしゃいます。

──1つのアイテムをいろんなシーンで使える、シンプルで無駄がなく、用途が広いアイテムですね。

天然素材の扱い方、使いやすさなどはきちんと説明することが大切

──オーガニックリビングは、mana.を販売している直営店がありますよね。これからエコグッズなど環境配慮の商品を店頭で販売しようと考えているお店の方に向けて、アドバイスはありますか?

浜村さん:気を付けていることがあります。それは天然素材の扱い方のポイントと、使うシーンを具体的にお伝えすることです。

──それはどんなことでしょうか?

浜村さん:プラスチック製品を使ってきた人にとって、天然素材は使い勝手が悪いとか扱いにくいと思われることが意外と多くあります。

例えば、プラスチック製の歯ブラシはカビは生えにくいですが、竹歯ブラシは使用後に水気を取らないとカビが生えてしまうことがあります。なので、使った後はタオルなどで軽く水分を拭いておくといいですよ、と接客の際にお伝えしています。

それから、「竹と耐熱ガラス容器(ラウンド)」という商品は、食品を保存に使えるのはもちろん、そのまま食卓に出してもよいデザインなので、食器の数を減らし、洗いものも少なく済みむと言うメリットがあります。蓋を外して電子レンジやオーブンにも使えるので、使えるシーンが多いというのも魅力です。こういった具体的な利用シーンをお伝えすることで、商品の特徴や魅力をきちんとお伝えすることを大切にしています。

──環境配慮の商品だからとエコな部分をお伝えするのではなく、商品の特徴や使うメリットをお話することが大切なのですね。

浜村さん:そうですね。自然に寄り添う暮らしを提案し、商品を気に入って長く使ってもらいたいと思っているブランドですので、この部分は大切ですね。

mana.で言えば、売上の1%を沖縄県読谷村の「サンゴ畑(有限会社海の種)」に寄付しています。サンゴ礁は海の二酸化炭素濃度を調節する「海の循環システム」です。海の生き物の4分の1がサンゴに頼って生きている必要不可欠な存在です。商品の購入を通して、環境保全を応援できる仕組みになっています。

──まさにエシカル消費ですね。環境のため、社会のためと思っても保全活動など、何からすべきなのかとなかなか動けない人も多いと思います。環境に配慮した商品を購入するエシカル消費と、間接的に環境保全を応援できることが「mana.」の特徴ですね。

エコや環境問題に関心を持ってもらうきっかけを「mana.」の商品や活動で発信していきたい

──最後に、今後の展開について教えてください。

浜村さん:暮らしの中で避けがたいプラスチックを見つけ、その代替となる商品を今後も開発していきたいと思っています。地球上のごみを減らすことがブランドの立ち上げ当初から今も掲げている目標です。「ゴミが出ないゼロウェイストなライフスタイルをしてみたいから、mana.で商品を探そう」「こんなエコグッズが欲しかった」というように消費者のエシカルな選択を増やせるように続けていきたいと思っています。また、商品開発だけでなく、どのようにゴミを減らせるのか?と考えるきっかけ作りの活動やゴミを減らすだけではないゼロウェイストのメリットなど、暮らしのヒントやアイデアも情報発信していきたいと思っています。

──お話いただきありがとうございました。

自然に寄り添う暮らしをゼロウェイストの視点から提案するオーガニックリビングの「mana.」

沖縄発、脱プラスチックの日用雑貨の商品でゼロウェイストを目指すブランド「mana.」。センスあふれるおしゃれなデザインも注目です。商品の魅力やメリットは、店主オーナーやスタッフが実際に商品を使ってみた感想は説得力のある大切な情報です。ぜひ手に取って、商品の魅力を体感してみてください。