スーパーデリバリー2024-2025年ジャンル別仕入れ動向~データが語る、日本の多様な暮らしとニーズ~

本レポートは、卸・仕入れサイト「スーパーデリバリー」における2024年5月から2025年4月までのジャンル別仕入れ動向についてまとめました。
また、仕入れ調査データからの考察にくわえ、総務省統計局発行の「統計でみる都道府県のすがた 2025」のデータを参考に、仕入れとの相関について分析を行いました。各地域の気候風土、歴史的背景、人々のライフスタイルや価値観といった要因が、小売事業者の仕入れ動向にどのような影響を与えている可能性があるのかを解説いたします。

  • 調査概要 調査期間:2024年5月~2025年4月
  • 調査対象「スーパーデリバリー」国内会員による注文
  • 算出方法ジャンル別に、1会員あたりの購入個数を都道府県ごとにランキング化
  • 参考資料総務省統計局「統計でみる都道府県のすがた 2025」
    https://www.stat.go.jp/data/k-sugata/naiyou.html

スナック菓子 仕入れランキング TOP10

スナック菓子の仕入れランキング

スナック菓子の仕入れ動向からは、各地域の食文化やライフスタイルが色濃く反映されている様子がうかがえます。

トップの茨城県は、一人当たり県民所得の高さ(2020年 全国7位)に加え、年間を通じて温暖な気候と広大な土地に恵まれ、さつまいもや栗など多様な農産物で有名です。その結果小売店の仕入れ意欲を刺激しているのかもしれません。

2位の山形県や3位の福島県は、おだやかな生活時間を大切にする方が多い地域性(山形県 高齢者人口割合 2023年 全国5位、福島県 同17位)が、日常のお茶請けとしてのせんべいなどの消費に繋がっているのでしょう。特に両県は米どころとしても名高く、品質の高い米菓文化が根付いています。

5位の福井県は、共働き世帯の割合が高い(2020年 全国1位)という特徴があります。忙しい毎日の中で、手軽に気分転換できるスナック菓子は、ほっと一息つくための大切なアイテム。また、日本海に面し、冬は曇りがちで雪も多い気候も、室内で過ごす時間の質を高めたいというニーズを生み、結果として手軽なスナック菓子が選ばれているとも考えられます。

チョコレート 仕入れランキング TOP10

チョコレートの仕入れランキング

ランキングトップの福島県では、高齢者のお茶請けとしての需要や、寒暖差の大きい気候(特に冬の寒さ)、豊富な果物との組み合わせが消費を後押ししていると考えられます。

また、福島、山形、茨城、新潟、福井、長野の6県はスナック菓子とチョコレートの両方でトップ10入りしており、小売店の積極的な仕入れと消費者の多様なニーズが背景にあります。これには、四季を楽しむ文化、保存食の習慣、お茶請け文化、豊かな農産物への関心の高さなどが影響していると考えられます。

Tシャツ・カットソー 仕入れランキング TOP10

Tシャツの仕入れランキング

Tシャツ・カットソーの仕入れランキングでは、温暖な気候の特色が顕著に表れています。

上位10県中7県を九州・四国地方が占め、特に年平均気温が高い鹿児島県(全国2位)、長崎県(同5位)、宮崎県(同4位)がトップ3を飾ったことは、Tシャツやカットソーが年間を通じて活躍する「実需の高さ」を物語っています。

スマホケース 仕入れランキング TOP10

スマホケースの仕入れランキング

スマホケースの仕入れランキングは、大都市圏とその周辺、そして各地方の中核都市が名を連ねる結果に。トップの大阪府は、巨大な市場規模に加え、「新しいもの好き」「目立つことを楽しむ」といった気質や活気ある街の雰囲気が、スマートフォンを個性的に彩るスマホケースへの高い関心に繋がっているのではないでしょうか。

滋賀県、神奈川県、奈良県、埼玉県といった大都市圏のベッドタウンでは、都市部で最新トレンドに触れた住民が地元で購入する際の受け皿として、小売店が多様なスマホケースを積極的に仕入れている様子がうかがえます。

マスク 仕入れランキング TOP10

マスクの仕入れランキング

マスクの仕入れランキングでは、健康維持への意識の高さや、地域固有の事情が影響している様子が見えてきます。鹿児島県、長崎県、高知県など、65歳以上人口割合が全国的に見て高い水準にあり、有訴者率や通院者率も比較的高い傾向にある県が上位を占めました。これらの地域では、過去のコロナ禍以降も健康維持や感染症予防への意識が高い方々がマスクを継続使用していると考えられます。特に鹿児島県では、桜島の降灰という日常的な地域課題も、通年でのマスク需要の一因となっていることでしょう。

