店長次第で店の売上げは大きく変わります。スタッフ一人一人の頑張りが売上げを左右するのは間違いありませんが、スタッフを導いていくのは店長です。店長がリーダーシップを発揮することで、スタッフの力を何倍にも膨らませることができるのです。あなたのリーダーシップ力を確認し、店をまとめる真のリーダーへと飛躍するきっかけにしてください。

【1】気付く力

リーダーシップで大切なことは、スタッフの能力や状態によってリーダーシップスタイルを使い分けることです。例えば仕事を覚える段階のスタッフや受け身タイプのスタッフには、事細かにやり方を教えたりする「指示型」のリーダーシップが必要です。逆にベテランや意欲的なスタッフには任せたり、主体性を引き出すような「援助型」が有効です。このように使い分けるためには、スタッフの能力や状態について常に把握しておくことが重要です。

【2】やり切る力

部下にリーダーへの不満を聞くと「言うことや方針に一貫性がない」「決めたことを自分が守らない」といった意見が出てきます。決まり事やルール、取り組みなどについては、リーダーがその本気度を伝え続ける努力をしましょう。毎日の朝礼で取り上げたりしながら繰り返し熱意を持って伝えなければ、スタッフには浸透しません。そして、リーダーが率先して取り組まなければ、成果にはつながりません。

【3】自己主張する力

自己主張することもリーダーに必要なスキルですが、ただ自分の意見を押し通すだけではスタッフが付いてきません。そこで重要なのが、相手の意見をいったん受け止めることです。スタッフの意見を「でもね」「それは分かるけれど」といったbutで否定してから自己主張するのではなく、相手の話に「なるほどね」といったん共感した上で「だったら」「ところで」「それから」といったandを用いて会話をつなぎます。これによってスタッフに新たな思考を巡らせ、自分が主張する意見に近づけていくのが上手なやり方です。

【4】意思決定する力

問題解決や決め事をする際には意思決定が必要になります。全員一致で決まれば問題はありませんが、どうしても意見が割れてしまうこともあります。しかしそんな場合にも、最終的にはリーダーがベストだと思う方に決めなければいけません。その際にスタッフの納得度を高めるためには、まず話し合ってきたプロセスについてもう一度おさらいします。話し合い尽くした上で正当な理由をもって意思決定したことが伝われば、リーダーの決定に納得するのです。

【5】目的を設定する力

月末に売上げ目標と見通しの間に30万円のギャップがあったとします。30万円を残り日数で割り、さらに営業時間で割ると、1時間当たりに幾ら売らなければいけないかが見えてきます。そのために何をすべきかを考えていくと、これがスタッフ個々の目標ということになります。具体的な目標を設定することで、スタッフの力を引き出すことができるのです。

【6】問題を解決する力

リーダーは問題解決のスキルを身に付ける必要があります。そこでリーダーに知っておいてもらいたいのが「問題解決のプロセス」です。問題解決のプロセスとは、「1.あるべき姿と現状のギャップ(=問題)の特定→2.問題の発生要因の分析→3.解決策の立案」の流れのことです。この流れを一つのフレームとして頭に入れておき、店の問題を常に整理して対処できることがリーダーに求められるスキルです。

【7】伝える力

リーダーには、「教えたのにできない」「伝えたことを理解してくれない」というスタッフに対する悩みが付き物です。スタッフが理解しやすい言葉、表現、口調、表情、場面などに配慮し、具体例を挙げたり、理解を促す質問を交えたりしながら伝えるように工夫しましょう。伝えたかどうかよりも伝わったかどうかが重要なのです。

【8】聞く力

リーダーが裸の王様にならないためには、スタッフの話をよく聞かなければいけません。その際に必要なのが、話にしっかりと耳を傾け、熱心に聞く「傾聴」というスキルです。ポイントは、目を見る、メモを取る、相づちを打つ、うなずく、復唱する、表情を合わせる、姿勢を正すといった点です。また、人の話には意外と「意見」が多く交ざっており、「事実」と異なる情報が耳に入ってくることが多いものです。リーダーは、この意見と事実を切り分けて情報を聞き取り、正しい判断を下すことが求められます。

【9】褒める力

店長がスタッフを褒める際のポイントは「自分と比較しない」ことです。店長はスタッフよりも優秀な部分が多いので、自分と比較してしまうと褒める点がなかなか見つかりません。そこで、スタッフが以前と比べて成長した点に注目し褒めるようにしましょう。「3カ月前よりも常連さまが増えたね」など、成長したポイントを具体的に褒めてあげることが褒め上手になる秘訣です。

