海岸に行くと必ずと言って見かけるペットボトルや食品包装などのゴミ。分解されず浮遊しつづけたプラスチックごみが海辺に打ち上げられています。海洋プラスチックゴミは海洋生物の傷つけ、私たちの体内にも取り込まれていると言われていますが、それを耳にして、少しでも海をきれいにしたいと思う人も多いのはないでしょうか?
海をきれいにしていくには、ごみを出さないことが大切です。
この記事では、プラスチックごみを減らす方法や工夫について、「お店の視点」で考えてみます。
目次
海洋プラスチックごみの問題とは?
海洋プラスチックごみは、ポイ捨てや不法投棄などにより放置されたプラスチックごみが、河川などを通じて海へ流れ出て、海岸や海底にたまったり、水中を浮遊しているごみのことです。5mm未満の非常に小さなプラスチックは「マイクロプラスチック」と呼ばれ、とくに問題視されています。
2050年には世界のプラスチック生産量は3~4倍になり、世界の海のプラスチックゴミの量はすべての魚の量を上回ると言われています。(参考元:WWFジャパン 海洋プラスチック問題について)
このマイクロプラスチックは、歯磨き粉のスクラブに使用されるような極小なプラスチックや合成繊維の衣服などからでるマイクロプラスチックと、海で漂流しているうちに紫外線による劣化や波の作用で細かくなり、プラスチックごみ自体が小さくなったものと大きく2種類に分類できます。(参考元:日本財団ジャーナル「【増え続ける海洋ごみ】マイクロプラスチックが人体に与える影響は?東京大学教授に問う」の記事より)
マイクロプラスチックは一度流出すると回収が困難なので、いかにプラスチックごみを出さないようにするかが重要です。
そのためには、使い捨てのものを使わずにゴミを減らすこと、プラスチックを賢く使うことが大切です。まずはどのような物が海洋プラスチックごみを生み出しているかを知り、どのように防げるかをお店の目線で考えてみましょう。
お店ができること(1)脱プラスチックの商品を仕入れて提案してみよう
海洋プラスチックごみを減らすためにできることは、素材をプラスチックではなく自然由来のものに置き換えることです。
自然素材を選ぶ
ファッションでは、コットンや麻、絹、ウールなどの素材があります。コットンは植物の綿花から作られた素材なので、生分解性があり、最終的には自然に還ります。洗濯してもマイクロプラスチックは流出しません。綿もポリエステルなど合成繊維も洗濯するとマイクロファイバーが流出します。ただし、綿は生分解されますが、合成繊維から出たマイクロファイバーは分解されずに下水処理をすり抜けて海に流出し、海洋ゴミになってしまうのです。
とはいえ、手持ちの衣料品をすべて自然素材に変えるのもまたゴミを出すことになります。商品提案すると同時に、合成繊維のお洗濯にはマイクロファイバー流出を防止する洗濯ネットの活用をおすすめするなど、総合的に接客・販売するなどの情報やノウハウも取り入れておきたいところです。
雑貨では木や竹、藤、紙といった素材があります。定期的に新品に入れ替える歯ブラシについては、プラスチック製ではなく、竹製の歯ブラシを選ぶことができます。竹は成長が速く、サステイナブルな素材として注目されています。
その他には、乾燥ヘチマを使った植物由来のスポンジや、スーパーに行った際に使いがちな野菜などを入れる透明のビニール袋の代わりに使えるメッシュバッグがあります。メッシュバッグは通気性もよく野菜の保存袋にも使え、洗って繰り返し使えるメリットもあります。
繰り返し使えるマイボトルや容器を活用する・提案する
脱プラスチックなアクションを考えたときに思い浮かぶのが、ペットボトルの存在ではないでしょうか?実はペットボトルは、2022年度リサイクル率86.9%と高くなっています(参考元:PETボトルリサイクル推進協議会)。とはいえ、ペットボトルも石油由来の有限な資源から作られており、繰り返し使えるマイボトルの活用を心掛けたいものです。
いまやマイボトルを持ち歩くのは当たり前になってきていました。容量やサイズ、保温・保冷機能、デザインなどいろんな種類があり、選ぶ楽しさもあります。用途や自分の好みに合わせて使い分けて、エシカルな生活を楽しむアイテムとして提案したいものですね。
