「お客様は一人でゆっくり選びたいはず」「フォローの連絡はかえって迷惑かも」——そう思って、購入後のお客様への連絡をためらっていませんか? 実はそれ、販売する側の思い込みかもしれません。お客様は決して放っておいてほしいわけではなく、自分のことを分かってくれる販売員とは、むしろつながっていたいと感じています。

そして今、そのつながりをつくる手段は接客中の会話だけではありません。LINE公式アカウント、メール、SMS——お店からお客様へメッセージを届けるチャネルは、以前よりずっと身近で多様になりました。だからこそ差がつくのは「どのツールを使うか」よりも「何を、どう伝えるか」です。

本記事では、お客様の記憶に残るメッセージの書き方を5つのポイントに整理し、LINE・メール・SMSそれぞれの特性に合わせた使い分けと例文をあわせてご紹介します。個店ならではの「顔の見えるコミュニケーション」は、大手ECにはない最大の武器です。ぜひ自店の顧客フォローに取り入れてみてください。

なぜ今、「一通のメッセージ」がお店の力になるのか

新規のお客様を集めるコストは年々上がっています。広告費をかけて新しいお客様を呼び込むよりも、一度ご来店いただいたお客様に「また行きたい」と思っていただくほうが、実は費用対効果の高い集客です。そしてその「また行きたい」をつくるのが、購入後のフォローメッセージです。

お客様の立場で考えてみると、商品を買った後のお店との関係は、多くの場合そこで途切れます。だからこそ、購入後に「その後いかがですか」と気に掛けてくれるお店は強く記憶に残ります。大切なのは、キャンペーン告知のような一斉配信ではなく、「あなたに向けて書いた」と伝わる一通です。接客中の会話を覚えていて、その続きとして届くメッセージには、DMやチラシにはない温度があります。

LINE・メール・SMS、それぞれの特性と使い分け

まずは3つのチャネルの違いを整理しておきましょう。どれが優れているということではなく、「届けたい内容」と「お客様との関係性」によって最適なチャネルは変わります。

チャネル向いている内容文章のトーン・長さ注意点
LINE購入後のひとことフォロー、入荷連絡、来店のきっかけづくり短め・会話調。2〜5行程度で気軽に長文は読まれにくい。頻度が高すぎるとブロックの原因に
メールコーディネート提案など、少し丁寧に伝えたい内容やや長めもOK。件名で内容が伝わるように件名が売り込み調だと開封されない
SMSお取り置き・修理完了・入荷など、確実に届けたい連絡ごく短く、用件を明確に文字数制限あり。営業色の強い内容には不向き

ざっくり言えば、LINEは「会話の続き」、メールは「手紙」、SMSは「確実に届くお知らせ」です。同じ内容でも、チャネルに合わせて長さとトーンを変えるだけで、受け取ったときの印象は大きく変わります。この前提を踏まえたうえで、ここからはチャネルを問わず共通する「記憶に残るメッセージの5つのポイント」を見ていきましょう。

ポイント1 売ろうとするのではなく、「紹介する」姿勢で書く

「売ろうとする態度は嫌、でも情報は知りたい」——これがお客様の正直な心理です。お客様にとって重要なのは、流行やトレンドそのものよりも「自分に何が似合うのか」「自分の生活にどう役立つのか」ということ。「人気です」「売れています」「新作入荷」という言葉より、「○○様にはこれがおすすめです」という言葉のほうが、ずっと強く印象に残ります。

さらに大切なのが理由付けです。「なぜあなたに似合うのか」「これがあるとなぜ便利なのか」。この一文が添えられているかどうかで、メッセージの説得力はまったく変わります。理由を書くためには、接客中にお客様のことをよく見ておく必要があります。つまり、良いメッセージは良い接客から生まれるということでもあります。

例文:季節の提案(メール)

件名:夏の新作、○○様に似合いそうな色が届きました

こんにちは! いつもありがとうございます。梅雨に入り不安定なお天気が続きますが、店頭には夏のリゾートを思わせる色やアイテムが増えてきました。この夏は思い切って、大胆な色使いのプリントを取り入れてみませんか? 目鼻立ちのはっきりした○○様のお顔立ちを、より引き立ててくれると思います。ご来店の際は、ぜひ一度合わせてみてくださいね。

