「お店にお客様は来るけれど、なかなか商品が動かない」
「どうすればもっと手に取ってもらえる売場になるの?」

そんな悩みを持つ小売・アパレル・雑貨店の方にとって、“ディスプレイの力”を見直すことは大きなヒントになります。

今回、スーパーデリバリー主催で開催したのは、「プロが教える!手に取ってもらえる売場づくり」の実践講座。
ディスプレイや陳列といった見せ方ひとつで、商品が「売れる商品」に変わる。
その考え方と具体的なノウハウを、35年以上の経験をもつVMD(ビジュアル・マーチャンダイジング)のプロに、豊富な実例とともにわかりやすく解説いただきました。

こちらでは、その講座のポイントをぎゅっとまとめてお届けします。“売場づくり”を変えたい方はぜひ、ご覧ください。

なぜいま、「見せ方=VMD」が必要なのか

近年、小売業界を取り巻く環境は大きく変化しています。
ECサイトやSNSの台頭によって、お客様が「わざわざお店に行く」理由が曖昧になりつつある今、リアル店舗にはこれまで以上に「お店にくる価値、リアルだからこその価値」が求められています。

だからこそ、来店したお客様に「その場で買ってもらう仕掛け」づくりが重要になっています。

商品を並べておくだけでは売れない時代。
お客様がお店に入ったその瞬間に「気づき」を与え、「欲しい」と思ってもらう導線をつくる必要があるのです。

それを叶えるのが VMD(ビジュアル・マーチャンダイジング)という考え方です。

今回の講義の冒頭、藤井さんは「今こそVMDの考え方が必要」と語りました。

「今は“物を売る”こと自体が難しくなっている。でも、売れないのは“物が悪いから”ではない。お客様が“気づけない”だけなんです。」

この「気づき」が、VMDの核心です。

  • お客様は理由があって買うのではなく、「気づいたから」買う
  • 商品に“気づいてもらう”ことがVMDの役割
  • 店は「買う場所」ではなく「気づきを提供する場所」に変わっている

つまり、“いかに商品に気づいてもらえるか”が、来店後のすべてを決めるのです。

たとえば、アパレルにしても雑貨にしても最近は安価でクオリティの良い商品も増えています。そんななかで、付加価値が高いもを提案しようと思っても、ただ棚に並べておくだけでは価値は伝わりません。どこにどうディスプレイして、何と合わせて提案すると価値を高く感じてもらえるのか。そのときに役立つのがVMDを取り入れた提案です。

単に商品を並べるのではなく、「目に見える工夫=視覚的プレゼンテーション」によって、お客様の心を動かす。
それが今、リアル店舗に求められている力なのです。

「店」の語源は「見せる棚」

藤井さんがまず語ったのは、「店(みせ)」という言葉のルーツ。
なんと「見せる棚」が語源だということ、ご存じでしたか?

つまり、店とは「商品を見せる場所」であり「魅せる場所」だったということです。商品の陳列はただの棚ではなく、お客様の心を動かす「見せ棚」であるべきなのです。

たとえば事例で出てきたのがこちらのバナナのディスプレイ。

たとえば同じバナナでも、ただ並べただけの陳列と吊り下げて陳列を比べると、吊り下げたほうが魅力的に見えませんか?

このように「自然な姿で見せる」ことにより、商品が魅力的に見えるようになり、お客様の「ほしい」を引き出すことができます。

そもそもVMDとは?

VMDとは「Visual Merchandising(ビジュアル・マーチャンダイジング)」の略。
視覚(=ビジュアル)を通じて商品価値を高め、お客様に届けるためのマーケティング活動です。

具体的には、

・ディスプレイ

・色の使い方

・導線設計

・POPの言葉選び

・SNSや接客などの見せ方

これらすべてが「一貫した世界観」でつながっているかどうかが重要です。

そしてこれらは、入店率・購買率・客単価など、売上に直結する要素にもなってきます。

藤井さんはVMDを次の三大要素で整理していました。

要素目的具体例
VP(ヴィジュアルプレゼンテーション)目を引き、立ち止まらせるトルソー展示・ウィンドウ
PP(ポイントオブパーチェス)興味を深め、売場に誘導POP・組み合わせ提案
IP(アイテムプレゼンテーション)手に取りやすくし、購入へ商品の見せ方・手に取りやすさ

たとえばウィンドウで目を引く(VP)→ 商品の使い方をPOPで伝える(PP)→ 実際に手に取ってもらいやすい陳列(IP)

この一連の流れがあることで、“なんとなく来店”したお客様が“買う”に変わるのです。

POPは「説明」ではなく「問いかけ」が効く

藤井さんは、POPの役割についても強調していました。

「POPは商品の説明書ではなく、“お客様に気づかせる問いかけ”の道具なんです。」

例えば、店内で数種類のお菓子を扱うとします。そのときにそれぞれのお菓子の味や原材料を紹介するケースはよくありますが、藤井さんによると「どっちの味が好みですか?」といった問いかけをしてみると効果的とのこと。

