地域別仕入れデータ分析レポート 四国地方

瀬戸内海の穏やかな気候と太平洋の雄大な自然、そして四国八十八ヶ所霊場が育んだ独自の文化。徳島、香川、愛媛、高知の4県から成る四国地方は、日本の他の地域とは異なる、多様性に富んだ経済圏を形成しています。

このレポートでは、これらの特色が特に顕著な商品カテゴリを厳選し、主に四国地方の具体的な仕入れ実態に焦点を当てながら、その背景と要因を解説いたします。

1 調査概要
2 四国地方の地域的な特徴と関連するカテゴリ
3 四国の特色ある仕入れカテゴリを紹介
4 気候を反映するライフスタイル商品
5 健康意識を背景としたヘルスケア商品
6 地場産業と関連した仕入れ戦略
7 「おもてなし」文化と食へのこだわり
8 車社会と防災意識から生まれる需要
- 8.1 まとめ

調査概要

調査期間: 2024年5月～2025年4月
調査対象: 「スーパーデリバリー」国内会員（四国4県）による注文データ及び会員登録数
分析対象地域: 徳島県、香川県、高知県、愛媛県
算出方法: 主要ジャンル別に「1会員あたりの注文点数」を算出。これを基に比較分析。
参考資料: 総務省統計局「統計でみる都道府県のすがた 2025」
（https://www.stat.go.jp/data/k-sugata/naiyou.html）

四国地方の地域的な特徴と関連するカテゴリ

国の消費行動を理解するには、その多様な地域性を知ることが不可欠です。気候、人口、産業、文化、ライフスタイルの5つの側面から、その背景を解説します。

気候の二面性：瀬戸内と太平洋

四国は中央の山地を境に、瀬戸内海側の香川・愛媛は「温暖・少雨」、太平洋側の高知は「多雨・多湿」と、気候が大きく二分されます。この極端な気候の違いは、それぞれの地域における県民の生活様式や価値観に影響を与えています。

人口動態：高齢化について

高知県（全国1位）、徳島県（5位）、愛媛県（6位）は全国トップクラスの高齢化率を誇ります。これは単にシニア向け市場が大きいだけでなく、同じものを愛用する特徴や、品質などにこだわりを持ちやすい傾向が考えられます。

産業構造：地域に根ざした経済基盤

各県が独自の強力な産業基盤を持っています。愛媛県の「タオル」「柑橘類」、高知県の「第一次産業」などは、地域の経済を支えるだけでなく、県民のアイデンティティの一部にもなっています。

独自の文化：お遍路と「お接待」の精神

約1200kmに及ぶ「お遍路」文化は四国全土に根付いており、巡礼者をもてなす「お接待」の精神は、地域内の活発な贈答文化や助け合いの習慣にも繋がっています。

ライフスタイル：車社会と防災意識

1世帯あたりの自動車保有台数が全国平均を上回り、日常の買い物は車が基本です。このライフスタイルは郊外型店舗の発展を促し、「まとめ買い」の消費行動を定着させました。また、将来の発生が危惧される南海トラフ巨大地震への備えも、生活に根付いた重要なテーマです。

四国の特色ある仕入れカテゴリを紹介

順位	衛生用品（マスク）	衛生用品（ティッシュ・ゴミ袋）	ジュース	食器（皿・グラス等）	バス用品（入浴剤）
1位	高知県	高知県	愛媛県	香川県	愛媛県
2位	徳島県	愛媛県	徳島県	愛媛県	香川県
3位	愛媛県	香川県	香川県	高知県	徳島県
4位	香川県	徳島県	高知県	徳島県	高知県

アウター	ボトムス（パンツ）	水・ミネラルウォーター	ラッピング用品	キッチン雑貨	お弁当グッズ
徳島県	高知県	徳島県	愛媛県	愛媛県	愛媛県
愛媛県	愛媛県	愛媛県	香川県	香川県	徳島県
香川県	香川県	高知県	徳島県	高知県	香川県
高知県	徳島県	香川県	高知県	徳島県	高知県

