2026年4月、気象庁が最高気温40℃以上の日を「酷暑日」と名付けました。夏日25℃、真夏日30℃、猛暑日35℃の上に、暑さの指標が一つ増えたことになります。

暑さがそれだけ日常になった、ということかもしれません。では小売の現場、つまり皆さんが仕入れる冷感商材の売れ行きは、どう変わってきているのでしょうか。

スーパーデリバリーの受注データを4年分さかのぼって調べたところ、想像とは少し違う変化が見えてきました。ひとことで言えば、冷感・ひんやりが夏の定番として定着し、暑さと戦うための道具はブームを経て定位置に落ち着いてきた、ということです。

社会も暮らしも、暑さを受け入れた取り組みが垣間見える4年間

2025年の夏は、統計開始以来もっとも暑い夏でした。気象庁の発表によると、日本の夏の平均気温は基準値を2.36℃上回り、全国153地点のうち132地点で観測史上1位を記録しています。

年平均気温で見ても、1位が2024年、2位が2023年、3位が2025年と、直近3年が上位を占めています。

この数年で変わったのは、気温だけではありません。

2024年4月、改正気候変動適応法が施行されました。冷房のある施設を自治体が「クーリングシェルター」として指定し、危険な暑さのときに開放する仕組みです。東京都のように、アラートの有無にかかわらず立ち寄れる「クールシェアスポット」を並行して整備し、防災マップ上で公開している自治体もあります。

同じ2024年、夏の甲子園は日中の試合を避ける朝夕2部制を試験導入しました。翌2025年には6日間に拡大されています。2025年6月には職場の熱中症対策が義務化され、Jリーグは今年から開幕を8月にずらしました。小学校のプールが気温を理由に中止になる日も、珍しくなくなりました。

共通しているのは、暑さと戦うのではなく、暑い時間と場所を避けるという発想です。危険な時間帯の外出を控え、出かけたら涼める場所に立ち寄る。こうした行動が、個人の我慢ではなく社会の仕組みとして整えられつつあります。

この変化は、仕入れの数字にも表れています。

持ち歩く道具は、定位置に戻りました

ここで注意したいのが、比べ方です。スーパーデリバリー自体が4年で大きく成長しているため、金額をそのまま並べると、どのカテゴリも伸びているように見えてしまいます。そこで、受注全体に占めるシェアで比較しました。

スーパーデリバリーの受注全体に占めるシェアの4年推移

ネッククーラー系は、2024年の0.228%から2026年は0.028%まで下がりました。ハンディファンも2025年の0.403%から0.074%へと落ち着いています。

ただ、これをゼロになったと読むのは正確ではありません。ハンディファンは2023年の時点では0.037%と、ほとんど存在しないカテゴリでした。今の0.074%は、むしろ当時より多い水準です。

ブームの前に戻ったというより、ブームを経て定位置を見つけたという表現のほうが近いように思います。ワゴンに山積みする商材から、棚の一角に数点置く商材へと、扱いのサイズが落ち着いてきたということかもしれません。

仕入れている事業者の数も、同じ方向に動いています。6月にハンディファンを発注した会員数は、2025年の629件から2026年は228件へ。取扱商品数も132品から98品に減りました。商品名の付け方が変わったといった話ではなく、扱う事業者そのものが減っています。

一方、接触冷感やひんやりといった素材系は、4年間シェアがほとんどぶれていません。ひんやりは0.159%から0.174%です。

数字が動かないというのは、裏を返せば毎年同じだけ売れているということでもあります。ブームで急に伸びることもない代わりに、落ちることもありません。夏の定番アイテムとして定着してきた、と言えそうです。

かつて、夏は暑いものでした。工夫して涼を取り入れて出かけるもので、日傘をさし、扇子を持ち、冷たいものを買う。そんな過ごし方が一般的だったように思います。暑さは、楽しみながら付き合う対象だったのかもしれません。

いまは、少し様子が変わってきました。何をしても暑いので、無理をして出かけない。暑さは付き合う相手というより、避けたいものになりつつあります。

道具の売れ行きが落ち着いた背景には、こうした変化がありそうです。工夫して出かけるなら道具が必要ですが、出かける機会そのものが減れば、道具の出番も減ります。

対して接触冷感の服は、屋内でも着ています。日傘も、外に出る回数が減っても、出かけるときには手に取られます。東京都の熱中症対策ポータルは、日傘を使うと日向に比べて1〜3℃程度涼しく感じるとして、遮光・遮熱機能の高いものを選ぶよう勧めています。男性用の日傘も増え、男女を問わず夏の必需品として普及しているとも記されています。この1〜3℃という数字は、環境省が九都県市と実施した日傘の暑さ指数(WBGT)測定にもとづくものです。行政が名指しで推奨する商材は、一過性では終わりにくいと考えられます。

