ゲストハウスと言えば、宿泊費の安さや宿泊者同士の交流が魅力ですが、最近では若者の間での国内旅行の人気が高まり、建物・内装や料理、おもてなしなどで他の宿泊施設と差別化して開業するゲストハウスが増加しています。

ゲストハウスの開業はホテル業や旅館業と比較して挑戦しやすいと言われています。専門知識や特別なスキルは不要であり、小規模で開業することができ、開業資金やランニングコストを抑えて運営することも可能です。

今回は、ゲストハウスを開業するにあたって必要な準備・費用・運営のコツを解説します。

コスパの良さで人気が高まるゲストハウスが増加中

古民家や外国風の空間が魅力のゲストハウス

ゲストハウスと聞いてイメージするのは、素泊まり、相部屋、共用のトイレやお風呂など必要最低限の設備サービスで手軽な料金で泊まれることではないでしょうか。なるべくお金をかけずに宿泊したいお客様にとって、ゲストハウスのような料金の安さはありがたいものです。

料金の安さはさほど変わらずに、最近は内装や建物、体験などで差別化を図ることで人気を集めているゲストハウスが目立ってきています。古民家をリノベーションしたり、農業体験や本やアートをコンセプトとしたり、まるで海外を訪れたような洋館や内装にこだわるなど趣向を凝らしたゲストハウスです。

料理でもてなすゲストハウス

最近のゲストハウスでは、B&B(ベッド・アンド・ブレックファスト)のように朝食だけでなく、夕食を提供するところも増えています。その土地の食材を利用した地産地消のメニューや、健康志向のターゲットをとらえたオーガニック食材やマクロビオティックなどのこだわりの料理をゲストハウスのコンセプトに反映しています。

ゲストハウスで食事を提供するメリットとしては、オーダーを受けたり配膳などを通してお客様への接客の機会を増やせることです。お客様の旅行の目的や好みを聞き出せるので、その後の観光情報を提供することができたり、ゲストハウスを利用した感想をお聞きする機会が自然と増えます。一方、お客様側はそれらのおもてなしや経験が旅の思い出となります。その後リピーター客として利用してくれたり、知り合いに紹介してくれたりと稼働率や集客の要素につながります。

ゲストハウスの開業に必要な許可・届出

ゲストハウスは旅館業法の「簡易宿所営業」に該当し、宿泊する場所を多数の人で共用する構造設備を設けて営業する宿泊業をさします。開業するには「簡易宿所営業」の許認可が必要です。

「簡易宿所営業」の客室の床面積は、延床面積33平方メートル以上(宿泊者の数(2人以上)を10人未満とする場合には、3.3 平方メートルに当該宿泊者の数を乗じて得た面積以上であること)であることでも区分しています。なお、「簡易宿所営業」では、ホテルや旅館で設置が必須となっている玄関帳場(いわゆるフロントのこと)の設置有無については義務付けられていません。

簡易宿所の許認可

ゲストハウスの開業を決めたら、まずは所轄の保健所や担当課窓口に事前相談をしましょう。

宿泊施設を開業するには、都道府県の条例で定める換気、採光、照明、防湿、清潔等の衛生基準に従って構造設備を作る必要があります。そのため申請窓口となる各自治体の保健所のホームページには、「事前に施設の図面を持参してご相談ください」と記載されているところが多くなっています。事前相談から申請の手続き、消防法など関係機関への申請など営業許可がおりるまでに時間がかかりますので、まずは早めに事前の相談をしましょう。

事前相談から許認可がおりるまでの流れです。
[参考資料]東京都福祉保健局 旅館業のてびき(H30改訂)

1.事前相談
申請場所・構造設備についての図面などを持参して所轄の保健所や担当課窓口に事前相談する。(建築、消防、都市計画、食品衛生法などの関係機関にも相談)

