春の絶景ネモフィラ畑や夏のROCK IN JAPAN FESTIVAL(通称:ロッキン)でにぎわう、ひたち海浜公園の玄関口である茨城県ひたちなか市にある勝田駅。イベントシーズンにはたくさんの人が集まる茨城県内でも知名度のある勝田駅に、人々が笑顔で集うオーガニックの食品店「Bio QUON(ビオクオン)」があります。代表の河野さんは、家族が経営する金属回収の会社の財務・経理を担当しながら、キノコ農業を始め、さらにはこのBio QUONを開業されたとのこと。お店を始めて1年が過ぎた今、開業の経緯や運営してみて感じていること、そしてこれからについてインタビューしました。

(Bio QUON代表の河野さん)

開業のきっかけはキノコと空き物件

──勝田駅東口直結で、開店時間からお伺いしていますが、お客様が絶え間なく来店していますね。「駅」という場所にお店を出すことを計画されていたんですか?

河野さん:お店を出したいと思っていましたが、そんな矢先にこのお店の場所でシェアカフェを運営していた知人から、「この場所が空くのでお店をやらないか?」とお話をもらったんです。当時は、家族が経営する鉄など金属の再生リサイクルを行う会社の経理だけでなく、オーガニックへの関心から会社の新事業としてきのこを生産する「キノコノゴエン」をスタートしたころでした。百貨店さんに置いてもらうなど販路について考えていましたが、できればキノコを売るお店を自分で作りたいと思っていただけで、「駅」というのは特に考えていませんでしたね。

──え?!金属リサイクルの会社でキノコ生産も…?

河野さん:金属リサイクルは環境に配慮した事業なのですが、より身近な食を通して地域にも貢献できる事業を行いたいと考えていました。工業的な大規模な農業ではなくて、会社の横に農業があるような自然な形で農業をしたいと思い描いていたんです。キノコの事業は脱サラした息子が経営を担ってくれています。有機JAS認定はまだ取得していませんが、準備を進めており、認定を受けられるよう勉強しながら生産をしています。

(店内に置かれている「キノコノゴエン」の商品)

オーガニックの学びから得た気持ちの変化

──キノコの話からオーガニックの話につながってくるんですね。

河野さん:「Bio QUON」では、キノコだけでなく、こだわってセレクトしたオーガニック食品や身体を気遣える地元の食品などを扱っています。とてもこだわっているので、珍しさと商品の多さで楽しんでいただけると思います。

──店名の「Bio QUON」の「Bio」はフランス語でオーガニックの意味ですよね。「QUON」はどういった意味なんですか?

河野さん:久遠という字にするとわかるように「永遠」という意味です。過去も未来も「今」の捉え方で変わってきます。より良い未来のために「今」を考える、過去の経験も「今」どのように思うかで見方が変わる。そんな思いを込めて「Bio QUON」にしました。

──ところで河野さんがオーガニックを学ぶきっかけは何だったんですか?

河野さん:入口は健康への興味ですね。自分自身が小学生のころから花粉症でした。実は息子はアトピーで、子育てをしながら健康に良いものを「プラス」して補っていく方法を模索していたんです。でもよくならない…。そう考えたときに「マイナス」をしてみたんです。

私の場合は、白米よりも麺を好んで食べることが多かったのですが、試しに小麦粉を数カ月抜いてみたところ、おなかの調子が良くなり、花粉症の症状も緩和されていきました。そのすっきりした状態になったときに、「これから何を食べようかな」と考えていた時にオーガニックと出会ったんです。

河野さん:その後、息子がドイツに留学することになり、ドイツにいる息子に会いに旅行に行ったんです。ドイツには日本のようなコンビニがなく、手軽に食べられる代表格のカップラーメンも試しに食べてみたところ、日本のものとは違ってとても物足りない味でした。でもその違いを体験したことで、日本の味がどういった素材で作られているのか、以前より増して興味を持つ機会にもなったんです。

──ドイツはオーガニック先進国のイメージがありますが、それも関係しているってことですかね?

