BGMは店舗の雰囲気づくりや居心地を左右する大切な要因です。静かな音楽が流れているお店ならリラックスして過ごせますし、明るい音楽のお店なら、お酒などを楽しみながら陽気に過ごすことを期待してお客様は入店しているかもしれません。

店舗のコンセプトとBGMは密接な関係があるため、店舗ではBGMの絶えない環境を整える必要があります。音楽にこだわる店主なら、CDやレコードでお店のイメージに合った曲をかけたいと考える方も多いはずです。

ただし、店舗で音楽を流す行為は個人が自宅で音楽を聴くのとは扱いが異なり、著作権の手続きが関わってきます。今回は「CDやレコードを活用する方法」と「BGMサービスを利用する方法」について、それぞれの特徴と手続きの違いを整理します。

店舗で音楽を流すときの2つの選択肢

店舗で音楽をかけるときの選択肢は、大きく分けて「手持ちのCDやレコードを再生する方法」と「BGMサービスに加入する方法」の2つです。

両者の最も大きな違いは、著作権の手続きを事業者自身が行うか、サービス提供会社が代わりに行うかという点にあります。この違いが、初期費用やランニングコスト、日々の運用負担にも影響します。

CD・レコードを流す場合

自分の選曲で空間をつくれる

CDやレコードを流す最大の利点は、自分の好みの音楽を選べる点にあります。特にレコードをコレクションし、特定のジャンルにこだわりがある場合、自分の好きな音楽をかけられるのは楽しいものです。音楽も含めて、店内を自分の望んだとおりの空間にプロデュースできます。

さらに、好きなタイミングで好きな曲をかけられるのもメリットのひとつです。ジャズバーやロック喫茶のように、音楽をコンセプトにした店舗づくりを目指すなら、自前の音源を用意することで、それを目当てに来店するお客様が生まれることもあります。

音質面の利点もあります。ネット回線の状況に左右されないため、常に一定のクオリティで音楽を再生できます。オーディオ環境が整っている店舗なら、音そのものを店の目玉にすることもできるでしょう。

JASRACへの手続きが必要になる

一方で、CDやレコードを店内で流す場合、原則としてJASRACへの手続きと使用料の支払いが必要です。店内で営利目的として楽曲を流す行為は、家庭で音楽を聴く行為とは区別されます。

BGMのみの利用であれば、JASRACの公式サイトからオンラインで申請できます。使用料は店舗面積または宿泊定員に応じて決まり、年額での支払いが可能です。

店舗面積 宿泊定員 年額使用料(別途消費税)
500平方メートルまで 100人まで 6,000円
1,000平方メートルまで 200人まで 10,000円
3,000平方メートルまで 300人まで 20,000円

出典:JASRAC/各種施設でのBGM(2026年8月時点)

なお、市販のCDをそのまま再生する場合は上記の手続きで足りますが、CDの音源を携帯音楽プレーヤーやCD-Rなど別の媒体にコピーして使用する場合は、複製についての手続きが別途必要になります。著作権とは別に著作隣接権の許諾が必要になる場合もあるため、レコード会社等への確認も求められます。

手続きをしないまま楽曲を流し続けた場合、著作権侵害として民事・刑事の両面で責任を問われる可能性があります。著作権法第119条では、10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその併科が定められています。

そのほか、音源やプレーヤーの定期的なメンテナンスも必要です。プレーヤーやレコード盤の状態は音質に直結します。CDやレコードの保管スペースを店内に確保しなければならない点も、小規模店舗では悩みどころになります。

手続きが不要になるケース

JASRACへの手続きが不要となる場合もあります。テレビやラジオの放送をそのまま流している場合は、著作権法第38条3項により手続きは不要です。ただし、インターネットラジオを利用する場合、放送を録音して流す場合、家庭用受信装置以外を利用する場合は、原則として手続きが必要になります。

