卸・仕入れサイト「スーパーデリバリー」は、会員小売店を含む事業者を対象に、増税後のキャッシュレス決済に関するインターネットを通じたアンケート方式を使い、調査を行いました。

アンケートの回答数は、442件。全国47都道府県の事業者の方に回答をいただきました。本アンケートでは、消費税増税後の2019年10月の「キャッシュレス決済の導入状況について」「キャッシュレス決済が実際にどのくらい利用されているか?」「増税前後の商売状況と今後の商売の展望について」を中心にお伺いしました。

今回はアンケート結果の報告とともに、アンケート内にあった自由回答欄のメッセージなどから見えた事業者の声をお届けしたいと思います。

目次

アンケートの調査概要

調査方法:インターネットを通じたアンケート方式
調査期間:2019年11月8日~11月20日
調査対象:全国47都道府県の事業者
回答者数:442名
回答者属性:サービス業・小売業(80%)、美容業(9%)、飲食業(8%)、宿泊業(2%)建設業(1%)、また回答者の95%が従業員10名以下の小規模事業者

[調査結果]<増税後のキャッシュレス決済に関する調査> 小規模サービス業・小売業の85%がキャッシュレス決済導入 約2割が現金を上回る利用率(pdf)

全国各地の小さな事業者の消費税増税後の今をお届け!キャッシュレス決済の導入・利用状況と商売状況を伺いました。

アンケート調査の結果を質問ごとにまとめました。

 

増税後、キャッシュレス決済の導入事業者は85%に

現在のキャッシュレス決済導入状況についての質問です。キャッシュレス決済を導入されたタイミングについて教えてください。(回答対象:全員、回答数442件)

回答 件数 割合
増税に関係なく、以前からキャッシュレス決済を導入をしている 257 58%
増税時期に合わせてキャッシュレス決済を導入した 89 20%
増税後にキャッシュレス決済の導入をした 30 7%
キャッシュレス決済の導入をしていない 66 15%

キャッシュレス決済の導入タイミングについて、「増税に合わせて導入した」事業者は20%でした。「増税に関係なく以前よりキャッシュレス決済を導入している」事業者は58%、「増税後の導入」は7%で、キャッシュレス決済を導入している事業者は合計85%でした。

上記の結果から、増税後の現在、キャッシュレス決済を導入済の事業者は85%となり、増税前(2019年6月)にスーパーデリバリーで同対象者向けに行った調査でのキャッシュレス決済導入率73%(※参考記事を参照)だったことを比較すると12ポイント増加している結果となりました。増税をきっかけにキャッシュレス決済を導入する事業者がさらに増加しているようですね。

[参考記事]話題のキャッシュレス決済導入していますか?キャッシュレス決済のほんとのところを全国各地の小さな小売・事業者に訊いてみた!

消費者還元(ポイント還元)の対応はしていますか?(回答対象:キャッシュレス決済導入者のみ、該当回答数376件/442件中)

回答 件数 割合
対応している 264 70%
対応する予定(申請中) 63 17%
対応していない 49 13%

キャッシュレス決済を導入している事業者のうち、「ポイント還元(消費者還元)している」「対応する予定(申請中)」の事業者は合わせて87%と高い水準となりました。ポイント還元に対応していない事業者は13%いました。

消費者還元(ポイント還元)を「対応していない」理由を教えてください。
(複数回答可)(質問2で消費者還元の「対応してない」該当回答数49件)

回答(複数選択可能) 件数 割合
対応までの手続きが煩雑だから 20 41%
お客様からのニーズがないから 10 20%
自社商品には必要ないから 7 14%
自社事業・サービスは対象外だから 5 10%
その他 16 33%

ポイント還元に対応していない事業者の理由として最も多かったのは「対応までの手続きが煩雑だから」、次に「お客様からのニーズがないから」という回答でした。

キャッシュレス決済の売上比率が現金を上回った事業者は23%

2019年10月の「キャッシュレス決済の売上」は全体の約何%でしたか?(回答対象:キャッシュレス決済導入者のみ、該当回答数376件/442件中)

キャッシュレス決済が占める売上の割合 件数 割合
0% 26 7%
1~10%未満 116 31%
10~20%未満 34 9%
20~30%未満 54 14%
30~40%未満 42 11%
40~50%未満 17 5%
50~60%未満 22 6%
60%以上 65 17%

事業者におけるキャッシュレス決済が占める売上の割合は、1~10%未満が最も多く31%となりました。キャッシュレスの売り上げの比率の変化を追うため、スーパーデリバリーで消費増税前に実施した(2019年6月)アンケートの結果と比較してみた結果が以下です。

