SDGsに取り組むべきは大企業や自治体で、何となく自分事には感じられないと思っている人も多いのではないでしょうか。でも実は、SDGsは全世界のすべての人が問題解決の行動を起こすべき当事者であり、「まずはできることからはじめよう!」という姿勢が含まれています。

この記事を読んでいただいている飲食業の方には、利益だけでなく、環境・社会・人・地域を大事にしながらお店を運営しているオーナー様も多いはずです。その考え方はSDGsと共通するところがたくさんあります。SDGsの目標を詳しく知り、具体的なアクションを起こすヒントとしてお役立ていただければ幸いです。

SDGsとは?

SDGs(エスディージーズ)とは「持続可能な開発目標」という意味の”Sustainable Development Goals” の頭文字をとった略称です。SDGsは、地球環境問題や社会問題などを解決に導くために、2015年に国連が定めた2030年まで行う17の目標と、より具体的な169のターゲットで構成されています。

SDGsの「S」はサスティナブルですが、この「サスティナブル」という意味は、直訳すると「持続可能な」という意味ですが、分かりやすく言うと、「環境保護」・「社会的な支え合い」・「経済開発」の3つの要素が調和しながら無理なく続けていくことができるという意味です。環境を守りながら、すべての人の人権を尊重し、経済成長していくということです。

飲食店がSDGsに取り組む必要性とは?

SDGsに取り組むべき理由、それは「このままでは地球がもたない」という問題が目の前にあるからです。産業革命以降、先進国では経済活動のために大量生産、大量消費を行ってきました。その犠牲として公害が発生したり、環境破壊が進んでいます。経済発展も大切ですが、人々が安心して生活できる地球環境はそれ以上に大切です。

SDGsが作られる前、国連では「MDGs(ミレニアム開発目標)」がありました。MDGsは先進国が発展途上国に向けて目標設定したものです。一方、SDGsは先進国も含めた全世界で取り組むべき目標として設定されています。つまりSDGsでは、すべての国や人が問題や課題を解決するために行動すべき当事者なのです。

SDGsで掲げる「誰一人取り残さない」世界のために、人々の健康や楽しさを支える「飲食」というシーンでできるSDGsへの取り組みの実践は、とても有意義であると思います。そして人々の生活に密につながっている「飲食」でお店から消費者を巻き込むことは、そのアクションの範囲を広げることに有効的です。

飲食店の目線で考える、SDGsの目標と具体的なアクション

飲食店でできる具体的なSDGsの目標達成のためのアクションを紹介します。SDGsの目標の内容や必要とされる背景を知って、どの分野でできることがあるか探すヒントにしてみてください。

食品ロスを減らす

飲食店の運営で避けて通れないのが食品ロスの問題。令和2年度の統計では、食品ロスは522万トン発生しており、そのうち16%の81万トンは外食産業から出ています。(参考:農林水産省「食品ロスとは」より引用

SDGsでは、目標12「つくる責任 つかう責任」(持続可能な生産消費形態を確保する)が食品ロスと関係します。ターゲット12.5では、「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる」とあります。

飲食店でできる具体的なアクションとしては、
・食べきれなかった分の持ち帰りを可能にする
・お客様が食べきれるように、小盛りなど分量を調整する
・野菜の皮や切れ端などを捨てずに出汁として活用する「ベジブロス」を実践
があります。

飲食店で料理を作る段階での食品ロスはほとんどないと思いますが、お客様への提供方法の見直しで食品ロスを減らすことができます。食べきれない罪悪感を持っているお客様もいるので、お客様側にとってもうれしいサービスにつながるかもしれません。

プラスチックゴミの削減

有限な資源である石油から作られるプラスチック製品。自由自在に形を変えられる便利な素材であるため、身の回りの多くのモノに使われています。

プラスチックゴミの削減にあたっては、プラスチック製品の利用を減らすことが重要ですが、飲食店では特に一度だけ利用して使い捨てる「シングルユースプラスチック」の利用を見直しましょう。シングルユースプラスチックの代表例としては、プラスチックストローやプラスチックスプーンがあります。

2022年4月からは「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が施行され、一定条件を該当する飲食店に対して12品目のプラスチック製品の廃棄について取り組みが求められています。

法律施行の背景には、プラスチックゴミが適切に処理されず、投棄やポイ捨てによって川や海に流れ着き、自然分解されることなくゴミとして漂流し続けてしまう問題があります。漂流するゴミによって、海の生き物が誤って食べてしまいケガをしたり命を落としてしまったり、5ミリ以下の小さなプラスチックである「マイクロプラスチック」による海洋への悪影響が問題視されています。

このプラスチックゴミと関係するSDGsは、目標14「海の豊かさを守ろう」(持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する)です。

プラスチックゴミを出さないようにするために飲食店でできる具体的なアクションとしては、
・プラスチック製のストローやスプーンなど提供をやめたり、有料化や必要なお客様だけに提供する
・紙やバイオプラスチック素材などへの切り替え
・リユースできる容器への切り替え
があります。

まずはお店で出ているプラスチックゴミを思い出してください。プラスチック素材のモノを使用すること自体減らしたりやめることはできないでしょうか?難しい場合は、プラスチックではない素材に替えてみましょう。そして、マイボトルなど容器の貸し出しなど、リユースできるモノへの切り替えも視野に入れてみてください。

環境負荷の少ない素材への切り替えには、従来のモノよりも資材の調達コストが上がってしまうデメリットがあります。しかし、お客様から見れば、環境に配慮したお店として他のお店と差別化されるポイントになるのではないでしょうか。