気候を反映するライフスタイル商品

「バス用品（入浴剤）」のデータは、気候がライフスタイルに与える影響を明確に示しています。温暖な瀬戸内側の香川・愛媛・徳島で高い需要がある一方、多雨多湿な高知では顕著に低い傾向が見られます。

これは、バスタイムが瀬戸内側では一日の疲れを癒やすための「ご褒美」や美容への投資として湯船に浸かる文化が根付いているのに対し、高温多湿な高知ではリラックスよりもリフレッシュを重視し、シャワーで手早く済ませる生活習慣が背景にある可能性が考えられます。

また、晴天の多い愛媛・香川では「アウター」「ボトムス」といったファッションへの関心が高いこともデータに現れており、松山市や高松市の商業集積地が流行に敏感な消費者を惹きつけ、県全体の需要を牽引していると考えられます。

健康意識を背景としたヘルスケア商品

全国トップクラスの高齢化率を誇る高知・徳島では「衛生用品（マスク）」の仕入れが突出しています。これは、自分自身の健康はもちろん、高齢の家族を守りたいという個人の切実な健康意識が根底にあることを示しています。その結果がヘルスケア需要を形成していると推測されます。

地場産業と関連した仕入れ戦略

「ジュース」カテゴリで愛媛が圧倒的なのは、地元の柑橘産業の強さの表れです。しかし、興味深いのはその仕入れ内容です。

スーパーデリバリー内の仕入れ商品を分析するとりんごジュースなど柑橘系以外の商品が多く見られることから、地元産の商品は既存ルートで確保し、卸サイトでは、品揃えの幅を広げるための商品を仕入れるという考えがみられます。

「おもてなし」文化と食へのこだわり

お接待や贈答文化が根付く愛媛・香川では、贈り物を彩る「ラッピング用品」の需要が突出しています。観光客向けの土産物だけでなく、地域内での慶弔やお礼といった日常的な贈答シーンの多さが考えられます。また、「食器」や「キッチン雑貨」といったカテゴリも両県で高い需要を示しており、豊かな食生活を大切にする県民性が反映されていると考えられます。

車社会と防災意識から生まれる需要

四国では「お弁当」文化が根強く、「お弁当グッズ」は特に愛媛・徳島で多く仕入れられています。これは節約や健康志向に加え、車での通勤・通学というライフスタイルであまり外食で済ませることがないことが考えられます。その結果関連商品の安定した需要を生み出しています。

さらに、防災意識という観点では、徳島県の「水・ミネラルウォーター」の備蓄需要が突出しています。南海トラフ巨大地震への備えが「日常」となっている徳島では、個人消費だけでなく、企業や自治体などがBCP（事業継続計画）に基づいて大量の備蓄水を定期的に購入しています。これは小売店の棚に並ぶ商品とは別の、大規模な「ストック需要」が市場を形成していることを強く示唆しています。

まとめ

本レポートでは、卸・仕入れサイト「スーパーデリバリー」の注文データを活用し四国四県の消費行動、特に仕入れにおける地域ごとの顕著な特性を明らかにすることを目的といたしました。

四国の消費動向は、瀬戸内と太平洋で異なる「気候」、全国トップクラスの「高齢化」、特色ある「地場産業」、お遍路に根差す「お接待文化」、そして「車社会と防災意識」という、地域ごとの多様な背景によって強く特徴づけられています。

四国市場では、4県をひとくくりに捉えるのではなく、それぞれの県の県民性やライフスタイルを深く理解し、そのニーズに寄り添ったきめ細やかなアプローチが不可欠と言えるでしょう。

ラクーンコマースでは、今後も定期的に仕入れ価格指数の観測を続け、データに基づいた経営判断をサポートする情報提供に努めてまいります。