スーパーデリバリーでは、新たな仕入れの価値観として「エシカル」をテーマにした取り組みをしています。その取り組みの一環として、2021年4月に「エシカルコレクション」というエシカルな視点を取り入れた商品を提案させていただきました。また、エシカルな取り組みをされている企業、会員事業者へのインタビューや取材を通じて「エシカル消費」の意義についてもライブ配信を行いました。

今回は、エシカルデザイナー植木美穂さんをお招きし、「エシカル」についての基礎知識と「エシカル消費マインド」について解説していただきました。

なんとなく、縁遠いキーワードのように感じるエシカルですが、私たちの生活を見渡してみてみると実は身近なところでエシカルな商品や考え方が広がっています。

小さな気づきが消費提案の幸せのバトンを渡す一歩になります。この機会にエシカルについて一緒に学んでみましょう!

エシカルについて学ぶ動画

「お店の想いが価値になる。身近な「エシカル」を通して、共感されるお店作りを一緒に考えてみよう!」エシカルデザイナー植木美穂氏トークライブ

エシカルデザイナー:植木美穂 氏

東京を拠点に、エシカルのコミュニケーションをデザインする「エシカルデザイナー」として活躍中の植木美穂さん(フリーランス・デザイナー)。エシカルによって繋がりを求めていくお仕事をされています。

[合わせて読みたい!植木美穂さんインタビュー記事]【フェアトレードについて語ろう!】大切に暮らしを育む楽しみとは?エシカルデザイナー植木美穂さんと対談しました。

植木美穂さんはこれまでに、エシカルに関わる企業のロゴマーク、お店で使用されるポスターやPOPなどの販売促進物、販促物の訴求力を高める言葉(キャッチコピーやキャッチフレーズ)などを制作。

お客様や世の中に対して「エシカルに関する交流を持ちたい!」と希望する企業やブランドのコミュニケーションを全面的にサポートされています。

最近では、鹿児島県にある水力発電の企業とのお仕事で、「みずいろ電力」(上図左上)のロゴマークをデザインされています。(会社名の名付け親でもあるそうです)

フリーランスとしてエシカルデザインのお仕事をされる以前は、世界の子どもを児童労働から守るNGOに約7年間勤務。「児童労働が生まれる社会の仕組みを変える」ことを目的に、数々のプロジェクトに携わった経験をお持ちです。

NGOでのお仕事はデザインではなく、幅広い分野で活動されていました。

◆ソーシャルビジネスの推進

◆政府への政策提言

◆市民への啓発

◆ネットワーク構築

これらの活動では「児童労働問題やフェアトレード、エシカルについて、より多くの人々に伝えていきたい!」という想いから、「どうすればより多くの人の心を動かし、行動につなげられるか」を常に意識。キャンペーンやイベントのプロデュース、チームマネジメントに携わってこられました。

NGO時代の経験が、現在の植木美穂さんの活動に繋がっています。

上図は、植木美穂さんがお仕事やプライベートを通じて、これまでに訪れたエシカル関連の主な国々を示しています。

◆ガーナのカカオ農家(左下)

◆インドのコットン農家(右下)

◆ラオスのコーヒー農家(右上)

◆フェアトレード先進国であるイギリスのフェアトレード財団にて半年間研修(左上)

このような経験を踏まえて、「ものづくりをされている方とそれらを使用する生活者を心の部分で繋げていきたい!」と意識しながら日々仕事に取り組まれています。

みんなで学ぼう「エシカル」について

エシカルとは?

「エシカル(Ethical)」を直訳すると「倫理的な、道徳上の」といった意味になります。

最近では、エシカル消費、エシカルファッションといった様々な分野に広がりをみせているエシカル。この場合の「エシカル」には、「人と、環境と、社会と、そして地域にやさしい○○」といった意味が含まれています。

「エシカル(Ethical)」は形容詞のため、その後ろに「消費」や「ファッション」などの言葉が続く形で使われることが多いです。

ここでは、「エシカル消費」を例に考えてみましょう。

買い物をする際には、「価格」「味」「品質」などの諸要素が、自分にとってどれほどの価値があるのかを基準に判断するのが一般的です。

エシカル消費は自分を基準にした考え方に、「人」「環境」「社会」「地域」といった要素をプラス。それにより、「人、環境、社会、地域の全てまたは一部にプラスの影響をもたらすことができるように意識していこう!」という考え方になります。

別の表現を用いるなら、「満たされるものが広がっていく考え方」とも言えるでしょう。エシカル消費は、自分だけでなく他の人々も幸せになれるような消費スタイルと言えます。

身近に広がるエシカル言葉の幅とは?

