2025年6月から茨城県水戸市の大成女子高等学校の家政科3年生のクラスで行ってきた、「『エシカル』を知って・体験する」スーパーデリバリーと高校との連携授業。
知識や情報を得る「学び」の部分だけでなく、生徒さん自身がエシカルを伝える立場として「実践する」場も提供したいと授業を重ねてきました。
実践の場として、文化祭での発表を目標にしました。そして夏休み直前の授業から、ファッショデザインコースの生徒さんたちは「エシカルファッションショー」、フードデザインコースの生徒さんたちは「フード販売」の準備に取り組んできました。
高校生自身が選んだエシカルファッションやエシカルフードについて、選んだ理由、知ってほしいことなどを自分たちの言葉で発信するために、デザインや販売の最前線で活躍されている方を講師として招き、考え方を知ったうえで、自分なりのパネルや販促POPづくりを行いました。前半のレポートでご紹介した学びの部分を生かし、今回の後半部分では学びの集大成として文化祭の様子など「実践」の部分をレポートしていきます。

▼前半の学びはこちらでレポートしています。
目次
ファッションデザインコースは「先生に着てほしいエシカルファッション」をテーマに文化祭でファッションショー
ファッションデザインコースとあって、ファッションの知識や技術を持っている生徒さんたち。ファッションデザインコースの生徒さんたちは、「先生に着てほしいエシカルファッション」をテーマに4つのグループに分かれて商品選定から始めました。

6月からの授業で、エシカルには「フェアトレード」「オーガニック」「脱プラ」「寄付付き商品」「ヴィーガン」などのさまざまな要素があることを理解し始めた生徒さんたちは、環境配慮や社会問題の解決につながるエシカルな商品をスーパーデリバリーの「エシカルコレクション」特集をヒントに探し始めました。ファッションショーでモデルを務める先生は、自分たちで指名して決めることになり、モデルとなる先生をイメージしながら、アイテム選びを開始しました。
選んだファッションコーデから「何を伝えるか」「どのように伝えるか」をエシカルデザイナーから学び、実践へ
ファッションへの関心や技術や知識を持っていても、いざ発表となるとなかなか難しいと感じます。
そこで、相手に伝わるようにするためのコツを知ってもらおうと、エシカルデザイナーとして活動している植木美穂さんを講師に招き、エシカルの届け方の授業をしていただきました。

講師の植木さんからは、エシカルデザインするときは、
・情報が多すぎると読まれない…
・圧が強すぎると聞いてもらえない…
・ふんわりしすぎているとなにも伝わらない…
という点に注意してほしいと、エシカルデザインをするときに陥りがちな罠をお聞きしました。
エシカルを伝えるときに特に大事なのは、誰に伝えるのか、どのようなシーンで伝えるのか、そしてどんな媒体(動画?チラシ?)を使うのかを考えてデザインすることだそう。その「ちょうどいい塩梅を見つけること」がエシカルデザインでのコツであると教わりました。
そのうえで、
・エシカル以外に伝えたい情報と優先度を考えてエシカルをどこまで色濃く出すか
・届けたい情報が伝わるように、盛り過ぎないようにすること
・エシカルを届ける上で一番強いのは「好き!」という気持ち
であること大切にしながら、ぜひ実践してみてほしいとお話をしていただきました。
そして、植木さんから
・step1 情報を整理する
・step2 情報の優先順位をつける
・step3 情報を選ぶ
・step4 情報を表現する
この4ステップを教わり、このステップを実践しようと、まずは付箋を使って選んだエシカルファッションについて情報を整理しました。

どこで発表するのか、だれが伝えるのか、なにを感じてほしいか、そしてわたしたちがどれを大切にしたいかを考えながら、文化祭1日目のファッションショーの最中に読み上げる説明文章や、2日目に展示する際のパネルの作成を進めました。

情報を整理しながら、思い思いに言葉を選び、パネルの作成を進めていき、限られた時間の中で4グループとも無事に完成できました。
伝えたいことがたくさんあるからと文字をたくさん並べすぎないことで理解のしやすさと視認性を上げ、イラストや装飾で遠目からでも目を引くパネルが出来上がりました。
文化祭1日目は校内でファッションショー
文化祭1日目は「先生に着てほしいエシカルファッション」のファッションショーを開催しました。
先生方によるファッションショーがあることは、他の生徒さんたちにはシークレットにされていたので、先生方がいつもとは違うファッションに身を包んで登場すると、会場は大盛り上がり。拍手や声援などを受け、先生たちもその場の雰囲気を楽しみながら舞台の上をモデルウォークされていました。