一方、千葉県や埼玉県のような大都市近郊の県では、通勤・通学時の混雑対策といった都市型ライフスタイルにおける予防意識が需要を支えている可能性も。また、福島県、山形県、青森県といった東北地方の県では、冬の寒冷な気候や春先の花粉対策として、防寒や花粉症対策を目的としたマスクの着用が習慣化しているのかもしれません。

美容液 仕入れランキング TOP10

美容液の仕入れランキング

美容液の仕入れランキングは、美への関心の高さに加え、各地域の気候特性やライフスタイルが影響していることを示唆しています。トップの長野県は、女性の労働力人口比率の高さに加え、標高が高く冷涼で空気が乾燥しやすい冬の気候、そして夏の日差しの強さといった要因が、保湿やUVケアなど具体的なスキンケアへの高い意識を育んでいると考えられます。

大分県や秋田県は、理容・美容所数が人口当たりで比較的多く、美意識の高い県民性や美容サービスへのアクセスの良さがうかがえます。特に大分県は温泉地としても名高く、「美肌の湯」といった温泉文化が地域の美容への関心を高めているのかもしれません。

東京都、埼玉県、大阪府、福岡県、京都府、兵庫県といった大都市圏及びその近郊では、美意識の高い生産年齢人口が多く、最新の美容トレンドや高機能な製品への探求心が旺盛な消費者の需要に応えるため、小売店が多様な美容液を積極的に仕入れていると考えられます。

椅子 仕入れランキング TOP10

椅子の仕入れランキング

椅子の仕入れランキングからは、新生活のスタートやビジネスシーンにおける需要に加え、地域ごとの気候風土や文化的な背景が垣間見えます。宮城県、熊本県、埼玉県といった新設住宅の着工比率が高い地域では、新しい住まいに合わせた家具選びの一環としての需要が活発です。また、青森県、山梨県、大阪府のように飲食店や宿泊施設が充実している地域では、業務用としての椅子の仕入れがランキングを押し上げていると考えられます。。

ペットフード 仕入れランキング TOP10

ペットフードの仕入れランキング

ペットフードの仕入れランキングからは、ペットを家族として大切にし、その健康やQOL向上に関心を寄せる人々の姿が浮かび上がります。

トップの宮城県は、人口当たりの都市公園面積が全国3位と、ペットと共にのびのびと活動できる環境に恵まれています。長野県や福井県のように持ち家比率や一戸建て住宅比率が高い県では、安定した飼育環境が需要を支えているといえるでしょう。

埼玉県のような人口流入が多い地域では、生活の変化により新たなペット需要が喚起されているのかもしれません。

まとめ

本調査は、全国の小売事業者の仕入れデータと公的統計データを組み合わせることで、商品カテゴリーごとに日本各地の興味深い消費傾向とその背景にある可能性を浮き彫りにしました。

スナック菓子やチョコレートといった嗜好品には、地域の食文化や気候に根差した楽しみ方、人々の繋がりを大切にするライフスタイルが垣間見えました。Tシャツ・カットソーやマスク、美容液といった身に着けるものやケア用品には、気候への適応や健康・美意識の地域差、さらには地域固有の課題への対応といった側面が。そして、椅子やペットフードといった生活を豊かにするアイテムには、住環境や家族構成、余暇の過ごし方、地域コミュニティとの関わり方など、それぞれの土地で育まれた多様な価値観が仕入れ傾向に反映されている可能性が示唆されました。

スーパーデリバリーは、今後も定期的にこうした仕入れ動向を観測・分析し、公表することで、事業者の皆様がデータに基づいた的確な意思決定を行い、地域社会の活性化にも貢献できるような情報提供に努めてまいります。


  • 上記は、スーパーデリバリーの注文データと、公開されている「統計でみる都道府県のすがた 2025」のデータを組み合わせて分析・考察したものです。実際の消費者の購買行動や小売店の仕入れ理由には、本分析で触れられていないさらに多様な要因が影響している可能性があります。
  • 「統計でみる都道府県のすがた 2025」のデータは、項目によって調査年次が異なります。(主に2020年~2023年)