新宿からほど近く、学生の街でもある東京・早稲田にカンボジアで作られたフェアトレードのバッグやストール、アクセサリーをメインに東南アジアの輸入商品をセレクトして販売しているお店「maki×maki(マキマキ)」さんがあります。お店にはオリジナルの美しい色のシルクのバッグや、カンボジアの万能布クロマーなどが並んでいます。今回は、maki×makiさんがフェアトレードの商品を扱う理由、フェアトレード商品をお客様に販売する上で大切にしていることなどをお聞きしました。

学生時代の旅への想いからフェアトレードのお店を持つことに

代表の岡本さん

──今日はよろしくお願いします。シルクの光沢に、鮮やかな色のバッグが目に留まります。こちらが「maki×maki」さんのメイン商品ですか?

岡本さん:こちらのバッグは約170gと驚くほど軽いゴールデンシルクのハンドバッグで当店の一番人気の商品です。日本のお客様に気に入っていただけるようにデザインや仕様の改良を繰り返してきました。これまで持ち手の形状を変えたり、ファスナーを付けたり、日本のお客様のニーズ合わせてブラッシュアップを続けています。

──びっくりするほど軽いですこちらの商品がフェアトレードなんですよね?

岡本さん:はい、養蚕や絹産業の盛んなカンボジアのタケオ州で生地を生産し、プノンペン郊外のフェアトレードNGO「Woman for Woman」の工房でハンドメイドで作っています。縫製スキルを身に付けることで、女性や障害のある方の自立を支援している団体です。

「Woman for Woman」の代表がデザイナーなので、日本のお客様向けの企画案を提案して、製品化してもらっています。フェアトレード先進国フランスを中心としたヨーロッパで人気の商品をベースにした商品も扱っています。コロナ以前は定期的にカンボジアを訪問して、不良品の基準や検品方法について議論を重ねて、品質を向上させてきました。一般的にカンボジアなど東南アジアで生産された商品は、安かろう悪かろうというイメージがあるかもしれませんが、そのイメージはもう過去のものです。現地の工房とともに品質向上に取り組み続けたこともあり、現在は日本製に負けない、世界に通用する品質の商品が仕上がるようになりました。

美しい色は先染めしており、染色には伝統的に使われている自然由来の成分が使われています

岡本さん:また、当店のバッグやストールは鮮やかな美しい色合いを大切にしています。ゴールデンシルクの生地は、糸の段階から現地で伝統的に使われている草木染めなど自然由来の成分で先染めすることで、色落ちも少ない製品に仕上がっています。

──「maki×maki」さんの、お店の由来について教えてください。

岡本さん:カンボジアとのつながりは、私が学生時代にバックパッカーとして旅をしたことが起点になっています。タイからカンボジアに向かったんですが、1990年代の当時は、カンボジアのガイドブックは無く、現地で情報を得ながらアンコールワットなどを回りました。カンボジアは内戦が終わってまもなくの混沌とした情勢から抜け出し始めた頃で、そこかしこに軍の検問があり、何度もパスポート提示をしながら旅をしました。内戦が終わったばかりで、貧困状態ながらも前を向いて進むしかないカンボジアの人々の姿に心打たれたことを覚えています。

──思い出のある国なんですね。興味があってもフェアトレード事業に取り組むのは簡単ではないと思いますが…

岡本さん:私自身は、いつかバックパッカー時代に関わったアジア地域と関わる事業をしてみたい、と長年思っていました。当初は日本の伝統工芸品の越境ECを考えていたのですが、学生時代の先輩からカンボジアやラオスとのフェアトレード事業継承のお話があり、思い出のあるカンボジアの人たちとつながる仕事であれば、ぜひやってみたいと思い挑戦することになりました。

──なるほど。岡本さんのお名刺には、広告制作やマーケティング、地域メディアの事業をされているとありますが、ファッションに関わるお仕事の経験はあったんですか?

岡本さん:社会人としてのキャリアは、広告クリエイティブやマーケティング業界の仕事が中心ですが、実は新卒で就職したのはスポーツアパレルメーカーでした。そこではアウトドアウエアの営業や販促に関わっていたんです。その後、広告業界に転職して今の道を歩むことになるのですが。maki×makiの事業では、広告の仕事にはない「ものづくり」に関わる醍醐味があります。またネット販売だけでなく、実店舗があることで、お客様の声を直接伺うことができるところも、ものづくりに関わるフェアトレード事業の魅力かもしれません。

ネット販売と直接見て触れる直営店の役割を意識して運営

──お店のスタートは店舗からだったのですか?

岡本さん:いえ、最初の1年くらいはネット販売のみでした。新宿区の高田馬場・早稲田エリアで地域メディアを運営していることもあり、店舗が空くという情報をいただき実店舗をオープンしました。maki×makiの商品はシルクやコットンが中心なので素材感を大切にしています。お客様からも直接商品を触れてみたいという声が多かったので、お店には商品を触れて質感や重さ、使い勝手を確かめていただく役割もあります。ネットショップで当店を知って直接お店に来られる方も数多くいらっしゃいますね。

──コンセプトを主に「カンボジア」に絞ったことで、お店の特色が出ていますが、自社商品以外の仕入れはどうやって行っていますか?