左から
・田中先生:テーマ「エシカルポイント令和のイケオジコーデ~夏休み編~」、エシカル要素【寄付につながる商品、リサイクル素材】
・佐々木先生:テーマ「日本の伝統が生きる和のデザイン」、エシカル要素【職人による手作り、和の伝統を生かすデザイン】
・菅沼先生:テーマ「Wearing Happiness」、エシカル要素【フェアトレード、オーガニックコットン、自然素材のバッグ】
・菊田先生:テーマ「エシカルポイント令和のイケオジコーデ~夏休み編~、」エシカル要素【フェアトレード、オーガニックコットン】
というテーマです。
ファッションショーの後、モデルをしていただいた先生方に感想をうかがってみると、「いつもとは違う服装を着ることができて楽しかった」「素材について気にして買い物すること増えていきそう、関心を持てた」「デザインもいいし、着心地も良い、エシカルっていいですね」といった声がありました。エシカルへの関心が生徒さんから楽しい形で先生方に広がったことを感じることができました。
エシカルファッションショーの様子は、2025年9月21日の茨城新聞に掲載されました(茨城新聞クロスアイ「社会配慮の衣装コーデ 生徒考案、教員が披露 大成女子高家政科 茨城・水戸」)。
一般公開日の文化祭2日目は、展示ブースで発表&投票
つづいて2日目は、文化祭の一般公開日です。開場時間前から生徒のご家族や友人、地域の人たちが並び、たくさんの方が文化祭に来場されていました。2日目は展示を行い、どのファッションコーデがいいと思ったかをシールで投票してもらいました。

各グループで制作したパネルも展示して、生徒さんの言葉でコーディネートのポイントやエシカルな要素の説明を見てもらえるようにしました。




展示ブースでは、知っている先生がモデルを務めたことに驚く表情を見せるシーンや、生徒が来場した家族や知人に昨日のファッションショーの様子を楽しそうに説明して投票を促したりと、投票自体も楽しんでみていただけている様子でした。その結果、313枚のシールをはってきただき、非常に多くの方に投票していただくことができました。楽しい取り組みでエシカルを伝えることができるのは、一番良い方法です。


シールでの得票数としては、「菊田先生」のコーデが最多得票となりました。とはいえ、他の先生方にも投票が分散しており、それぞれのグループの良さに興味を持ってもらえた様子です。
ちなみに、大成女子高校の家政科ファッションデザインコースの3年生は、文化祭で自分たちがデザインし作ったドレスのファッションショーを行っています。

エシカルファッションショーの開催も、大成女子高校の文化祭では毎年自作ドレスのファションショーを行っていることをヒントに、エシカル版でやってみたいと学校側に相談したことが始まりでした。自作ドレスで追われる中、エシカルを学びエシカルファッションのコーデも考えた生徒さんたちの頑張りにも拍手を送りたいと思います!(ファッションショーは圧巻でした!完成度の高さ、光る個性に感動です。)
フードデザインコースは、エシカルな食品を選定し文化祭で販売
フードデザインコースの生徒さんたちは、文化祭当日に物販をするための食品を選定するところから始めました。「フェアトレード」「オーガニック」「ヴィ―ガン」のグループに分かれ、それぞれの要素を含んだ商品の中で、文化祭で他の生徒さんたちや一般の方々に買っていただけそうな商品を選定しました。

まずは、1グループごとに販売したい商品の候補を3商品ずつ選定しました。
販売をするには、商品を選ぶだけでなく、その商品のどこが「フェアトレード」「オーガニック」「ヴィ―ガン」なのかを説明できる必要があります。商品の原料や作られた背景から学ぶために、それぞれ商品ページやメーカーのホームページを見ながら取り組みました。

「売れるPOP」のポイントについて、実際にお店を運営する会員様より講義形式で学ぶ
商品を販売するうえで欠かせない道具が販促POPです。商品のおいしさやこだわりなど魅力を分かりやすく、関心を持ってもらうための大事な販促ツールですが、「売れるPOP」として作るために、実際にお店を運営している方をお招きして講義をしていただきました。今回は、同じ茨城県内にある勝田駅でオーガニックの食品店を営む「Bio QUON(ビオクオン)」の代表河野さんにお話をしていただきました。

