関東地方

日本の首都・東京を擁し、政治・経済・文化の中心地として機能する関東地方。今回は、卸・仕入れサイト「スーパーデリバリー」の実際の注文データに基づき、この日本最大の巨大マーケットにおける各都県の仕入れ傾向を分析しました。

このレポートでは、暮らしの質や個人の嗜好が色濃く反映されるカテゴリを厳選し、具体的な仕入れ実態に焦点を当てながら、その背景と要因を解説いたします。

調査概要

  • 調査期間: 2024年5月~2025年4月
  • 調査対象: 「スーパーデリバリー」国内会員(関東1都6県)による注文データ及び会員登録数
  • 分析対象地域: 茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県
  • 算出方法: 主要ジャンル別に「1会員あたりの注文点数」を算出。これを基に比較分析。
  • 参考資料: 総務省統計局「統計でみる都道府県のすがた 2025」

関東地方の地域的な特徴と関連するカテゴリ

関東地方は、日本の総人口の約3分の1が集中する世界でも類を見ない巨大都市圏であり、各都県が持つ独自の機能や役割が商品の仕入れ動向に色濃く反映されています。その中でも東京都は県内総生産・人口ともに日本最大で、名実ともに行政と経済の中枢です。昼間に他の地域から流入する人口を示す昼夜間人口比率は116.1と突出して高く、このビジネス機能の集積がオフィス関連用品やビジネスパーソン向け商品の巨大な需要を生み出しています。その東京を取り巻く埼玉県、千葉県、神奈川県は広大なベッドタウンとしての役割を担っており、特に埼玉県(13.89%)と千葉県(12.70%)から他都県への通勤・通学者の流出人口比率は全国トップクラスです。このような長時間の通勤を伴うライフスタイルが特定の消費動向に繋がっている一方で、東京都自体は単独世帯の割合が50.2%と全国で最も高く、個人の価値観を重視する消費傾向も顕著です。

関東地方の特色ある仕入れカテゴリを紹介

関東地方の仕入れ動向を分析すると、特徴的な2つのパターンが見られます。一つは、特定のジャンルにおいて、一部の事業者が突出して大量に仕入れる「一点集中型」の需要です。これは地方だと小売店として地域の方への販売が多い傾向ですが、関東だとネットショップでの販売や商社、商事が仕入れをして販売する傾向が強いためです。

もう一つは、本レポートでご紹介するように、業態を問わず様々な会員が購入しており、地域全体のライフスタイルや消費者の関心を広く反映している「広域需要型」のカテゴリです。

入浴剤・バスアロマ菓子類紅茶ステッカー・シール鉢・プランター
埼玉県茨城県千葉県東京都栃木県
千葉県埼玉県群馬県栃木県群馬県
茨城県栃木県神奈川県群馬県茨城県
東京都千葉県埼玉県埼玉県千葉県
群馬県群馬県東京都千葉県神奈川県
神奈川県東京都栃木県神奈川県埼玉県
栃木県神奈川県茨城県茨城県東京都

癒やしとセルフケアの需要:「入浴剤・バスアロマ」

このカテゴリでは、埼玉県と千葉県が関東地方でのトップ2を占め、都心部を上回る高い需要を示しました。これは、両県が首都圏の巨大なベッドタウンであり、住民のライフスタイルが色濃く反映された結果と言えます。

長時間の通勤による心身の疲れを癒すため、自宅でのバスタイムを重要なリラックス時間と捉える傾向が強いことがうかがえます。

「おうち時間」の質を高めたいというニーズが、多様な香りや効能を持つ入浴剤やバスアロマへの活発な仕入れに繋がっています。

広大な土地が育む食の楽しみ:「菓子類」

「菓子類」全体で見た場合、茨城県が1会員あたりの注文点数で他を圧倒しました。このカテゴリは、一部の事業者が特に大量に仕入れる傾向が見られましたが、その影響を考慮してもなお茨城県の数値は突出しており、県全体に根差した強い需要があることがわかります。

茨城県は関東地方で最も人口密度が低く(463.3人/㎢)、自動車移動が中心となる「クルマ社会」です。運転中の気分転換や小腹満たしとして手軽に楽しめるお菓子類の需要が高く、仕入れにも影響があるのでしょう。

港町と物流が支える文化:「紅茶」

「紅茶」のカテゴリでは、千葉県がトップとなりました。これは、空の玄関口の歴史を持つ千葉県の文化的な背景と、現代の物流機能が関係している可能性があります。

千葉県には成田国際空港や千葉港といった日本の主要な玄関口があり、紅茶をはじめとする輸入品が集まる一大拠点です。このため、専門性の高い紅茶を取り扱う輸入業者や卸売業者が多く存在し、プラットフォームを通じて多様な商品を供給していることが、この結果に繋がっていると考えられます。

多様なニーズに応える:「ステッカー・シール」

このカテゴリは、特定の県が突出するのではなく、東京都を筆頭に栃木県、群馬県など、関東の各都県でまんべんなく高い需要が見られました。

ステッカーやシールは、子供向けの玩具としてだけでなく、趣味のデコレーション、店舗のPOP、オフィスでのマーキングなど、極めて多様な用途で使われます。東京の巨大な商業施設から、北関東の地域に根差した雑貨店やクラフトショップまで、様々な業態の事業者がそれぞれの顧客ニーズに合わせて仕入れを行っている結果、このような幅広い需要がデータとして現れたものと考えられます。

豊かな自然と居住環境を反映:「鉢・プランター」

「鉢・プランター」のカテゴリでは、栃木県と群馬県がワンツーフィニッシュを飾りました。これは、両県の居住環境とライフスタイルが明確に表れた結果です。

両県は、東京都や神奈川県と比較して「持ち家比率」が高く、「住宅の敷地面積」も広いという特徴があります。 広い庭やベランダを持つ世帯が多く、ガーデニングや家庭菜園を楽しむ文化が根付いていることが、鉢やプランターといった園芸用品の強い需要に直結しています。都心部では難しい、土地を活かした趣味への関心の高さが、この分野での北関東の強さの源泉と言えるでしょう。

まとめ

今回の分析から、関東地方は、東京を中心としながらも、各都県がそれぞれの産業基盤、ライフスタイル、文化を背景に、実に多様な消費市場を形成していることが明らかになりました。

郊外のベッドタウンでは日々の暮らしの質を高める「癒やし」や「衛生」への需要が、農業県では「食」に関連した需要が、そして広大な土地を持つ地域では「ガーデニング」といった趣味への需要が、それぞれ活発な仕入れ動向として表れています。

これらの多角的な視点を持つことが、巨大でありながらも多様性に満ちた関東市場を理解し、ビジネスチャンスを掴むための鍵となるでしょう。


※本レポートでは卸・仕入れサイト「スーパーデリバリー」における実際の取引データに基づき、算出したものです。
※これらはスーパーデリバリー上における関東地方の需要動向の一側面を示すものであり、特定のカテゴリ、個別の商品の人気を保証するものではありません。