河野さん:カップラーメンには長期保存やおいしく感じるための工夫が凝縮されていますが、添加物も多く入っていますよね。ドイツは添加物に対する基準が日本より厳しいので、味もやはり変わってきます。それに、農作物に使われる農薬も日本とは基準が違います。そういった気づきが、オーガニックの学びを深めるきっかけになっていきました。

──オーガニックを学び始めてから、このBio QUONの開業までは一直線だったんですか?

河野さん:そうでもないですよ。本やセミナーに参加してみたりして学んできましたが、学んだことで食や生活習慣に課題が浮かび上がりますが、それが悩みになってしまって「0か100か」のネガティブな思考になった時期もありました。ただ、そういった経験を通して気づいたのは、食がノーマルになると頭が冴えてくるなと。頭がすっきりしてくると、食べ物や触れるものに対して違和感を感じたり、心に向き合えているなと私は感じられるようになりました。最近は心理学も勉強して、自分の内側に客観的に向き合えるようになってきました。オーガニックに出会う前に子どもたちに食べさせていた食事は、「忙しいから仕方ない…」と罪悪感を感じながら過ごしていたこともあります。今はオーガニックを通じて、心や身体の健康をこのお店を通してお客様にお伝えする場ができて、「この場所(店)を作ってよかった!」と心から思っています。第一次産業、第二次産業もオーガニックを通してみんなハッピーになれると思っています。

(冷凍冷蔵のコーナーには地元の農産物を中心に、こだわりの食材がぎっしりと並んでいます)

お店を「人が集まる場所」に

──お店のインスタグラムには、イベントの情報がたくさん上がっています。「場所」という意味で、イベントの実施を大切にされているんでしょうか?

河野さん:私自身はお店を「公民館」のような存在と考えて皆さんに無料で貸し出しています。

──「公民館」という表現がすてきですね。みんながフラットに集まれるイメージが伝わってきます。

河野さん:ワークショップや勉強会の場としてイートインスペースを利用できるようにしています。駅という場所柄、人は集まりやすいと思いますし、イベントを通してお店の存在を知ってもらうことにもつながります。このお店にはいろんな人がつながり、オーガニックや地元の商品に興味を持ってもらう情報発信の場に、と思っています。

──お店の半分が食品と雑貨の物販スペースで、残り半分がキッチンとイートインスペースなんですね。

河野さん:以前はカフェだったのでキッチンがあり、手作りのスイーツ、おむすび、総菜、スープ、ドリンクも販売しています。提供している食事に使っている調味料などは店内で販売もしています。このおからドーナツは、地元のソイジェラートを作っているジェラート屋さんからレシピを教えてもらい、店内で手作りで作っています。

河野さん:あとは、鹿島神宮の目の前にある「Paradise Beer Factory」さんのクラフトビールも置いています。地元のメーカーなんですが、実はドイツの展示会に出張していた時にお会いしてつながったんです。地域のつながりを大切に商品をセレクトしたいと奔走していますが、地元でお会いするのではなく、ドイツでつながるとはちょっとびっくりですよね。

私がほしい!これいい!と思ったものをセレクト

──店内を見ているとオーガニック食材や無添加の物などがずらりと並んでいます。地元茨城の特産である干し芋や納豆など定番の物だけでなく、とってもおしゃれなパッケージのマスタードやハーブなど、新しそうな商品もありますね!ついつい長居してしまいそうです。

河野さん:できるだけたくさんの商品を並べることでお客様が商品と出会うチャンスを多く提供することも大切だと思います。実店舗でイートインもキッチンもあるので、オーガニックや生産者さんたちがこだわって作った商品を味わって体験してもらうことで、お店の想いに共感してもらえたらと思っています。

河野さん:こちらにはおもちゃ箱さんが扱っている「レーベンスバウム」を置いています。ミックスハーブは簡単なのにとってもおいしく料理ができるので私自身のお気に入りです。インスタントの穀物コーヒーもとってもおいしいんですよ。

──先ほどから店内の商品をご紹介していただいているんですが、「日頃から使っていて、簡単でおいしいよ」という主婦目線の接客トークは、お客様の心をつかんでいそうですね。ついつい手が伸びてしまいそうです

──こちら側も商品がずらりと並んでいますね。こちらはどこのブランドですか?

