新素材・ココナッツレザーとの出会いから、「この素材を広めたい!」の想いで中川さん(エシカリージャパン合同会社 代表)が「never leather」を立ち上げたのは、2024年のこと。色の美しさとあたたかな手触りが魅力的な植物由来100%の素材を、日本の職人さんが確かな品質で仕立てた製品は、一つひとつが唯一無二。かつ、とってもサステナブルな秘密がたくさん隠されているんです。気になる魅力がたっぷりの「never leather」のこと、中川さんにじっくりとお話を伺いました。
(※ココナッツレザー:「レザー」「革」は動物由来の製品に対する呼称なので、正確にはレザーではありません。本記事では、never leather の製品を形作るサステナブルな新素材の呼称として、ココナッツレザー(通称)の言葉を使用しています。)

土に還せる名刺入れ?ココナッツウォーターから生まれた植物由来100%の新素材・ココナッツレザーとは

名刺入れが土に還せるって、どういうことなんだろう?
初めて「never leather」を知った時、そのプロダクトとしての魅力に惹かれると同時に、頭の中がハテナと興味でいっぱいになりました。一番人気という名刺入れや、しおり、キーケース、コースターなど、暮らしのそばにいつもいてくれるアイテムを、丁寧なものづくりで届けてくれるnever leather さん。まずはブランドを形作る新素材・ココナッツレザー(通称)って、なに?を、教えていただきました。
中川さん
「一般に “ココナッツレザー” と紹介されますが、正確には革(レザー)ではありません。ココナッツウォーターをアップサイクルして作られた、インド生まれの植物由来素材『Malai(マライ)』です。ココナッツの聖地とも呼ばれる南インドのケーララ州で廃棄予定だったココナッツウォーターを回収して作られている、珍しい素材です」
手で触れてみると驚くほど軽く、自然の美しい色とやさしい香り、繊維が織り込まれた見た目のかわいさと楽しい手触り。それでいて洗練された雰囲気をも纏う、そのバランスが絶妙だなあ、と感じます。中川さんが教えてくれた ” 和紙と本革の間ぐらいの素材感 ” という表現が、まさにぴったりです。

バイオレザー、フェイクレザー、ヴィーガンレザーといった言葉も最近ではよく耳にするようになりましたが、元となる原料も質感も色味も、特徴は多種多様。その中で、ココナッツレザーは特に、どんな特徴を持つのでしょう?
中川さん
「素材のいちばんの特徴は、100%植物由来のものだけで作られている、ということです。染料も含めて植物から取っているので、そこはすごく自慢できることかなと思います。他の代替レザーは石油由来の合皮部分のパーセンテージを、植物のものを入れて減らしているものが多いのですが、ココナッツレザーの場合は発想が違って、”植物から作る” という感じ。なので、合皮の代替とも、特徴がちょっと違うのかなと思います。
二点目に、植物由来100%で、生分解性を備えていることが特徴です。例えば合皮などは石油由来のプラスチックが入っていて、多くの石油由来プラスチックは容易には生分解せず、数十年から数百年にわたり環境中に残るとされています。このココナッツでできた素材ですと、インドや日本のような高温多湿の環境だと、90日から120日で土に還る。高い生分解性が、素材としての特徴になります」
なるほど、なるほど。
だから、「土に還せる名刺入れ」なんですね。長く大切に使っていても、壊れたりくたびれたりして手放す瞬間が訪れるのは、物の宿命というもの。植物生まれで、手放す時には自然へと還していく。それを実現できるのが、新素材・ココナッツレザーの大きな特徴のようです。
(※生分解性のこと:中川さんによると、適切なコンポスト環境に入れた場合、微生物によって約3か月で分解されるとされています。分解にかかる期間は、温度、湿度、微生物などの環境によって異なるのだそうです。)
インドの工房から、日本の職人へ。海を渡る丁寧なものづくり
ココナッツレザーはインドの工房で、10名ほどの職人さんたちによって手作りされているそう。
そして製品は、日本の職人さんが丁寧な手仕事で仕上げていきます。それぞれどんな場所で、どんな風に形になっていくのでしょうか。まずは、インドの工房のお話から伺っていきましょう。
中川さん
「南インドのココナッツ加工場では、成熟したココナッツから果肉を取り出す際に、大量のココナッツウォーターが副産物として発生します。その廃棄されるココナッツウォーターを回収し、活用しています。
廃棄予定のココナッツを地元の農家さんから回収させていただいて、ココナッツのジャングルの中に建つ工房へ運びます。中身のココナッツウォーターを、大きな釜や樽のようなところに集めて、発酵させるんですね。これが微生物の発酵の力で水がだんだんジェル状になってきて、コラーゲンみたいなプルプルな状態になるんですよ。
そこに麻とかバナナのファイバーを混ぜ込みます。強度だったりしなやかさを出す工程になりますね。色をつける場合は、その段階で草木だったり、黒は墨だったり、天然由来の染料を混ぜて。和紙のような作り方と思うと想像しやすいのかなと思います。そのジェル状になったものを大きな木枠に漉いて、棚に乗せて、天日干しをして。
シート状になったものを、ローラーで薄く平たくしていく作業も、男性2名掛かりでガッガッガッとやっています。結構力仕事なんですよね。デコボコが徐々にまっすぐになってきて、そのデコボコ自体がいい味を出しているんですけど、ローラーでまっすぐにして、シートになったら日本に持ってくるという感じで、ここまでがインドの工程になります」