プラスチック製品の中でも、料理や食事のたびに使いがちなのが「食品ラップ」ではないでしょうか?便利ですが、繰り返して使うことができないため、毎日使っているとたくさんのごみを出すことになってしまいます。食品ラップの代わりに使えるのが「ミツロウラップ」です。畳み方を工夫すれば、簡易的な容器になったり、サンドイッチを包んだりすることもできます。ミツロウラップを自作できる手芸用品もあるので、お気に入りの生地で手作りできたりと、見た目にも楽しめるのがミツロウラップの楽しさです。
手軽に作れるので、お子様の夏休みの工作やワークショップなどの店頭イベントにも向いています。
お店ができること(2)商品の提供スタイルを変えてみよう
続いて考えてみたいのは、商品の提供スタイルの見直しです。商品陳列やラッピングなどで使い捨ての物を使用したり、過剰な梱包をしていないか考えてみましょう。
日本国内では、食品や洗剤の量り売りなどを行うお店(バルクショップ)が少しずつ増えています。お店側のメリットとしては、梱包品にかかるコストがカットできる、梱包作業が不要になるといった費用と手間の削減があります。一方でお客様には、お持ち帰りの際の容器を持参してもらうなど、提供方法についての理解をしてもらう働きかけが必要になります。食品の量り売りについては、保健所などに許可がや届出が必要かどうか確認を取りましょう。
お客様に商品をお渡しする際のビニール袋を紙製に変えたり、マイバッグを持参しているか会計の際にお声がけすることも忘れずにしましょう。また、繰り返し使えるバッグや容器を商品として販売したり、プレゼントラッピングには風呂敷やコットンバッグや巾着などその後も繰り返し使えるアイテムを活用するのも手です。
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お店ができること(3)販促POPやSNS、イベントを通して伝えてみよう
環境問題への関心や意識は人によってさまざま。フードロスが気になる人がいれば、気候変動が気になる人など、注目する問題や注目の度合いも異なります。だからこそ、共感してもらうことが大切です。いままで知らなかったこと、気にしていなかったことに気づく機会をつくり、自分ごとのように感じることが、海洋プラスチックゴミ問題も含め、環境問題を解決に近づけていく大切なプロセスです。
たとえば、店頭で商品の脇にその商品を使うことでどんなエシカルなアクションにつながるのかを販促POPで説明をしてみたり、お店のSNSで情報発信をしてみましょう。お客様がそれに対してどのような反応を示すかによって、共感を得られているか実感できるようになります。
共感の輪が広がってきたら、お客様とお話をしたり体験型のイベントも有効です。
毎年7月は「Plastic Free July(プラスチックフリージュライ)」という、2011年にオーストラリアで始まった「プラスチックをなるべく使わない」という月間の活動があります(参考元:PLASTIC FREE JULY By Plastic Free Foundationのサイトより)。いつも使っているアイテムをプラスチック製ではなく自然素材のアイテムを一緒に試してみる体験会を行ってみたり、海洋プラスチックごみをテーマとするドキュメンタリー映画の上映会も学びの場となります。地元の自治体やNPO団体が主催する海岸のごみ清掃にお誘いして、体験を共有こともできます。
海をキレイに資源を大切にする脱プラ商品を仕入れて提案してみよう
日本は海に囲まれた島国です。海の豊かさ、心癒される美しさなど、きれいな海を守りたいと思う人も多いのではないでしょうか?海洋プラスチックゴミ問題は、海辺の町に住む人も、遠い人にとっても自分たちのごみが関係している問題です。プラスチックを完全に排除することは難しいですが、使い捨てを止めたり、植物由来の素材の物に置き換えることからやってみましょう。
お店ができることの大きな1歩は、エシカル消費を応援、促進することです。人や地球環境、社会や地域に配慮した商品やサービスを、店主の応援したいこと、関心のあることから消費を通して実践することで、メーカー側もその応援に呼応する形で環境配慮の商品づくりを推し進めることができます。
お店からの商品提案が、海洋プラスチック問題の解決につながっていく、そんなエシカルな行動の輪を広げるエシカルな仕入れを少しずつ始める参考になればうれしいです。