軽さ、丈夫さ、加工のしやすさの利点から身の回りのあらゆるものに使われているプラスチック。便利な反面、海洋プラスチック問題や焼却時の二酸化炭素排出、原料となる石油資源の枯渇など深刻な問題を抱えています。
「プラスチック製品の利点を生かしながら、メーカーとして責任を自覚し、環境に配慮した持続可能なものづくりをしたい」。お弁当箱をはじめとするプラスチック製の日用品を製造している「株式会社オーエスケー」さんでは、プラスチックの利点のメリットを伝えつつも環境への配慮を積み重ねながらものづくりをしています。今回は企画の浅野さんと営業の田中さんにオーエスケーさんのエシカルな考えや想いをお聞きしました。
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キャラクターや工夫を凝らした機能、安心安全のお弁当箱などをつくるプラスチックメーカー「オーエスケー」
──本日はお時間をありがとうございます。まずはオーエスケーさんの創業についてお伺いします。創業は1951年なので70年を超える歴史があるんですね。
浅野さん:はい。創業当時は現在のようなプラスチック製ではなくユリア樹脂などの熱硬化性樹脂でできた食器を作っていたと聞いています。いまはポリプロピレンなどの熱硬化性樹脂を素材とした主にお弁当箱などを製造しています。
──いまの社名「オーエスケー」になったのは1991年ということですが、社名の由来は何でしょうか?
浅野さん:オーエスケーは、
・Originality(独創性・創意)の「O」
・Sensitivity(感性・好感度)の「S」
・Kindness(優しさ・思いやり)の「K」
の意味があります。お弁当箱であれば食べ物を入れる容器ですので、安心安全はもちろん、使い勝手など生活を豊かにするような提案をしていくという思いがあります。
──その後、2000年に岡山県にある自社工場でISO9001認証を取得されているんですね。
浅野さん:現在はISO9001とISO14001の認証を受けています。国際規格に合わせた品質マネジメントシステムや環境負荷を低減する仕組みを構築することで、安心安全で環境にも配慮できる組織を目指しています。ISO9001の品質マネジメントシステムにも関係していますが、エンドユーザーの方の意見をお聞きしたいと新商品や環境配慮のお弁当箱など一部の商品にはパッケージにQRコードを付けてアンケートを行っています。
アンケートに回答してくださったあるエンドユーザーの方は、「EARTHY(アーシー)」というバイオマス原料を使った環境配慮型商品のお弁当箱を購入されたのですが、見た目や機能で商品を選ばれたものの購入後に環境配慮型の商品であることを知ってうれしかった!と言ったお声などいただいたりしています。
石油由来のプラスチックを削減したい!ヒノキの木くずを活用した「ひのきのぷら」が環境配慮製品の始まり
──エシカルな要素がお客様に喜ばれるのはうれしいですよね。オーエスケーさんのエシカルなお弁当箱と言えば、「ひのきのぷら」のシリーズがありますが、展開するきっかけはどういったことだったんですか?
浅野さん:製造業として環境への配慮は以前からあったのですが、きっかけは環境省が2018年10月にプラスチックスマートキャンペーンを立ち上げたことや、2019年6月に開催されたG20大阪サミットにおいて海洋プラスチック問題について取り上げられたことでした。石油由来のプラスチックを削減するにはどうしたらいいかと具体的に考えるきっかけになったと言えます。
石油由来ではない原料を使ったプラスチックの素材を探していたところ、ヒノキを融合した新しいプラスチックに出会いました。他にも候補はあったのですが「ヒノキ」は日本人ならみんな知っている身近な素材なので「わかりやすさ」という利点から採用されました。
──「ひのきのぷら」はヒノキの木粉が使われているんですよね。どんなところで出る木粉なんですか?
浅野さん:すのこや机を作っている木工所で出てしまうおがくずが使われています。その「ヒノキ」の木粉20%以上融合したプラスチック素材です。原料の中に木粉の粒が見えるので目に見えて分かりやすい特徴もあります。それからヒノキ由来の天然の抗菌効果があり、安心・安全でもありますし、時間の経過とともに薄れてしまいますが、ほのかにヒノキの香りがするんです。
──環境面だけでではなくて、機能性としてもメリットがあるんですね。ヒノキを使ったことで製品化への難しかったことはありますか?
