東京・八王子。JR八王子駅北口から歩いて5分ほどの横山町に、棚いっぱいの食器が並ぶお店があります。

和食に似合う器、洋食を華やかに見せるプレート、中華料理に使いたくなる皿、かわいらしいカップや個性的なマグカップ。店内を歩いていると、次々と違う表情の食器が目に入り、どれを選ぼうか迷ってしまいます。

お店の名前は「食器と雑貨hachi」。ジャンルを限定せず、たくさんの商品の中から自分だけのお気に入りを探せる、倉庫や古着屋のような食器専門店です。

「お店の好みを押しつけるのではなく、迷えるほどたくさんの商品を用意して、お客様自身に好きなものを選んでもらいたい」。そんな思いから生まれた店づくりや、売れ残った商品を人気商品に変えた売り場の工夫、スーパーデリバリーを活用した仕入れについて、代表の高橋剛さんにお話を伺いました。

八王子・横山町にある「食器と雑貨hachi」。店内にはジャンルもデザインも異なる食器が並び、宝探しをするように商品を選べます。

迷えるほどの商品から、「自分の好き」を見つけてもらう

──食器と雑貨hachiは、どのようなお店ですか?

高橋さん:和風、洋風、中華といったジャンルに限定せず、いろいろな食器を扱っている専門店です。

僕が最初にイメージしたのは、倉庫や古着屋さんのようなお店でした。きれいに絞り込まれた品ぞろえというより、たくさんの商品を見ながら、「こんなものもあった」「これが自分の好みに合う」と発見してもらいたかったんです。

食器屋さんに来て、1時間でも2時間でも迷う。自分で探し、自分だけのお気に入りを見つける。その時間も含めて楽しんでもらえるお店にしたいと思っています。

──店づくりで大切にしていることは何でしょうか?

高橋さん:お店側の主張を強く出しすぎないことです。

たとえば、「この店はこのテイストだから、これを選んでください」という形にはしたくありませんでした。人によって好みは違いますし、家族でも好きなものは違います。奥様がかわいらしいカップを選び、ご主人がクールなマグカップを選んでもいい。食器だからといって、必ずしもペアやセットでそろえる必要はないと思うんです。

いろいろな選択肢を用意して、「自分の好き」をそのまま選んでもらう。それがhachiの大切にしている考え方です。

──小さなお子さんと一緒に来店される方への工夫もあるそうですね。

高橋さん:食器屋さんでは珍しいと思いますが、レジの近くにキッズコーナーを作っています。

小さなお子さんがいると、「商品を割ってしまったらどうしよう」「お店に迷惑をかけるかもしれない」と考えて、食器屋さんへ行くこと自体をためらう方もいると思います。そこで、スタッフの目が届く場所でお子さんに遊んでもらい、その間にご家族がゆっくりと食器を選べる環境を作りました。時間を気にせず悩めることを、喜んでくださるお客様も多いですね。

レジの近くに設けられたキッズコーナー。小さな子どもと一緒でも、家族が落ち着いて食器を選べるよう工夫されています。

「自分で作ってしまおう」から始まった、八王子の食器専門店

──食器店を始めたきっかけを教えてください。

高橋さん:もともと八王子で複数の飲食店を経営していて、店舗で使う食器を買いに行く機会がよくありました。ところが、八王子には食器を専門的に扱うお店がほとんどなかったんです。必要なものをそろえるには、かっぱ橋などへ買いに行かなければなりませんでした。

八王子は人口も多く、魅力的な飲食店もたくさんあります。それなのに食器屋さんがない。「それなら、自分で作ってしまおう」と考えたのが始まりです。

──飲食店の経営経験があっても、食器店の開業には違う難しさがありましたか?

高橋さん:まったく違いました。飲食店は4店舗ほど経営してきましたし、パーソナルジムなども運営してきましたが、商品を仕入れて販売する小売業は初めてでした。食器をどこから仕入れればいいのか。どのように価格を決めるのか。どう並べればお客様に手に取ってもらえるのか。本当に右も左もわからないところからのスタートでした。

ほかの小売店を見に行き、商品の並べ方や価格の付け方を勉強しながら、少しずつ形にしていきました。大変ではありましたが、自分に経験がない分野だったからこそ、面白さもありましたね。

──食器店を始めてよかったと感じるのは、どのようなときですか?

