湖や山々に囲まれた自然豊かな藤野という町が神奈川県相模原市にあります。ドイツの哲学者シュタイナーが提唱した教育法で、個性を尊重し自然と共存しながら芸術活動などを通じて感性を伸ばす「シュタイナー教育」が受けられるシュタイナー学園があるなど、エシカルへの意識が高い町です。今回はエッセイストとしても活動する中村さんが店主をつとめる「家族と一年商店」にお伺いし、お店を始めたきっかけやエシカルな商品を販売する中で伝えていることやその思いなどをお聞きしました。

「プラスチックを捨てる人がいなくなりますように…」、七夕に込めた娘の思いがお店を開くきっかけ

店長の中村さんと娘さん

──昨年実店舗をオープンされる前からECサイトを運営されていたとのことですが、開業されたきっかけを教えていただきたいです

中村さん:20代の頃からエコな暮らしとか環境問題に関心があったんです。でもよりエシカルな暮らしに対する意識がより高まったきっかけがあり、そこから開業につながりました。

──そのきっかけは何だったのでしょうか?

中村さん:6年ほど前、長女が8歳の頃に海洋プラスチック問題が報道されはじめ、人間が捨てたゴミが海に流れ出てることで海のいきものたちの命を奪っている現状を知りました。ちょうど七夕の時期で、長女は「プラスチックを捨てる人がいなくなりますように」と短冊に書いていたんです。それを見て自分がそのために何か行動を始めたい、子どもにもその姿を見せたいと思ったのがきっかけです。

──素直な娘さんの願い、切実に叶ってほしい願いです。行動を始めるために小売店の開業を選択されましたが、どのような思いがあったのでしょうか?

中村さん:エシカルな暮らしを始める人に、どのようなことから始められるか、ヒントを与えられるようなことがしたいと思っていました。その方法としてわかりやすいのはエシカルな商品を提案することだと考え、エシカル商品の販売を始めました。もともとお店を開くことが目標だったわけではなかったので、自分のペースで販売をすることができるECサイトでの販売という形態で開業しました。

──最初はECサイトでの販売のみだったんですね。そこから今の実店舗を開くことになったのはどのような経緯だったのでしょうか?

中村さん:たまたまのタイミングと偶然でした。お店の向かいにエシカルなパジャマの販売とカフェをされているお店があるんですが、そのお向かいのお店が当店の場所をもともと倉庫として使っていたんです。このスペースがもったいないということもあり倉庫を改装しお店を開かせていただけることになりました。

中村さんの言葉で書かれた手作りのPOPと共に並べられた商品

──倉庫が店舗になるとはユニークな大変身ですね。ECサイトでの販売と実店舗での販売で購入されるお客様の層などに変化はありましたか?

中村さん:はい、良い変化がありました。ECサイト時代のお客様はもともとエシカルなものを求めてる方が100%だったのですが、実店舗を始めてからエシカルという言葉自体初めて聞くというような方も来てくださり、新しい視点での質問をいただけたりするので自分自身の勉強にもなりとても良かったと思っています。

看板に店名とともに綴られた「Think Ethical」に込められたメッセージ

──「家族と一年商店」という店名にされた背景を知りたいです。

中村さん:もともと小売業を始める前から私自身が「家族」をテーマに本を書いたりなど執筆活動をしておりました。私は「家族」という最小単位の社会について考えています。そのため私のことを「家族」について執筆している人と認識している方もいらっしゃり、「家族を考える」ということを自身のライフテーマにしていることもあったのでこの店名にしました。

──中村さんの大事にしていることが店名からも伝わりますね。店名だけでなく内装にもこだわりを感じるのですが、お店作りで工夫されていることはありますか?

中村さん:このお店は全て私の夫の手作りなんです。彼は空間デザインの仕事をしているのですが、そこでは廃棄物がたくさんでるのでその廃棄物を使ってお店を作りました。せっかくなら商品を購入するだけでなくエシカルについて考えたり学んだりできる場にしたいと思ったので、店内にエシカルに関する知識などを紹介する展示をしたりして工夫しています。

──お店に来られた方がエシカルについて考える良いきっかけにもなりますね。

中村さん:エシカルは考え続けることが大事だと思っているので、店名の上にも「Think Ethical」と書いていてみんなで考えられる場にもなれば良いなと思っています。