お話の中では、河野さんがどのような想いをもってお店を始めたのか、オーガニックとは何か、オーガニック食品の魅力、POP作成時のポイントなど、様々なお話をしていただきました。
講義では身近にある食べ物の添加物をチェックする時間もあり、生徒さん自身が飲んでいるペットボトルの飲み物や食べ物の裏側を一緒に確認してみました。中には原料のすべてが添加物の商品があったり、思っていたよりも添加物が多く入っている商品があったりと、生徒さんたちが驚く様子も見受けられました。

POPの講義では、講師の河野さんが実際に作ったPOPをお手本として見せていただきました。実際のPOPを見て「こうやってつくるんだ」と実感を持つことができた様子です。実際の販売時も置かせていただきました。

講師の河野さんが運営しているオーガニック食品店は、大成女子高校がある水戸市のお隣のひたちなか市ということもあり、地元・茨城のお話も交えながらお話しいただきました。お店のある勝田駅を利用している生徒さんもいて、身近な場所にオーガニックのお店があることを知って、エシカルを身近に感じることもできたようです。この講義をきっかけに新しいつながりが生まれたら嬉しいなと思います。
エシカルポイントも伝える「POPづくり」に挑戦して、学びを形に
講義の後は、学んだことを生かしてPOPづくりを開始!と行きたいところですが、講師の河野さんもおすすめしていた試食を行いました。
自分たちが選んだ商品をより深く知るために試食を行うことで、実際に食べてみてわかるおいしさや味わいなど試食したことで分かる商品の魅力や特徴をつかむことができ、オーガニックやヴィーガンなどのエシカルな食品は、やさしい味のものばかりという先入観を払拭する機会にもなりました。自分たち若い世代が食べてもおいしくて納得できるという体験を試食を通して実感する時間になりました。

試食を終えたら、POPの作成に取り掛かります。講師の河野さんから学んだPOP作成時のポイントをおさらいしてから始めました。
河野さんがおっしゃっていたように、「真似ることから始めよう」ということで、生徒さんたちはインターネットでPOPの例を調べて、真似ながら丁寧に作成していました。

自分たちで選んだ商品ということもあり、アピールポイントはすらすらと出てきている様子でした。エシカルなポイントも入れつつ、どのようなワードを入れたりデザインをしたらお客さんに買ってもらえるのか、悩む場面もありましたが、商品選定をしたときの情報を振り返ることで整理ができ、POP作成のスピードも上がった様子でした。

それから、商品のPOPだけでなく「オーガニックとは?」「フェアトレードとは?」といったグループのテーマについて説明するPOPも作成しました。今までの授業で学んだできたことをアプトプットする難しさも感じていた様子です。それでも自分たちが考えた言葉で伝えようとグループで相談を重ねながら、完成させていました。そしてプライスカードも作成については、文化祭で売りやすい価格で金額を決めたり、その販売価格が仕入れ額といくら差があるか、つまり利益をどのくらい作ることができるのかを考える流通の部分の学びの振り返りをする時間にもなりました。
いよいよ文化祭でエシカル商品の販売を実践
文化祭の販売については、家政科2年生の生徒さんが協力してくれ、販売ブースの名前を「もぐもぐオーガニック」と名付けてくれました。3年生が作ったPOPを工夫しながら並べたり、販売時間がスタートした後も「こうしたらもっと見やすいのではないか?」、「お客さんにまずは見てもらうために、声を出して呼び込んでみよう」と接客から売り込みまでしっかり取り組んでくれたのが印象的でした。




1日目は生徒のみの公開日となっており、販売しているテントに来てくれた生徒さんの中には、授業で作成した「フェアトレードとは?」などが書かれたPOPをじっくりと読んでいる生徒さんもいました。
大成女子高校がある茨城県は、さつまいもの名産地。干し芋が有名ですが、今回の販売ブースでは、茨城県の干し芋も販売していました。干し芋にもエシカルな要素があるんだ!と興味を示してくれる生徒さんもいました。生徒さん同士で学びの輪が広がっていることにも、連携授業の意味を感じた瞬間でした。