河野さん:このあたりは茨城県内のメーカーの商品です。古河市のハーブ農園のハーブティーや、お隣の水戸市のマスタードなどです。できるだけ近隣だけでなく、遠方の生産者さんに会いに行って、商品づくりの背景も知りたいと思っています。大阪の海産物の会社や愛知の醸造会社など、歴史あるものづくりや伝統の手法で生産されている様子も見学させてもらっています。

──フットワークの軽さがこの商品バリエーションにつながっているんですね!

河野さん:ネット仕入れもしていますが、できるだけ生産者の方とお会いして商品の背景も知っておきたいと思っています。それからドイツのオーガニックを学んできたことで、その仲間関係からブランドを教えてもらったり、つながっていくことも多いです。

──これだけ多く、こだわり抜いた商品を並べるには、オーガニックを通じた人とのつながりが背景にあるんですね。

POPづくりはスタッフみんなで商品に向き合って魅力を理解する時間に

──店内にはずらりと並ぶ商品とその隣にPOPが置いてあります。手書きのものも多いですね。

河野さん:スタッフは地元の若者も多いんですが、入店当初はオーガニックには興味がないというスタッフもいます。だからこそ、社員教育は商品について背景も含めて説明をすることが大切です。

──具体的にはどういったことをされているんですか?

河野さん:POPづくりをするにも、商品の内容を調べるところから始まり、何が良いのか?それをどう伝えるのか、と理解と整理をして商品を知っていきますよね。それをお客様に伝えるためPOPにしたためることで商品への愛着が生まれると思うんです。

──なるほど、「理解して整理する」ことが大事なんですね。自分で考えるというプロセスですね。

河野さん:自分で考えることでその後の接客トークにも使えますよね。あとはスタッフみんなで試食して感想を持つことも大切だと思います。スタッフがおいしいと思ったり、良いと思った経験は、自信を持って商品を提案できる接客力につながります。実店舗の強みは「体験」ですよね。スタッフ自身も商品を実際に使ってみることで、より一層、商品の魅力を伝えられるようになると思います。

──情報を咀嚼して、経験も重ねていくことが大切ですね。それもこれも、河野さんご自身が長い間、自身の健康を意識し、よりよい生活のために行動を続け学び、経験も通して咀嚼してきたからこそ、スタッフの皆さんにもお客様にもお伝えできることなんだなと思います。Bio Quonさんは発信力と求心力の両方で、地元をつなぎ、お客様と健康、ハッピーをつないでいく素敵なお店だなと感じています。今日はお話をお聞かせいただきありがとうございました。

▼「Bio QUON(ビオクオン)」
茨城県ひたちなか市勝田中央1−9 JR勝田駅構内東口1階
(営業時間)11:00~19:00
お店のInstagram: https://www.instagram.com/bio_quon/

オーガニックなどエシカルな商品の仕入れならスーパーデリバリー

スーパーデリバリーでは、オーガニック、フェアトレード、リサイクル、アップサイクル、ヴィーガンなどエシカルな商品を多数取り扱っています。事業者であれば業種問わず、会費無料でエシカル商品の仕入れが可能です。自分の利益だけでなく、お客様の健康や豊かな生活、そして環境や社会を想いやるエシカルなアイテムをお店で仕入れて販売してみませんか?まずは1点・小ロットでお試しでの仕入れもOK。卸価格で商品を購入いただけます。