2019年10月の売上におけるキャッシュレス決済の割合についてを「増税後」、2019年6月実施した調査結果を「増税前」として比較しました。増税後も「10%未満」と回答した事業者が増税前同様に約4割を占め、最も多い結果となりましたが、「50%以上」と回答した事業者の中で、キャッシュレス決済が現金決済を上回ったのは23%と、増税前と比較すると9ポイント増加しました。

また、増税後、売上におけるキャッシュレス決済が占める割合を「60%以上」と回答した小売店は全体の17%(65件)おり、そのうちの東京都内に事業所を構えている事業者が26%(17件)と最も多かったです。全体的に東京都の事業者における、キャッシュレス決済が占める売上の割合が他の地域よりも多く占める傾向があり、キャッシュレス決済の利用は東京都内を中心にけん引されている様子がアンケートから伺えました。

増税後の販売価格設定は「一部または、すべて据え置き」での対応が5割以上

増税後の販売価格の設定について教えてください。(※軽減税率が適用される飲食料品等は除く。) (回答対象:全員、回答数442件)

回答 件数 割合
すべての価格を増税分値上げした 183 41%
一部の価格は据え置いた 151 34%
すべての価格を据え置いた 87 20%
すべて軽減税率対象商品のため価格の変更なし 21 5%

すべての価格を増税分値下げしたという事業者が一定数(41%)いる一方で、5割以上の事業者は「一部の価格の据え置き」または、「すべての価格を据え置いておいた」という結果になった。

「一部の価格は据え置いた」「すべての価格を据え置いた」と回答した事業者に対して理由を伺いました(該当回答数238件/442件中)。

回答(複数選択可能) 件数 割合
値上げによる客離れを懸念 103 43%
競合店が値上げしないため 29 12%
価格変更の対応が煩雑なため 87 37%
価格変更にかかるコストの負担が大きいため 20 8%
その他 50 21%

価格を据え置いた事業者のうち、「値上げによる客離れを懸念して」の対応だったという事業者は43%となり、これまで通りのサービス・商品価格での提供をして、消費離れの対策をするといった事業者の思いが見えました。また、次点に「価格変更の対応が煩雑なため」を選択した事業者も全体の37%となり、レジの対応や消費税増税に伴う価格変更の大変さを実感する結果となりました。

増税後の売上変化は「特に変わらない」が6割以上

増税後、売り上げに変化はありましたか?(回答対象:全員、回答数442件)

回答 件数 割合
売上が上がった 33 7%
売上が下がった 133 30%
特に変わらない 276 62%

増税後の売上変化については、「特に変わらない」との回答が6割以上を占め、2019年10月の時点では消費税増税による消費への影響は、売上の実感としてはまだ、見えてはいませんでした。

今後の商売の展望について近いものを教えてください。(回答対象:全員、回答数442件)

回答 件数 割合
良好 47 11%
現状維持 142 32%
厳しいがそんな中でもがんばりたい 235 53%
厳しいので廃業も視野に入れている 18 4%

今後の商売の展望については「厳しいがそんな中でもがんばりたい」が半数以上となり、景気が上向く兆しは感じられないが現状の商売を続けていきたいという事業者の決意が見える結果となりました。

「2020年6月以降のキャッシュレス決済の手数料」を気にする声が多数

今回のアンケートにおいては、自由記述で増税後の感想を求めたところ、92件ものコメントが事業者から寄せられました。その中で最も多かったのが「キャッシュレス決済の手数料」に関する意見です。利用が増えるに従って手数料の支払いも増えるため利益の減少を心配する声があり、特に国からの手数料補助がなくなる2020年6月以降を不安視する声が複数ありました。

また、売上における決済比率においてキャッシュレス決済が占める割合が多い事業者(キャッシュレス決済率40%以上を占める事業者)からは、キャッシュフローに関する不安の声も上がっていました。キャッシュレス決済が増えることにより、レジなど手元に現金が入ってこなくなることで「急な出費の対応にすら躊躇する」「仕入れの支払いに対応できない」「決済事業者が複数にわたる場合、振り込み期日もまちまちなため、資金繰りが大変」などといったキャッシュレス決済が増えることによって発生した資金繰りの問題や、今後のキャッシュフローの調整の不安に関する意見もありました。

キャッシュレス決済の導入・利用比率が増える中で、手数料負担や現金率低下を懸念する事業者が多く、国への支援を要望する声や業務の多角化、他店との差別化など生き残り施策を模索する姿が見られる結果となりました。

 

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