浅野さん:木粉を混ぜたことで、お弁当箱に成型するときの収縮率が変わっていまい、使える金型が限定されたことですね。お弁当箱によってはフタをパチンと止めるタイプもありますよね。しっかり締められないと商品として問題なので、金型を選ぶのは大変でした。それからヒノキの木粉を混ぜたものが素材なので、成型の時に熱を入れるのですが焦げたようなにおいがすると意見が工場のスタッフからありました。今はもう慣れてしまっていますし、木粉を混ぜているので当然だなという印象になっています。
さきほどもお伝えしましたけど、商品自体はむしろヒノキの香りがほんのりするので焦げたようなにおいはしませんのでご安心いただけたらと思います。
──素材を混ぜることでいつもと勝手が違ってくるのですね。オーエスケーさんでは環境配慮型のお弁当箱として「EARTHY(アーシー)」というシリーズもありますが、こちらの特徴も教えてください。
浅野さん:「EARTHY」はトウモロコシ由来のバイオマス原料を約10%使用しています。植物由来の原料を使うことでカーボンニュートラルによって二酸化炭素排出量削減につながります。
バイオマス原料とは、主にトウモロコシやサトウキビを原料に作られています。今回使用している原料は工業用トウモロコシである、直接的には人間の食糧として使われていない種類のものです。バイオマスプラスチックを燃やす際も二酸化炭素が出ますが、それはバイオマスプラスチックの原料である植物が育つときに光合成で吸収された二酸化炭素であるため、大気中の二酸化炭素の増減に影響を与えません。
【EARTHY】 コンテナランチボックス600mLの商品ページより引用
EARTHY以外にも人気商品であるおにぎりケースやおにぎりランチケースなどでも積極的に使用し、二酸化炭素の排出量の削減に取り組んでいます。
──お弁当箱は毎日のように使うものだからこそ、見た目も使い勝手も大切ですが、環境配慮の素材で作られているかどうかもエンドユーザーの優先的な選択肢になっていくとうれしいですね。
環境に配慮した原料選びや生産時の廃棄プラスチックを徹底して減らす
──環境配慮型の商品企画以外にも、オーエスケーさんがエシカルな点で取り組んでいることはどんなことがありますか?
浅野さん:ISO9001とISO14001の認証を受けていますので品質や環境を組織として管理していますが、例えばプラスチックの廃棄ロスは徹底的に減らして最小限になるように努めています。
お弁当箱などを成型するときはプラモデルの枠のように端材が出てしまうんですが、それをもう一度材料まで戻して使っています。それから成型のミスも廃棄ロスにつながるので蓄積したノウハウや仕様の検討でミスが起きないように運用を考えています。
包装に使用するプラスチックの袋などもバイオマス原料を使ったものに切り替えたり、ほかには照明をLED化したり、ゴミの分別は細かく分けたりと、小さいことも含めできることは無いかと意識して取り組んでいます。
プラスチックの良いところを伝えながら責任あるものづくりを目指す
──大小さまざまな工夫や努力を積み重ねて商品を作っていらっしゃるんですね。
浅野さん:そうですね。プラスチック製品を主力としていますので、地球環境にマイナスな廃棄プラスチックの問題とは無縁ではいられません。オーエスケーが作る商品はプラスチック製ですが繰り返し使うものです。商品がすぐ廃棄されることはないと思いますが、製品が作られる過程や包装ではいろんな視点を持って工夫をしています。
──たしかにお弁当箱は使い捨てではなく繰り返し使えるものなので、その点では環境に配慮しているアイテムと言えるかもしれません。金属製や木製のお弁当箱もありますが、プラスチックの軽くて丈夫、楽に扱えるという利点は魅力に感じます。
浅野さん:海洋プラスチック問題などのニュースなどを見ていると、プラスチックが悪者というイメージをされがちなのですが、正しい扱い方をしてうまく付き合っていくことが大切だと思います。軽さや丈夫さ、好きな形を作りやすいというのはプラスチックの良さですので、そういった良い点を伝えつつ、少しでも環境に配慮した製品を提供していきたいと思います。資源を大切にしながら、お客様の生活を豊かにしたいと思っています。
──どんなものでも必ず資源を使って作られていることを考えると、無駄を出さない、使い捨てを避ける、分別して再度資源として使えるようにすることって大事ですね。環境問題を自分事に考える良い機会にもなりました。今日はお時間いただきありがとうございました。
オーエスケー
お弁当箱などランチウェアを提案する「オーエスケー」では、地球環境に配慮した製品作りに取り組んでいます。