今夏は原材料価格の高止まりや為替の変動に加え、季節的な需要の変化や前期の価格変動からの反動が影響し合う結果となりました。商品を仕入れて販売する事業者にとって、こうした動向を正確に把握し、戦略的な仕入れ計画を立てることの重要性が一層高まっています。

本レポートは、卸・仕入れサイト「スーパーデリバリー」における商品の仕入れ単価(1個あたり)の動向を、2019年を基準(=100)とした価格指数として分析したものです。2025年7月~9月のデータに基づき、主要ジャンルごとの価格変動を前期(2025年4月~6月)と比較しながら解説いたします。

仕入れ価格動向調査の概要

  • 分析対象データ: 卸・仕入れサイト「スーパーデリバリー」における商品取引データ
  • 指標: ジャンル別 仕入れ価格指数(2019年の平均価格を100とする)
  • 分析対象期間: 2025年7月1日~9月30日

仕入れ価格指数の動向:前期の反動と需要の回復が鮮明に

2025年7月~9月期の価格動向は、「前期の極端な動きからの揺り戻し」と「需要回復への期待感」の展開となりました。

最大の注目点は、前期に異常な高騰を見せた「米」が大幅に下落し、沈静化した点です。一方で、巣ごもり需要の反動で前期に大きく値を下げた「ホビー」「文具・事務用品」「DIY用品」といったカテゴリが、一転して価格上昇しました。

また、防災の日(9月1日)を前に「防災用品」への需要が継続的に高まっているほか、季節要因による価格変動も見られます。

ジャンル別 価格指数:2025年7月~9月

前期(2025年4月~6月)との比較は以下の通りです。(指数は小数点第2位で四捨五入)

仕入れ価格動向7~9月

2025年7月~9月2025年4月~6月2024年7月~9月2019年の基準となる指数
260.91338.86153.36100
ベビーウェア・小物199.57191.93217.23100
防災用品217.47186.55199.52100
ケーキ・スイーツ164.81163.55160.33100
文具・事務用品163.16121.99113.53100
ホビー197.9796.96175.35100
トップス113.93114.88119.94100
フェイスケア・基礎化粧品123.88124.92137.74100
筆記具130.11125.3121.15100
チョコレート105.11122.01115.43100
オーラルケア133.44146.21133.91100
調理器具107.91108.41111.92100
小物110.76115.67133.21100
傘・日傘132.56126.11116.33100
ワンピース・ドレス107.77104.63109.91100
キャンプ・レジャー用品91.8699.64126.65100
食器112.89110.91114.9100
タオル113.35110.2897.65100
パン・ブレッド105.25103.66117.39100
DIY用品107.1585.69102.89100
スマホケース63.3269.5268.18100

価格の上昇が目立つカテゴリ

ホビー (+104.2%)

前期に大きく下落した反動から、全カテゴリ中で最大の伸び率を記録しました。夏休み期間や、ハロウィン、クリスマスといった年末商戦に向けた早期の仕入れが活発化したことが価格指数を押し上げたと考えられます。需要の底堅さを示す結果となりました。

文具・事務用品 (+33.7%)、DIY用品 (+25.0%)

ホビー同様、前期は下落しましたが、今期は力強く回復しました。「文具・事務用品」は夏休み明けの新学期や企業の年度後半に向けた需要が考えられます。「DIY用品」も力強く回復しました。このカテゴリは、過ごしやすい気候となる秋に需要が高まる傾向があります。リフォームや庭の手入れといったDIY活動が活発になるため、それに伴い軍手や住まいの修繕用品などの価格が上昇したと考えられます。

防災用品 (+16.6%)

前期に続き、力強い上昇トレンドを維持しています。9月1日の「防災の日」を前に、事業者・個人ともに備蓄や防災グッズの見直しを行う動きが活発化したことが最大の要因です。自然災害への備えが常識化する中で、安定した需要が見込めるカテゴリとしての地位を確立したと考えられます。

価格の低下が目立つカテゴリ

米 (-23.0%)

前期に見られた異常高騰から一転、大幅な下落となりました。備蓄米の販売による供給状況の改善や、前期の価格高騰に対する需要の反動が価格を押し下げ、落ち着きを取り戻した形です。ただし、基準年である2019年と比較すると依然として高い水準にあります。次期は世論を鑑みるとまた値上がりする可能性が考えられます。

チョコレート (-13.9%)

気温が高い夏場は需要が落ち込む典型的な季節要因により、価格が低下したと考えられます。秋冬に向けて需要が回復するにつれ、価格も再び上昇に転じる可能性がありますが、スーパーデリバリー内では、この秋冬商戦へ向けての早期仕入れが活発であり、例年前年を上回る流通額を記録しています。

オーラルケア (-8.7%)、スマホケース (-8.9%)

「オーラルケア」は前期の上昇から一転して低下しました。「スマホケース」は下げ止まりの様相から再び下落に転じました。市場の成熟と秋の新モデル発売前の買い控えなどが影響していると考えられます。

まとめ

2025年7月~9月期の価格動向は、前期の極端な価格変動からの「揺り戻し」が各所で見られると同時に、季節やイベントを捉えた需要が力強く回復する様子がうかがえる結果となりました。

  • 価格上昇カテゴリ(ホビー、文具、防災用品など)
    需要の回復・拡大を的確に捉え、品切れを起こさない安定した仕入れと、積極的な販売戦略が求められます。
  • 価格低下カテゴリ(米、チョコレートなど)
    仕入れ価格が落ち着いたタイミングは、セールやキャンペーンを実施し、販売数量を増やす好機と捉えることができます。特に季節性の高い商品は、需要回復期を見越した戦略的な仕入れが重要です。

物価動向の先行きは依然として不透明ですが、需要の波はより短期化・複雑化しています。カテゴリごとの動向を細かく注視し、データに基づいた柔軟な経営判断を行うことが、今後の事業運営においてますます重要となるでしょう。

(補足)

  • 本レポートの価格指数は、スーパーデリバリーにおける実際の取引データに基づき、各カテゴリ内の商品単価(1個あたり)を加重平均して算出しています。基準年は2019年(1月~12月平均)=100です。
  • これは卸売段階での価格動向を示すものであり、消費者物価指数(CPI)や企業物価指数(CGPI)とは異なります。
  • 指数はカテゴリ全体の平均的な動向を示すものであり、個別の商品価格の変動とは必ずしも一致しません。