近頃では「エシカル消費」以外にも「エシカル○○」という言葉の幅が広がってきています。

例えば、エシカルファッション、エシカルウェディング、エシカルライフ、エシカルビジネス、エシカル就活など。

エシカル就活については、2021年頃から聞かれるようになってきた言葉です。

Z世代の若い方たちがエシカルなマインドを持ち、企業の社会や環境に対する取り組みや貢献力に注目するなど、就職活動の価値観にも変化が生まれ始めています。

エシカルの必要性とその価値とは?

世間の認識が高まってきたエシカルという価値観ですが、なぜエシカルは必要なのでしょうか?

その背景を考えてみましょう。

過去の約50年間は、世界中で急激な経済発展を遂げてきた歴史があります。日本も戦後の物資が不足する状況から発展し、一定程度の豊かさを手にできるようになりました。この豊かさには「便利、豊か、早い、ラク、安い = 良いこと」といった価値観が含まれています。

ここまでは良かったのですが、ある時点で振り返ったときに、豊かさの背景には「環境、人、社会」にマイナスの影響をもたらしていた面があることに私たちは気付きました。

マイナスの影響とは、地球温暖化や環境破壊、公害、自然災害、資源枯渇、貧困、労働問題、経済格差などが挙げられます。豊かさを得る一方で、失っていたことも大きかったのです。

大量消費、大量生産、大量廃棄が豊かであるという価値観が世界に広がったことで、環境破壊や資源の枯渇が進みました。温暖化やそれに伴う自然災害は、多くの方が実感していることと思います。

そしていいモノを安く作れる背景には、国内外の労働問題や経済格差、貧困などの存在があると明らかになってきたのです。

このようなマイナス要素の上で成立している私たちの暮らしは「本当に豊かと言えるのか?」「倫理的に考えてどうなのだろう?」「今後どのような未来を目指すべきなのか?」という考え方のもとに、「エシカル」という価値観が生まれました。

「エシカル」の言葉や価値観の広まりには、社会的な背景が大きく影響していたのです。

さまざまあるエシカルのうち、身近な「エシカル消費」と「エシカルアクション」にフォーカスしてみましょう。

エシカル消費とは?

まずは、エシカル消費です。

エシカル消費には、フェアトレード、オーガニック、人や環境にやさしいモノ(安全・安心できる環境で作られた商品)を選ぶことなどが挙げられます。

最近、日本でも力を入れている自然エネルギーもそのひとつ。自然エネルギーの利用は、思っているよりも簡単に切り替えることが可能です。自然エネルギーを積極的に選択することもエシカルです。

地産地消などの地域を活性化していく行為もエシカルに含まれます。コロナ禍で苦しむ生産者さんやお店、被災地支援などの応援消費もそうです。

機械ではなく手でモノづくりをする伝統工芸。CO2排出削減や文化を大切にする意味も含めてエシカルに該当します。

エシカル消費とは、お金を使うことで自分以外の誰かが少しでも豊かになるようなマインドを持った消費の仕方を意味しています。

[合わせて身につけたいフェアトレード知識]「エシカル消費を学ぶならフェアトレードの知識は欠かせない」ピープルツリーに「楽しいお買い物とは何か」を伺ってみた!/「フェアトレードとは?」日本で広がる「優しい思いにあふれた商品取引背景」をご紹介

エシカルアクションとは?

続いては、エシカルアクションについてお伝えします。

2020年の春から日本でもレジ袋の削減を目的としてエコバッグが普及しました。エコバックを活用することもエコでエシカルなアクションです。

紙やペットボトルをなるべくリサイクルすること、モノを長く大切に使用すること、CO2を排出しないように徒歩や自転車を選択することなど、日々の暮らしで行われる小さな工夫の中に、エシカルなアクションはたくさん隠れています。

日本には伝統的文化として「もったいない」「おかげさま」「おもてなし」などが引き継がれています。こうした考え方もエシカルに通じるのです。

普段の生活で行っていることの中にも「実はエシカルだった!」ということがあるかもしれません。自分の行動を振り返ると、すでに行っていたエシカルアクションの発見に繋がるはずです。

そのような意識の気付きが、エシカルアクションの第一歩になると思います。

◆健康のために歩いていたことがエシカルな行動だった!

◆ご飯を残さずに食べきれた!

◆エコバッグを使用した!

このように捉えると、エシカルをもっと身近に感じていただけると思います。自分のために取り組んでいたことの中にも、人や環境のためになる行動に繋がっていたと気が付くと、より幸せ度がアップ。

日常の当たり前のことから見直していただけると、エシカルなアクションが身近なことに感じられて取り入れやすくなりますよ。

エシカル消費の目印「認証ラベル」とは?

エシカル消費の目印となるのが、認証ラベルです。エシカルな活動を行っている団体や認証機関のラベルは複数存在しています。

普段利用されているお店やスーパーマーケット、コンビニエンスストアなどを探してみると、フェアトレードやオーガニック、森林や海への配慮など、エシカルなラベルが見つかるかもしれません。

こうしたラベルをひとつの目印として、商品パッケージの裏面などを意識していただけると発見があっておもしろいのではないでしょうか?

