ネパールのフェアトレードNGOである「Mahaguthi(マハグチ)」は、ネパール語で「大きなコミュニティ」という意味。1984年に活動を開始し、「フェアトレードとは、お金ではなく人を中心に据えたビジネス。公正な賃金と技術指導を提供できれば、貧しい人々も、自らの人生を切り開くことができる。」と信念を持って活動しています。すべての部門をまとめると、なんと1,000人もの生産者が商品づくりをしている大きな組織です。
今回第5回「シサムの朝活 to B」では、ネパールのフェアトレードNGO「Mahaguthi(マハグチ)」で働く生産者の様子や工房の様子について知ることができました。主催したシサム工房では、「五方良し」の考えに基づき、みんなが笑顔になるフェアトレード商品を手掛けています。「シサムの朝活 to B」では、取引先向けにフェアトレードについて学べる機会で、月1回開催しています。
目次
ネパールに工房を構える「Mahaguthi(マハグチ)」
手工芸が盛んなネパールはフェアトレードも広まっている国です。今回の朝活では、大きな組織である「Mahaguthi(マハグチ)」の一部門である縫製部門について紹介していました。ネパールの首都カトマンズから約7キロ程度離れた緑豊かな場所で、日々30名ほどの女性たちが働いています。
シサム工房は、Mahaguthi(マハグチ)とシサム工房のつながりは2002年頃から始まり、現地の電力不足を補おうとソーラーパネルを贈るシサム工房独自のフェアトレードプレミアム基金を実施したこともあります。
2015年に発生したネパール地震では、多くのレンガ造りの建物が倒壊しましたが、重機もなく、がれきの撤去も手作業で行われ、公的な支援も少なく復興はなかなか進みませんでした。生産に使っていた道具も壊れてしまい、多くの人が収入を得ることができなくなってしまったのです。シサム工房では店頭募金を行い、出張のたびに店頭でお客様に書いていただいたメッセージカードも持参して、復興の応援をしていました。
そして直近では、コロナウィルスの感染拡大により、ネパールも例外なく人々の生活に大きく影響を及ぼしました。朝夕の食糧調達のみ家族から代表で1名だけ外出を許可される厳しい外出禁止の中では、生産はままなりませんでした。そのため生地の生産は難しい状態でしたが、一部は以前から在宅ワークをしている作り手もいたので、余っていた生地を使ってマスクづくりをするなどして、試行錯誤しながら生産活動を行っていました。
シサム工房としてもできることを考え、いくつもの困難を一緒に乗り越えようと交流を重ねてきた団体です。
工房の様子
「Mahaguthi(マハグチ)」は、フェアトレード組織の国際的ネットワークである「World Fair Trade Organization (WFTO)」の正式メンバーです。
2015年に発生したネパール地震の後に工房をカトマンズの中心部から移転しています。工房では女性たちがいきいきと働いているアットホームな雰囲気です。「Mahaguthi(マハグチ)」では、親族や知人づてに口コミを聞き、自ら雇用してほしいと入ってくる人がほとんどで、多くの人が長く勤めています。(フェアトレード団体によっては、貧困やDVから女性を守り自立してほしいと、ソーシャルワーカーが雇用する女性を探しているところもあります。)
3階建てのレンガ造りの建物で、裏庭では生地を洗ったり染めたり干したりする場所があります。生地作りから行っており、蛇腹にして干したり、ローラーでアイロンする作業が行われる場所です。
3階では、カッティングルームで生地を身幅に裁断しています。専用のカッターを使って15枚ずつくらいを丁寧にカットしています。
2階はスティッチングルームで工業用ミシンを使って女性たちが縫製をしています。またフィニッシングルームが隣接されていて、縫い上げた商品についたままの糸を切ったり、検品、アイロン、たたみ、袋詰めの作業も行われています。
手工芸が豊かなネパールはフェアトレードが盛んな国
Mahaguthi(マハグチ)があるネパールはインドとチベットの間にある国で、エベレストで知られるヒマラヤ山脈にある国です。同じ国でも南北で生活や言葉、文化が異なる国で、手工芸が多く、その手工芸の技術や伝統をいかしてフェアトレードで盛んな国でもあります。5月第2土曜日の世界フェアトレード・デーには、首都カトマンズに多くのフェアトレード団体の人々が集まり、にぎやかな一日になるほど、フェアトレードが広がっています。
女性がいきいきと働く「Mahaguthi(マハグチ)」のキーパーソンについてご紹介していきます。
フェアトレード界のリーダー的存在、キーパーソンの「スニルさん」
1,000人を超えるフェアトレードNGOのMahaguthi(マハグチ)の作り手を束ね、団体のキーパーソンであるCEOのスニルさん。フェアトレード界のリーダーとしてアジアのみならず世界中のフェアトレードの現場を見ています。フェアトレードでネパールの課題を解決しようと、20年以上にわたり零細企業支援やフェアトレードの推進に取り組んでいます。
