フェアトレードで作られた洋服や雑貨を展開する京都の企業「シサム工房」では、フェアトレードのものづくりの現場を”お話会”を通して知る機会を設けています。

今回のお話会では、インドのフェアトレードNGO「SASHA(サシャ)」の代表と、「世界フェアトレード連盟:World Fair Trade Organization  (以降「WFTO」と略)」の会長も務めるルーパさんが参加し、フェアトレードの意義や、WFTOが掲げる「フェアトレードの10の原則」についてお話をお聞きしました。

インドから来日、フェアトレードNGO「SASHA(サシャ)」代表のルーパさんってどんな人?

インドのフェアトレードNGOの「SASHA(サシャ)」は1978年に設立されました。フェアトレードに関わる専門家、デザイナー、そして農村開発者のグループによる非営利団体です。ルーパさんは手工芸の会社でマネジメント担当の仕事をしていましたが、SASHAを立ち上げたシャッビーさんの誘いでSASHAに加わりました。その後、初代代表のシャッビーさんがお亡くなりになり、2代目の代表を務めています。

SASHAでは
・職人たちが持つ素晴らしい技術をいかす
・周辺にある材料を使う
・トレンドやマーケットなどニーズを理解したデザイナーを据える
ことを大切にしています。

インドの伝統技術を持つ職人と消費者側の市場をつなぐのがSASHAの役割です。文化も生活環境も異なるインドで作ったものが日本などの輸出先でちゃんと売れるものを作ることで、安定した売り上げをつくり、それが生産者の生活を継続的に支え、世界に認められているという自信と自尊心を得ていくことになるからです。
現在SASHAは、小さな職人が集まる70グループ3,500人もの生産者の支援を行っており、インドでも指折りのフェアトレードNGOに成長しています。

ルーパさんが代表を務めるWFTOが掲げる「フェアトレード10の原則」

ルーパさんは、SASHAの代表だけでなく、フェアトレード組織の国際的ネットワークである「World Fair Trade Organization (WFTO)」の会長も務めています。

そのWFTOでは、「フェアトレードの10原則」を掲げており、ルーパさんからの説明もありました。

経済的に恵まれない生産者にチャンスを与える:手工芸や農家、テキスタイルに関わる人など、背景やスキルは関係なくチャンスは公平にあると考えます。

◆透明性と説明責任:活動はオープンにし共有することを大切にしています

◆公正な取引慣行:注文は前払い、納品は納期をしっかり守ること

◆適正価格の支払い

◆児童労働と強制労働の禁止 /◆無差別、男女平等、結社の自由へのコミットメント:どんな形であっても児童労働や強制労働は許しません。宗教や性別による差別もしません。

◆良好な労働条件の確保

◆キャパシティビルディングの提供:商品を作るためのスキルや帳簿を付けるためのスキルなどを得るためのサポートをします

◆フェアトレードの推進:フェアトレードに限らず、一般のビジネス時代がもっとフェアになるように。政府に対してはフェアトレードのサポートを依頼し、消費者にはフェアトレード商品をもっと買ってもえるように推進します。

◆環境の尊重:ビジネスが大きくなるほど、環境負荷は大きくなる傾向です。気候変動は深刻化しており、もう一つの地球はありません。だからこそフェアトレードでは、環境の尊重を重要視します。

お話会の最後、ルーパさんに質問をさせてもらいました。

──「地球温暖化によりインドでは命にかかわるほどの熱波も発生しています。”環境の尊重”については具体的にはどういったことを実施していますか?」

ルーパさん:私がいるコルカタでは、2024年4月に45度を記録しました。いままで4月にこれほどの高温になったことはありません。予測できないほどの暑さに襲われています。4月の暑さの際には、「オフィスに来ないで」とスタッフに伝えました。

環境の尊重については、フェアトレード自体が手工芸であり、機械を使わないので環境負荷のインパクトは少なくて済みます。とはいえ、作業場に電力は必要なので太陽光発電で賄うようにしています。またコストを下げるという意味でも太陽光発電を活用しています。

他の部分では、染めやプリントの工程で出る排水は、飲んでも良いレベル(「本当に飲むことはありませんが(笑)」とルーパさん)まできれいにしています。

そしてここ数年の最大の取り組みは、「Workstation(ワークステーション)」です。コロナ禍で出社できない職人も多く、職場のポータブル化をすすめています。道具などを持ち運びできるようにし、屋外が暑すぎれば家の中で作業をできるようにするなど、コロナ禍のロックダウン時の対策が今も生きています。

ルーパさんは、現在100の生産者グループと関わっています。その60%が女性であり、インドの12州の州で活動をしています。その人数は5,000人にもなっており、直接的に影響を与えています。

──フェアトレードでこれだけの規模の人々が関係していることは、フェアトレードの商品を選ぶことによる人や社会への影響、環境への影響にもかかわってくると思う数字です。

手作りだからこそ、心と体を養う価値が生まれる

フェアトレードで作られているクラフトは、さまざまな職人たちによる「手作り」で生まれています。SASHAでは、クラフトがもつ価値をとても大事にしているとルーパさんからお話がありました。

Fast(ファスト)に、つまり”速く”作られたものは、機械で大量に短時間で作られています。心が満たされるような作られ方とは言えず、作り手にとっても使う側にとっても体にも悪影響があるかもしれません。一方フェアトレードで作り出される手工芸品はSlow(スロー)に作られます。手作りのクラフトは、まるで心と体を養う儀式の中で生み出されていて、ゆっくりと愛情を込めながら、人々の分かち合いの中で育まれています。クラフトは大量生産の製品にはない価値や役割があると思っています。

シサム工房で扱うSASHA(サシャ)の商品

今回お話を聞いたルーパさんが代表を務めるSASHAでは、「Khadi(カディ)」と呼ばれるインドで何千年にわたって作られてきた手つむぎの繊細な綿の生地を使った衣料品や、職人が一つずつ丁寧に木を削ってつくる「neem(ニーム)」という木製の食器やカトラリーなどのアイテムなどたくさんの製品を作っています。

シサム工房では、今回のようにフェアトレードの製品を作っている生産者のことを知る機会を定期的に設けています。フェアトレード商品についてもっと詳しく知りたいと思った際は、ぜひシサム工房のホームページやSNSをチェックしたり、スーパーデリバリーでの取引開始後に受け取れるシサム工房からのメールマガジンなどから、お話会など学びの場に気軽に参加してみてください。

職人たちが磨き上げてきた巧みな技術や、彼らの生活様式や文化から生まれた手法などを直接受け取り楽しめるがフェアトレード商品です。ぜひシサム工房の商品ページもご覧になってみてください。

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