例文:プラスアルファのおすすめ(LINE)

こんにちは! 先日はありがとうございました。お買い上げいただいたシャツワンピース、活躍していますか? これから暑くなるので、合わせるボトムにレギンスはいかがでしょう。素材がしっかりしているので、ストレッチパンツの感覚ではけますよ。くるぶし丈とロング丈の2種類があるので、次回ぜひはき心地を試してみてくださいね。

LINEの場合は、メールよりも一段カジュアルに、短めにまとめるのがコツです。「私も最近こればっかりです!」のようなひとことを足すと、会話の続きらしさが出ます。

ポイント2 お客様の「買った後の気持ち」に寄り添う

お客様は、初めて入ったお店で購入したときや、いつものお店でも着たことのない色・デザインに挑戦したとき、後になって「本当に買ってよかったのかな」と不安になりがちです。ところが多くのお店では、販売した瞬間にコミュニケーションが終わってしまいます。

この「購入後の不安」を察して、「大丈夫ですよ」と背中を押すメッセージを届けられるお店は、それだけで信頼されます。ポイントは、商品の話をする前に、まずお客様の気持ちに共感すること。「お顔映りを心配されていましたね」「少し違和感がありましたよね」と、接客中に感じ取ったお客様の気持ちを言葉にして返すことで、「この人は分かってくれている」という安心感が生まれます。

例文:初めての色に挑戦したお客様へ(LINE)

こんにちは! 先日はありがとうございました。ピンクがお好きな○○様ですが、フューシャピンクは初めてでしたね。鮮やかな色なのでお顔映りを心配されていましたが、その後いかがですか? 紫がかった濃いピンクはとてもエレガントで、お肌がきれいに見えてすてきでした。ぜひ自信を持って着てくださいね。周りの方の評判も、今度ぜひ聞かせてください!

例文:着回しに迷っていたお客様へ(メール)

件名:先日のパンツ、着回しでお困りのことはありませんか?

こんにちは! 先日はいろいろとご試着いただき、ありがとうございました。ずっとスリムなパンツが多かった○○様には、タック入りのパンツは少し新鮮だったかもしれませんね。でも、新しいシルエットがひとつ加わると、お手持ちのアイテムとの組み合わせもぐっと新鮮に見えますよ。もし着回しで迷われたときは、どんなことでもお気軽にご相談くださいね。

ポイント3 メッセージは「前回の接客の続き」と考える

お客様との会話の中には、あえて聞き出さなくても、次のメッセージの種がたくさん含まれています。お客様の好みや習い事、お仕事の話、ご家族やペットの話題——何げない会話をきちんと覚えておくことが、そのままメッセージの材料になります。

思いがけないタイミングで届く「覚えていてくれたんだ」というメッセージほど、お客様の心を動かすものはありません。接客の場でメモを取るのは難しくても、お客様が帰られた後に「話した内容をひとことメモしておく」習慣をつけるだけで、送れるメッセージの質は大きく変わります。LINE公式アカウントやメール配信ツールの顧客メモ機能を活用するのもおすすめです。

例文:お探しの商品が入荷したとき(LINE)

こんにちは! 先日、黒のパンツスーツに合わせるインナーをお探しと伺いましたが、もう見つかりましたか? 実は今日、スパンコールとビーズ使いのインナーが入荷して、真っ先に○○様のお顔が浮かびました。披露宴の二次会なら、ちょっとドレスダウンした華やかさが出せると思います。見ていただくだけでも大丈夫ですので、お気軽にお立ち寄りくださいね。

例文:会話に出た予定に触れる(SMS・短文)

こんにちは、△△(店名)の□□です。そろそろお子様の運動会ですね! 1日屋外だと首の後ろが意外と日焼けするそうです。ストールや襟元の工夫で対策万全に、応援がんばってください。またお話聞かせてくださいね。