2日目は保護者の方や地域の方が来る一般公開日となっており、生徒さんの親御さんや友人がたくさん来てくださいました。
今回の商品は、文化祭で販売されているものの中では価格が高いものも多かったですが、「おいしいですよ」であったり「無農薬で栽培されたものを使っていて安心して食べられますよ」などPOPをもとにしながら積極的に声がけしていただいたこともあり、売れ行きも好調でした。

最後には、テントを飛び出して校内を歩きながら販売にも挑戦してくれました。思うように売れず悔しい表情を見せる場面もありましたが、それでも諦めずに商品の魅力を伝え続けた結果、少しずつ売れ始め、ついに完売となりました。販売が終わったあとに「先生に報告しなきゃ!」と笑顔で話してくれた瞬間は、私たちにとっても大変喜ばしい瞬間でした。

学ぶだけでなく、実践も行ったことで得られたことは?
文化祭を終え、これまでの授業の振り返りについてアンケートで生徒さんたちの感想を聞いてみました。一部ですが、生徒さんからもらった感想をご紹介します。
◆学んだこと
「フェアトレードやエシカルデザインなど、普段ではあまり自分1人では調べないようなことを知る機会になった。」
「エシカル商品は食べ物、衣類など様々な商品があるんだなと分かった。」
「商品の受注・発注に関わる実際の流れやその裏側を学ぶことができました。」
◆感じたこと・気づいたこと
「商品を売る上でまずは商品を選ぶという点で、どのようにしたら売れるのか年齢層などを考えて選んだり、商品を実際にお客さんに売る難しさを学びました。」
「エシカルな商品のどこがエシカルで、どんな流れでできているのかが、とても重要だと感じた。」
「どういったものが人に興味をもたせ、手にとってもらいやすいかを選んだり考えて作ることで、いつも買う側だったけど逆の販売する立場に立ってみて新鮮だった。」
◆課題・今後に活かしたいこと
「安さや手軽さだけで物を選ばず、商品のよい所を知り、選ぶことができたらいいなと思った。」
「グループで話し合って何か1つのことを欲しがるのではなく、相手の意見だと思いながら、今回の取り組みで次からも自分の意見を持ちつつ相手の意見を尊重できるようにしていきたいです。」
「企業の取り組みを見て環境にやさしい活動をしている企業を知り、自分がいつも買っている物を見返し、環境に良い商品を買ってみようと思いました。」
◆企業との連携で得た学び
「商品が自分の手に届くまでにいろいろな人が関わっていることが分かった。商品の仕組みや流れを知り、実際に体験する力ができた。お店の人や企業の人と関われて販売というのがとても勉強になった。」
「数ある商品の中から世代に決め、自分が購入するとしたらのことを考えたり、商品の特徴を調べ厳選することを実際にしたことで、普通の授業とは違った企業のことについて触れることができた。」
「自分たちが選んだ商品のPOPを作ったり、販売の裏側だったり、普段の授業では学べなかった部分を学ぶことができた。」
「お客様に売るまでの過程は長いこと、仕入れから販売までの流れを知った。」
最後に
今回の連携授業を通して、生徒さんたちはエシカル・オーガニック・フェアトレードなどへの理解を深めることなり、日常の生活でも関心を持つきっかけになりました。また、スーパーデリバリーの事業である「流通」を知ってもらうために行った仕入れの体験ワークでは、仕入れる際の商品選びについて難しさを知ったり、商売の裏側を疑似体験する貴重な機会となったという感想もありました。そして販売や発表のためのPOPやパネルづくりも、通常の授業では経験であり、社会人として働く中でも生かしていきたいといった声も挙がっていました。
振り返りの声をみてみると、エシカルを知るだけでなく、流通、仕入れ、販売などの実践も行ったことで、多くの生徒さんたちが興味を持てたのではないかと思います。10代の若い世代においても、エシカルが身近であり、衣食住あらゆるシーンで関わっており、よりより環境や社会づくりのために日頃のお買い物でも貢献できることを知ってもらえたと感じています。
これから社会に出ていく高校生との連携授業を通して、エシカルのこと、メーカーやお店から見える景色などを知っていただくことができたのではないかと思っています。そして、今回の取り組みが生徒さんたちの今後の生活のどこかで役立っていけばとてもうれしいです。大成女子高校の生徒さん、先生方、そして授業にご協力いただいた出展企業のみなさま、講師の植木さん、河野さんにこの場を借りて、ありがとうございました。