福岡県太宰府市にある「はなとき」は、オーガニックコーヒーとロースイーツやランチが楽しめるカフェです。オーナーの加藤さんの義実家を改築して作った店内には重厚感漂うアンティーク家具が置いてあり、クラシカルな雰囲気が落ち着く空間を作っています。いつかカフェを開きたいと思っていた加藤さん。前職の臨床検査技師を退職してカフェスクールに通い、女性がひと息つける場所として「はなとき」を開いた道のりや、お店の看板メニューのロースイーツについて伺ってきました。

カフェスクールに通って開業準備

「はなとき」は福岡の太宰府天満宮から徒歩20分くらいの住宅街にあるカフェです。加藤さんの義両親が以前住んでいた住居を建築士のご主人による設計で改築し、グランドオープンしたのが2023年の6月。立地柄観光客も含め近隣にお住いの女性客が多く、憩いの場として徐々にお客様が増えています。店内のテーブルや椅子、商品の陳列棚やレジカウンターなどの家具は義両親が長年使っていたものを活用。年季を感じる調度品がどこかノスタルジーな雰囲気を出しています。

いつか自分でカフェを開きたいと思っていた加藤さんですが、実は開業するまでは全くの異業種となる臨床検査技師として長年、大学病院勤務に従事していました。コロナ過では遺伝子検査など多忙を極めていましたが、少し落ち着いてきたころに改めて自分の夢に向き合い、家族にも背中を押してもらって念願のカフェ開業に向けての準備を始めました。

「子供の世話も手を離れたことや、検査技師としても長らく働いていたのでそろそろ別のことをやってみようかなと思って家族にも相談しました。職場には引き止められましたが、夫や家族には”いままで頑張ってきたんだから、好きなようにやってみたらいいんじゃない?”と言われたこともあり、思い切って挑戦してみました。」

とはいえ、飲食業の経験はまったくない加藤さん。そこで、まずはカフェスクールに通ったり知人の飲食店で手伝いをするなど、店舗経営や接客などを学ぶことからスタートすることに。

「珈琲店などカフェ巡りをする中で、お店のオーナーさんにいつか自分もカフェをやりたいことを話したりしていたんですが、とあるオーナーさんが『カフェを開業する人は沢山いるけれど、利益を出して継続できている人はカフェスクールなどに通って基礎を学んでいる人ですよ』と仰っていたんです。それで気になってカフェスクールのことを調べてみて、通うことにしました。」

加藤さんが通っていたカフェスクールでは、コーヒーについてはもちろんのこと店舗のマネジメントや仕入れ先、集客など多岐に渡ってノウハウを提供してくれ、お店を開業した後も店舗に来て導線やレイアウトなど様々なアドバイスをくれるのだとか。未経験から開業する人にとっては基本的なことが学べるのはもちろんのこと、相談相手にもなってくれる存在があるのは心強いですよね。ちなみにカフェスクールで出会った同期の方にスーパーデリバリーを紹介され、開業前に登録。その後お店で提供しているロースイーツの食材やランチに使う木製食器などを仕入れるようになったのだとか。

やまにの「ウッドキッチン」シリーズをランチメニューに使用。

ちょっぴり身体にいいものを提供したい

「はなとき」で人気のメニューのひとつが、ロースイーツ。ロースイーツとは、卵や砂糖、乳製品や小麦粉などを一切使わず生のナッツや果物だけを用いて焼かずに作るスイーツのことです。低脂質でグルテンフリーであることや火を通さずに混ぜて冷やして作るため、食材に含まれるビタミンや食物繊維などの栄養素を失うことなく摂取できるというのが特徴です。

「ここに来てくださるお客様に、せっかくならオーガニックコーヒーと一緒に身体にやさしいものを召し上がっていただきたいなと思って、開業準備中にSNSで見つけたロースイーツの先生に作り方を教わりました。ロースイーツは食材を混ぜて冷やすだけという一見簡単な工程なんですが、作る方によって味の仕上がりが異なってきます。その先生から学んだお陰でとても美味しいロースイーツを作れるようになり、お客様にも”こんなに美味しく出来上がるなんて”と驚かれることもありますね。」

こちらはレモン果汁とココナッツクリームとメープルシロップにオートミールとデーツだけで出来たレモンタルト。クリームタルトだけど口当たりも重くなく、レモンの爽やかさが合わさってとってもさっぱりした美味しさ!冷凍のシャリシャリした状態から溶けていく食感の変化も楽しめるスイーツです。

ほかにもクセがなくて使いやすいと評判のアリサンココナッツクリームを使用した抹茶のサンドケーキや穀物コーヒーを使ったケーキなど、季節に合わせたメニューがあります。

ランチメニューには加藤さんの実家で採れた野菜などを取り入れています。オーガニックやヴィーガンなど自然派志向が強くなりすぎると食材を集めるのも大変だったり、価格とのバランスも難しいので「手作りで身体にいいものをちょっとずつ加えたメニューを提供する」というコンセプトにしているとのこと。お客様にとっても親しみのあるメニューのなかでそういった配慮があるのは嬉しいですね。

店内では地場産の野菜や手作りの雑貨類なども販売しており、お茶の合間や帰り際に見ていくお客様も。

忙しい女性がひと息つける場所に

加藤さんには「はなとき」を開業するにあたって、一つの想いがありました。それは日頃仕事や家事などで時間に追われているお客様に、この場所で自分だけの時間をゆっくりと過ごしてほしいという想いです。加藤さん自身も臨床検査技師として約30年ほど働きながら二人のお子さんを育て、家庭でも家事に追われながら忙しい時間を過ごしてきました。そんな経験から、家庭から離れてひと息つける場所になればという気持ちが「はなとき」には込められています。

「家の中にいるといろんなものが目に付いて、ゆっくりするつもりがつい掃除したり片付けをしてしまいがちなんですよね。それに最近は仕事をしている女性も多く、家の外でも中でもやらなきゃいけないことが多いから、ゆっくり休める時間は少ないと思うんです。

だからこそはなときに来てくださるお客様には日常から少し離れて、自分だけの時間をここでゆったりと過ごしていただければと思っています。」

そんなお客様への思いから、オリジナルバッグのロゴには「ME TIME」のメッセージが。

実際に来店されるお客様のほとんどが女性で、親子での来店も多いのだとか。お店のインスタグラムの影響も大きく、ロースイーツの投稿をみて母と娘のペアで足を運んでくれることもよくあるそう。

年代物のオーディオから流れてくる優しい音楽に包まれながら、ほっと一息つける「はなとき」。時間の流れもゆっくりと感じてついつい長居してしまう、そんな心地よい空間のカフェでした。今後は菓子製造許可を取得したこともありロースイーツを通販でも販売していきたいとのことで、新たなメニューの展開もますます楽しみです。

はなとき

住所:福岡県太宰府市観世音寺1-1-17

インスタグラム:https://www.instagram.com/hanatoki1117/?igshid=YmMyMTA2M2Y%3D

(太宰府在住の書道家に書いてもらったというお店のロゴ。「はなとき」の名前やコーヒーのイラストが隠れ文字になっています。)