エシカルブランド「mana.」を展開するオーガニックリビングの代表浜村さんに、直営店の開業までのストーリーや店舗のコンセプトの決め方、取り扱う商品の選び方などを含め『開業して分かったエシカルショップの運営のコツ』を伺うオンライントークイベントを開催しました。

オリジナルブランドの立ち上げの背景から、直営店で展開するバルク販売(量り売り)のポイントなど、「エシカルなショップを作りたい」「お店にエシカルの要素を取り入れたい」といった方の参考となるお話をお伺いしました。その様子をお届けします。

『開業して分かったエシカルショップの運営のコツ』のお話

オーガニックリビングは脱プラスチックやゼロウェイストを掲げるオリジナルブランド「mana.」を展開しています。代表の浜村さんが直営店を地元沖縄に開いたのは2023年の1月のこと。ネットショップでの展開をしていましたが、やはり「直接手に取って確かめたい」という要望も多かったことやオンラインでは出会えない方にも脱プラスチック製の商品があることを知ってもらいたいと、地元沖縄の嘉手納市にオープンしました。

オープン当初はお店の存在を知ってもらうために、地元のコミュニティと繋がれるようなイベントなどにも出店していましたが、そこから徐々に口コミで足を運んでくれる人が増えています。現在はエコに興味がある方やオーガニック食材、ヴィーガンアイテムを探している方など「地球に対してできること」に関心のある方たちが集う場所になっているとのことです。

直営店では自社商品とテイストやコンセプトが合う商品を並べて提案

――直営店にはオリジナルブランド「mana.」の商品と、仕入れた商品が並んでいます。その割合はオリジナルと仕入れで1:3ほどになっているそうですが、なぜ仕入れ商品も扱っているのですか?

浜村さん:「mana.」の商品は歯ブラシやキッチンスポンジ、ランチボックスやステンレスボトルなど日用品がメインになっています。そのため、リピーターを増やすことを考えると消耗品があったほうがいいのではないかということで、オリジナル商品とコンセプトが合う商品を仕入れて並べています。

オリジナルの隣には相性の良い商品を並べる

Q:お店ではオリジナル商品以外も扱っているとのことですが、どんなアイテムがありますか?

浜村さん:例えばオリジナル商品の竹歯ブラシの棚には仕入れ商品の歯磨き粉やリップクリーム、デオドラントなどが並んでいます。どの商品もオーガニックやヴィーガンだったり、脱プラスティック製の商品だったりとオリジナル商品と似たテイストのものを置くことで、お客さんが一緒に手に取りやすい提案をしています。

スタッフも試したアイテムを提案

――扱う商品は一通りご自身でも試してから仕入れているのでしょうか?

浜村さん:もちろんです。店内で扱う商品はどれも私だけでなくスタッフも試しています。やはり実際に使ってみて感想を持つことでお客様にも良さを伝えやすく、オリジナル商品との組み合わせも提案しやすいからです。

――商品ごとに使い方なども記載しているのですか?

浜村さん:仕入れ商品にパンフレットやPOPのようなものがついていたら、それを商品と一緒に並べています。それを見ていただければだいたいわかるかなといった感じです。

洗剤やナッツは量り売りの「バルク販売」を導入

店舗では洗剤やシャンプ―類などの日用品からスーパーフードやスパイス、ヴィーガンの方が好む豆やナッツ類など食品を「バルク販売」と呼ばれる量り売りを取り入れています。どの商品もエシカルやオーガニックの製品です。店舗がある嘉手納には米軍基地があることから、海外のお客様が来店されることもあり、他店舗ではあまり扱っていない食品を揃えることでニーズにも応えています。そうすることで近隣の店舗との差別化にも繋がるという効果も。

容器はデポジット瓶を用意

――量り売り(バルク販売)を取り入れていますが、お客様はどのように購入されるのですか?

浜村さん:量り売り(バルク販売)の購入方法は3パターン用意しています。一番推奨している方法は「マイ容器」を持参いただくこと。とはいえ、たまたま来店された方や、持ってくるのを忘れた方もいらっしゃいます。そこで用意したのが「デポジット瓶」。これは150円で瓶を貸し出し、次回来店時に洗ったものを返却いただければ返金するという仕組みです。これなら量り売りのことを知らなかった人も、その場で気軽に購入することができますね。ちなみにデポジット瓶を購入された中の半数くらいはそのまま自宅で使用されています。

もうひとつの購入方法は紙袋を使ってもらうこと。当初はマイ容器を忘れた方に使ってもらうように無料で用意していましたが、使用される方が増えてしまいかえってゴミを増やしてしまうことに繋がるな、と思ったのです。それはブランドのコンセプトから外れてしまうため、無料で配布ではなく1枚10円で販売することに切り替えました。そうすることでデポジット瓶を利用される方も増えるようになりました。

梱包資材などを減らすことができるバルク売りはまさにエシカルな取り組みの一つであり、実店舗での販売だからこそできることですよね。

賞味期限やメンテナンス

――食品を量り売り(バルク販売)する場合、賞味期限の管理や衛生管理も気になりますが、どう対応されていますか?