染料も含めて材料はすべて、ケーララ州で採れたものを使用しているそう。とってもローカルメイド!と驚きです。すべて手作業ということですが、シートを作る工程は、どのぐらいの時間がかかるものなのでしょう?
中川さん
「そうですね、発酵に2週間、天日干しに2週間で、インドって結構モンスーン時期は湿気がすごい時期があるんです、100%とか。そうするとちょっと天日干しも時間かかるんですけど、1枚のシートは大体1ヶ月程度の工程で出来上がります」
なんと、1ヶ月間もかかるものなのですね。ゆっくりゆっくりと、時間をかけて。その間にも、ココナッツが豊かに実るジャングルの空気感が、素材に溶け込んでいそうな気がします。そして生地は海を渡り、日本へ。東京の職人さんが、製品の形へと仕上げていきます。
中川さん
「東京の職人さんが一つひとつ手作業で仕立てています。こういったシーンでこういったものを作りたいというイメージを職人さんにお伝えして、細かい点は職人さんにお任せしています。日本の職人さんの技術力というか、生活に馴染む作り方を知っていらっしゃるので、本当にそこは信頼して、おんぶにだっこという感じで」
never leather の製品を手に取って感じる上質感、あつらえの良さには、日本の職人さんの丁寧な仕事と確かな技術があったのだなあと、なんだかとても納得です。そしてそこには、サステナブルなものづくりへのこだわりも込められていたようです。
中川さん
「私たち消費者が納得のいくクオリティで毎日持っていただかないと、長い目で見てサステナブルじゃないと思うんですよね。特にこの名刺入れって、日本の文化でもあるし、単にカードホルダーではない、もっと気持ちが込もったものだと思うんですね。ビジネスシーンですごく大切だったりとか、自分が何か仕事で頑張る時とか、何かに挑戦する時に隣にいる存在かなという風に思っていて、その文脈をすごくわかって汲んでくださる東京の職人さんに、ずっと最終の加工をお願いしてるっていう感じです」
暮らしのシーンをイメージして、丁寧に形作り、仕上げていく。だからどのプロダクトも、「わたしの暮らし」に寄り添ってくれるやさしさと安心感があるんだと、こちらもとても納得する気持ちになりました。

と、前編はここまで。
後編では、ブランドの誕生秘話や、お店でお取り扱いされる際に気になるポイントなど、まだまだたっぷりとお話を伺っていますよ。どうぞお楽しみに!
後編へつづく
文と写真
エシカルデザイナー 植木美穂
web | ethical-design.com Instagram | @miho.ethical
エシカリージャパン






