卸・仕入れサイト「スーパーデリバリー」でエシカルを担当している霜越です。先日の「ソーシャルビジネス」の特別授業に続き、専修大学商学部・神原理教授の「商品評価」の授業において、アップサイクル・プラントベースブランド「KAWAIINE」を展開する株式会社東京バル様をお招きし、産学連携プログラムを実施しました。

授業の前半では、ブランド立ち上げの背景や商品開発のこだわり、マーケティング戦略について講義をしていただき、食品ロス削減やプラントベースといったエシカルな視点に加え、「誰に届けるのか」「どのように選ばれるのか」といったマーケティングの考え方についても学ぶ機会となりました。後半は、神原教授による「商品評価」の実践を学生自身が商品を試食して行いました。当日の様子を当記事でご紹介します。

東京バル「KAWAIINE」とは?アップサイクルから生まれたブランド

今回の授業では、アップサイクル・プラントベースブランド「KAWAIINE」を展開する、東京バルの筒井玲子氏を講師に迎え、ブランドの立ち上げ背景や商品開発についてお話しいただきました。

東京バルは飲食店の経営を事業としていましたが、コロナ禍での飲食店の経営とは別に、新たな事業を模索する中で着目したのが、食品の商品開発でした。ビジネスプランを作り、国からの助成金を受けて食品のアップサイクル事業に取り組んだことが「KAWAIINE」のスタートです。アップサイクルとして着目したのが、食品製造の現場で日々発生している「食品残渣(ざんさ)」です。加工の過程で生じる皮や搾りかすなどは、まだ栄養価が残っているにもかかわらず、活用されないまま廃棄されるケースも少なくありません。

KAWAIINE」では、こうした未利用資源を新たな価値へと生まれ変わらせるアップサイクルに挑戦しました。
東京バルが拠点とする茨城県の特産と言えば干し芋。その干し芋を製造する際に発生する皮の部分や、茨城県内で育てられた有機栽培の野菜のジュース加工後に残るにんじんやケールの搾りかす、そして日本酒づくりで生じる酒かすなどを原料として活用しています。

講義の中では、「アップサイクルだから選ばれるのではなく、おいしいから選ばれることが大切」という考え方も紹介されました。「KAWAIINE」の商品づくりでは、フードロス削減という社会的価値だけでなく、味や食感、栄養面にもこだわり、おいしさと栄養の両立を目指しています。

食品残渣を活用した商品開発は、環境課題の解決につながるだけでなく、新たな食の価値を生み出す挑戦でもあります。学生たちは、「KAWAIINE」の取り組みを通じて、アップサイクルやプラントベース食品の可能性について理解を深めました。

商品開発の裏側|失敗を恐れず挑戦を続けた1年間

講義では、アップサイクル商品の開発が決して簡単なものではないことについても紹介されました。食品残渣を商品化することには、多くの魅力がある一方で、さまざまな難しさもあります。

例えば、干し芋の皮は、その時の糖度によって商品の膨らみ方や甘さにばらつきが出るため、安定した品質で商品化するためには細かな調整が必要になります。その時々の原料によって味や水分量、糖度に違いが生じるため、品質を一定に保つことが大きな課題となります。

さらに、「KAWAIINE」のこだわりとして、保存料や添加物に頼らないという点は、賞味期限の設計や製造工程の管理など、乗り越えるべき課題が数多く存在します。

こうした理由から、多くの大手メーカーはアップサイクル商品を作りたいと思っていても、なかなか実現が難しいという現実があります。しかし東京バルでは、「捨てられてしまうものに新たな価値を生み出したい」という想いのもと、商品開発を続けてきました。

その象徴的な取り組みが、筑波大学の食品工学のゼミとの共同研究です。学生たちと共に学びながら試作を重ね、商品開発に取り組んだそうです。なんと、開発期間は1年間。数えきれないほどの失敗を経験する中で、失敗作のように思えた試作品の中から「これは商品になるかもしれない」という芽を見つけ、新たな商品へと育てていったと言います。

筒井氏は、こうした挑戦を続けられた理由について、「大手ですら課題に感じているからこそ、自分たちが取り組む価値がある」と語りました。前例が少なく、挑戦し続ける姿勢に学生たちも関心を持って話を聞いていました。

商品開発と同じくらい大切な「届け方」|ターゲット層やプロモーション戦略

筒井氏の講義の中で特に印象的だったのは、「良い商品をつくるだけでは売れない」という考え方です。

商品開発を進める上で、「誰に届けるのか」「どこで売るのか」「どう見せるのか」「なぜ選ばれるのか」という4つの視点を大切にしていると言います。

例えば、干し芋の皮を活用した「さつまいもの皮スナック」商品では、軽くサクッとした食感の楽しさ、口に入れた瞬間溶けていく特徴、そして小さなお子様でも持ちやすい形状から、幅広い消費者を想定するのではなく、歯の力が弱い高齢者や、まだ歯が生えそろっていない乳幼児をターゲットに設定しました。そして、そのターゲットに合わせて販売チャネルも見直し、ベビー用品専門店で展開を開始したそうです。商品そのものだけでなく、「誰に届けるか」から逆算して販売戦略を組み立てていったというチャネル戦略の重要性を実例としてお聞きできました。