高橋さん:これまで出会えなかった人とつながれたことです。飲食店では、料理を提供し、食べていただくことが中心になります。食器店では、主婦の方や若いカップル、ご年配の方など、飲食店とは異なる幅広いお客様が来てくださいます。

食器を買う予定がなくても、近所の方が世間話をしに立ち寄ってくれることもあります。何気ない会話を重ねながら、地域の中に少しずつ溶け込んでいく。その感覚は、これまでの事業ではなかなか得られなかったものでした。

売れ残りを人気に変えた「ラストワン」の発想

──商品を仕入れる際の基準を教えてください。

高橋さん:まず、迷えるほどの数を用意することです。人によって好みは違うので、できるだけ多くの選択肢をそろえたいと考えています。

もう一つは、カジュアルに使える価格であることです。個人経営の食器店には、陶芸家の作品や高価な一点ものを中心に扱うお店もありますが、hachiでは原則として3,000円を超える商品は置かないと決めています。

服を着替えるように、「今日はこの食器を使いたい」「数か月後には違う雰囲気のものを使いたい」と、気軽に楽しんでほしいんです。特別な日にだけ使う器ではなく、毎日の気分に合わせて選べる食器をそろえています。

──仕入れや販売で、失敗した経験はありますか?

高橋さん:「これは絶対に売れる」と思って多めに仕入れたのに、まったく動かなかった商品はあります。

その経験から学んだのは、良い商品であれば自然に売れるわけではないということでした。同じ商品でも、どこに置くか、どのように見せるかで、お客様の反応は大きく変わります。

目に入りやすい場所へ移したり、テーマを決めたコーナーにまとめたりすると、それまで動かなかった商品が売れ始めることもあります。仕入れた後の見せ方まで考えることが、販売ではとても大切だと気づきました。

──特にうまくいった売り場の工夫はありますか?

高橋さん:店内に「ラストワン」というコーナーを作っています。

食器は、同じ商品が3枚、4枚と並んでいると選ばれやすいのですが、最後の1枚になるとなぜか売れにくくなります。お客様にも「最後に残ったものは選びにくい」という心理があるのかもしれません。

そこで、残り1点の商品を一か所に集め、「残り1点です」「次にいつ入荷するかわかりません」と見せるようにしました。すると、売れ残りではなく、今しか出会えない商品として手に取ってもらえるようになったんです。

僕の中では、ちょっとした発明でした(笑)。商品の価値を変えたわけではありません。見せ方を変えることで、お客様が商品に出会うきっかけを作れたのだと思います。

残り1点の商品を集めた「ラストワン」コーナー。売れ残りと捉えず、「今しか出会えない商品」として見せ方を変えています。

──日々の商品選びには、スタッフも関わっていますか?

高橋さん:店舗の運営は、基本的にスタッフに任せています。接客や商品探しもスタッフが行い、僕は最後の仕入れ判断をすることが中心です。

スタッフによって好みが違うので、選んでくる商品にも個性が出ます。かわいらしい食器をよく見つける人もいれば、少し変わったものを選ぶ人もいます。その違いがあるから、店内に幅が生まれます。自分が選んだ商品が実際に店頭へ並び、お客様に買っていただけることは、スタッフにとっても大きなやりがいになっていると思います。

スーパーデリバリーを、仕入れの「入口」にする

──スーパーデリバリーを知ったきっかけは何でしたか?

高橋さん:食器屋を始めようと考えたとき、最初に不安だったのが仕入れでした。お店を作りたいという思いだけでは、商品を並べることはできません。どこから、どのように仕入れればよいのかをインターネットで調べ、その中でスーパーデリバリーを見つけました。

小売業が初めてだった僕にとって、さまざまなメーカーや商品を一つのサイトで見られることは、仕入れの入口を見つけることでもありました。

──現在は、どのように活用していますか?

高橋さん:スーパーデリバリーで仕入れられるものは、できるだけ優先して利用しています。hachiが扱いたい価格帯の、カジュアルな食器が豊富です。コストパフォーマンスとデザインのバランスが、店の方向性に合っています。

複数のメーカーや問屋と個別に取引すると、それぞれの仕入額や書類を確認しなければなりません。スーパーデリバリーでは、一つのサイト上で取引内容を確認できるので、月々の仕入れを把握しやすく、経理面でも助かっています。

「あといくら注文すると送料が無料になる」といった目安がわかることも、発注量を考えるうえで便利です。新商品もサイト上で確認できるため、一社ずつ問い合わせなくても、商品を探しやすいと感じています。

──ほかの仕入れ先とは、どのように使い分けていますか?

高橋さん:スーパーデリバリーで取り扱いがあり、条件が合うものは、まずそちらから仕入れます。一方で、窯元から直接仕入れなければ手に入らない商品や、個別の取引でしか扱えない食器もあります。そうしたものは、直接取引をしています。

すべてを一つの仕入れ先にまとめるのではなく、スーパーデリバリーを軸にしながら、必要に応じて直接取引を組み合わせる。経理やコストの負担を抑えながら、店の品ぞろえも守れる方法だと思っています。

和・洋・中のジャンルを問わず、カジュアルに使える食器が並ぶ店内。仕入れ先を使い分けながら、幅広い選択肢をそろえています。

利益より先に、「ありがとう」を貯める

──お店を続けていくうえで、大切にしていることは何でしょうか?