消費活動のポイントとしてこれらのラベルを意識することで、自分以外の人や生物、環境のためになると気付くことができます。エシカル消費(心豊かな消費)の目印として参考にしていただきたいです。(※エシカル消費の目印となるラベルの画像は、こちらの動画でご覧いただけます。動画開始18:00頃)

エシカル消費をリードしているのは?

エシカル消費のけん引役を担っているのは、デジタルネイティブと呼ばれるZ世代の若者たちです。

Z世代とは、1990年代後半~2012年前後くらいに生まれた方たちのこと(諸説あります)。現在の小学生~大学生くらいが該当します。

Z世代の特徴は、生まれたときからインターネットやスマートフォン、SNSなどが当たり前の人たちだということです。上の世代の方たちとは感覚や情報収集の方法、価値観が大きく異なります。

エシカルに関連したことでは、Z世代の方たちは生まれたときから地球温暖化や環境問題、経済不況、国内外の社会問題などが顕在化している状態だということ。

Z世代は、世の中全体に不安感が漂う中、明るい未来を描きにくい社会環境の中で成長してきた世代といえます。そのため、上の世代の大人よりも現実的だと言われています。

そうした背景から、Z世代の方たちは、エシカルという概念を自分自身の未来と直結するものとして捉えることができ、すんなりと受け入れられやすいと考えられます。

学校でも、社会や環境について多くを学んでいます。道徳観をしっかりと学び、多様性や共感、繫がりについても身近に感じていると思います。エシカルという価値観を受け入れやすい土壌で成長しているのです。

昔は貧富の差などを当たり前のこととして受け入れていた風潮がありましたが、現在の若者はその風潮を「助け合い精神」の視点から捉えているようです。

Z世代の方たちには、消費活動の視点に「自分だけでなく他の人にも喜んでもらえる選択をすること」を意識している方が多いと思います。

エシカルとどう違うの?サスティナブル・SDGsとは?

サスティナブル(Sustainable)とは?

世の中にはエシカルに関連した似た意味合いの言葉(サスティナブルやSDGs)が増えてきていると思いませんか?

「エシカル」についてはすでにご紹介させていただいたので、ここではまず「サスティナブル」についてお伝えします。

「サスティナブル(Sustainable)」は「持続可能な」という意味です。

では、何を持続可能にするのでしょうか?

そのひとつは「地球の資源」です。

地球に住む全ての人々が「現在の日本人と同じ暮らし方や仕事スタイルをする」と仮定した場合、必要とされる地球資源の量は「地球2.8個分」必要になると科学的に算出されました。

端的にお伝えすると、日本人は資源を使い過ぎているということです。何かを生産する半面、大量の廃棄物を排出しています。急速な経済発展の背景には、資源の量が追い付かなくなった状況もあるのです。

「地球1個分」であれば、地球の回復力で何とか賄えるのですが、遥かにオーバーしてしまっています。

グローバルに考えた場合、各国の状況は様々ですが、現在の世界の現状を平均しても「地球1.7個分」が必要です。

世界的に捉えた場合、現状では「未来に向けて持続していけない資源の使い方をしてしまっている」という根本的な考え方があります。すなわち「サスティナブル」であることが求められているのです。

日本は国土は小さくても消費量は世界の上位に入っています。消費大国であるが故にサスティナブルな視点で見直しながら、資源を大切に扱う取り組みを推進する必要があるのです。

こうした地球の環境(資源や温暖化)問題に加えて、「人や社会も持続可能な状態ではない」という見方があります。本来サスティナブルは、地球環境だけでなく、人や社会も含めた持続可能性を意味しています。

サスティナブルな考え方が必要とされる理由

サスティナブルな考え方が必要とされる理由を2つご紹介します。

(1)地球が持続していかなければ、その土壌で暮らす私たちは将来的に生活できなくなってしまいます。

(2)フェアトレード的な観点で考えた場合、歪(ひずみ)を抱えている経済活動や社会の仕組みには無理が生じ、いずれは破綻することに。

こうした意味合いから、「地球環境や人が無理なく豊かに持続していける社会を、皆で工夫して考えながらつくっていきましょう!」という考え方が「サスティナブル」の概念です。

SDGs(Sustainable Development Goals)とは?

続いて、最近よく耳にする「SDGs(エスディージーズ)」についてお伝えします。

「SDGs(Sustainable Development Goals)」とは「持続可能な開発目標」のことです。2015年に国連で採択されました。

「SDGs」といえば、17種類のマークのいずれかをイメージされたのではないでしょうか?

