新素材・ココナッツレザーとの出会いから、「この素材を広めたい!」の想いで中川さん(エシカリージャパン合同会社 代表)が「never leather」を立ち上げたのは、2024年のこと。色の美しさとあたたかな手触りが魅力的な植物由来100%の素材を、日本の職人さんが確かな品質で仕立てた製品は、一つひとつが唯一無二。かつ、とってもサステナブルな秘密がたくさん隠されているんです。気になる魅力がたっぷりの「never leather」のこと、中川さんにじっくりとお話を伺いました。

後編は、サステナブルな素材を活かした丁寧なものづくりをされる「never leather」、そのブランド誕生秘話からスタートです。

(※ココナッツレザー:「レザー」「革」は動物由来の製品に対する呼称なので、正確にはレザーではありません。本記事では、never leather の製品を形作るサステナブルな新素材の呼称として、ココナッツレザー(通称)の言葉を使用しています。)

前編から読みたい方はこちら

出会いに紡がれたブランドの物語

never leather の事業を展開する「エシカリージャパン合同会社」を中川さんが設立したのは、2023年のこと。コロナ禍の2021年から23年までの2年間、夫の仕事の関係で暮らしていたインドのムンバイから帰国してすぐのことでした。

設立の最初のきっかけは、「I was a Sari」というブランドとの出会い。インドの女性のサリーという民族衣装の布をアップサイクルしたこのファッションブランドに惚れ込み、日本で展開する総代理店契約からスタートしました。

そして時を同じくしたインド滞在中のもう一つの出会いが、never leather をスタートする大きなきっかけとなります。当時暮らしていた街のすぐ隣にスラム街があり、経済や生活のギャップに中川さんはとても驚かれたそうです。そのスラム街の産業として一番大きかったのが、革のなめし業。そこで牛の革を化学薬品でなめすという作業を、ほとんど半裸の状態の男性が素足で何の防具も持たずに1日中狭い小屋の中でされている姿を目の当たりにします。

中川さん
「そういった非常に安い人件費とか、安全が顧みられないような職場環境で作られた安い革というのは、バンコクとか東京に行くんだよという話を聞きまして、ちょっとショックをやっぱり受けてしまって。安全や人権に配慮されない商品が、まだまだ日本にも流通しているんだなということに課題を持ちました」

ショックを受けたその先で、中川さんは「何か環境にも人にも優しい素材はないかな」と探し始めます。そして出会ったのが「Malai(マライ)」という名の新素材・ココナッツレザー。インド国内版のクラウドファンディングのウェブサイトで、偶然目にしたそうです。

これおもしろいな!そう感じて早速取り寄せてみると、素材感や色味もよく、好みにもぴったりとはまったそう。インド国内で開発されたというのも、とてもしっくりきたそうです。



その中でもう一つ知ったのは、南インド・ケーララ州でココナッツがもたらしている環境への影響のことでした。

中川さん
「ココナッツウォーターは、昔から人々が暑いので飲むんですけれども、大量に自生するため、消費しきれなかったり加工に使わないものは廃棄されていました。ココナッツは自然のものなので、環境負荷があるとは一瞬思えないのですが、実は土壌の酸性化を招いたり、そのまま海に流れてしまっているので、水質汚染につながっているという背景も知りました」

素材に魅了された中川さんは、「これを日本に持ち帰って、何かブランドができないかな?」と考え始めます。飛行機に乗って工場へ伺ってみると、待っていたのは中川さんと同世代でスロバキア出身のザズアナさんでした。

中川さん
「ザズアナさんは素材研究者で、インド出身のプロダクトデザイナー・ススミスさんとともに工場を作ってサステナブルな素材の研究開発を始めたと聞き、それにもまた衝撃を受けて。ザズアナさんの出身のヨーロッパでは徐々に人気が出てきているんですけれども、日本とはまだご縁がなかったので、じゃあ私が日本でやらせてください!って。すごくシスターフッドというか、一緒にやろう!と意気投合して、この never leather というブランドが始まりました」

日本へ帰国した中川さんは、ココナッツレザーの生地を製品に仕立ててくれる職人さんを探し始めます。しかし、そこには思わぬ大きな壁が。ココナッツレザーが新しい素材であるがゆえに、職人さんたちにとって大切な仕事道具のミシンを傷めてしまうリスクがあり、なかなか首を縦に振ってくれる職人さんには出会えなかったそうです。

中川さん
「何十件とあたって玉砕っていう感じだったんですね。やっと出会えたのが、ギフトショーという日本最大級のバイヤーさんと出会える場でした。思い切って1ブースどんと借りて、ココナッツレザーの生地などを自分で展示したんですよ。その時に立ち寄ってくださった職人さんが、これおもしろそうだねっていうことで」

なんと、職人さんの方から!とても大きな会場の中で、壁を一緒に越えようとしてくれる職人さんと出会えたことも、一つの大きな奇跡のように感じられます。そうして never leather は無事、2024年にスタート。

