近年ペットブームの影響で犬や猫を飼う人が増えていますが、その影響は旅行業界にも新しい動きを与えています。外出先にペット同伴で出かける人が増えており、旅行などにも愛犬を連れていく飼い主が増えているからです。その結果、ペット同伴宿泊サービスを始めるホテルや旅館が続々と登場しています。今回は、これからペット同伴での宿泊ができる施設を用意するにあたり、必要な条件や準備物について解説します。
目次
家族化でニーズが増えるペット同伴旅行
一般社団法人ペットフード協会が2021年12月に発表した全国犬猫飼育実態調査によると、日本におけるペットの飼育数は15歳未満の子ども(約1,500万人)の数を大きく上回り、犬は710万6千頭、猫は894万6千頭、合計1,605万2千頭となっています。
またペットのあり方も年々変わってきており、これまでの「愛玩動物」というモノとしての扱いから核家族化・少子化の進行によりペットも家族の一員として扱われる傾向が強くなってきています。
このような背景から旅行などの外出時も愛犬などペットを同伴する飼い主が増えており、ペット旅行専門メディア「休日いぬ部 (https://kyuzitsu-inubu.com/)」を運営するオモイデノ株式会社(大阪市西区南堀江)によるペット旅行の調査結果では、飼い主の約70%が必ず旅行に愛犬を連れていくと回答しました。そのため、ペット同伴で宿泊できる施設へのニーズが高まっており、実際に日本各地でペットと一緒に宿泊できる「ペットケーション」のプランを用意する宿泊施設が増えています。また、旅行業界では「ペットツーリズム」という言葉も生まれており、ペットを連れていけるかどうかによって旅先を選ぶ人も増えています。
ペット同伴で宿泊可にするメリットとは?
このような需要を受けてペット同伴を受け入れるホテルや旅館などが増えていますが、そこには新たな客層の開拓や差別化に加え、コロナ禍による厳しい経営状況からの脱却につながるメリットなどもあります。
特にペットと同伴で宿泊できる施設が増加しているとはいえ、その数はまだまだ少ないのが現状です。その中でいち早く設備を整えたり、ペットケーションなどのプランを用意しておくことで、より多くの新規客を集客することができます。
また競合が少なく需要が高まっている状況では、一度足を運んでくれたお客様がリピートしてくれる可能性も高まります。そのため、飼い主やペットにとって安全で快適な空間を提供し、さらにはペットも楽しめるアクティビティなどを用意しておくことは、宿泊者の満足度向上につながります。
ペット同伴でも泊まれる宿に必要な条件
ニーズが高まっているペットケーションやペットツーリズムですが、ペット同伴のお客様を受け入れる準備はそう簡単ではありません。宿泊施設によってはペット同伴率が 100%のケースもあれば、ペット連れではない一般客が宿泊しているケースもあり、それによって提供するサービスやルールなども変わってきます。
また、通常のホテルや旅館と異なり、ペットや飼い主の気持ちを理解できるスタッフの配置や研修も必要になってきます。ペット同伴客の気持ちを理解したうえでのおもてなしやサービスの提供は、安心感や満足度を高めるものであり、他の施設との差別化にもつなげることができます。
まずは宿泊施設として「どの程度までペットを受け入れられるのか」について考え、そのうえでそれぞれのルールや受け入れ条件を設定していきましょう。
泊まれるペットの種類や条件を提示しよう
飼い主やペットに心地よく過ごしてもらうためには、清潔で快適な空間や安心して過ごせる施設の提供が必要となりますが、一方で飼い主へのマナー基準を設けることも必要です。利用ルールや条件を徹底することはほかのお客様への配慮にもつながり、宿泊者の満足度にも影響します。
愛犬同伴で宿泊を受け入れている施設では、下記のような内容を事前に飼い主に提示し、了承を得てから予約いただくステップを取り入れています。
● 一年以内に接種した予防接種(狂犬病・混合ワクチン)の証明書の提出
● トイレのしつけがされていること
● 無駄吠えをさせないこと
● 発情中や生理中は宿泊不可
● 館内ではリードをつけて移動すること
● 宿泊前にシャンプー・グルーミングをして来ること
● 指定の場所以外では排出物は持ち帰ること
● 人用のベッドに乗せないこと
また、ペットの種類や頭数に制限がある場合はそちらも合わせて提示しておくと良いでしょう。例えば「ペットの種類は小型犬と中型犬8kg未満、猫まで宿泊可能。宿泊料金は1泊3,000円、2匹目からは1匹に付き2,000円頂戴します。」といった表記をしているケースもあります。
施設の利用条件やルールを決めよう
ペット同伴での宿泊を受け入れる場合でも、客室以外ではペット同伴禁止であったり、客室でもケージの中にいれておくことを条件とするケースもあります。施設によって条件やルールは異なりますが、ペット同伴ではない宿泊者も滞在している場合には、そちらのお客様にも配慮したルールの設定が必要となります。
特にレストランやロビー、パブリックスペースなど多くの方が利用する場所については衛生面やトラブル回避からペット同伴を遠慮している施設も多く、ほかにも下記のような条件を提示しているケースが見られます。
● 入室の際には玄関にてペットの足の汚れを落とすこと
● 浴室でペットのシャンプーや入浴を行わないこと
● 和室(畳)スペースや寝室には入れないこと
● レストラン利用時など外出する際はペットは室内のケージにいれておくこと
施設によってはドッグランやペットの一時預かり所などを用意している場合もあります。そういった場所についてもペット同士のトラブルなどを防ぐため、あらかじめ利用ルールを飼い主に伝えておくほうが良いでしょう。
宿泊施設が用意すべきペット用アイテムとは?