2.申請手続き
許可申請時に必要な書類は以下の通りです。
・旅館業営業許可申請書(施設・構造設備の概要)
・申告書(法第3条第2項各号に該当することの有無、該当する際はその内容を記載する)
・見取図(半径 300 メートル以内の住宅、道路、学校等が記載されたもの)
・配置図、各階平面図、正面図、側面図、配管図(客室等にガス設備を設ける場合)
・登記事項証明書
その他に法人の場合は、定款又は寄附行為の写しや登記事項証明書必要です。
また、申請手数料として約2~3万円がかかります。

3.関係機関への相談手続き
申請書が受理されたら、建築基準法、消防法などの関係法令の相談手続きをする。

4.施設の検査
施設の完成後、保健所の職員が設備基準に適合しているかなどを検査する。

5.許可
書類審査、検査によって基準に適合していることが確認されると許可がもらえる。

飲食店営業許可

所轄の保健所の審査に通ると得られる許可です。食品の衛生・安全について定める「食品衛生法」によって規定されています。食品衛生法では飲食店を業態や営業内容によって、「飲食店営業」と「喫茶店営業」の二つに区分されています。今回のゲストハウスの開業の記事では、軽食だけでなく夕食など食事を提供することを想定して「飲食店営業許可」についてご紹介します。

飲食店営業許可は、店内で食材を調理し、その場でお客さんに飲食させるサービスを提供するときに必要です。レストランや料理店、食堂、カフェなどが該当します。東京都中央区の場合、申請料は18,300円となっています。

ちなみに飲食店営業許可を得るためには、「食品衛生責任者」の資格を取得しておく必要があります。調理師免許とは別の資格です。「食品衛生責任者」は、講習会を受講し、筆記試験に合格することで資格を取得できます。なお、調理師、栄養士などの資格を持っている場合は講習会が免除になる場合もあります。講習会の受講については、所轄の保健所や担当課に確認しましょう。

[参考]東京都福祉保健局・食品衛生の窓

一般酒類小売販売業免許申請

ゲストハウスの売店やお土産コーナー等で、お酒を陳列して販売する場合は「一般酒類小売販売業免許申請」を税務署へ申請し、免許を取得する必要があります。

申請してから免許を取得するまでにかかる時間は約2か月です。その前に事前に所轄税務署の酒類指導官へ相談する場合は約3か月程度かかることを想定しておきましょう。そのため、開業時からお酒を販売したい場合は、早めに進めておきましょう。

(一般酒類小売販売業免許申請の流れ)
・事前確認(所轄税務署へ酒類指導官へ相談)
・申請書の提出
・審査
・免許付与等の通知
・酒類の販売開始
[参考]一般酒類小売業免許申請の手引

深夜酒類提供飲食店営業の届出

レストランや食堂で深夜にお酒を提供する場合、「深夜酒類提供飲食店営業の届出」は不要ですが、ゲストハウス内にバーや居酒屋を設置し、深夜(午前0時から午前6時)にお酒を提供する場合は「深夜酒類提供飲食店営業の届出」が必要です。所轄の警察署を通して公安委員会へ届け出ます。バーの併設を検討している場合は構造設備的要件、場所的要件がありますので注意しましょう。

[参考]警視庁・深夜酒類提供飲食店営業

開業届

ゲストハウスの運営にスタッフを雇わず、家族や夫婦で開業するところも多くあります。個人事業主として開業するためには、「個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)」と「所得税の青色申告承認申請書(青色申告の場合)」を届け出し、開業手続きをする必要があります。

開業届の書類は国税庁のホームページでダウンロードするか、最寄りの税務署でも入手できます。事業の開始1ヶ月以内を目安に税務署に提出します。開業届を出すことで確定申告の際に青色申告をすることができます。青色申告をすると、最大65万円の青色申告特別控除が受けられたり、家族や親族を社員として雇用する場合、給与を全額経費に算入できるといったメリットがあります。青色申告は必須ではありませんが、メリットも大きいので、確定申告時に青色申告をする場合は開業届と一緒に提出しておきましょう。

ゲストハウスの開業に必要な資金は?

