お声掛けのタイミングの計り方

まずはアプローチのタイミングが遅過ぎないかを見直してみましょう。実売期にはいつもよりワンテンポ早めのお声掛けを意識する必要があります。ただ、そのタイミングの計り方は難しいものです。

一番スムーズな方法は、
1.いつも以上にスタッフが常に笑顔で店内を動いていること
2.入店したお客さますべてに「いらっしゃいませ!どうぞゆっくり見ていってくださいね」+「ニコッ」のあいさつ

この基本が大事です。特に購買意欲のあるお客さまは、歩くペースも速い傾向にあります。どこから入店されてもすぐ自然にお声掛けができるように、スタッフが常に何か作業をしながら動いていることはとても重要なことなのです。そして、一声掛けた後のお客さまの反応をしっかり見て、そのまま同じ場所を見続けている方や同じようなアイテムを触っていらっしゃる場合は、「すてきですよね。デザインにもこだわりがありますよ」とか、「羽織り物でお探しですか?」などと接客に入っていきましょう。お客さまの表情を見ながら笑顔でお声掛けをしていけば、決してガツガツした印象にはならないでしょう。

目的買いのお客様の見分け方

目的買いのお客さまは、きちんと接客すれば確実に購入していただける大事なお客さまです。目的買いのお客さまを見分ける方法は簡単です。まず、皆さんのショップを見渡してみてください。例えばリクルートスーツ、ブライダル、2次会、スプリングアウターなど着用シーン別のコーナーを設けてありますか?必要に迫られて探しているお客さまはたいてい入店すると真っ直ぐ目的のコーナーに向かわれます。お客さまがそのコーナーに向かわれたら、スタッフもすぐにさりげなく早歩きで向かい、お声掛けしても大丈夫です。

お声掛けの方法ですが、まずは想像してみてください。お客さまがブライダルコーナーで立ち止まっています。あるスタッフは「よかったら、合わせてみてくださいね~」としばらくお客さまの動きを笑顔で見ていました。どうでしょう?何が違うのか分かる方もいますよね。極論ですが、目的買いのお客さまに「よかったら……」は必要ありません。アプローチの第一声は、「ブライダルでお探しですか?」で大丈夫です。

仮に「よかったら……」でお声掛けしても、慎重に様子を見ることは絶対にやめてくださいね。目的買いのお客さまは、短時間でいろんな店舗を回って見定めたい方も多いのです。タイミングを慎重に計り、アプローチをためらっていると「じゃあ、次の店に行こう」ということになりかねません。商品のメリットを何もお伝えしないまま、他店に移動されてしまわないように気を付けましょう!

新規のお客様へのアプローチ

これからの時期は、いつもより多くのお客さまに入店していただける大事な時期でもあります。新たな店のファンづくりのチャンスです。

店の商品を1点でも多く見てもらう接客

1点だけでお勧めする接客はしないこと。人気商品を1点だけ触っているお客さまでも、接客中には少なくとも3~4点は商品を見せてください。新規のお客さまは自分の目に留まった商品しか見ない傾向があるので、目に留まらなかった商品を見せることで自店の商品をより多く知っていただけます。さらにコーディネートで見せればイメージがわき、印象に残りやすく効果的です(トーク例:「このブラウスでしたらこういうスカートでもスタイリングできますし、パンツは普段からはかれますか?このショートパンツに合わせてみても印象が変わりますよ!」)。このトーク例のような感じで、お客さまの前で実際に商品を合わせながら接客していきます。

買わずに帰るお客さま

ふり客が増えるこの時期、普段は他の店で買われているお客さまも自店に立ち寄ってくださいます。ふらっと入店され、買わないで帰られるお客さまを無駄にしてはいけません。何か少しでも印象に残すことはできないでしょうか?例えば「チラシや、カタログをお渡ししてから見送る」「商品の次回入荷日をお伝えしてから見送る」など。お客さまを極力そのまま帰してしまわないようにしてはいかがでしょうか?笑顔で一言「また来てくださいね」だけでも効果があるかもしれません。