また、著作権が消滅した楽曲のみを使用する場合や、JASRACが演奏利用を管理していない楽曲のみを使用する場合も手続きは不要です。後者については、その楽曲の著作権者への確認が必要です。医療施設や福祉施設、事務所や工場で主に従業員のみを対象として流す場合は、使用料が免除されています。

BGMサービスを利用する場合

著作権の手続きを事業者が行う必要がない

BGMサービスを利用する場合、権利処理はサービス提供会社が行うため、店舗側がJASRAC等へ個別に申請する必要はありません。JASRACと契約を締結している音源提供事業者は、店舗に代わってBGMの著作権使用料を支払っています。有線音楽放送とCDの両方をBGMとして流す場合も、店舗側で個別の手続きは発生しません。

ただし、権利処理の仕組みはサービスによって異なります。JASRAC等の管理楽曲を使用したうえでサービス側が使用料を支払っているタイプと、自社で権利を管理する楽曲のみを配信することでJASRAC等の手続き自体が発生しないタイプがあります。どちらの方式かによって流せる楽曲の性格が変わるため、契約前に確認しておくと安心です。

コスト面では、音源の購入費が不要になる点が挙げられます。一から音源をそろえようとすると相応の費用がかかりますが、BGMサービスなら定額で多くの楽曲を利用できます。CDなどの保管スペースも必要ありません。運用面でも、一度チャンネルを選べば自動で音楽が流れ続けるため、営業中に音源を入れ替える手間が省けます。

ランニングコストと回線環境

一方で、月額利用料が継続的に発生します。JASRACへ直接支払う年額使用料と比べると、金額が上回るケースが多くなります。ただし、著作権の手続きや音源の購入・管理にかかる手間を含めて考えると、必ずしも割高とは言い切れません。

以前は専用回線の工事が必要なサービスが主流でしたが、現在はスマートフォンやタブレット、PCのブラウザやアプリから利用できるサービスが増えており、工事不要で導入できる選択肢が広がっています。その場合はインターネット回線の品質が音の安定性に直結するため、店舗の通信環境を事前に確認しておく必要があります。

また、サブスクリプション型の音楽配信サービスは個人利用に限定されている場合が多く、店舗のBGMとして利用できないことがあります。店舗で使う場合は、必ず各サービスの利用規約を確認してください。

どちらを選ぶか判断するポイント

選択の分かれ目は、音楽が店舗のコンセプトそのものかどうかにあります。

特定のジャンルや音源そのものが集客要素になっている店舗であれば、CDやレコードを選ぶ意味があります。この場合、JASRACへの手続きと年額使用料は、店づくりに必要な経費として織り込むことになります。オーディオ機材への投資や保管スペースの確保も前提になるため、店舗の広さと開業予算に照らして判断してください。

一方、音楽を空間演出の一要素として扱う店舗であれば、BGMサービスのほうが運用は軽くなります。著作権の手続きが不要で、営業中の操作もほとんど発生しません。スタッフが交代で店を回している場合も、選曲の属人化を避けられます。

なお、両者は排他的な選択ではありません。普段はBGMサービスを流し、イベント時のみレコードをかけるといった使い分けも可能です。その場合はCD・レコードの再生分についてJASRACへの手続きが必要になるため、事前に確認しておきましょう。

まとめ

店内のBGMはお店の雰囲気を決める重要な要素です。それだけに、音楽を流す際には著作権のルールを正しく押さえておきたいところです。

CDやレコードを使う場合はJASRACへの手続きと使用料の支払いが必要になり、BGMサービスを使う場合はサービス提供会社が権利処理を行うため店舗側の手続きは不要です。どちらを選ぶにしても、店舗の規模や運営体制、音楽の位置づけを踏まえて検討することが大切です。

※本記事に掲載している使用料および手続きに関する情報は2026年8月時点のものです。最新の情報はJASRACの公式サイトをご確認ください。個別の判断については、JASRACの担当支部または専門家にご相談ください。

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