明確に役割を与えることによって販売スタッフが一丸となり、お互いが協力し合う体制がつくれ、最終的にお客さまに喜んでいただける販促イベントが実現します。これだけ力を入れておけば、イベントが終了した時点で「今度はこうやってお客さまに楽しんでもらおう!」という次のイベントの新しいテーマが見つかるはずです。販売スタッフ一人一人が成長することで、お客さまに感動を与えられる最強のチームができていく……、これこそが販促イベントを行う大きな意義なのです。

イベント成功に不可欠な4つの仕事の役割分担

販促イベントでは、販売スタッフが一丸となって「徹底して準備すること」ができたかどうかが結果につながります。どんなに面白い企画内容でも、販売スタッフの気持ちがばらばらで参加意識が低いようでは、集客や販売の流れをスムーズにつくることはできません。

しかし、全員がばんばんアイデアを出して目標に向かって走ってくれる、というのは現実的には難しいことではないでしょうか。

販促イベントを成功させるために必要なフローは大きく分けて「企画」「集客」「販売」「効果測定」の4つになります。店長はスタッフ個々の長所をとらえ、個人の能力を上手に引き出しながら、この4つの仕事を役割分担し、販促イベントに巻き込んでいくことが大事です。役割を決めることによって全員が当事者意識を持ち、協力し合いながらお客さまを楽しませるという目標に向かうことができるからです。それではこの4つの役割に関して、どのような特性を持つスタッフが担当するのが最適なのかを考えてみましょう。

売上げにつながるアイデア力はあるのだけれど実行力が伴わないために販売力が低いひらめきタイプには企画立案を、コーディネートも創造性にあふれ、販売力があり、お客さまを喜ばせるアイデアが豊富なマーケタータイプには集客を、企画アイデアにはからきし弱いけれど販売に関しては右に出るものはいない販売マシンタイプには販売を、残念ながら業務改善につながるようなアイデアもなく、販売力も弱い草食タイプには効果測定をそれぞれの役割として与えていくとスムーズにいくようです。

1、ひらめきタイプ~マンネリ打破のアイデアは豊富~

役割*企画立案*

【特徴】
・仕事に飽き飽きしており、何か変革を起こしたいと思っている
・根拠のない自信がある
・イベントや業務改善などのアイデアは豊富
・口では達者なことを言うが、実行力に乏しい

【役割を遂行させるためのポイント】
・アイデアを決して批判しない
・売上目標などの数字設定、期間、商材、DMなどイベントの具体的内容を落とし込む

どうしてもマンネリ化してしまう接客の仕事に飽き飽きしていることが多いタイプです。しかし「自分なら今までにない面白いイベントを成功させることができるのに……」という意欲や、「こうすればもっと皆が働きやすいのに……」という業務改善のアイデアを持っています。

根拠のない自信があり、自分の素晴らしい企画で店に変革をもたらしたいと考えています。しかし、残念ながら口だけで実行力が伴わないことが多いのです。実行できないことがストレスとなり、「こんなに素晴らしいアイデアを持っているのになぜ店長はやってくれないの」と他人にそのストレスをぶつけるのが特徴です。そのような欠点には目をつぶり、このタイプの「アイデア力」を販促イベントの「企画」に転換させることが大事です。

ひらめきタイプにはどんどんアイデアを出してもらいましょう。その際に注意すべきことは1つだけ。出てきたアイデアがどんなにへぼくても決して批判してはいけません。アイデアを全部褒めるくらいの勢いで、使えそうだ!とぴんときたものをピックアップしておきます。上手に褒めながらそのノリで顧客あてのDMも作成してもらいましょう。

2、マーケタータイプ~店になくてはならない優等生~

役割*集客*

【特徴】
・販売力、アイデア力を併せ持った優等生
・店長の右腕的存在
・イベントや業務改善などのアイデアは豊富
・性格がきつく頑固。メンタル面が弱いのも特徴

【役割を遂行させるためのポイント】
・POPや販促物を活用して店頭でのイベント告知を徹底させる
・堂々とイベントに勧誘するためのトークを他のスタッフにも共有させる
・ひらめきタイプと協力して朝礼などで全体の勧誘の進捗状況を確認

会社のルールを守り販売の実績もある優等生です。頑固な面もありますが、店にはなくてはならない存在です。このタイプにはイベントの成否を分ける「集客」を担当させます。ひらめきタイプがつくったイベントの主旨や内容をかみ砕き、いかに楽しいイベントであるかという魅力を店頭でお客さまに伝える必要があります。