暮らしの一部になったものは定番として残り、暑い日だけの道具は定位置に落ち着いた。今年の数字は、そのように読めます。

日傘の落ち込みは、需要減ではなさそうです

そのうえで、日傘だけは少し違う動きをしています。シェアは2025年の0.272%から2026年は0.162%へと、半分近くまで下がりました。

ただ、消費者側の需要が減った形跡はありません。ウェザーニュースの傘調査2026では、日傘を使っている男性の割合は2025年の13%から15%へ上昇し、2019年の4%からは11ポイント増えています。

意識の面でも変化が出ています。メンズリゼの2024年の調査では、男性の日傘使用に肯定的と答えた男性の割合が2022年の79.7%、2023年の83.0%から92.2%へ上昇。翌2025年の調査では、すでに日傘を使用している男性が13.5%から17.8%に増えました。

世の中の意識が変わったのが2024年、実際に使う人が増えたのが2025年。スーパーデリバリーの仕入れも、2024年に前年比+71%、2025年にピークという同じ動きをしています。世の中の空気が1年先行して、卸の仕入れが後を追う格好です。

とすると2026年の落ち込みは、需要が消えたからではなく、2025年に仕入れた在庫がまだ店頭に残っている調整局面と見るのが自然かもしれません。

冷感アパレルは、4月までに売り場を決めておきたい

「冷感」で検索したときに並ぶのは、そのほとんどが接触冷感のアパレルです。受注額TOP100の86.2%を衣類・服飾が占めています(2025年は76.0%)。

この市場の最大の特徴は、動き出しが早いことです。次のグラフで冷感の線を見ると、4月の時点ですでに6月の9割の水準まで来ています。春夏物が春に決まる、アパレルの発注リズムがそのまま出ています。

2026年のカテゴリ別シーズンカーブ

冷感アパレルは、暑くなってから探すというより、春のうちに決めておく商材です。冷感アイテムをそろえるなら、4月の段階で売り場づくりの提案を決めておくことが大切だと思います。

もうひとつ、今年目立った変化があります。買う事業者は増えたのに、1件あたりの仕入れ額が減っていることです。ある人気プルオーバーでは、購入事業者数が240件から277件に増えた一方、1件あたりの仕入れ額は3分の2に減りました。薄く広く、外しても痛くない量で仕入れる。そうした慎重な姿勢が数字に表れています。

裏を返せば、掲載商品数が増えたぶん、売上が分散しているということでもあります。今年は「選択肢が増えた年」だったと言えそうです。

ひんやり雑貨のピークは、2年で1ヶ月前へ

「ひんやり」で検索すると、今度は雑貨が見つかりやすくなります。氷のう、アイスパック、冷感タオル、アームカバーなどです。

同じ機能を売っていても、「接触冷感」が素材のスペックを語る言葉なのに対し、「ひんやり」は体感を語る言葉です。売り場でお客様に向けられる言葉、と言ってもいいかもしれません。探すときは、ぜひ両方の言葉で検索してみてください。見つかるものが変わります。

このひんやり雑貨で、はっきりした変化が起きています。

7月の受注額を6月と比べた指数の3年推移

7月と6月を比べた指数が、2024年の120から2026年は73まで下がりました。2年前は7月がピークだったものが、今年は6月に移っています。

冷感アパレルはもともと6月ピークでしたから、雑貨がアパレルのリズムに追いついてきた形です。暑くなってから慌てて仕入れるのではなく、暑くなる前に備える。お客様の行動が変わったぶん、仕入れの時計も前へ動いているようです。

月ごとの動きを3年並べると、山が前へずれていく様子がよりはっきりします。

冷感とひんやりの月次受注額指数

2026年は4月・5月の水準が、過去2年をはっきり上回っています。シーズンが早く始まり、長く続いた年でした。

何を、いつ仕込むか

カテゴリごとに山の位置が違うことを、まとめるとこうなります。

時期動くもの
3月UV対策が立ち上がる
4月UVが本格化。冷感アパレルは9割決着
5〜6月冷感がピーク
6〜7月ひんやり雑貨がピーク
7〜8月日傘・冷却グッズの実需

「準備で買うもの」から「暑くて買うもの」へのグラデーションになっています。

意外だったのが日傘です。3月の時点では27と最も遅く、7月が最大となっています。日焼け対策の準備で買われるものだと思っていましたが、実際には暑くなってから動く実需商材でした。2024年に至っては、7月が6月の1.8倍です。

UV対策は、また性格が違います。4月から7月までずっと9割前後を保ち、山ができません。シーズンが3ヶ月以上続くカテゴリです。6月に山が集中する冷感とは、棚の作り方が変わってきます。

