1日の中でも忙しい時間帯とそうでない時間帯がある。暇だからといってぼうっと過ごしていると、お客さまが帰ってから在庫の出し忘れに気付いたり、「あの時一緒にこれもお薦めすればよかった」などと後悔することになる。商品整理、ディスプレーの変更など、手すき時間は忙しいときに備えるためにある。1年を通しても同様で、小売業ではセール後の2月と8月が閑散期に当たる。来るべき繁忙期に備え準備をする時期であり、日ごろ忙しくてできないことをやれるチャンスである。冬のセールが一段落したら、春夏シーズンに向けて今からすべきことをリストアップしてみよう。

1.手すき時間の使い方で販売力に大きな差がつく

仕事は追われてすると苦しいが、先を読んで行動すると楽しいものである。手すき時間を有効に使えば、他店に先んじ販売力に大きな差をつけることができる。

シーズン通じての販売計画

まずシーズン全体の販売計画を立てる。商品、販促計画、ディスプレーを含めた店内レイアウト、この3つがそろって初めて効果が期待できる。大切なのは「いつ」「誰に対して」「どんな商品を」「どんな目的で」「どのようにして行うか」を明確にすること。そしてスタッフ全員が共通の目標を持つことである。

イベント

いつも3月上旬にスプリングフェアをしているからという安易な動機で、毎年同じキャッチコピーや内容でイベントを行わないこと。時代やトレンドの変化に合わせて、開催時期やキャッチコピーも変化させるべきである。「また今年も……」ではなく、「今年は何かな……」という期待感を与えることが大切である。

レイアウト

どこに何をどのように陳列するかによって同じ商品でも違った印象に見える。いつも決まった場所に陳列するという先入観を捨て、商品がよりすてきに見える場所やディスプレーの仕方はないかを考えてみよう。立ち上がりは商品量も少ないため、その分演出力が鍵となる。

販促ツールの作製

POP…イベント用のポスターは通行客にも分かるように。雑誌の切り抜きや写真などを利用してイメージに訴え掛ける。お薦め商品には、「体験」をPOPに託して注目度アップを狙う。「肌触りが気持ち良い」「ひざ下が長く見える」というような体験を言葉にするのである。

コーディネートマップ…小物も含め、「これだけのアイテムがあれば、ばっちりコーディネートできますよ」という説明をビジュアル化したもの。パンフレットなどのツールがなければ自分たちで手作りする。百聞は一見にしかずでコーディネート提案の助けになる。スタッフ自らがモデルになり数パターンのコーディネートの写真を撮り、アルバムを作製する方法も効果的である。

情報誌…DMを出さない店でも、イベントの案内や商品情報をA5もしくはA4サイズで作製する。来店のお客さまに手渡ししたり、お買い上げの際に商品と一緒に言葉を添えて袋に入れたりすることで集客力アップが期待できる。

顧客カードの整理

冬のセールでDMを出したとき、転居先不明で戻ってきたはがきがあれば、それらの顧客カードは除外しておく。また、特定の顧客のみに出す場合も考えて、何らかの基準によりグループ分けしておくと、欲しい顧客カードをすぐに取り出すことができる。

2.通勤時間を無駄にしない過ごし方

日常の何げない生活の中に仕事に役立つ情報や自分を磨く場がある。店頭に立っている時だけが仕事ではない。サービス業に携わっている人にとっては遊びも仕事なのだ。常にアンテナを張っていれば、通勤時間であっても無駄にしない活用法がある。毎日の積み重ねが、やがては大きな差となって表れるのだ。

会話のネタを仕入れる

駅のホームで待っているとき、携帯電話のサイトなどで、最新のニュースや天気予報をチェックしておこう。特に天気の話題は、アプローチをはじめ接客には欠かせない。その日の天気や気温、さらに週間予報まで把握しておくと役に立つ。

商品知識を身につける

英単語を覚えるような感覚で、接客に必要な知識を身に付けよう。たとえ1日1つの専門用語を覚えるだけでも、1週間で5つ、1カ月で20も覚えることができる。続けるコツは、苦手なものから取り掛かるのではなく、興味があるものから覚え始めること。そして、毎日10分でもいいから活字を読む習慣を付けよう。読書なら休憩のわずかな時間でも無駄なく活用できる。

イベントやキャッチコピーのネタを仕入れる

電車内のファッション雑誌の広告からは、その特集の内容からイベントのヒントが得られたり、POPなどのうまいキャッチコピーがひらめくことがある。

人間ウォッチングでコーディネート力を磨く

通勤電車にはさまざまな年齢層の人が乗っている。年代ごとのスタイリングがリサーチできると同時に、コーディネート力を磨くことができる。店の商品を思い浮かべながら、目の前の人をモデルにしてコーディネート提案のシミュレーションをしてみよう。

・もしこの人が来店されたら、どんなコーディネートをお薦めするか
・この人をもっとすてきにするには、どのアイテムをどう変化させたらよいか
・洋服と髪形、メーク、バッグ、靴などのトータルバランスが取れているか、もしアドバイスをするとしたらどのような提案をするか
・提案した商品がその人の好みに合わなかったら、どのように対応するか

さまざまなお客さまの年齢層を設定して、店頭に立つ前にウオーミングアップをする機会として役立てよう。

 

[記事提供元]ファッション専門店の20~30歳代ショップスタッフに支持されている月刊総合専門誌「ファッション販売」

 

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