
お店を運営するうえで、BGMは欠かせない要素のひとつです。
近年はスマートフォンアプリを使った音楽配信サービスが普及し、個人であれば月額数百円から膨大な楽曲を楽しめるようになりました。しかし、こうしたサービスの多くは個人向けに設計されており、店舗で流すことは想定されていません。
普段使い慣れているサービスをそのまま店内で流したくなるかもしれませんが、そこには利用規約と著作権という2つの壁があります。今回は、主要な音楽配信サービスが店舗で使えるのかどうかを、各社の現行規約にもとづいて整理します。
個人向け音楽配信サービスを店舗で流せない理由
音楽配信サービスの多くが店舗利用を認めていないのは、これらのサービスが個人利用を前提とした権利処理しか行っていないためです。
店内で音楽を流す行為は、著作権法上の演奏権に関わります。入場料や音楽料を取っていなくても、来店したお客様に向けて音楽を流す行為は営利目的の利用とみなされます。集客や空間演出のためにBGMを流すことも、ここに含まれます。
月額料金を支払っていれば問題ないと考えられがちですが、その料金はあくまで個人が音楽を楽しむための対価であり、店舗での利用を許諾するものではありません。
主要サービスの利用規約を確認する
実際に各社がどのように定めているのか、公式の利用規約を見ていきます。
Apple Music、iTunes
Appleメディアサービス利用規約の「サービスとコンテンツの利用ルール」では、サービスとコンテンツの利用は「個人利用および非商用利用のみに限られます」と定められています。あわせて、Appleがコンテンツを提供することによって商業目的や宣伝目的での使用権が譲渡されるものではないことも明記されています。
本サービスとコンテンツの利用は、個人利用および非商用利用のみに限られます(引用元:Appleメディアサービス利用規約)
Amazon Music
Amazonミュージック利用規約の「付与される権利」では、サービスの利用は「お客様個人の非商用的な娯楽目的に限り」認められると定められています。あわせて、楽曲の放送や公衆送信、商業的な利用を行う権利は付与されない旨も明記されています。Amazon Music PrimeとAmazon Music Unlimitedのいずれも同様です。
お客様個人の非商用的な娯楽目的に限り、本サービス等を利用することができます(引用元:Amazon ミュージック利用規約)
Spotify
Spotifyの利用規約では、サービスとコンテンツについて「個人利用および非商業利用することができる」限定的な許可が付与されると定められています。
Spotifyについては、公式のサポートページに店舗利用に関する明確な記載があります。飲食店やサロン、小売店、学校、ダンススタジオなどの事業所において、公に放送または再生することはできないと具体的に示されています。無料プランか有料プランかは問いません。
個人利用および非商業利用することができる、限定的、非独占的、取消可能な許可(引用元:Spotify利用規約)
YouTube、YouTube Music
YouTubeの利用規約では、コンテンツの視聴について「個人的で、非営利目的の用途」に限ると定められています。さらに禁止事項として、不特定または多数の人に向けて動画を上映したり音楽をストリーミングしたりする行為が挙げられており、店舗での利用は明確に対象外です。
お客様は個人的で、非営利目的の用途でコンテンツを視聴できます(引用元:YouTube利用規約)
なお、かつて提供されていたGoogle Play Musicは2020年にサービスを終了し、現在はYouTube Musicに統合されています。
YouTubeの動画を店舗で流すときの注意点
YouTubeについては、規約以外にも注意すべき点があります。
動画サイトには違法にアップロードされたコンテンツが含まれている場合があります。それと知らずに営利目的で使用した場合、権利者から指摘を受けるだけでなく、店舗の信用にも影響しかねません。
例外となるのは、自分で制作した動画や楽曲を流す場合です。自社で制作したもの、あるいは他者が制作したものでも権利者から許可を得ている映像・音楽であれば、店舗で流しても問題ありません。ただし、その場合もYouTubeというプラットフォームを介して再生するのではなく、手元のファイルを再生する形が確実です。
著作権が切れていれば自由に使えるのか
クラシック音楽やオールディーズであれば著作権が切れているため自由に使える、と考える方もいます。しかし、ここには2つの落とし穴があります。
ひとつは保護期間です。日本では2018年12月30日に著作権法が改正され、著作物の保護期間は著作者の死後50年から70年に延長されました。作品の発表年ではなく著作者の没年を起算点とするため、古い楽曲でも保護期間内であるケースは少なくありません。
もうひとつが著作隣接権です。楽曲そのものの著作権が消滅していても、その楽曲を演奏した実演家や、音源を制作したレコード会社には別途権利が認められています。クラシック音楽の演奏音源を無断で使用すれば、この著作隣接権に抵触する可能性があります。
つまり、作曲者の著作権が切れていることと、その音源を自由に使えることは別問題です。
店舗で音楽を流すための選択肢
では、店舗で合法的に音楽を流すにはどうすればよいのでしょうか。方法は大きく2つあります。
ひとつは、店舗向けのBGMサービスを利用する方法です。これらのサービスは店舗での利用を前提に権利処理が行われているため、事業者側で個別の手続きを行う必要がありません。工事不要でスマートフォンやタブレットから利用できるサービスも増えており、導入のハードルは以前より下がっています。
もうひとつは、手持ちのCDやレコードを再生し、JASRACへ直接手続きを行う方法です。店舗面積に応じた年額使用料を支払うことで、管理楽曲をBGMとして利用できます。音源の選定に強いこだわりがある店舗はこちらが向いています。
いずれの方法にも費用と手間の違いがあるため、店舗の規模や音楽の位置づけに応じて選んでください。
まとめ
個人向けの音楽配信サービスは、月額料金を支払っていても店舗のBGMとして利用することはできません。これは各社の利用規約で明確に定められており、著作権法上の演奏権の問題も伴います。
店内のBGMはお店の雰囲気を決める重要な要素です。それだけに、正しい方法で音楽を流し、安心して店舗運営に集中できる環境を整えておきたいところです。店舗向けのBGMサービスやJASRACへの手続きなど、適切な選択肢を検討してみてください。
※本記事に掲載している各社の利用規約に関する情報は2026年8月時点のものです。規約は変更される場合がありますので、最新の内容は各社の公式サイトをご確認ください。
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