貧困をもたらす商品を使用しない

SDGsでは、目標1に「貧困をなくそう」(あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる)があります。

2015年時点で、1日1.9ドル(日本円で200円~250円程度)という国際貧困ライン未満で暮らす人は、世界に7億3,600万人います。世界の貧困層の大半は農村部に住み、極度に貧しい人々の約半数は子供です。その結果、貧困によって児童労働が発生し、教育を受けられずに劣悪な環境で生活する子供が世界中には多くいます。

この事実を知って児童労働によってつくられた農作物やモノは使いたくないと思う人はとても多いと思います。また貧困から脱却させるためにはどうしたらいいかと考える人も多いのではないでしょうか。

この問題を解決する1つの方法が「フェアトレード」です。フェアトレード(Fair Trade)は、英語訳で「公平・公正な貿易」のことを言います。立場の弱い発展途上国の生産者や生活改善の自立を目指す貿易の仕組みです。発展途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することを目的としています。

フェアトレードが広がることによる効果としては、
(1)低賃金 ⇒ 貧困対策、労働環境の改善
(2)児童労働の撲滅 ⇒ 教育を受ける機会、子どもの権利の保護、児童労働のない未来
(3)農薬、化学肥料使用から無農薬栽培(有機栽培) ⇒ 自然環境を守る、環境保護
(4)地元の伝統的な手仕事や文化に根差したモノづくり ⇒ 伝統文化を守る
以上の4つがあります。

貧困の負のスパイラルから脱却し、生産者の働く環境や農地の環境を改善、そして伝統文化を生かし守ることができます。フェアトレードで作られた食品を使うことで、貧困層の世界の人々の生活を改善することができます。コーヒーや紅茶、チョコレートやスパイスなど、さまざまなフェアトレード食品があります。次の仕入れから、フェアトレードへの切り替えを検討してみませんか?

ヴィーガンメニューを取り入れる

ヴィーガン(ビーガン)とは動物を搾取しないという考え方やライフスタイルのことです。食事面でのヴィーガンでは、肉や魚、乳製品、はちみつなどの動物由来のものは食べません。

ヴィーガンと聞くと、健康志向や動物愛護のイメージを持つ人も多いと思いますが、ヴィーガンが注目される1つに温室効果ガスなど環境問題への関心の高まりがあります。

世界の人口は増加し続けており、人口が増えれば必要な食糧も増加します。例えば、食肉の生産には家畜動物の飼育が必要で、そのためには飼料が必要となります。飼料をつくるためには広大な農地や牧草地が必要となり、森林伐採が進みます。森林伐採は二酸化炭素を吸収する効果を無くし、農地の開墾ためには二酸化炭素が排出されます。

また、家畜動物から出るメタンガスも問題視されています。メタンガスは二酸化炭素に次いで影響の強い温室効果ガスと言われています。2018年の日本の農林水産分野の温室効果ガス排出量のうち、牛などのげっぷや排せつ物から出るメタンと一酸化二窒素は、その3割弱を占めています。

こういった問題から、ヴィーガンが注目されており、SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」(気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる)に関係してきます。

ヴィーガンメニューを取り入れるための具体的なアクションとしては、
・オプションメニューとしてヴィーガンを導入する
・大豆など植物由来の代替肉などの素材を使う
・ミートフリーマンデーなどイベントとして行う
があります。

画像左から順に「カルロタ 有機ベジハンバーグ キヌア入り」、「ボルドーニ・有機ソイフレーク」、「プレミアム ディッピン グソース

近年のインバウンド需要を受けて、数年前からヴィーガンの外国人向けにメニューを取り入れるお店も増えてきています。加えて日本人の20代など若い世代を中心にヴィーガンに関心が高まっており、ヴィーガンを軸に新たな集客手法として取り入れているオーナーもいます。まずは自店の客層やエリアにあうメニューかどうか試作をしてみてはいかがでしょうか。

地産地消のメニューを考える

地産地消とは、地元で生産されたモノをその地で消費すること。新鮮な食材を味わうことができ、地域の産業や経済を促進します。また、輸送距離が短くて済むため、二酸化炭素の排出量の削減にもつながります。日本人は古来より、地域それぞれの気候や風土を生かし作物を作り、味付けや保存方法などさまざまな文化を形成してきました。地産地消はそれを最大限にいかし、かつ環境問題への具体的なアクションになります。

SDGsでは、目標12「つくる責任 つかう責任」(持続可能な生産消費形態を確保する)に関係します。地産地消はすでに多くの人が知って実践していることなので、無理なく取り入れることができるのではないでしょうか。環境負荷を軽減しながら、地元の自然環境や文化を大切にでき、日本人にとっては非常に身近なアクションです。

地元の作物や文化を生かしたメニュー作りは、お店独自のオリジナルメニューの開発につながります。お客様や地域の人々からアイデアを募集するなど、イベントと組み合わせて集客手法として取り入れることも1つの策です。地元の自治体や商工会などでも企画を応援していることもあります。地元の機関・組織の情報も活用して取り組んでみましょう。

できることから始めよう!SDGsな店作り

SDGsは「できることから始める」が前提となっています。個人やお店それぞれのアクションは微力かもしれませんが、まずは始めること、そして続けることが大切です。お店が取り組めば、お客様も取り組みに参加することになります。

お客様にとっては「あのお店に行って買うだけで、環境や社会に良いことにつながっている」という印象になり、集客やお店の評価を高める要素になるのではないでしょうか。

まずはとにかくできることからはじめてみましょう!

そして、完璧にできる必要もありません。できる範囲でできることをはじめることが大切です。

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