「お客様は一人で選びたいのだろう」と思っているとしたら、それは販売員の勝手な思い込みです。お客様は決して一人で選びたいのではなく、自分のことを分かってくれる販売員とはコミュニケーションしたいものです。そして、メールも大切なコミュニケーションの一つです。いただいてうれしいメールは、お客様の気持ちを動かし、記憶に残るメッセージとなります。それには、お客様の立場だったら……という目線が大切です。5つのポイントを参考に、受け取ったお客様の笑顔を思い浮かべながら早速メールをしてみましょう。

ポイント1 売ろうとするのではなく、紹介する姿勢が大切

「売ろうとする態度は嫌、でも情報は知りたい」というのがお客様の心理。お客様にとっては、流行やトレンドよりも「自分にとって何が似合うのか」ということの方が重要です。「人気」「売れ筋」「新作」という言葉より、「あなたには○○がおすすめ」という言葉の方が強く印象に残ります。さらに「なぜ似合うのか」「これがあるとなぜ便利なのか」という理由付けが重要で、これらの言葉を添えることで説得力が増すでしょう。

(1)メール件名: 提案

こんにちは!
いつもありがとうございます。
梅雨に入り不安定なお天気が続きますが、徐々に店頭には夏のリゾートを思わせる色やアイテムが増えてきました。この夏は思い切って大胆な色使いのプリントを取り入れてみませんか?目鼻立ちがはっきりしている○○様のお顔を、より引き立ててくれると思います。まずは、お店でチャレンジしてみてくださいね!

(2)メール件名: プラスアルファのおすすめ

こんにちは!
先日はありがとうございました。
お買い上げいただいたシャツワンピースは、活躍していますか?
今はジーンズを合わせていらっしゃると思いますが、これから暑くなりますのでレギンスはいかがですか?一般的なレギンスと違い、素材がしっかりしているので、スリムなストレッチパンツの感覚ではけますよ。くるぶし丈とロング丈の2種類ありますので、ぜひはき心地をお試しくださいね。私も最近はこればっかりです!

ポイント2 お客様の気持ちとコミュニケーションを取る

お客様は、初めて入った店で購入したときや、何度も買っている店でも着たことのない色やデザインのものを購入したときは、後になって買ってよかったかどうか不安になりがちです。しかし、販売した後はそれっきり。そんな不安な気持ちを察して“大丈夫”と背中を押してあげたり、“いつでも相談に乗りますよ”という姿勢に、安心感と信頼感を与えることができます。

大切なのは、お客様の気持ちに「共感する」ことです。

<<記憶に残るメールの書き方3ポイント>>
ポイント1:「私」がきちんと伝わっているか
ポイント2: 売ろうとしているように思われないか
ポイント3: 自分がこのメールをもらったらうれしいか

(1)メール件名: 似合っているかどうか不安

こんにちは!
先日はありがとうございました。ピンクがお好きな○○様ですが、フューシャピンクは初めてですね。鮮やかな色なので、お顔映りを心配されていましたが、何かお困りのことはございませんか?淡いピンクもお似合いですが、紫がかった濃いピンクはとてもエレガントでお肌がきれいに見えてすてきです!ぜひ、自信を持って着てくださいね。次回、周りの方の評判なども聞かせてくださいね。

(2)メール件名: 着回しの不安

こんにちは!
先日はありがとうございました。いろいろ試着していただき、さぞお疲れになったのでは、と申し訳なく思っております。ずっとスリムなパンツが多かったので、タック入りのパンツは少し違和感がありますね。でも、新しいアイテムが加わると、お手持ちのアイテムとのコーディネートも新鮮に見えますよ。もし、着回しで困ったときには、どんなことでもお気軽にお声を掛けてくださいね。

ポイント3 メールは前回の接客の続きと考える

お客様との会話の中には、あえて聞き出さなくても顧客情報がたくさん含まれています。お客様の好みや習い事、業種や職場の人間関係、家族やペットの話題など、何げない会話の中から次のメールの話題が生まれます。思いがけないメールほど、お客様に「覚えていてくれたんだ」という感動や「いつも気に掛けていて親身になってくれる」という信頼を与えます。また「いいことを聞いた」というお役立ち情報も効果的です。

(1)メール件名: お探しの商品入荷のお知らせ

こんにちは!
いつもありがとうございます。
先日、黒のパンツスーツに合わせるインナーをお探しと伺いましたが、見つかりましたか?披露宴の2次会ですので、スパンコールとビーズ使いのインナーで、ちょっとドレスダウンした華やかさを演出してはいかがでしょうか。ボトムをジーンズに変えれば、カジュアルなパーティにもピッタリです!入荷したとき、真っ先にお顔が浮かびましたので、取り急ぎメールいたしました。見ていただくだけでも大丈夫ですので、お気軽にご来店くださいね。

(2)メール件名: お子様の運動会

こんにちは!
そろそろお子様の運動会が近づいてきましたね。思わず、応援する方にも力が入りますね。1日屋外にいると、意外と日焼けするのが首の後ろだそうです。帽子のほかにも、ストールやシャツの襟を立てるなどして、日焼け対策も万全にして頑張ってくださいね!また、お話が聞けることを楽しみにしています。

 

ポイント4 来店頻度、買い上げ金額の多い少ないは関係ない

半年あるいは1年に1回のご来店でも、大切な顧客である。例えば、来店頻度の高い顧客が遠方に引っ越されたからといって、もうご来店いただけないだろうと一方的に線引きをする必要はありません。むしろ、そうしたお客様の変化に寄り添いながら「私はいつでもここにいますよ」「いつも気に掛けていますよ」というスタンスで、細く長くお客様とつながっていくことが大切です。しばらくごぶさたのお客様に対しては、あえて商品の話題には触れず、まずは気軽にご来店いただける状況をつくりましょう。

(1)メール件名: ごぶさたのお客様

こんにちは!
ごぶさたしています。
試験は無事に終わりましたか?お仕事をしながらのお勉強は大変でしたね。面接もあると伺いましたが、いかがでしたか?本当にお疲れさまでした。いつも前向きに頑張っていらっしゃる○○様の存在は、とても刺激になります。今ごろは、少しホッとされているのではないでしょうか。またお時間ありましたら、息抜きにお立ち寄りくださいね。

ポイント5 自分の「感動」を言葉で伝える

メールでは、そのスタッフらしさを伝えることが大切です。そのためには、ありきたりの文章より、スタッフらしさが感じられるフレンドリーな文章の方が親しみやすく印象に残りやすいです。お客様の心に届いたメールは、スタッフの顔やそのときの状況が瞬時に思い出されるため、記憶に残ります。ポイントは「うれしい」「楽しい」などスタッフの感情を言葉で伝えることです。そのほか、自分を印象付けるために「最近ベリーダンスにハマっている○○です」というように、名前の名乗り方を工夫するのも効果的です。

(1)メール件名: こんにちは!

先日は、ありがとうございました。
最近、あるお客様に「黒のパンツは昨年買っていただいてますよ」と言ったら、お客様から「パンツ1本儲けたわ」と言われた○○です。お買い上げいただいたジャケットは、お役に立っていますでしょうか?見た目では分からないけれど、ジャケットは着心地が大切ですよね。私も着ているからというわけではありませんが、○○様にもその良さを分かっていただけて、本当にうれしいです。これで、ますますビジネスもうまくいきますね!これからもコーディネートのお手伝いをさせていただけたらうれしいです。どんなことでも、お気軽にお尋ねくださいね。

 

[記事提供元]ファッション専門店の20~30歳代ショップスタッフに支持されている月刊総合専門誌「ファッション販売」

 

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