仕入れ価格動向調査4月~6月

原材料価格の高騰や為替変動に加え、消費者マインドの変化も仕入れ価格に影響を与え始めています。商品を仕入れて販売する事業者にとって、価格動向の正確な把握は、ますます経営の根幹に関わる重要な課題となっています。

本レポートは、卸・仕入れサイト「スーパーデリバリー」における商品の仕入れ単価(1個あたり)の動向を、2019年を基準(=100)とした価格指数として分析したものです。2025年4月~6月のデータに基づき、主要ジャンルごとの価格変動を前期(2025年1月~3月)と比較しながら解説いたします。

前回の調査はこちら
スーパーデリバリー 仕入れ価格動向レポート 2025年1月~3月までの物価高を調査

仕入れ価格動向調査の概要

  • 分析対象データ: 卸・仕入れサイト「スーパーデリバリー」における商品取引データ
  • 指標: ジャンル別 仕入れ価格指数(2019年の平均価格を100とする)
  • 分析対象期間: 2025年4月1日~6月30日

仕入れ価格指数の動向:「米」の暴騰と「巣ごもり需要」の反動

2025年4月~6月期の価格動向は、「二極化」が一層鮮明になる結果となりました。

最大の注目点は、前期からさらに指数を伸ばし、異常な高騰を続ける「米」カテゴリです。昨今の値上げを示す象徴的な動きと言えます。あわせて、ケーキ・スイーツ関連も小麦の価格上昇影響からか、指数が上がりました。また、「オーラルケア」や「防災用品」など、一部の生活必需品も堅調に価格が上昇しました。

その一方で、コロナ禍の「巣ごもり需要」で人気を集めた「ホビー」「調理器具」「キャンプ・レジャー用品」「DIY用品」といったカテゴリは軒並み大幅に下落しました。需要の反動減と、消費者の節約志向が顕著に表れた形です。

ジャンル別 価格指数:2025年4月~6月

グラフ

前期(2025年1月~3月)との比較は以下の通りです。(指数は小数点第2位で四捨五入)

2025年4月~6月2025年1月~3月2024年4月~6月2019年の基準となる指数
338.86270.2116.16100
ベビーウェア・小物191.93200.8190.19100
防災用品186.55167.7188.97100
ケーキ・スイーツ163.55145.8151.91100
文具・事務用品121.99142.1140.04100
ホビー96.96137.2131.86100
トップス114.88137.6114.85100
フェイスケア・基礎化粧品124.92135.6136.65100
筆記具125.3134.3124.45100
チョコレート122.01133.6105.3100
オーラルケア146.21133.6124.19100
調理器具108.41128123.61100
小物115.67125.9104.41100
傘・日傘126.11122.2134.45100
ワンピース・ドレス104.63117108.47100
キャンプ・レジャー用品99.64113.4127.65100
食器110.91113.5115.68100
タオル110.28110.5100.41100
パン・ブレッド103.66108.3107.71100
DIY用品85.6996.1149.82100
スマホケース69.5268.864.21100

価格の上昇が目立つカテゴリ

前期(1~3月)に「異常高騰」として突出した動きを見せた米は、今期もその上昇トレンドが全く衰えず、全カテゴリ中で最大の伸び率を記録しました。指数は300を超え、基準年である2019年からは+238.9%という水準に達しています。

ケーキ・スイーツ

米に次ぐ高い上昇率を記録しました。砂糖、乳製品、果物といった主原料の価格高騰が続いており、多くのメーカーで価格改定が相次いだ結果がストレートに指数に反映されています。イベントや贈答品としての需要は根強いものの、原材料コストの上昇分を価格に転嫁せざるを得ない状況が続いています。

防災用品

前期は一時的に低下していましたが、今期は再び力強い上昇を見せました。近年、地震や水害など自然災害が頻発していることを背景に、企業・個人ともに防災意識は継続的に高まっています。単なる備蓄品としてだけでなく、より高機能・高品質な製品への需要が価格指数を押し上げており、安定した需要が見込めるカテゴリとなっています。

オーラルケア

前期は-5.2%と低下していましたが、今期は大きく上昇に転じました。健康・美容意識の高まりを背景に、高機能歯ブラシや薬用成分を配合した歯磨き粉、ホワイトニング関連商品など、高付加価値商品の人気が継続しています。消費者が日々のケアに対して投資を惜しまない傾向が、仕入れ単価の上昇を支えています。

価格の低下が目立つカテゴリ

ホビー

フィギュアなどの価格上昇のあおりが昨年度はありましたが、2025年に入り徐々に価格が減少しました。4~6月にはいり、価格は以前までの水準に戻ったと考えられます。

調理器具 、文具・事務用品

1~3月は新生活への向けた仕入れが活況だったためか4~6月は落ち着き、価格に反映された可能性があり、需要が一巡したことが最大の要因と考えられます。

キャンプ・レジャー用品

4月5月の行楽シーズンでの販売に向けた仕入れが落ち着き、市場の在庫調整が価格に反映されている可能性があります。

前期比で変化が見られなかったカテゴリ

今期、価格がほとんど動かなかったのは「タオル」(-0.2%) と 「スマホケース」(+0.9%) でした。

「タオル」は、日用品としての需要が常に安定している一方で、市場での競争も激しいため、価格が硬直化しやすい典型的なカテゴリです。仕入れ価格は前期からほぼ変動なく推移しました。

また、「スマホケース」は、今期ほぼ横ばいとなり、下げ止まりの様相を呈しています。市場が完全に成熟し、価格も底値圏で安定しているため、大きな変動が起きにくい状況にあると考えられます。

まとめ

2025年4月~6月期の価格動向は、物価上昇が新たなフェーズに入ったことを示唆しています。食料品など生活に必須なカテゴリではコストプッシュ型のインフレが猛威を振るう一方で、趣味・嗜好品では需要減退によるデフレ圧力が高まるという結果になりました。

  • 価格上昇カテゴリ 「米」や食料品など、価格上昇が続くカテゴリでは、安定した仕入れ先の確保と、顧客の理解を得られる範囲での慎重な価格転嫁、利益率の管理が最重要課題となります。
  • 価格低下カテゴリ「ホビー」や「アパレル」など、単価が下落しているカテゴリでは、これを好機と捉えたセールやキャンペーンの実施、まとめ買いの促進など、販売数量を増やすための施策が有効と考えられます。

物価を取り巻く環境の不透明感は今後も続くと予想されます。スーパーデリバリーは、今後も定期的にデータを公表し、事業者の皆様がデータに基づいた的確な経営判断を行うための一助となるよう努めてまいります。

(補足)

  • 本レポートの価格指数は、スーパーデリバリーにおける実際の取引データに基づき、各カテゴリ内の商品単価(1個あたり)を加重平均して算出しています。基準年は2019年(1月~12月平均)=100です。
  • これは卸売段階での価格動向を示すものであり、消費者物価指数(CPI)や企業物価指数(CGPI)とは異なります。
  • 指数はカテゴリ全体の平均的な動向を示すものであり、個別の商品価格の変動とは必ずしも一致しません。