中川さん
「その職人さんに出会えたっていうことが、本当に最大の収穫というか。今でもお付き合いさせていただいていて、本当に柔軟に小ロットだったりとか、本当に細かなプロトタイプを作るといったところまでお世話になっています」

インドで直面した社会課題を起点に、ココナッツレザー、ザズアナさん、日本の職人さんと、たくさんの出会いに紡がれて誕生した never leather。その中心には、中川さんの軽やかな行動力と、わくわくやおもしろさといったご自身の感性を指針に前へと進む、とても楽しそうでやわらかな姿勢があったことを感じられました。

ここが気になる!never leather の商品Q&A

never leather の製品は、名刺入れ、キーケース、小物トレイ、ボールペン、ブックカバー、しおり、コースターの7種類(2026年7月時点)。ほとんどが3色展開されていて、自分に合った色を選ぶのも楽しそうです。人気商品やカラー、お手入れのポイント、お店でのお役立ち情報など、たくさんのここが気になる!情報を教えていただきました。Q&A形式でお届けします。

ー 人気のカラーはありますか?
中川さん「レッドとナチュラルは、女性に人気です。目を引くというか。飲食店のコースターだと、黒がとても好評だったりします。名刺入れは、ナチュラルが人気。好みを選べるので、カラーバリエーションがあるのはすごくいいことなのかなと思います」

ー お客様の層に何か特徴はありますか?
中川さん「そうですね、結構まだバラバラというか、性別でいうと半々ですかね。ご自身へのプレゼントとして購入される女性もいますし、新社会人の男性に家族がプレゼントするというパターンもあります。年代としては、 20代から40代のお客様がメインになります」

ー 一番人気の商品はどれでしょう?
中川さん「ビジネスシーンで使える名刺入れが、今一番人気です。名刺を交換するときに、お、何それ?といった感じで、いいとっかかりができるというか。会話の自然な流れとして、これ実は、みたいな感じでお話しされる、ちょっとこだわりのある方に持っていただいているなという印象です」

[商品]never leather 名刺入れ(バイカラー)

ー 新商品のコースターのこと、教えてください。
中川さん「アメリカのブルックリンのピザ屋さんからお話をいただいて、一緒に作った製品になります。今年6月にアメリカで先行発売していて、日本ではこれから展開していきます。機能性としては、10センチの直径なので、大きめのマグからビール、小さな湯飲みにも対応できます。カラーは3色展開で、単色でもいいですし、セット商品もご用意しているので、その日の気分に合わせた色を使うとか、ご家族で食卓でカラフルに使っていただくのもいいかなという風に思っています」

[商品]never leather コースター

ー 商品を買える場所はどこでしょう?
中川さん「メインは自社サイトですね。今実店舗はなくて、たまにポップアップでマルシェという形で出店させていただいています。あとはギフトに特化したオンラインプラットフォームにもいくつかお取り扱いいただいています」

ー どういった包装で届きますか?
中川さん「例えばしおりは紙製のケースに、名刺入れはグレーの巾着に入れてお届けしています。巾着はそのまま別の用途でも使っていただけるような小物入れになっています」

ー ギフト包装もご対応可能ですか?
中川さん「オプションでお選びいただけます。和紙のような素材感のかわいいボックスに、リボンをつけて送らせていただいてます。ご注文の30%くらいはギフト包装で。就職や新生活のお祝いで、名刺入れやキーケースを贈られる方が多いですね」

ー 水濡れは気をつけた方がいいですか
中川さん「はい、基本的には革製品と同じで。一応撥水加工はしているので、ちょっと水をこぼすぐらいだったら弾くので、普通に乾いた布で拭いていただければ大丈夫です。撥水性を持たせるため、表面に天然オイルを塗ってあります」

ー お手入れのポイントを教えてください。
中川さん「基本的にはそのまま使っていただいて、特にお手入れは必要ないんですよ。ツヤが欲しいとか、ちょっとお手入れしたいよという方は、もしお持ちでしたら、革専用のクリームをすり込んでいただいてもいいですし、よくお勧めしているのは、自分のハンドクリームを塗った時にもそのまますり込んであげると、ちょっと飴色になってきてまたそれもかわいいです」

中川さん、たくさんの質問にお答えいただき、ありがとうございました。
お話の中で、「気軽にお問い合わせください」と何度もおっしゃっていたことが印象的でした。
何か気になることがあれば、ぜひお問い合わせをされてみてくださいね。

never leather の描く未来と、みなさまへのメッセージ

2024年の立ち上げから、今年で3年目に。急速な時代の変化を見つめながら、今感じていること、考えていること、描くこれからの未来。そして、この記事をご覧いただいたみなさまへのメッセージを伺いました。

「循環」。
中川さんから繰り返しお聞かせいただいた言葉です。「never leather」のブランド名にも込められた、中川さんの描く循環とは、一体どのようなものなのでしょう。