高橋さん:お客様や地域に対して、どれだけ先に「ギブ」できるかを大切にしています。

最初から利益や売上だけを狙うと、お店のファンは生まれにくいと思っています。まずはお客様に楽しんでもらい、「ありがとう」を貯めていく。すると、「今度また来るね」「次は買っていくよ」と、少しずつ関係が返ってきます。

特に食器店は、地域の方が日常的に使うものを買いに来る場所です。だからこそ、地域の人にどれだけ愛してもらえるかが、長く続けるうえで大切だと思っています。

──地域とのつながりを作るために、どのようなことをしていますか?

高橋さん:地域のイベントに参加したり、近隣の飲食店やお店とコラボレーションしたりしています。また、店舗前のスペースを、ポップアップショップや販売に挑戦したい地域の方へ無料で貸し出しています。以前は、マドレーヌを販売する方にも使っていただきました。

お店の中だけで閉じるのではなく、何か始めたい人を応援し、地域の人が気軽に立ち寄れる場所にする。そこで新しいつながりが生まれれば、hachiだけでなく、街全体の楽しさにもつながると思っています。

──今後、力を入れていきたいことを教えてください。

高橋さん:一般のご家庭に食器を届けることに加えて、飲食店の方へのサポートを増やしていきたいです。

新しく飲食店を開業する際には、同じ食器を数十枚単位でそろえる必要があります。最近では、開業時の食器選びを最初からまとめてお手伝いする機会も増えてきました。

僕自身が現役の飲食店経営者なので、単に商品を販売するだけではなく、実際の店舗運営を踏まえたアドバイスもできます。料理や店の雰囲気に合う食器を一緒に考え、飲食店の立ち上げを支えられる店にしていきたいですね。

──これからお店を始める方へ、メッセージをお願いします。

高橋さん:最初から売上や利益だけを追うのではなく、まずお客様に楽しんでもらうことから始めてほしいと思います。お客様や地域にできることを考え、「ありがとう」を少しずつ貯めていく。その積み重ねが、お店を応援してくれる人や、困ったときに支えてくれる人につながります。

仕入れについては、最初からすべての問屋やメーカーと個別に取引しようとすると大変です。スーパーデリバリーのように、多くの商品や仕入れ先をまとめて確認できるサービスを活用すれば、未経験でも一歩を踏み出しやすくなると思います。

──最後に一言お願いします。

高橋さん:食器が好きな方はもちろん、いろいろな方に愛していただけるお店にしたいです。

買うものを最初から決めていなくても、店内を歩きながら迷い、自分の好きな一枚を見つけてほしいですね。食器を買う場所というだけでなく、地域の方が気軽に立ち寄り、楽しめる場所でありたいと思っています。

八王子へ来た際には、ぜひ遊びに来てください。


ジャンルやデザインを見比べ、自分だけのお気に入りを探す楽しさが伝わります。

食器と雑貨hachi

東京都八王子市横山町にある食器専門店。和・洋・中などジャンルを限定せず、一般家庭で使いやすいカジュアルな食器から、飲食店向けの食器まで幅広く取り扱っています。

レジ付近にはキッズコーナーがあり、小さな子どもと一緒でもゆっくりと買い物を楽しめます。飲食店の新規開業時における食器選定や、まとまった数量の注文についても相談できます。

住所:東京都八王子市横山町8-6
ライオンズマンション八王子シティ弐番館101号室

営業時間:11:00~19:00

定休日:不定休

アクセス:JR八王子駅北口から徒歩5分

Instagram:hachi.hachioji

※営業日などの最新情報は、店舗の公式サイトInstagramでご確認ください。

ショップの開業準備・仕入れならスーパーデリバリー

スーパーデリバリーは、食器、文具、雑貨、アパレル、食品、店舗什器・備品など、ショップづくりに必要な商品を仕入れられる事業者向け卸・仕入れサイトです。

複数の出展企業の商品を一つのサイト上で探せるため、初めて小売店を開業する方も、仕入れ先や商品を比較しながら準備を進められます。

小ロットから試せる商品も多いため、まずは自分のお店に合う商品を探し、店頭で反応を見ながら追加発注することも可能です。仕入れや経理の負担を抑えながら商品ラインナップを広げたい方は、スーパーデリバリーを活用してみてください。

(文・写真:染谷 昌利)