ペット用の食事や食器、タオル類など宿泊時に使用するペット用品については飼い主に持参してもらうよう、事前に伝えている施設が多くみられます。これは、ペットが慣れない場所でも普段使用しているものを持参いただくことで、リラックスして過ごせるようにといった意味もあります。
一方でペットシーツなどの消耗品や持ち運びが簡単ではないケージに加え、来館時にペット用品を忘れてしまったり、紛失した飼い主に備えて施設側でもある程度ペット用品を備えておくと、宿泊者の満足度や安心感も高まるでしょう。
いざという時のために用意しておきたいペットアイテム
施設側では宿泊時のルールや施設利用時のルールに合わせて、必要なアイテムを用意しておくと良いでしょう。
ケージ・サークル
ベッドルームや和室など、客室内のスペースの利用を制限している場合にはサークルなどを用意してペットの居場所を設けておくと良いでしょう。また、客室内にペットを留守番させておく時もサークルなどがあれば家具を傷つけたり粗相を防ぐ役割にもなります。
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ペットシート・トイレトレー
トイレ用のペットシートを飼い主が持参している場合でも、普段とは異なる環境でペットが粗相をしてしまうこともあり、足りなくなることもあります。客室内や館内を清潔に保つためにも備え付けを用意しておくと良いでしょう。また、汚れた際にはすぐに拭けるようにウェットティッシュなどもあると重宝されます。
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消臭スプレー・除菌シート
ペット同伴が可能な施設では匂いへの対処も必要です。特に客室内はペットの匂いやトイレの匂いが残りやすいので、こまめな手入れが必要となります。清掃時だけでなく、ペットがトイレを使用した際に飼い主が使えるよう置いてあると便利です。
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ペットフード・おやつ
旅先や外出先には日ごろ食べているペットフードやおやつを持参する飼い主が多く、ホテルなどの施設側も持参を促しています。ですが、万が一忘れたり無くした場合に備えて販売しているケースもあります。中には食器など水飲み用のボウルなども客室内にセットしていたりレンタルが可能な施設もあります。
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これら以外にも売店にペットグッズのコーナーを展開してペットウェアやリード、おもちゃなどを販売している事例もあり、ペット用品の充実によって飼い主の満足度を高めている施設も増えています。
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ペットのための施設作り
飼い主とペットにとって快適な空間を提供するために、ドッグランやプールといったペットが遊べる場所を併設した施設が増えています。ペット同伴でのホテルや旅館では、ラグジュアリーな接客よりもペットに親切なサービスのほうが評価される傾向にあります。また、ペットと飼い主が一緒に楽しめる施設があることで他の施設との差別化にもなり、リピーター獲得にもつながるでしょう。
他にも、飼い主が食事や観光にでかけている間、安心してペットを預けられるペットシッターの用意や預り所があるホテルなどもあります。ペットのための施設を用意することは簡単ではありませんが、例えば宿泊施設の周辺でオススメのお散歩ルートを提示したり、同伴できる観光スポットなどの情報提供などから始めるのも良いでしょう。
ペット同伴での宿泊は新しいおもてなし
これまではペット同伴で宿泊ができるホテルや旅館でも、ペットは専用施設に預けるケースが一般的でした。ですが年々ペットと飼い主のあり方が変わり、旅先でも同じ空間で過ごし、一緒に旅を楽しめる形が求められています。ペット同伴での宿泊者にとっては、ペットと快適に旅を楽しめることが満足度につながります。
新たな集客や差別化としてペット同伴の宿泊を受け入れる際には、ペットと飼い主双方に対して快適かつ癒しの空間を提供できるような試みを取り入れてはいかがでしょうか。
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