調剤薬局での物販が広がりつつある今、新しい収益源として関心を寄せている経営者や薬剤師の方も多いのではないでしょうか?しかし、調剤薬局は本来薬の処方をメインとするため物販の経験がなく、何を販売すればよいのか?どのように接客すればよいのかと悩む声も耳にします。そこで今回は北九州市八幡西区をはじめとした調剤薬局グループを経営し、グループ全体で物販に取り組んでいる八幡西調剤薬局を取材しました。
八幡西調剤薬局では7年前から少しずつ物販をはじめ、今では物販をする上での心構えや販促に欠かせないPOP作成などの研修を自社で行うほど本格的な活動をしています。今回は社長の中村様に物販を始めた経緯や来店される患者さんからの反響、効果などを伺いました。
目次
処方箋調剤だけに頼らない収益源が必要
―八幡西調剤薬局では7年ほど前から物販を始められたそうですが、きっかけは何ですか?
中村さん:これまでは薬局の競合も今ほどではなかったのですが年々状況が変わり、飽和しつつあります。また、高齢者人口の増加に伴い薬価改定など診療報酬の見直しなども行われています。こういったことから処方箋調剤だけの収益に頼る状況は今後さらに厳しくなっていくと思い、何か新しいことをしなければならないと考えました。
物を売るというマインドセットが大事
―業界ではいち早く物販を取り入れられたと思いますが、まず何から始めたのでしょうか?
中村さん:まずは「なぜ物販をしなければいけないのか?」という認識をスタッフと共有していくことから始めました。薬局が置かれている現状や、これからどういったことをしていかなければならないのか、といった課題をみんなで共有し、どうやって乗り越えていこうかと一緒に考えてきました。
そして、物販部を作って一人一人に売ってみたい商品のプレゼンもしてもらいました。それまで物販をしたことがなかったので、商品を売るとはどういうことか?どういう意識を持てばいいのか?というところからやってきました。
―販促で使うPOPの研修も社内で行っておられるとか?
中村さん:そうです。スタッフが社外の研修を受けて、学んだことを社内でレクチャーしてもらいました。ほかにも、販売する商品を扱っているメーカーの方に使用方法や説明の仕方などを教わったりすることもありますし、ドラッグストアなどで販売の経験があるスタッフに陳列の方法やディスプレイのコツなどを説明してもらうこともあります。
また、各店舗が取り組んでいることを共有する場も設けています。経験がないからこそ、情報を共有しあってノウハウを取り入れるようにしています。
(POP作成や接客の研修)
患者さんのニーズをくみ取り、オリジナル商品の開発も
―店頭ではどんな商品を販売されているのでしょうか?
中村さん:衛生用品や食品、乾燥野菜などジャンルは幅広いですね。次亜塩素酸などの消毒系のアイテムはコロナ以前から売れていましたが、やはり今は必須アイテムですね。乾燥野菜の「九州ドライベジ」は九州のメーカーの方から直接提案いただいたのですが、一人暮らしや高齢者の方で手軽に野菜を取りたい方や、糖尿病を患っていて食物繊維が必要な方に購入いただいています。
患者さんがどんな商品を求めているのかは、普段の何気ない会話にヒントがあったりします。そこで拾った情報をもとに、こんな商品があったらいいのかも、と現場のスタッフからはもちろん、私から提案することも多いですね。
―オリジナル商品も販売されているのだとか。
中村さん:これも患者さんとの会話から生まれた商品ですが、オリジナルのグラノーラを開発して販売しています。糖尿病をお持ちの患者さんが多いのですが、「グラノーラを食べたくても糖分が高いので食べられない」という声を聞いたスタッフが「糖尿病の方でも食べられるグラノーラを作れないか」と思案して、県内にある工場の方に掛け合ってオリジナルのグラノーラを作ったんです。プロテインを混ぜてたんぱく質も摂取できるもので、健康にも良いものとして販売しています。糖尿病の方からも喜びの声をいただいています。
(オリジナル商品のグラノーラ)
手応えを感じる物販の効果
―物販を始めてみて効果はどうですか?
中村さん:効果という面では売上面とお客さんの反応とそれぞれあると思いますが、弊社の場合は3年前と比較すると粗利ベースで240%の伸びを達成しています。徐々に扱う商品数も増えているので、来店されたお客さんにも商品を選ぶ楽しさを感じていただいているように思います。デジタルサイネージを活用して薬の処方の待ち時間などにオススメ商品などが目に留まるような工夫もしているので、そういった効果も出ているかと思います。
―社内でも何か反応はありますか?
中村さん:接客に関しては、サンプルを渡して積極的に声をかけるようになり、お客さんに提案する商品はまず自分自身が使ってから、という意識を持つようにもなっています。また、社内にはリトルチャレンジと言って、薬局のファンを増やすためにスタッフがなんでも好きなことを企画して挑戦する、という制度があります。サイコロを振って出た目の数だけ予算を出す仕組みなのですが、先ほどのグラノーラの開発もこの制度の中から生まれました。こういった制度を利用して自主的に物販に取り組んでくれる姿も増えましたね。
新しい形の薬局づくり
―これから物販を取り入れるとすれば何を意識すればよいでしょうか?
中村さん:これまでの経験からすると、商品の選定よりもまずはスタッフのマインドセットでしょうか。冒頭でお話したように、物販の経験がないからこそまずはその必要性を考え、会社内や店舗内で認識を揃えることが重要だと思います。そのうえで、その店舗ならではの商品構成や、来店される方とのコミュニケーションの取り方なども考えていくのが良いのではないでしょうか。
これからの調剤薬局はOTC薬品などの販売も含め、セルフメディケーションの知識やそれに関する商品などを提案できる存在になっていくことが求められているわけですから、その期待に応えられる店づくりが必要になってくるのではないかと思います。
―社内の意識作りや商品の選び方など、参考になるお話をありがとうございました!今後、自社の物販ノウハウを業界内にも広げていきたいという八幡西調剤薬局さんの取り組みに注目していきたいと思います。
住所:福岡県北九州市八幡西区八枝3丁目12−1
TEL:093-695-0777
<これまでスーパーデリバリーが取材した調剤薬局での物販の様子は、下記にも掲載しています。ぜひご覧ください。>
薬局の物販商品の仕入れはスーパーデリバリー
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