売上げが厳しい状況下では、店長はまず率先して販売して売上げをつくるとともに、1人の力だけでは限界があるので、ほかのスタッフの販売力を実践の中で上げていき、全体として売上げを上げていくことが求められます。そこで、店長が自身の接客をしつつできる「スタッフ販売力アップのちょっとしたコツ」をお教えしたいと思います。

店長は売りながら育てる

本題に入る前に、店長であるあなたの現状を少しだけ振り返ってほしいのです。がむしゃらに一番の売上げを取ってはいませんか?

店長は店で一番の販売力があると思いますが、必ず日々一番を取らないといけないのでしょうか?店長が前へ出てしまうと、スタッフは後ろへ下がりがちなことに気付いていますか?店長が1人で売れば売るほど、スタッフは店長が売ってくれるからラッキー、店長に遠慮して接客につきにくいなどと思っているケースが多いのです。

店長が見せなくてはいけないのは、一番の販売力というよりも、一番最初に接客につくという意欲なのです。

また、接客以外の仕事に追われていませんか?売上げ不振が続くと、会社やデベロッパーへの提出書類が急に増えたり、会議に呼ばれたりと、本来すべき接客がおろそかになりがちです。この場合は次の2点を心掛けましょう。

1.なぜ忙しいのかをスタッフに伝える

書類を見せながら目的、期限、提出先などを教えるだけでスタッフのモチベーションは維持されます。付帯業務を行う時間と場所を決めておくことも必要です。

2.勤務時間の半分は店頭にいる努力を

店長の存在は思っている以上にスタッフのモチベーションになります。せめてコアタイムには店頭にいたいものです。これらを確認したところで本題に入りましょう。

OJTでできるスタッフの販売力アップ

1.「きちんと見ていた」ことを伝える

スタッフの接客が終了し、売れたときは一緒に喜びを分かち合い、どうやったら売れたかを細かく聞き、成功体験を再度味わってもらいます。売れなかったときは、できていたこと、良かったことをやや大げさに伝えます。例えば「黙った時間も少しあったけれどアプローチのタイミングは良かった」「2点目は売れなかったけれど、きちんと関連販売は提案していた」など、そのスタッフがほんの少しでも意識して行ったことを具体的に認めるのです。これを2、3カ月続けた後、「来月はどんなことを意識して接客する?」と自発的な意見を求めます。これら小さな成功体験の積み重ねが、意欲的に接客に取り組む姿勢に結び付いていくのです。

2.店長がスタッフの接客に入る

店長が接客に入るといなくなってしまうスタッフも多いので、入っても逃げないように指示しておきましょう。その上で、しばらく一緒に接客した後、店長が上手にその接客から抜けるのです。お薦めや気の利いた一言を伝えて、「思わず入っちゃってごめんなさい、お邪魔しました」という感じで抜けます。もし心配で居続けるとしても、メーンはスタッフに話をさせましょう。

3.積極的に接客に入る

店長(他のスタッフでも可)の接客に積極的に入ってきてもらいたい、ついては店長や全スタッフの接客に関して次の点に注目してほしい旨を伝えます。自分なら、(1)お客さまをどんなふうに褒めるか、(2)どんな商品を提案するか、(3)どの商品を押すか(接客しているスタッフが押している商品はどれか)。

接客が終わった後で必ずきちんと意見を聞き、それぞれに解答を確認する場面もつくりましょう。

4.アプローチ下手なスタッフをサポートする

腰が重いスタッフに接客についてもらいたいなら、本人の気持ちが動くようなヒントを与えましょう。例えば「あちらのお客さまは白のジャケットがお好きそう。あなたのお薦めのジャケットがあったわよね」と背中を押す一言を掛けます。お客さま情報だけではなく、スタッフがそれならできるかも?と思えるような点を付け加えることがポイントです。

5.接客した情報を共有する

ぎりぎりの人数で運営している店も多く、お客さま情報が共有できないようなら、「今日のお客さまノート」を作ってみるのはいかがでしょうか。内容は、一番印象に残ったお客さまとその理由、売れた、売れなかった理由などです。記入内容について店長は、今回はできなかったけれど次回はやれそうなこと、もっと工夫ができそうなことを必ずスタッフに考えてもらうようにします。

もう少しできそうなら、「今までやったことがないけれどやれそうなことは何だろう」という質問が効果的です。

 

[記事提供元]ファッション専門店の20~30歳代ショップスタッフに支持されている月刊総合専門誌「ファッション販売」

 

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