東北・北海道地方

日本の北部に広がり、広大な土地と豊かな自然、そして四季の移ろいが明確な東北・北海道地方。今回、卸・仕入れサイト「スーパーデリバリー」の実際の注文データに基づき、この地域ならではの仕入れ傾向を分析しました。

このレポートでは、東北・北海道地方の特色が特に顕著な商品カテゴリを厳選し、具体的な仕入れ実態に焦点を当てながら、その背景と要因を統計データを交えて解説いたします。

調査概要

  • 調査期間: 2024年5月~2025年4月
  • 調査対象: 「スーパーデリバリー」国内会員(東北6県および北海道)による注文データ及び会員登録数
  • 分析対象地域: 北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県
  • 算出方法: 主要ジャンル別に「1会員あたりの注文点数」を算出。これを基に比較分析。
  • 参考資料: 総務省統計局「統計でみる都道府県のすがた 2025」

東北・北海道地方の地域的な特徴

自然環境と暮らし

東北・北海道地方は、広大な土地と冬の厳しい気候が最大の特徴です。

北海道だけで日本の総面積の約2割を占め、岩手県も本州で最も広い面積を誇ります。この広大な土地に対して人口は比較的少ないため、人口密度は全国平均(333.4人/㎢)を大きく下回ります(北海道:64.9人/㎢、岩手県:76.1人/㎢)。この地理的条件から、人々の移動手段として自動車への依存度が非常に高くなっています。

加えて、気候は冷涼で、特に冬の寒さと雪の多さは際立っています。北海道の年平均気温は11.0℃と全国で最も低く、日本海側を中心に降雪量も多いため、秋田県の年間降水量は2,208.5mm、山形県の年間降水日数は129日に達します。

このように、広大な土地と厳しく雪深い冬という自然環境が、この地域のライフスタイルや需要を大きく特徴づけていると言えるでしょう。


産業構造:東北の経済中核都市と第一次産業の強み

東北・北海道地方の産業は、経済の中核を担う宮城県と、第一次産業に強みを持つ他の道県という二つの側面で特徴づけられます。

宮城県は、県内総生産・人口ともに東北6県で突出しており、東北唯一の政令指定都市である仙台市に行政・経済機能が集中しています。

その一方で、その他の道県では第一次産業が経済の重要な基盤です。第一次産業の就業者比率は全国平均(3.4%)を大きく上回っており、特に青森県(11.1%)は全国1位、岩手県(9.6%)は4位、北海道(6.7%)は7位と、農業や漁業などが地域経済を力強く支えています。

このように、仙台を中心とした都市機能と、各道県の豊かな第一次産業が、この地域の経済を成り立たせています。


人口動態とライフスタイル:持ち家志向と独自の消費文化

東北・北海道地方の消費スタイルは、その人口動態や住環境、特に高い持ち家率と、高齢化が進む中での独自のコミュニティ文化に大きな影響を受けています。

この地域は全国的に見ても持ち家で暮らす世帯の割合が非常に高く、持ち家比率は秋田県(77.1%)と山形県(75.0%)が全国1位、2位を占めるなど、強い持ち家志向がうかがえます。

また、高齢化も顕著で、65歳以上人口の割合は秋田県(39.0%)が全国で最も高く、山形、岩手、青森なども全国平均(29.1%)を大幅に上回っています。その一方で、広大な土地を活かした家族や地域コミュニティでのイベントが今なお大切にされており、人々が集う場での消費需要が根強く存在しています。

このように、高い持ち家率を背景とした暮らしや、地域コミュニティでの集いといったライフスタイルが、この地域の独自の消費文化を形成していると言えるでしょう。

東北・北海道の特色ある仕入れカテゴリ 詳細分析

ペット用品(フード・サプリメント)てぬぐい(手ぬぐい)手芸・クラフト用品チョコレートスナック菓子
宮城県秋田県岩手県福島県山形県
岩手県山形県福島県山形県福島県
北海道宮城県青森県青森県宮城県
秋田県青森県北海道岩手県北海道
青森県岩手県宮城県北海道岩手県
福島県北海道山形県宮城県秋田県
山形県福島県秋田県秋田県青森県

経済の中心地・宮城の都市型消費「ペット用品」

「ペット用品」、特にフードやサプリメントのカテゴリでは、宮城県が1会員あたりの注文点数で他を圧倒しています。

この力強い需要の背景には、宮城県が持つ東北随一の経済力と、それに伴う都市型のライフスタイルが大きく影響していると考えられます。

近年、ペットはコンパニオンアニマルとして家族の一員と見なされる傾向が強まっており、高品質なフードや健康を維持するためのサプリメントへの関心が高まっています。

また、仙台市という東北唯一の政令指定都市を抱え、経済活動の活発さがうかがえます。こうした都市環境は、多様なペット関連サービスや専門店の存在を可能にし、市場全体の成熟を促していると考えられます。