「入荷したとき、真っ先にお顔が浮かびました」——この一文が入るだけで、一斉配信のお知らせとはまったく違うメッセージになります。なお、SMSは文字数に制限があるため、要点をひとつに絞るのがコツです。あれもこれもと詰め込まず、「あなたのことを思い出しました」が伝われば十分です。

ポイント4 来店頻度や購入金額で、お客様を線引きしない

半年に1回、1年に1回のご来店でも、大切なお客様であることに変わりはありません。よくあるのが、「引っ越されたからもう来られないだろう」「最近ご無沙汰だからリストから外そう」と、お店側が一方的に関係に線を引いてしまうケースです。

むしろ、お客様の生活の変化に寄り添いながら「いつでもここにいますよ」「いつも気に掛けていますよ」というスタンスで、細く長くつながり続けることが、個店ならではの関係づくりです。ごぶさたのお客様へのメッセージでは、あえて商品の話題に触れないのがポイント。まずは「気軽に立ち寄れる空気」をつくることを優先しましょう。売り込みの気配がないメッセージだからこそ、久しぶりでも気持ちよく受け取ってもらえます。

例文:ごぶさたのお客様へ(メール)

件名:試験、お疲れさまでした!

こんにちは! ごぶさたしています。試験は無事に終わりましたか? お仕事をしながらのお勉強、本当に大変でしたよね。面接もあると伺っていましたが、いかがでしたか? いつも前向きに頑張っていらっしゃる○○様の存在は、私にとってもとても刺激になっています。今ごろは少しホッとされているころでしょうか。またお時間がありましたら、息抜きにぜひお立ち寄りくださいね。

この例文には、商品の話がひとことも出てきません。それでも——いえ、だからこそ、受け取ったお客様は「またあのお店に行こう」と思うのです。

ポイント5 自分の「感動」と人柄を言葉にする

メッセージで大切なのは、正しい文章よりも「その人らしさ」が伝わることです。ありきたりの定型文よりも、スタッフの人柄が感じられるフレンドリーな文章のほうが、親しみやすく記憶に残ります。お客様の心に届いたメッセージは、読んだ瞬間にスタッフの顔やお店での会話がよみがえるものです。

コツは、「うれしい」「楽しい」といった自分の感情を素直に言葉にすること。そして、自分を印象付ける名乗り方を工夫することです。「最近ベリーダンスにハマっている□□です」のような一文があるだけで、数あるメッセージの中で埋もれない存在になれます。AIツールで下書きをつくる場合も、最後に必ず「自分の言葉」をひとこと足す——これだけで、メッセージの温度は大きく変わります。

例文:人柄が伝わるフォロー(LINE)

先日はありがとうございました! 最近あるお客様に「黒のパンツは昨年お買い上げいただいてますよ」とお伝えしたら、「パンツ1本儲けたわ」と喜んでいただけた□□です(笑)。お買い上げいただいたジャケット、お役に立っていますか? ジャケットは見た目以上に着心地が大切ですよね。○○様にその良さを分かっていただけて、本当にうれしかったです。これからもコーディネートのお手伝いをさせてくださいね。

送信前に確認したい3つの問いかけ

最後に、どのチャネルで送る場合にも共通する、送信前のセルフチェックをご紹介します。書き上げたメッセージを送る前に、次の3つを自分に問いかけてみてください。

一、「私」がきちんと伝わっているか(誰から届いたか、顔が浮かぶか)

二、売ろうとしているように思われないか(紹介と提案の姿勢になっているか)

三、自分がこのメッセージをもらったら、うれしいか

特に3つ目の「自分がもらったらうれしいか」は、迷ったときの最終判断としてもっとも頼りになる基準です。この問いに自信を持って「はい」と答えられるメッセージなら、チャネルがLINEでもメールでもSMSでも、きっとお客様の心に届きます。

お客様が喜んでくれる姿を想像しながら書く一通は、お店の売上をつくるだけでなく、「この街にこのお店があってよかった」という関係そのものを育てていきます。まずは今日接客したお客様のお一人に、短いメッセージを送るところから始めてみてください。

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