イベント開催の少なくとも2週間前ごろから顧客に郵送するDMを拡大コピーしたものなどをお買い上げ時にご案内しながらお渡ししたり、店内POPで告知したり、お客さまを勧誘するためのトークをマニュアル化したり、集客に関してやることはたくさんあります。イベントの勧誘というと尻込みするスタッフも多いので、いかにこのイベントが素晴らしいものかということをまずはスタッフに熱く伝える必要があります。

企画を立てたひらめきタイプと一緒になって他のスタッフをやる気にさせます。イベント当日に確実に来店いただけるようにアポイントを取っておくことも大事です。店長は朝礼などの時間を使って、マーケタータイプに店頭でのお声掛けの徹底やアポイントの状況など、各スタッフの進捗状況をチェックさせるようにしましょう。

3、販売マシンタイプ~販売大好き!でもそれ以外興味なし~

役割*販売*

【特徴】
・売ることが大好き。高額な賞品ほど燃える
・販売以外の仕事には興味が薄い
・事務作業、裏方作業を嫌う

【役割を遂行させるためのポイント】
・重点商品のお勧めトークマニュアルを作成させる
・イベントのテーマに沿った、お客さまに有益となる情報を集めさせ、他のスタッフに共有させる
・ロールプレイングで重点商品のお勧めトークを練習させる

このタイプは純粋に「売る」ということが大好きな人が多いものです。逆に言うと、それ以外の仕事にはあまり関心がなく、また事務作業や裏方作業を嫌うということが多く、販促イベントの企画に関しても「誰かがやってくれるだろう」という程度にしか思っていないものです。ですから、その販売への興味を逆手に取って、販促イベントにおける重点商品のお勧めトークマニュアルを作ってもらうようにするとよいでしょう。

例えば旅行をテーマとした企画の場合、重点商品としてニットやストールを設定したなら、旅行に便利なニットやストールのコーディネート手法や旅行に持っていく服のチョイスの仕方、最近人気の旅行スポットなど、お客さまにとってメリットのある情報を集めてもらいます。そして、こちらもイベントの2週間前からロールプレイングなどを行い、お勧めトークを練習することで当日スムーズに販売できる体制を整えておくようにしましょう。

販促イベントでたくさん売ることによって、スタッフ全員の販売力をアップさせることも可能ですから、販売マシンタイプのスタッフの長所に乗っかって、店全体の接客力の底上げを図るようにしましょう。

4、草食タイプ~ひそかに支える縁の下の力持ち~

役割*効果測定*

【特徴】
・ひそかにスタッフ同士をまとめている
・特に活躍はしないが、店の癒し系
・仕事よりはプライベートが大事
・目立たないのでなかなか顧客ができない

【役割を遂行させるためのポイント】
・ひらめきタイプが立てた数字を確認し、目標と成果の誤差を測定し、原因と結果を明らかにすることで次のイベントに生かすようにする
・成果が分かるように、数字でまとめたものをスタッフ全員で共有させる

草食タイプの人にもちゃんと「効果測定」という大事な役割があります。草食タイプの人はこれといった活躍はしないけれど、縁の下の力持ちで癒やし系です。このタイプの人がいるおかげで、ひらめきタイプや販売マシンタイプのような個性の強い者同士がぶつかり合わずに済んでいるのです。

効果測定の内容は以下の通りです。DMを送った顧客のうち何人の来場があり、そのうち何人が買ったのか、費用対効果はいかほどだったのか、客単価は通常と比較してどうだったのか、どのような商品が売れたのか、なぜ売れたのか、誰の顧客が何人来たのかなどなど、イベントの成果をまとめる作業をやってもらいます。結果をまとめるだけなので大した仕事ではないように見えますが、大事なのは立てた目標に対してどのような成果であったかということです。

草食タイプもまた、ひらめきタイプが詰めた企画内容に含まれる目標数字をしっかりと把握しておかなければならないのです。販促イベントというのは何度も行うものですから、効果測定をきっちりしておくことによって、次回のイベントをより良いものにしていくことが大事なことなのです。

 

[記事提供元]ファッション専門店の20~30歳代ショップスタッフに支持されている月刊総合専門誌「ファッション販売」

 

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