初期費用とランニングコスト

初期費用は少なくても1,000万円程度必要と言われています。100平米未満の小規模なゲストハウスで既存の物件を改修するだけでも、そのうちの500万円がかかると言われています。都会なのか、地方なのか場所によっても土地の取得費用や、宿泊施設として借りる物件の賃貸費用も変動してきます。また内装や設備をどこまで充実させるかによっても導入費用は大きく変わります。
さらに、ゲストハウスを開業するために必要な許認可の各取得費用や備品の費用も掛かります。

ランニングコストとしては、おもに人件費・消耗品費・水道光熱費・家賃があります。スタッフを雇わない場合は人件費は掛かりませんが、小規模なゲストハウスであっても月30万円ほどの運営資金が必要とされています。ランニングコストとして3か月分の90万円は準備しておきたい金額です。

資金の調達方法

ゲストハウスの開業にあたって自己資金が不足する場合は、銀行からの融資を受けるほか、日本政策金融公庫から融資を受ける手段もあります。日本政策金融公庫は「日本公庫」とも呼ばれ、政府が100%を出資する公的な金融機関です。日本政策金融公庫は中小企業や個人事業主の事業支援や開業支援に力を入れており、最大3,000万円まで無担保無保証人で借り入れができます。

そのほかにも、日本商工会議所が公募している小規模事業者持続化補助金に申請する方法もあります。商工会や商工会議所が事業計画の作成を支援し、施策をサポートしてくれる補助金です。幅広い事業の⼩規模事業者が対象となり、使い勝手のよい補助金であるのが特徴です。

ゲストハウス開業の際に気を付けるポイントは?

空間や体験などコンセプトで差別化

2020年度衛生行政報告例の概況によると、ホテル旅館業は50,703施設、ゲストハウスが該当する簡易宿所業は37,847施設あります。[参考]令和2年度衛生行政報告例の概況

都市部や観光地にはすでに宿泊施設がたくさんあるからこそ、開業の際には価格設定や宿のコンセプト作りは非常に重要な部分です。

差別化するためには、ゲストハウスの空間・内装、食事や体験型アクティビティなどのおもてなしやサービスなどを工夫する手もあります。それからゲストハウスを開業する際、「どの場所で開業するか」は最も大事なポイントになると言っても過言ではありません。生まれ育った地元、住み慣れた街、通い詰めた観光地など、ゲストハウスのオーナーは場所にこだわりを持つ方が多くいます。そしてその場所・エリアを訪れてくれるお客様はどんな人々なのか?その場所・エリアにはどんな観光資源があるのかなどを分析・調査し、コンセプトづくりに生かしましょう。

宿泊者がここちよく過ごすためのルールづくり

ゲストハウスでお客様に心地よく過ごしてもらうために、以下のようなルールを設けることを検討してみましょう。

・チェックイン時に宿泊者全員の身分証明書の提示を必須にする
・共用スペースの過ごし方(キッチンの利用時間、片付け、ゴミの分別など)
・シャワールームの利用時間(24時間OKなのか、夜間は利用を停止するか)
・消灯時間(夜何時から朝何時までにするか、騒音マナーはどう提示するか)
・喫煙(全館禁煙とするか、喫煙スペースを設けるか)

共用スペースの多いゲストハウスだからこそ、宿泊者が心地よく、安心して過ごせるよう明確なルール作りが必要です。またそれらをどのような方法で伝え理解してもらうかも大切なことです。

ゲストハウスの開業のコツはコンセプトづくりから

宿泊施設の開業の中でも、比較的開業しやすいと言われているゲストハウス。価格競争とは一線を画すためにも、他の宿泊施設とは差別化されるオリジナルのコンセプトで開業計画を立てることが必要です。立地にこだわる、建物・内装にこだわる、料理にこだわるなど、どういったことをお客様に提供したいかを具体的にし、どういった方法でそれらを提供するかが大切です。

開業する所在地の商工会議所に相談をしたり、国内外のゲストハウスやホテル、旅館などを回って学びを得たり、事前の情報収集も念入りに行いたいものです。

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