今シーズン、多くの事業者が選んだ商品

ここまでの傾向を踏まえて、2026年6〜7月の受注実績から、実際によく動いた商品をご紹介します。掲載中のものに絞っています。

今からでも間に合う|残暑に売れるひんやり雑貨

7月以降にピークが来るカテゴリです。暑い日にその場で売れるので、これから棚を作る場合は、こちらから検討してみてください。

商品出展企業ひとこと
アイスノン 首もとひんやり氷結ベルトカネイシひんやり雑貨の受注額トップ。ナショナルブランドの安心感があり、説明なしでも手に取ってもらえます
イエティ アイスパッククレエ見た目のかわいさで選ばれるタイプ。発注ロット6なので小さく試せます
エコクールアイスバッグナノプラン氷のう系は今年も安定。実用性が高くリピートも期待できます
クールタオル 水で濡らすとひんやり現代百貨単価が手頃でレジ横向き。ついで買いを取りにいけます
5WAY ひんやりアイスポーチクリームシャンティ日本製。用途が広く、贈答にも回せます
ハンドクーラー 両手用 2個入免疫向上クラブイベント・ノベルティ需要も拾える一品です
ひんやり抱き枕になる布団収納袋アルファックス2年連続で上位。オフシーズンは収納袋として売れる二毛作商材です

来季に向けて覚えておきたい|接触冷感アパレル

こちらは動き出しが春なので、今からの追加仕入れよりも「来年これを押さえる」という目で見ていただければと思います。数字は2026年6〜7月に実際に仕入れた事業者の件数です。

商品出展企業仕入れた事業者数
接触冷感レーヨンナイロンBIGシルエットプルオーバーSans Souci 34+277件
接触冷感ギャザータックワイドパンツSans Souci 34+155件
接触冷感イージーワイドパンツカプリ114件
接触冷感 袖フレア半袖TシャツOPTIM104件
接触冷感 配色ドロップショルダーカットソーウィンウィン70件
UVパーカー 冷感 UPF50+Style On53件
冷感加工 素肌のような薄手アームカバーエムアンドエムソックス26件

トップのプルオーバーは、277件の事業者が仕入れています。金額の大きさより、これだけの事業者が「自店で売れる」と判断したという事実のほうが、参考になるかもしれません。

アームカバーは金額こそ控えめですが、6月に集中して動く定番です。UV対策として春先から置けるので、シーズンの入口をつくる一品として覚えておく価値がありそうです。

※掲載状況・在庫・価格は変動します。発注前に商品ページでご確認ください。

今からの仕入れも間に合います

今年のピークは6月でした。けれど、暑さそのものはまだ終わっていません。実際、8月の受注額は6月の4割前後の水準を保ちます。まだ冷感の棚を作っていない事業者にとって、今からの仕入れも十分に成立します。

ただし9月に入ると1割ほどまで下がります。今から仕入れるのであれば、8月中に売り切れるものを選びたいところです。具体的には日傘、氷のう、冷感タオルといった、暑い日にその場で売れるものです。いずれも7月以降にピークが来るカテゴリなので、時期としても噛み合います。

一方、冷感アパレルは秋物への切り替え時期と重なります。今からの追加仕入れは在庫リスクが高くなるため、こちらは来季の話として考えたほうが安心です。

来シーズンは、さらに早めの準備を

この3年で、夏商戦の山は前へ動いてきました。ひんやり雑貨のピークは7月から6月へと移り、冷感アパレルは4月の時点で大勢が決まっています。気候が変わり、お客様が「暑い」と感じる時期が早まったぶん、店頭に並べるべき時期も早まっています。

来シーズンは、5月には棚が完成している状態を目指したいところです。冷感アパレルなら春から、UV対策はさらにその手前、3月からの準備が目安になります。

「酷暑日」という言葉が生まれた年です。暑さはもう、特別な日のできごとではなくなりました。売り場も、特別な日のための道具から、毎日を涼しく過ごすための定番へ。早めの備えが、来シーズンの売り場づくりにつながります。

※本記事の数値は、スーパーデリバリーの受注データ(2023年1月〜2026年7月25日)をもとに算出した指数・構成比です。2026年7月は7月25日までの実績を含みます。

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参考にした資料

内容出典
「酷暑日」の予報用語化気象庁「最高気温が40℃以上の日の名称を『酷暑日』に決定」(2026年4月17日)
2025年夏の気温気象庁「2025年夏(6月〜8月)の天候」
年平均気温の順位気象庁「2025年(令和7年)の天候のまとめ(速報)」
クーリングシェルター・クールシェアスポット東京都熱中症対策ポータル「東京都の取組」
日傘の効果と普及東京都熱中症対策ポータル「基礎知識」環境省「日傘の活用推進について」
男性の日傘使用率ウェザーニュース「男性の日傘使用率が上昇 <傘調査2026>」
男性の日傘に対する意識メンズリゼ「男性日傘」調査 第3弾(2024年)第4弾(2025年)
職場の熱中症対策の義務化日本気象協会「2025年6月1日から職場での熱中症対策が義務化」