なぜなら、POPでお客様の中に眠っている“気持ち”を引き出すことができるからです。

下の画像の場合は、ポップのパネルの下に、週間天気予報を差し込んでいます。

「〇〇から寒くなりますよ」とPOPで呼びかけさらに天気予報の見せることで、お客様は自分の生活シーンを思い浮かべやすくなり、「必要かも」と手にとってもらうきっかけを作っています。

藤井さんは『お客様は、店に入ってから自分の欲求に気づくことが多い。そのためには、ディスプレイやPOPが「気づきのきっかけ」になることが大切』だといいます。

POPや棚作りも、売上を“構造的に”改善する手段

「VMDって、センスが必要なんでしょ?」
「アパレルじゃないと関係ないのでは?」

…と思っている方も多いのでは?

実は違います。VMDは売上の要素を“分解”して考えることで、誰でもロジカルに改善できるのです。

藤井さんが紹介していたのはこの式です。

売上 = 通行量 × 入店率 × 購入率 × 客単価

つまり、店前通行量が100人いても、入店率が5%で購入率が50%、客単価が2,000円だとすると、
1日あたりの売上は 5人 × 0.5 × 2,000円 = 5,000円

しかし、各項目を10%ずつ改善できれば、売上は 約1.57倍 に。
これはVMDでコントロール可能な部分が非常に多いことを意味しています。

・看板・ファサード → 通行量UP

・店頭ディスプレイ → 入店率UP

・棚の見やすさ・組み合わせ → 購入率UP

・POPによるセット提案 → 客単価UP

すべては「見せ方」次第で変えられるのです。

明日からできる!VMDの基本3ステップ

「なるほどとは思ったけど、実際なにからやればいいの?」
そんな方のために、講座の中で紹介された「すぐできるVMDの基本テクニック」をいくつかご紹介します。

ステップ1:お客様の「目線の動き」を意識する

・立ち止まる位置、最初に目に入る場所はどこか?

・VPは店頭から3m以内に設置するのが基本

・Z型(Zの字)の動きで視線が流れるように商品配置を工夫すると、売場全体を見てもらいやすくなる

ステップ2:「三角形の法則」でディスプレイする

・主役(高)+サブ(中)+補足(低)でバランスよく配置

・高低差をつけることで目線の流れが生まれる

ステップ3:お客様の「生活シーン」を想像して提案する

・例:「おうちカフェ」や「雨の日のお出かけ」など

・単品ではなく、“組み合わせで価値を伝える”

・説明よりも、お客様の生活に結びつく言葉の方が、心が動きます。

VMDは伝える力

VMDは誰にでも始められる「気づきの工夫」だと藤井さんは語ります。

「VMDは“売る技術”ではなく、“伝える力”です。
商品の価値にお客様が“気づく”きっかけを、あなたの売場がつくれるかどうか。そこに未来があります。」

小さな店舗でも、ディスプレイ・POP・ファサード・SNSを見直すだけで、商品の価値が伝わり、売上が変わっていきます。

SNSでは、ディスプレイ写真を発信することで「お店の世界観」をオンライン上でも表現できるようになります。ディスプレイを変えるごとにSNSに投稿することで、お客様に「行ってみたい」と思わせて、SNSで見たイメージとリアル店舗が一致していることでブランドの信頼感が高まり、「ファン作り」に直結していくのです。

決して、飾ることが目的ではなく、“伝えるために見せる”のがVMD。ぜひお店でも、できることから取り入れてみてはいかがでしょうか?

株式会社ライトハウス 藤井 雅範 氏

元・大手アパレル企業のVMDマネージャー。全国展開のセレクトショップ、スポーツブランド、百貨店、雑貨店、インテリアショップなど多様なジャンルのVMDをはじめ、『イオンモールのディスプレイ&POPコンテスト』の審査委員長も経験。

2014年にVMD専門会社「ライトハウス」を設立し、現在は全国の小売店・商業施設に向けて、VMD導入・売場改善・販売促進支援などを行うコンサルタントとして活躍中。


特徴は「誰でも分かる・明日からすぐに使える」VMDの伝え方。
実店舗の現場目線で、VMDを難しい理論ではなく「お客様の動線」「売れる配置」「手に取らせるコツ」といった具体的なノウハウに落とし込み、多くの小規模店舗から支持を得ています。

ライトハウスのウェブサイトはこちら:https://vmd-lighthouse.com/

事業者専用の仕入れ・問屋・卸の専門サイト「スーパーデリバリー」

スーパーデリバリーは、アパレル・雑貨を中心とするメーカーと小売業・サービス業など、ありとあらゆる事業者が利用する卸・仕入れサイトです。事業者は店頭で販売する商品や店内で使用する備品などを直接メーカーや問屋から仕入れができます。