また、スーパーデリバリーでも大人気の「THIS IS SALAD」シリーズも、単に食品残渣を活用した商品として訴求したわけではありません。にんじんやケールの搾りかすを活用し、原材料の表示の先頭に、野菜が表示されるように商品設計をし、その特徴を生かして「持ち運ぶサラダ」という分かりやすいコンセプトを打ち出すことで、健康を意識する消費者に新しい価値を提案しました。

こうした事例から学生たちは、商品開発だけでなく、ターゲット設定や販売チャネル、見せ方まで含めて設計することがマーケティングの重要な役割であることを学びました。

広告だけに頼らないブランドづくり

東京バルのブランド戦略には、一般的なスタートアップとは異なる特徴があります。それは、オンライン広告に大きく依存するのではなく、実際に商品を手に取ってもらえる実店舗での販売を重視していることです。

講義では、「どうやって商品を広めるか」を考えたとき、まず選んだのは広告ではなく売り場だったという話が紹介されました。そのために力を入れたのがパッケージデザインです。単におしゃれなデザインを追求するのではなく、自分たちの想いやブランドの世界観を表現できるクリエイターと協力しながら、店頭で手に取ってもらえる商品づくりを進めてきたといいます。

その結果、自然派志向のコンビニエンスストアやスーパーなど、健康やサステナビリティへの関心が高い消費者が集まる店舗での販売を実現し、店舗で商品を購入した著名人やインフルエンサーが商品を紹介したことで、ブランド価値を適切に伝えることができたそうです。この積み重ねが商品の認知拡大につながったのです。

さらに東京バルの強みは、商品そのものだけにとどまりません。食品残渣を自ら回収する物流体制や独自の製造技術を構築し、アップサイクル商品を安定的に供給できる仕組みを整えています。また、JAや全国の農家との連携を進めることで、まだ活用されていない食品残渣に新たな価値を生み出しています。「捨ててしまう方が楽」という現実がある中でも、「捨てずに活かしたい」と考える農家やメーカーの想いをつないできたと語りました。商品づくりだけでなく、生産者や加工事業者とのネットワークづくりもまた、「KAWAIINE」のブランドを支える重要な取り組みとなっています。

試食による「商品評価」|アップサイクル・プラントベースのお菓子を「五味」で学生が評価

講義の後半では、専修大学商学部神原理教授の授業で行われている「商品評価」を実施しました。

「商品評価」の授業では、商品の品質やデザイン、ブランド価値などを多角的な視点から分析・評価する方法や考え方を学んでいます。今回は、「KAWAIINE」のTHIS IS SALADの「さつまいもと麹の蜜クランチ」と「ケールとフルーツの板グラノーラ」を試食し、神原教授の商品評価シートに沿って味や香りなどを学生一人ひとりが評価しました。

評価では、人が感じる味覚の基本である「五味(甘味・塩味・酸味・苦味・うま味)」の観点も取り入れながら、以下の項目で商品の特徴を整理していきました。

・香り(5段階で評価:とても強い/強い/どちらでもない/弱い/とても弱い)
・サクサク感(テクスチャー)(同上)
・甘み(同上)
・塩味(同上)
・苦味や渋味(同上)
・うま味(同上)
・香ばしさ(同上)
・レトロネーザルアロマ(戻り香)(同上)
・全体的な好ましさ(5段階で評価:とても好ましい/好ましい/どちらでもない/あまり好ましくない/好ましくない)

アップサイクル原料を使用した商品と聞くと、「健康には良さそうだけれど味はどうなのだろう」といったイメージを持つ人も少なくありません。しかし実際に試食した学生たちは、素材の風味や食感、お菓子としての完成度にも注目しながら評価を進めていました。

それから、「ソリューション:自分なりの価値提案」を考える時間もあり、「自分なら購入したいと思うか」「誰に勧めたいか」といった購買意向についても学生からアイデアを出してもらいました。学生のアイデアを取り上げ、東京バルの筒井氏と神原教授がフィードバックを行いました。ターゲットや販売シーンを想定しながら商品開発者の立場で考え、自らの意見を発信することで、より実践的な学びにつながりました。

講義で学んだ「誰に届けるのか」「なぜ選ばれるのか」というマーケティングの視点を踏まえたうえで試食を行ったことで、学生たちは消費者としてだけでなく、商品企画や販売の視点からも商品を評価する貴重な経験となりました。

商品開発からマーケティングまで。商品評価を通じて学んだ「選ばれる理由」

今回の産学連携では、アップサイクル・プラントベースブランド「KAWAIINE」の事例を通じて、商品開発のリアルな現場を学ぶことができました。食品残渣を活用した商品づくりには多くの試行錯誤があり、その背景にはフードロス削減という社会課題の解決に取り組む強い想いがあります。

また、講義や商品評価を通じて、学生たちは商品の品質や味だけでなく、「誰に届けるのか」「どこで売るのか」「なぜ選ばれるのか」といったマーケティングの重要性についても理解を深めました。実際に商品を試食し、パッケージや購買意向まで評価する経験は、商品を市場に届けるまでのプロセスを疑似体験する貴重な機会となりました。

今回の学びは、エシカルな価値を持つ商品がどのように企画・開発され、消費者へ届けられているのかを考えるきっかけとなり、社会課題とビジネスを結び付けて考える視野を広げる機会となりました。

今回の連携授業を通して、ご協力いただいた専修大学の神原教授、東京バルの筒井氏、そして学生のみなさんにとって、有意義な学びの時間となっていれば幸いです。スーパーデリバリーでは今後も、エシカルな仕入れを選択肢の一つとして広げていけるよう、取り組みを続けてまいります。

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