ネパール国内のフェアトレード団体のコンソーシアムである「Fair Trade Group Nepal」の会長、フェアトレード組織の国際的ネットワークである「World Fair Trade Organization (WFTO)」のアジア代表理事、ネパール輸出企業家連盟(Federation of Export Entrepreneurs Nepal)の理事、社会起業家基金(ネパール社会福祉協議会/ネパール政府)のメンバーでもあります。ネパールの大学で教鞭も取っています。
このスニルさんが、次回の2023年5月12日(金)9時半~11時に開催する第6回のシサムの朝活toBに登壇されます。フェアトレードの現状をお聞きできたり、直接質問もできる機会になっています。
聴覚障がい者も自信や誇りをもって一緒に働く
「Mahaguthi(マハグチ)」には、教育や就業の機会に恵まれなかった聴覚障がい者の女性が数名働いています。ネパールには貧困やカーストの問題もあり、健常者にまじって働くこと自体が社会的にもモデル事例になっています。
工房はカトマンズからシャトルバスで30分ほど離れた場所にあり、Mahaguthi(マハグチ)で働く女性たちは毎朝シャトルバスに乗り込んで工房に向かいますが、女性が外で職に就くことが少ないネパールでは、マハグチに通う女性たちも憧れの的になっているそうです。
女性がリーダーとして活躍
女性が大切に扱われ尊厳をもって働き、収入面で家族を支えることができるMahaguthi(マハグチ)では、女性のリーダーもいます。
チャンドリカさんは、2015年のネパール地震で実家が倒壊してしまいお父様を亡くしています。チャンドリカさんのように被災し家族を亡くした人は多く、公的支援が少ないネパールでは女性が収入を得ることで、復興へ向かう一歩になっています。
チャンドリカさんは、独学で手話を習得して一緒に働く聴覚障がい者の人々の橋渡しもしています。英語はほとんどできないそうですが、察する能力にたけていて、生産指示書を理解し、パッキングなど全体的な工程や作業を把握しています。
ウッタラさんは、外部生産者の担当をしており、Mahaguthi(マハグチ)のアクセサリー部門「
Mahaguthi Subakamana(マハグチ スバカマナ)」を作っている職人さんたちとの打ち合わせや商品管理をしています。
徹底的な検品体制の見直しを実践!商品の価値を高めるために一緒になって検品を考える日々
フェアトレードで商品を作る際に立ちはだかる問題の一つに、検品基準の違いがあります。Mahaguthi(マハグチ)でもシサム工房から徹底的な見直しを依頼して、日本で購入してくれるお客様のために一緒になって検品の精度を上げる努力を続けてきました。
徹底的に伝えて、一緒に考えて実践
シサム工房副代表の人見さんによると、出張のたびにスーツケースいっぱいに商品をつめこみ、検品に問題のあった商品現物をMahaguthi(マハグチ)のメンバーと一緒に見て、検品の問題点を洗い出していくことから行っていたそうです。
問題点がある現物を実際に一緒に見ることで目線を合わせることができ、加えてその問題の解決策となる検品の方法までを一緒に考えることで検品の精度を上げています。その結果、土足を止めたり、床にシートを張って汚れが付かないようにしたりと改善策を考えて実践を積み重ねています。
商品が販売される日本は遠く離れた国で、もちろん言語も文化も価値観も違います。そういった状況で、日本で売るための検品基準を理解してもらうには努力がいることだったそうです。
紙タグも工房で作ったフェアトレードのものを
Mahaguthi(マハグチ)は1,000人を超える生産者が所属する大きな団体ですが、商品のタグについている紙タグはペーパー部門で作っています。紙タグもフェアトレード製品です。
2023年春夏からは、シサム工房の商品の生産者の様子を伝えようと紙タグにQRコードが印字されており、商品を作った人たちが分かるようになっています。
Mahaguthi(マハグチ)が作った商品
Mahaguthi(マハグチ)では、生地作りから商品を作っています。
また、真鍮の打ち込むことで模様を付けたアクセサリーも展開しています。
Mahaguthi Subakamana(マハグチ スバカマナ)の商品を見る
フェアトレードを「シサムの朝活」で一緒に学びませんか?
シサム工房では、月1回のペースで卸先様に対して「シサムの朝活toB」をZoomを使いオンラインで実施しています。フェアトレードの商品を仕入れるときやお客様に説明したり、店頭で陳列する際に役立つ、フェアトレードの知識を広げませんか?
過去開催の朝活の内容については、以下レポート記事でご覧いただけますので、ご興味ある方はぜひ今後開催する朝活にご参加ください。
ご参加にあたっては、(1)シサム工房に直接お問い合わせするか、(2)スーパーデリバリー入会後にシサム工房と取引可能な状態となると開催のお知らせが届きますので、参加のお申し込みをお願いいたします。