温泉文化が支える秋田の「てぬぐい」需要

伝統的な日用品である「てぬぐい」のカテゴリで、秋田県が東北・北海道エリアでトップとなりました。

この背景には、秋田県に深く根付いた入浴文化の存在があげられます。「公衆浴場数(人口10万人当たり)」は22.2軒と全国2位を誇り 、温泉や銭湯が県民の生活に密着していることが、タオルよりも手軽で多様な使い方ができる「てぬぐい」の根強い需要に繋がっていると推察されます。

また、秋田県の「65歳以上人口割合」は39.0%と全国で最も高い水準にあります 。この人口構成もまた、てぬぐいという伝統的な商品の需要を支える重要な要素となっている可能性があるでしょう。

岩手の「手芸・クラフト用品」

「手芸・クラフト用品」のカテゴリで、岩手県が1会員あたりの注文点数で他の東北地方を圧倒しています。この需要の背景には、地域に深く根付いた「手仕事」の文化と、それを支える活発なコミュニティの存在があげられます。

岩手県は「65歳以上人口割合」が35.0%と全国で5番目に高く、高齢者層が厚いことが特徴です。それに加え、「高齢者学級・講座数」も全国17位と活発であり、公民館などに集うアクティブなシニア層が、グループでの共同購入のためなどが考えられるでしょう。

また、長く厳しい冬の気候が、室内で過ごす時間を豊かにする手芸への関心を高めていることも一因です。

福島の「チョコレート」と山形の「スナック菓子」

東北・北海道エリアでは、お菓子の仕入れに地域性が強く反映されています。

チョコレートでは、特産のフルーツを使った商品や、高齢者の日常的なお茶請け文化を背景に福島県がトップで、2位の山形県も同様の理由です。

一方、スナック菓子では、米どころとして煎餅などの需要が根強い山形県が1位。同じく米文化を持つ福島県が2位です。3位の宮城県は、所得が高い都市型エリアのため、多様なスナックが消費される傾向にあります。

また、福島県は様々な菓子類の仕入れ量が他都道府県に比べ、多く仕入れられておりました。

北海道の仕入れ動向:巨大市場の特色を探る

北海道は東北六県に比べ会員数が多く、1会員あたりの注文点数だと必ずしもランキング上位には登場しません。しかし、これは市場が小さいことを意味するのではなく、むしろその逆です。ここでは北海道の仕入れで特色のあったカテゴリを解説します。

倒的な観光需要が支える「土産物」

北海道が日本を代表する観光地であることは、「ストラップ・キーホルダー」カテゴリの仕入れ動向に顕著に表れています。このカテゴリの力強い需要は、土産物の定番であるこれらの商品を、道内全域の小売事業者が膨大な数の観光客向けに仕入れている実態を反映したものです。64.7%という高い「客室稼働率」も、活発な観光業を裏付けています。

厳しい気候が市場を創出する「防寒アパレル」

「帽子(ニット帽)」のカテゴリは、1会員あたりの注文数で地域トップであることに加え、その市場規模は東北6県の合計を上回るほどです。この背景には、北海道特有の厳しい気候があります。「年平均気温」11.0℃、「日最低気温の月平均の最低値」-7.4℃はいずれも全国で最も低く、ここでは防寒具がファッションアイテムである以前に、生活に不可欠な実用品なのです。この確固たる実需が、安定的かつ巨大な市場を形成しています。

「食の王国」を象徴する嗜好品「紅茶・お茶」

「食の王国」北海道を象徴するように、「紅茶・お茶」カテゴリも大きな市場を形成しており、その規模は東北最大の市場である宮城県の約1.8倍に達します。質の高い食文化が道民に根付いていることに加え、カフェでの休憩や土産物として茶葉を求める観光客の旺盛な需要が、この市場を支えています。地域のブランド力と観光が相乗効果を生み、嗜好品というカテゴリにおいても巨大なマーケットを創出しているのです。

まとめ

今回の調査から、東北・北海道地方の仕入れ傾向は、その土地ならではの自然環境、産業構造、そして人々のライフスタイルといった「地域性」と深く結びついていることが明らかになりました。

経済の中心地である宮城県では所得水準を反映した都市型のペット需要が、温泉文化が根付く秋田県ではてぬぐいが、手仕事の文化が息づく岩手県では手芸用品がそれぞれ強い需要を見せました。また、米どころ山形県のスナック菓子や果物産地である福島県のチョコレートは地域の産業と直結しており、巨大観光地である北海道では土産物や、厳しい気候を乗り切るための防寒アパレルが大きな市場を形成しています。

これらの結果は、効果的な商品展開のためには、全国一律の視点ではなく、地域ごとの暮らしや文化、さらには気候的要因といった解像度の高いインサイトがいかに重要であるかを示唆しています。

本レポートが、東北地方と北海道市場への理解を深め、より的確で効果的な商品展開やマーケティング戦略を立案する上での一助となれば幸いです。

※本レポートでは卸・仕入れサイト「スーパーデリバリー」における実際の取引データに基づき、算出したものです。
※これらはスーパーデリバリー上における東北・北海道地方の需要動向の一側面を示すものであり、特定のカテゴリ、個別の商品の人気を保証するものではありません。