国内のとある公園には「SDGs」の旗が掲げられています。どこかで目にはしているけれど、どのマークが何を意味しているかをご存じの方は多くないかもしれません。

SDGsは、上述したサスティナブル(持続可能な未来を目指していくための具体的な目標になっています。

SDGsは、上図にある17個の目標と、より具体的な169個の項目により、取り組みが明確化されています。サスティナブルな社会を実現するために、日々の暮らしや仕事において「何を工夫するべきか?」を具体的に定めた目標です。

SDGsの目標は、2030年までに達成することを目指しています。

国連で193の加盟国により採択されたと言われても、そもそも「自分たちから遠く離れた存在の人たちが決めたのでしょう?」といった印象を持たれるかもしれません。

SDGsの興味深い点は、政治に関わる人たちだけで決めたものではないということ。企業や専門家、市民の代表的存在のNPOやNGOの方々を含め、「どうしたら持続可能な未来を作っていけるのか?」という課題に対して、顔を突き合わせながらの議論を経て議決された「みんなで決めた、みんなの目標」です。そこには、先進国だとか途上国といった垣根はなく、様々な人たちの声が集められました。

このような背景を持つ「SDGs」だからこそ、各企業やメディアなどで取り上げられる機会も増えているのだと思います。

最近、日本のメディア・ニュースでよく見かけるのは、「ジェンダー平等を実現しよう(目標5)」や、多様性の時代に関連して「人や国の不平等をなくそう(目標10)」です。

日本には無関係な問題のように感じる「安全な水とトイレを世界に(目標6)」。インドのデリーから2時間ほど離れた北部の村で、トイレ問題に向き合った活動に取り組んでいる日本のアクセサリーメーカー「スプリング」もあります。

[合わせて読みたいSDGsな取り組みをする「スプリング」インタビュー記事]モノづくりの先にある社会貢献とは?アクセサリーメーカー「スプリング」のSDGsな取り組みに密着!

SDGsに掲げられた課題に対して、具体的な活動を実施している企業の商品を購入することで、個人でも「世界の誰かの助け手になれる」のです。

私たちの日々の消費活動がSDGsな行動に繋がっていることも意外に多くあるので、生活の一部に取り入れていただけると嬉しいです。

現在の状況を知ろう!

ここまで「エシカル」「サスティナブル」「SDGs」について個々にお伝えしてきました。これらをまとめたいと思います。

豊かさや利便性を追い求めている世界の現状。今後どのようにしていけばよいのでしょう。

「地球2.8個分」の資源の使い方をし続けるのでしょうか?

現在の暮らしや仕事のスタイルを継続した場合、地球温暖化や環境・社会の課題はさらに深まり、豊かとはいえない未来になることが予想されます。

もちろんその現状を「良し」とするわけではありません。子供や孫の世代に、より良い未来を託すために、世界中がサスティナブルな未来を作ろうと動いています。

私たちが行動を少しずつ見直すことで、一部の国や地域だけでなく皆が幸せを享受でき、次の世代により良い未来のバトンを渡せるようになるのです。現在はその準備段階だと考えられます。

エシカルな消費の意識を高めていただけることを願います。

エシカルなマインドが育む理想とは?

「エシカル」「サスティナブル」「SDGs」。この3つの言葉を捉えるポイントは、目指す未来は共通しているということです。

◆エシカル ⇒ 環境や社会的にマイナスの影響がある土壌に成り立っている豊かな暮らしは、「倫理的にどうなのか?」「心から幸せと言えるの?」といった視点から、日々の行動を変えていくこと。

◆サスティナブル ⇒ 環境的・社会的にも「未来に向けて豊かに続けていけるのか?」という視点。

◆SDGs ⇒ サスティナブルな未来を実現するために設定された具体的な目標。

「エシカル」「サスティナブル」「SDGs」はそれぞれの視点から、同じサスティナブルな未来を目指しているのです。

エシカルな価値観が育むもの

今回はエシカルについて、エシカルデザイナーの植木美穂さんに教えていただきました。聞きなれない言葉や、グローバル(広域)な社会でのお話というような一見関係性がなさそうに思えるキーワードのようで、実は生活者の視点に立ってみると、身近なことに気が付きます。

私たちも植木さんを通じてエシカルな知識を知ることで、エシカル消費という消費価値や仕入れ提案の幅が広がったような気がしました。

後編記事では、「エシカルな提案をされているスーパーデリバリーの商品」をご紹介します。エシカル商品を提案するコツなども満載ですので、ぜひ参考にしてみてください!

エシカルな商品の仕入れをしよう

エシカルコレクション特集はこちら

「未来につながる 人・社会・環境・地球を想う「エシカル」な仕入れ」をテーマにした商品をまとめています。フェアトレード、支援・寄付、エコ素材、オーガニック、地域応援などエシカルにまつわる区分で商品提案をしています。仕入れの参考にお役立てください。