うなずき+アイコンタクトで上手なニーズの探り方

この時期のアプローチはいつもより早くお声掛けすることは前述しました。ただ、よほどいいお客さまでない限り、そこからきちんと聞き出しをしていかないと、購入までに至らない可能性があります。それでは私たちがいる意味がありません。お客さまのニーズをどれだけ自然に聞き出せるかが鍵になります。ニーズの探り方を再確認しましょう。

お客さまから返事が返ってくる質問をする

まずは「Yes」「No」で返事が返ってくる問い掛けで探っていきます。「明るい色はお好きですか?」。簡単な問い掛けで大丈夫です。そこからだんだんと「普段買物されるときは何色が多いですか?」など、お客さまに話してもらえるような内容にしていくとテンポの良い聞き出しになります。

会話の中で聞き出していく

お客さまが普段どのような生活をされていて、どんな環境にいるのかを知っていないとリアルな提案はできません。お客さまにパーソナルな話をしていただくのが難しい場合にはいい方法があります。会話の中で自分の体験談、他のお客さまの経験談を話すのです。「私は出勤が9時ごろで夜は遅いから、朝晩冷えると着るものにすごく困ります。お客さまはいつもどれくらいに出掛けられるのですか?」というように、出勤時間帯を聞くことで通勤着に何が必要かを知ることができます。「この前も、営業の仕事をされている方が、スーツは2着だけでは足りないとおっしゃっていました。お客さまは仕事で結構スーツを着られるのですか?」などです。先に体験談を話すことで共感を得やすく、意見を聞きやすくなります。案外心を開いてくださるお客さまも多いのです。

テンポのいい聞き出し

質問ばかりを淡々としていくことがないようにしましょう。ロールプレーイングをするとよく、ひたすら質問をし続けるスタッフがいます。大事なのはお客さまの返事を受け止めることです。基本的に共感、うなずき+アイコンタクト、さりげない褒め言葉、表情豊かにお客さまの話を聞くことなどが大事です。

楽しんでもらうためのスムーズな試着のお勧め

昔から「フィッティングを稼働させれば売上げも上がる」と教えられてきました。より多くのお客さまに試着していただくことで、自店の商品を知っていただけます。必ず2、3点はフィッティングしていただくことを当たり前にしてみてください。例えばフィッティングに誘導する前に、「先ほどのスカートもついでにはかれてみますか?」「せっかくですから、上下で見られた方がイメージがわいて楽しいですよ!」など、徹底した声掛けをしましょう。ほかにも、実売期だからこそ気を付けたいポイントは次の3点です。

お客さまに楽しんで試着していただく

「春は一番楽しい季節ですよね!皆さん、楽しんで試着していかれますよ!お客さまも興味のあるものは試着してみてくださいね!」と、お客さまのテンションを少しでも上げていくお声掛けが重要です。

コーディネート試着に慣れていただく

コーディネートで試着されるお客さまには、一番目立つフィッティングルームに入ってもらうようにしましょう。他のお客さまもご覧になっています。こうしてトータルでの試着のハードルを下げれば、他のお客さまもトータルで春服に着替えたくなるはず……。

常にフィッティング状況を把握する

全スタッフが、どのフィッティングルームに、どのお客さまが入られているか、何を試着されているかを把握していて、常に周りを見ておくこともとても大事です。忙しい時間帯にすごく悩むお客さまがフィッティングルームに入った場合、もしくはTシャツ1枚の試着でフィッティングルームに入った場合、いずれの場合も購買意欲の高いお客さまをお待たせして売り逃してしまったら損失は大きいです。忙しい時期だからこそ、スタッフ各自がフィッティング状況を把握して、テンポ良くフィッティングを回していきましょう。

 

 

[記事提供元]ファッション専門店の20~30歳代ショップスタッフに支持されている月刊総合専門誌「ファッション販売」

 

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