岡本さん:NGOの工房で製作する商品以外に、カンボジアで直接買い付けてくるものもありますが、実はカンボジア製品を扱う企業さんの方から、maki×makiで扱ってほしいと連絡をもらうことも少なくありません。日本国内でカンボジア製品をメインに扱うお店はとても珍しいので、見つけてくださるんです。

商品を卸したい企業さんだけでなく、消費者の方もmaki×makiをネットショップやSNSで見つけてくださって、九州や関西など遠方から当店の商品を手で触れて確かめたかったと言って、来店される方もいます。カンボジアが大好きでカンボジア産の商品と買いたいと、リピートして新商品をチェックしに来てくださるお客様もいらっしゃいます。

──カンボジアへの想いがお客様ともつながることを実感しますね。

岡本さん:ネット販売で購入してくださるお客様ももちろんいますが、ネットショップはお店で扱う商品をチェックできるようカタログ的にご覧いただけるので、お客様にカンボジアの商品を知ってもらう場の役割が大きいと思います。

ネットでずっと気になっていた、マルシェなどのイベントで知った、知り合いから教えてもらった、そういった方が実店舗に着てくださいます。商品の丁寧な仕上がりや質感を感じていただき、お気に入りを見つけて買ってくださることや、お客様との会話によって商品の改良点やニーズがみつかるなど、ネット販売と店頭販売の役割の違いを感じています。

フェアトレードであることより、商品の魅力で惹きつけることを優先

──店内を見てみると、フェアトレードについての案内は壁のポスターにある程度ですね。意図的にそうしているんですか?

岡本さん:お店をスタートしたときから、フェアトレードを前面に出すことはしていません。皆さん、色やデザインが可愛いとか、美しいとか、使い勝手や質感がいいとか、そういった商品に対して欲しいと思ったからこそ商品を購入しますよね。ファトレードだから買うというのは、まだ日本ではなかなか難しいと思うんです。

なので、フェアトレードの商品をメインに扱うお店ではありますが、店内にはお客様が商品に興味をもって入ってくるような見せ方、商品のセレクトを行っています。 商品の説明をしている中で、お客様が商品のストーリーに興味を示しているなと思ったときに初めて、フェアトレードなど生産背景のお話をした方が、ブランドの想いがうまく伝わると思っています。共感なくフェアトレードの良さをお伝えしても、興味がない時点では押しつけになってしまいますよね。

店内の壁に飾られた、カンボジアのNGO「Woman for Woman」の生産工程の紹介

──確かに、来店されるお客様がフェアトレードを知らなかったら押しつけになってしまって、商品の魅力も伝えることが難しくなってしまいますね。

岡本さん:当店のオリジナル商品は、バッグやインテリア雑貨など消耗品ではないので、セレクトしている仕入れ商品は、食品をメインにしています。カンボジアの特産であるカシューナッツや生胡椒、ドライフルーツ、ハーブティーなどは、味わいも含めてオリジナリティのある特別な商品なのでリピートされるお客様もついています。スーパーデリバリーで仕入れている商品で人気なのは、第3世界ショップさんの「カレーの壺」シリーズや「チョコレート」です。パッケージデザインも優れていて、アイキャッチにもなっています。

カンボジア産のカシューナッツや塩漬け生胡椒など珍しい商品をセレクト

──接客や集客のために行っていることはありますか?

岡本さん:メインは店舗のSNSと公式LINEを活用しています。SNSはInstagramを中心に、Facebook、X、YouTube、TikTokで発信しています。接客面では最近は、新宿から近いこともあり高田馬場や早稲田周辺のホテルや民泊施設を利用する外国人観光客も多く、海外からのインバウンドのお客様も増えています。そのため、商品説明のPOPや入り口には、英語での説明も添えるようにしています。

インバウンド需要から英語を追加した商品POP

岡本さん:先日とある企業のSDGs部門のセミナーでフェアトレードについてお話をして社員向けの販売会を開催しました。セミナーでもお話ししましたが、日本でのフェアトレードはコーヒーやチョコレートなどフードを中心とした限られた商品のみのイメージで、maki×makiのようなアパレル商品の認知はこれからです。お店で商品を売るだけでなく、フェアトレードやエシカル消費を広く知ってもらうために、イベントに参加したり、SNSで情報発信をしたりと、多角的に広報や啓蒙活動にも取り組んでいきたいと考えています。

──確かにフェアトレードはここ数年、SDGsやレジ袋の有料化などエシカルな取り組みが行われて少しずつ認知されてきました。でもまだまだ…といのが実際のところですね。

岡本さん:maki×makiの原点は、学生時代のカンボジアでのバックパッカーの旅です。今のカンボジアは、高度経済成長中なのでカンボジアを訪問するたびに街の雰囲気や現地の人々から刺激やパワーをもらえます。カンボジアの人たちが育みつないできた文化や職人さんの手仕事の魅力を、商品を通して伝えていきたいと思います。そしてフェアトレードを通じて微力ながらもカンボジアと日本の架け橋となれるよう取り組んでいきたいと考えています。

──フェアトレード市場がもっと広がっていくようにしていきたいですね。本日はお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。

ハンドメイド&オーガニックmakixmaki(マキマキ)

住所:東京都新宿区西早稲田3-15-1 OKビル1階
営業時間:火~土曜 12時~17時 (土曜は18時まで)※祝祭日は不定期営業
インスタグラム:https://www.instagram.com/makixmaki_shop/
オンラインショップ:https://makixmaki.com/

オーガニック商品の仕入れならスーパーデリバリー

スーパーデリバリーでは、オーガニック、フェアトレード、リサイクル、アップサイクル、ヴィーガンなどエシカルな商品を多数取り扱っています。事業者であれば業種問わず、会費無料でエシカル商品の仕入れが可能です。自分の利益だけでなく、お客様の健康や豊かな生活、そして環境や社会を想いやるエシカルなアイテムをお店で仕入れて販売してみませんか?まずは1点・小ロットでお試しでの仕入れもOK。卸価格で商品を購入いただけます。

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