店名の上に「Think Ethical」と書いている

「藤野」で感じる「地球や人とのつながりを大切にすること」

──お店を始める前から藤野に住んでいらっしゃるとのことですが、藤野に住み始めた理由を伺いたいです。

中村さん:藤野にはシュタイナー学園という学校がありそこに長女を通わせたかったのがきっかけで藤野に暮らすことを決めました。シュタイナー教育は芸術性も高く地球や自然につながる大切なことを教えてくれる教育で、そういうところに共感して東京から越してきました。藤野には毎年シュタイナー学園目的で移住してくる方が多いんです。

──たしかに駅にもシュタイナー学園の看板がありました。駅の観光案内所ではパーマカルチャーに関するイベントのポスターも見かけたのですが、藤野という町自体もエシカルへの意識が高いのでしょうか?

中村さん:そうですね。藤野はシュタイナー学園以外にもパーマカルチャーセンタージャパンがあったりしてエシカルへの意識が高い町です。あとは藤野は人とのつながりが強い町でもあります。消費活動は一方的になりがちですが、エシカル消費にはつながりが大切だと思っています。そのため実店舗を通じて実際に人とつながりあうリアルなコミュニケーションを大事にしていきたいです。

藤野のエシカルなお店さんや知識を展示にて紹介

──近所の方々がお互いを知っているのは安心感がありますね。今お店にいらっしゃった方々もみなさんお知り合いですか?

中村さん:はい、みなさん子どもが同じシュタイナー学園に通っている保護者仲間です。一人はこちらのチョコレートを作っている生産者さんです。

──そうなんですね!駅の観光案内所でもこちらのチョコレートお見かけしました。

中村さん:タンザニアの農家さんの有機カカオを使っているフェアトレードのチョコレートです。店内の展示でも紹介させていただいております。

画像中央の「里山CRAFT CHOCOLATE」がタンザニアのフェアトレードチョコレート

自分自身が『この商品を選んでよかった理由』を伝えることを大切にして商品を提案

──お客様に商品を提案するとき、伝え方などで工夫されていることはありますか?

中村さん:もちろんエシカルな商品の選択は個人が決めることですし無理して選択するものではないので「しなければならない」「やらないと悪い」というような言い方はしないようにしています。自身がエシカルな商品を選択したことでこんな良いことがあったという伝え方を意識しています。私自身、使い捨てのものを使っていた前のころよりエシカルなものを日常に取り入れた方が、普段手にとったものに地球や人のつながりを感じることができ今の方が幸せと感じています。

──自身が使用して「良かった」体験をもとにお客様にお伝えしているのですね。ポジティブな伝え方が素敵です。販売する商品を選ぶ際の基準はありますか?

中村さん:プラスチックフリーのものやできるかぎりリサイクルできるものを意識しています。自分が使って必要だと思ったものでないとおすすめできないので、置いてある商品は定番でオススメなものが多くなっています。

──食品、キッチン雑貨など商品のジャンルは決めているのでしょうか?

中村さん:ジャンルを決めているというよりは暮らしの中のシーンごとに必要なものを考えて商品を選んでいるので、自然と暮らしの中で必要な商品が揃っているという感じです。お店の雰囲気も、暮らしの一部としてさりげなく溶け込むような雰囲気にしたいと思っています。

暮らしの中で必要なものをシーンごとに考え陳列

「エシカルは身近なテーマ」自分ごとに捉えられる輪を広げていきたい

──最後に、今後「家族と一年商店」をどのようなお店にしていきたいか中村さんの思いを伺いたいです。

中村さん:私自身まだ日本にはエシカルな商品が少ないと感じています。エシカルについて知らない方もまだたくさんいらっしゃるこの日本でエシカルについて伝えるときには、主語を小さくすることを意識しています。「地球」など大きい主語にしてしまうと距離を感じてしまいがちなので、主語を「私」や「家族」など小さくすることで身近に感じてもらうよう伝え方を工夫しながら、今後もこのお店や自身の発信を通じてエシカルの輪を広げていきたいと思っています。

──これからも「家族と一年商店」を通じてエシカルを身近に感じエシカルなものやことを暮らしに取り入れる人が増えていくと良いですね。本日はありがとうございました!

家族と一年商店

住所:神奈川県相模原市緑区小渕1696
営業時間:営業日と時間は随時インスタグラムアカウントでお知らせしております。
HP:https://www.kazoku-store.com/
   http://kazoku-magazine.com/
instagram:https://www.instagram.com/kazoku_shouten

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