中川さん
「すべてのものは変化する、すべてのものは土に還るよねっていうところから、発想が始まっていて。土から生まれたものが、最後は土に還る。そのサイクルが自然だし、変化をしていく、朽ちていく、土に還るっていうのは、美しい一つの循環なんじゃないかなと思っています。 全てのものは変化していく、一定のものではないという気持ちを込めて、” never “ の言葉をつけました」

「美しい一つの循環」。
たくさんの物に頼り、すごいスピードで回しながら進んでいくわたしたちの暮らしの中で、大きな自然の循環の一部であれる感覚は、とてもほっとする、心地よいものだろうと感じます。

長く大切に使った先でその寿命が来た時、いざ循環させたいと思ったら、どんな方法でそれを実現できるのでしょう。

中川さん
「私たちのこの製品を使い終わった後に、ゴミ箱に捨ててほしくないなと思っていて。ゴミに捨てちゃうとゴミになるだけなんですけれども、実はちょっとハサミで切って土に埋めていただければ、約120日で土に一体化するんですね。自然の中だとミミズの餌になったりするので、それぐらい安全なというか、自然なものだけで作られているんです。なかなか土が周りにない方には、コンポストや家庭菜園、観葉植物などの土もおすすめです。ほんの少しの土でも、小物なので、ちっちゃくしていただければ土に戻るんですよ」。

(※生分解性の詳細は、前編もご参照ください)

観葉植物の土でもOKとは!驚きです。そういった土も周りになくむずかしい方には、「さよならの作法」というサービスもご用意されているそうですよ。

中川さん
「使い終わってさよならとなった時に、周りに土がなければ、ぜひ当社に返送してくださいというサービスをしています。お送りいただいたら、我々で責任を持って土に返します。最後まで責任を持つので、というか、戻ってくるのが楽しみな部分もあるので、ぜひ ”さよならの作法” というサービスをご活用いただいて、循環の最後まで責任を持って見守るというのをやっていけたらと思っています」

ブランドが3年目のためまだ利用はないそうですが、初めて届く日をそろそろかなと、楽しみに待たれているそうです。プロダクトへの愛情が伝わってきますね。

「循環」という大きなサイクルの実現を目指す中川さんは今、どんな未来を描いているのでしょう。今後の展望を伺ってみました。

中川さん
「ココナッツで出来た素材って、まだ知らない人がほとんどだと思うので、まず知っていただいて、植物100%でこういう素材ができるんだっていうのを知っていただくだけで、すごくうれしいなという風に思ってます。それで、かわいいなとか、素材の独特さをおもしろいなと思っていただいて、その背景としてインドのアップサイクルだったり、労働者の問題だったりがあることに行き着いていただければ、本当にうれしいですし。でもそこを前面に出すというよりは、素材のおもしろさ、かわいさっていうのをまず知っていただけたらいいなという風に思ってます」

まず、かわいい、おもしろい、と気になって、好きになってもらう。大切なことですよね。わたし自身、魅了されている一人ですので、本記事をご覧いただいているみなさまに魅力が少しでもお届け出来ていたら、本当にうれしいなあと思います。

細くとも長くやっていきたい、1個でも2個でも実現することに意味がある、と語る中川さん。コツコツと描く未来へ近づいていくイメージと同時に、今年はアメリカとヨーロッパでの展開にもチャレンジされています。

中川さん
「昨年から、夫の仕事の関係でニューヨークに暮らしていて。それもありますし、欧米の方はエシカルやサステナブルであることが大前提という意識に変わってきているんですよね。なので、そういった土台があるところで一度勝負したいなという風に思っています。ニューヨークの飲食店を皮切りに、カフェやコンセプトショップだったり、ステーショナリーで広めていきたいなという風に思っているところです」

新商品のコースターのように、海外展開の中で生まれたプロダクトが日本で販売されたり、といった形も今後期待出来るようですよ。さまざまな国や土地の風が吹き込まれたラインナップが増えていくのかなと思うと、これからがますます楽しみですね。

最後に、本記事をご覧いただいているみなさまへ、メッセージをいただきました。

中川さん
「おもしろいものとか新しいものを、常に無意識に探してるお客様って多いんじゃないかな、と思っています。自分自身がそうなので。そういった、ちょっとアンテナを張られているお客様に、スーパーデリバリーさんを通じてお届けできたら、一番うれしいなと思っていて。まずやっぱり手に取っていただくというか、目に触れていただく機会を増やしたいなという風に思っています。ちょっとでもなにかココナッツとか新素材といったところに興味を持たれた方がいらっしゃったら、気軽にご連絡いただきたいです」

これ、おもしろい!ココナッツレザーに出会った時に中川さんが感じたその気持ちが、never leather のプロダクトに乗せて、日本の、世界のたくさんの方の元へ、届いていきますように。その先に、中川さんの描く「美しい大きな循環」の未来が、きっと待っている気がします。


文と写真
エシカルデザイナー 植木美穂
web | ethical-design.com   Instagram | @miho.ethical

エシカリージャパン