美濃焼とは、岐阜県東部に位置する多治見・土岐市・瑞浪市で生産されてきた陶磁器の総称です。国内で日常的に使用されている陶磁器のうち約9割が美濃焼で、日本を代表する焼き物とも言えます。美濃焼きは「特徴がないのが美濃焼の特徴」と言われるほど、多様な色や形が存在しています。時代に合った質感やデザインのものが日々生産されており、それゆえに使い勝手も良く食卓にも溶け込みやすい点も魅力の一つです。
今回は岐阜県土岐市で美濃焼を生産している「東濃陶器」をご紹介します。昭和16年の創業以来、約80年間にわたって製土から成型、下絵付きの工程から本焼きまですべてを自社で一貫して請け負っているメーカーです。すべて自社製造だからこそ、商品数の多さやトレンドの発信で差別化を図り、海外からも注目されている陶磁器メーカーです。
目次
市場の声を反映させたモノづくりに向け小売店卸をスタート
東濃陶器は自社で製造した商品を商社経由で様々な事業者に販売しています。取引量は多いものの、商社や問屋を通じての取引では消費者の反応や声を直接拾うことは難しく、商品を展開していくうえでその距離感に課題を感じていました。そこで、もっと小売店と近い距離で日々商品の反応を見ながらモノづくりをしていきたいという想いから、スーパーデリバリーでの販売をスタートしました。
「私たちの商品が消費者のもとに届くまで、地元の問屋から商社、そして地方問屋から小売店へと間に3社から5社ほどの業者が入っていますが、業者の数が多いほど反応が異なってきますし私たちの元にその声が届くのも遅くなります。
弊社は陶磁器の原材料となる土の調合や成型、絵付作業、下絵などすべてを自社でおこなっていることもあり、新商品も日々作成しています。ただ、新商品を作成しても消費者に届くまでにタイムラグが発生し、販売タイミングを逃すことがあります。加えて商品への反応も様々なので、提案したものがどんどんズレていくという状況になったりもします。
こういった理由から、マーケティングの意味も含めて直接小売業などの事業者との取引も既存の取引に加え、自社の強みを生かしていきたいと考えました。」
メーカーならではの強みを生かした提案
東濃陶器は毎月70万枚ほどの陶磁器を生産しており、OEM商品は1,000枚単位での取引が主流となっています。しかし製造メーカーであるため、小ロットでOEM商品を作ることも可能です。
「絵付工程ではインクジェット印刷という新しい技法を活用しています。インクジェット印刷はパソコンで作った画像データや色を製品に直接印刷する方法になりますが、例えば弊社が定番で扱っている商品の色を変えてオリジナル商品を作りたいとか、店舗のロゴを加えた限定アイテムを作りたいとか、そういったご要望にもお応えすることができます。実際に最近は雑貨店などからも『オリジナルを作りたい』という相談を受けることも増えています。」
製造工程もスピード感があり新しいデザインも日々提案しているため、スーパーデリバリーにサンプルを掲載してオーダーが入り次第すぐに量産して出荷できるのもメーカーとしての強みになっています。
「これまでは様々なデザインのサンプルを作って社内でどれを製品化するのか都度検討していましたが、今後は直接小売店や事業者さんの反応を知ることができるので、その様子を活かしながらモノづくりに反映させていきたいと考えています。」
毎月追加発注するほどの人気!独自加工のオリジナル商品
東濃陶器では現在約40~50種類ほどのアイテムを展開しており、それぞれにサイズや色展開をしています。テイスト的には家庭用の洋風のものが多く、雑貨店などでの扱いも増えています。そんな中でも特に人気なのが「BLOW(ブロウ)」と呼ばれるシリーズです。
「いま圧倒的に売れているのがこの「BLOW(ブロウ)」ですね。去年の5月から販売を始めて翌月からずっと追加生産している商品です。どの世代のお客さまにも評判がいいようで、多くの取引先が扱ってくれているという今までにない反応ですね。
実はこのアイテムを製造するときに使っている印刷機械が国内では弊社しか扱っておりませんので、この商品を作れるのは日本では弊社だけです。
この機械はもともとタイルに印刷を施す際に使う機械ですが『食器にも使えないか』と導入しました。当初は使い方も慣れずに苦労しつつ試行錯誤の末にできたのがこの商品です。」
独自手法で作られたBLOW(ブロウ)のシリーズは料理の魅力を引き出すうえに写真映えすることもあり、注文が絶えずベストセラーとなってます。
「今回スーパーデリバリーに出展するにあたり、限定色のBLOW(ブロウ)も先行販売で用意しました。初めて取り扱っていただく方のために様々な形をアソートにした初回販売セットも考えております。色や形が豊富にあるので、どれが店舗にあうのか迷われる方などにオススメです。」
ほかにも菊型のシリーズや窯変調(ようへんちょう)のアイテムも定番人気となりつつあります。
「BLOW(ブロウ)のシリーズもそうですが、窯変(ようへん)というは釉薬(ゆうやく)を施すと線が自然に出てくる加工のアイテムのことを指します。アンティークな雰囲気などもあり、雑貨店などでもよく取り扱ってもらっていますね。今はこういったアイテムがどの取引先にも人気です。」
海外には日本らしい富士花など花柄などが人気
東濃陶器では海外からの引き合いもあるそうで、日本とはまた違ったアイテムに注目が集まっています。コロナ以前は海外のバイヤーの方もよく工場まで足を運んで製品を見に来ていたそうで、ニーズに合った商品を都度提案してきました。
「国内と海外では人気商品が全く異なっています。海外では桜をモチーフにした富士桜、パール花友禅など、日本的な柄をパッド印刷したものが人気ですね。中国、香港、アメリカ、ヨーロッパのお客様に好まれていますね。」
生活習慣や食事も異なりますが、海外のバイヤーと話をしている中で海外向けの新商品のアイデアが出てくるそうで、スーパーデリバリーでも今後海外客の反応を見ながらデザインを考えていきたいとのことです。
次のトレンドはプリント柄やインパクトのあるデザインに注目
10年ほど前には北欧柄が流行りだし、そのあとは現在東濃陶器も展開しているようなアンティーク調のものなどを見かけることが増えました。今後はどのようなものが流行りだすのでしょうか。
「今は窯変調(ようへんちょう)のものやマット調のもの、あとは黄色やピンクなど単調カラーの色釉薬(いろゆうやく)を施したものが人気だったので、次は流れ的に印刷した柄物が来るんじゃないかと思っています。数年前から真っ黒なものやシックな色使いのものが人気でしたが、今は雑貨店でもそういったものが溢れすぎていて逆に白い食器やインパクトのある柄物を手にする方が増えつつあるように思います。」
こういった流れも鑑みながら、今後は大胆な柄など今までとは違う流れのアイテムを作り出していきたいとのことです。また東濃陶器では洋風のアイテムを得意としていますが、業務用や和テイストなアイテムの増やしていくそうで、商品の幅がさらに広がっていく予定です。
「今後も雑貨店でも扱っていただきやすいアイテムに加え、飲食業の方が使いたくなるような和洋どちらの商品も引き立てるデザインなどを生み出していきたいと考えています。」
陶磁器企業の中でも川上に位置するメーカーとして、様々なデザインを展開している東濃陶器。今回ご紹介したBLOW(ブロウ)をはじめ、シンプルな釉薬(ゆうやく)デザインのものや子供用食器なども豊富に展開しています。
雑貨店はもちろん、テーブルを彩ってくれる食器をお探しの方はぜひチェックしてみてください!