【10】しかる力

決して相手の性格や人格を否定するようなしかり方をしてはいけません。良くなかった「行動」のみにフォーカスしてしかることが重要です。そして、しかったことでスタッフが、自分のどの行動がいけなかったのか、どのように改善すべきなのかを理解できなければ、上手にしかったことにはなりません。感情的になり、「だから駄目なんだ」的なことを言うことは絶対にNGです。

【11】溶け込む力

スタッフと信頼関係を築き、リーダーが孤立せずにチームに溶け込むためには互いに理解し合うことです。パッと見て理解できることや時間がたてば分かること以外に、自ら積極的に自分自身を開示する姿勢が重要です。さらにスタッフからも、自分について気付いたことを積極的にフィードバックしてもらいましょう。これによって「相手に知られていない自分」と「自分が気付いていない自分」の両方が少なくなっていき、信頼されるリーダーになっていくのです。

【12】分かち合う力

店が一丸となるためには、スタッフが店の方針や理想を理解し、それに共感している状態を目指さなければいけません。そのためには「分かち合う」べきものが2つあります。1.知識やアイデアなどの「情報」。同じ情報を持っていること。2.思いや気持ちといった「感情」。できるだけオープンに情報を与え、自分の思いを伝えることで、店は一つにまとまっていきます。

【13】受け止める力

スタッフからの相談に対して正しくアドバイスしなければいけないという考えに固執しないことです。これがあると、相手の意見を最後まで受け入れられず、アドバイスをすることだけに必死になってしまいます。単に愚痴や悩みを聞いてもらいたいだけの場合もあれば、自分の中にある答えが間違っていないかを確認したいだけのこともあります。リーダーだから「指導しなければならない」という思い込みを捨てることで、スタッフとの間に新たな信頼関係が芽生えるのです。

【14】意見を引き出す力

店を良くするには、スタッフから前向きな意見がたくさん出てくることです。そのためには、スタッフの意見を否定しないことです。「でもさぁ」「そうじゃなくて」「それは無理でしょう」といったことを口にせず、「なるほど」「それはいいね」といった言葉を使い、「アイデアを出すことが許される場を」つくることです。また「ほかにやり方はない?」といった問い掛けで「別の視点」を与えることも、意見を引き出すためには重要です。

【15】促進する力

スタッフが自主的に始めたことだから放っておこうというのではなく、関心を持っていることを示し、褒めたり、アドバイスをしましょう。この際にはあくまでも援助的にかかわるようにし、指示的にならないようにしましょう。失敗しないように見守ってあげることで、スタッフは成長していきます。

【16】合意する力

決まり事を設けたり、目標を設定した際、スタッフがそれに合意していなければ、その決まり事が守られたり、目標が達成されることはありません。しかし、決定までのプロセスに納得できれば、100%の合意でなくても受け入れることができます。十分に意見を交わした上での決定には納得度が高くなります。

【17】まとめる力

店は何人かのスタッフの集まりですので、意見が対立することもあります。このような場合には、オープンな場で「今の話は~と理解したんだけど、それでいい?」といった確認を繰り返し、正確に理解し合いましょう。次に、なぜその意見を主張しているのか、その人の立場や背景を考えて共感してあげてください。「なるほど、○○さんの立場だったら確かにそう考えるよね」といった共感の言葉を投げ掛けてあげましょう。このような共感を繰り返すことで、店にまとまりが生まれてくるのです。

【18】気付かせる力

コーチングとは「答えを言わずに、相手に自ら考えて気付いてもらうテクニック」のことで、ポイントは「質問する力」です。リーダーは多くの場合、スタッフより優れた点が多いので、つい答えややり方を教えてしまいがちです。これではいつまでもスタッフが育ちません。リーダーは、スタッフに対してさまざまな質問を投げ掛ける質問力を駆使して、自ら考え、気付く習慣を身に付けさせることが重要です。

【19】やる気を高める力

スタッフがやる気を高めるためには、役割を与えて責任感を持ってもらう、チームワークを発揮させて一体感を持たせる、目標を達成して充実感を得ることなどがあります。これらはすべて重要なのですが、前提として意識すべきことは、店を「楽しくする」ことです。どうすればスタッフが楽しく仕事をすることができるかという、コンディションづくりに力を注ぐようにしてください。

【20】人を育てる力

リーダーの最も重要な仕事は何かと問われると、それは間違いなく次のリーダーを育てることです。しかし、親が子育てをしていく中で少しずつ一人前の親になっていくのと同じで、リーダーは人を育てる中で一人前になっていくものです。別に「育てよう」と意気込む必要はありません。大事なことは、スタッフが自分の力で育っていくための場を整えることをいつも意識することです。そしてスタッフに本気でかかわることで、あなた自身も立派なリーダーになることができるのです。

 

[記事提供元]ファッション専門店の20~30歳代ショップスタッフに支持されている月刊総合専門誌「ファッション販売」

 

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