浜村さん:オーガニックリビングでは、食品は量り売り什器に入れる際に賞味期限を確認し、期限が近くなってきたら残った分をセールにするなどして在庫にならない取り組みをしています。また、什器自体も商品を入れ替える際に清掃するなどしてメンテナンスしています。

温度管理にも気を配っていますね。特に今年は暑さが目立ったので、店内の温度を一定に保つためにお店がクローズの時間帯もクーラーをつけておくなど、立地ならではの配慮をしています。

「バルク売り」を取り入れるポイントとは?

――オーガニックリビングでは食品だけでなく、洗濯用洗剤やシャンプーなども量り売りをされていますが、量り売りを始めるにあたってポイントなどはありますか?

浜村さん:量り売りをすることで、一度使うとリピーターになってくださるお客様も多いですが、初めて使う方には容器に入ったタイプのものを提案しています。まずはそれで試してもらい、気に入ったらその容器を持参して量り売りタイプを購入してもらうようにしています。

量り売りを取り入れる店舗は増えてきていますが、少量で購入できたり、容器付きで購入できるとお客様にとってもハードルが低いと思います。特に食品の場合はお店側にとっても大量に仕入れると賞味期限が切れてしまうというリスクもあるので、無駄を作らないためにも「量り売りをしているお店」という認知を高めてから商品数を増やすのがおススメです。

なお、量り売り(バルク販売)を始めるにあたって事前に調べておきたいのが保健所への届け出や許可の有無など。扱う商品や販売方法によって許可や届出の有無が異なります。食品衛生責任者の資格があればできるケースもあれば、飲食店営業許可証が必要な場合もあるので、詳しくは所轄の保健所に確認することをおすすめします。オーガニックリビングでは量り売りの食品はお客様自身が袋詰めなどをする形で販売しており、その場合は食品衛生の講習を受けて申請書を出せば取扱いOKとのこと。これだと比較的導入しやすいですね。

お店で人気の商品

――店内で人気の商品を教えてください。

浜村さん:沖縄という土地柄暑い場所なので、水分補給を欠かせない方も多いことからこのステンレスボトルが人気のひとつです。これはパッケージも構造もシンプルでボトルのキャップと本体の間にシリコンリングがあるだけなのでお手入れも簡単です。サイズは3種類で、バッグなどに入れたい方には小さめサイズが人気ですし、スポーツなど運動の時に使う方には大きなサイズがおすすめです。

歯ブラシもロングセラーアイテムの一つです。買い替えをする方も多いですし、お子様用サイズもあります。ギフトにも人気で、一緒に並べている歯磨き粉を一緒に購入される方も多いですね。プレゼントでもらった方が買いに来てくださることもあります。

これからエシカルショップを作る方へ

エシカルな商品を取り扱う店舗は増えていますが、お客様に商品の魅力をどう伝えればいいの?と悩む方も多いのではないでしょうか。今回のトークイベントでも「コンセプトを押しつけがましくなくお客様に提案する方法とは?」という質問なども来てました。これについてオーガニックリビングでは、まずはお客様の悩みや声を聞くことを第一にしています。

浜村さん:例えばシャンプー類を探しに来られたお客様には、具体的にどういう悩みがあるのかを聞いたうえでいくつかおすすめの商品や使い方を提案しています。

もともと”身体にも地球にも優しいものを使いたい”、”あまりゴミを出したくない”という意識のある方が来店されることが多いとのことですが、商品の良さを伝える前に、まずはどういった商品であればお客様の悩みに沿えるのかといったことを意識しています。そのうえで、オーガニックリビングが提案する商品を試してもらい、そこで商品の良さを知ってもらう流れを作っています。

今回は浜村さんに、店舗づくりで経験したことをベースにエシカルなお店作りのコツをお伺いしました。エシカルと言っても様々な切り口の商品があるため、コンセプトを統一することを意識していくと取り扱う商品の軸ができたり、お客様にも「あのお店なら〇〇を扱っているかも」とイメージしてもらいやすくなり、結果的に集客にも繋がっていきます。

オンライントークでは、店舗の様子などもご紹介しているので、これからエシカル商品を扱ってみたい方や、エシカルなショップコンセプトのお店を開業したい方はぜひご覧ください。